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2話
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「ひさしぶりだなー。」
おじいちゃんの家には、いけなくなってしまっていた。それというのも、父の転勤のためにそれまで住んでいた家よりももっと遠いところに引っ越しをしたからだ。それまで、夏休みや冬休みなど長期休みのときは必ずいっていたというのに。
ひさしぶりのおじいちゃんの家は、記憶よりも少し小さい気がした。いや、私が大きくなっただけか。
「由香子、大きくなったなあ。」
「そうかな。」
出迎えてくれたおじいちゃんに頭をなでられる。おじいちゃんと会うのはひさしぶりだけれど、電話でたまに話していたからそんなに疎外感もない。おばあちゃんは、私が赤ちゃんのころに他界してしまったので、覚えていない。だから、おじいちゃんは一人で住んでいるのだ。
高校2年の夏。受験前に遊びたいと両親にたのみ、はるばるおじいちゃんの家まできたのだった。
「おじいちゃん、蔵ってまだあるの?」
「由香子は蔵がお気に入りだったもんな。もちろんあるよ。少し掃除はしたけど、鏡や着物はそのままにしてあるはずだ。」
「そうなんだ。よかった。さっそくいってみてもいい?」
「そのまえに、荷物でも整理してからいけば……」
「いってきます。」
ひさしぶりのおじいちゃんの再開だというのに、ろくに話もせずに荷物を置くことさえ億劫になるほどだった。私は蔵へと向かった。向かったとはいえ、家のすぐ隣にある。幼い私の足でもすぐにいけたくらいに近い。
相変わらず、蔵の戸に鍵はかかっていない。不用心だとは思うけれど、このあたりは住人全員が顔見知りだというのと、蔵の中に貴重品をいれていないから困ったことにはならないのだろう。
「……変わってないなあ。」
長持ちの戸をそっとあけると、中には着物が入っていた。
着物なんて、せいぜい浴衣しかしらない。必死に練習をして浴衣だけはなんとか着ることができるようにはなった。家にある父にねだってかってもらった夏らしく赤い金魚が白い生地の中で泳いでいるのは私のお気に入りだ。
「こんなのもあったんだ。」
私のお気に入りだった、着物。柄だけはよく覚えている。桜が舞っているようにみえるのでそれを羽織って踊ってみたものだ。その様子をだれにもみられなくってよかったとおもう、きっと滑稽だったから。
「そういえば、猫さんもいたんだっけ。」
白い大きな猫さん。年を重ねるにつれて記憶の中の猫さんは猫さんではなく白い虎さんではないかと思った。いくらなんでも猫にしては大きすぎたのだ。たとえていうならば、トトロの大きさが近いだろうか。もちろん、トトロみたいに丸くはないけれど。だって、お腹で温かい白い毛にうずもれて昼寝だってできたくらいなのだ。いくら小学校に上がる前の子供だとはいえ大きい。
それでも。虎ではないかとは思っていても記憶はなかなか変えられない。
「猫さん、猫さん。」
以前みたいに呼びかけてみる。……当然でてくるわけもなく。
イマジナリーフレンドなんていって小さい子供が空想上の友達を作り上げたりするなんて話がある。おじいちゃんの家は遊び友達がいなかったから、さみしくなった私が作りあげたのだ。
それにしてはやけに鮮明に記憶に残っているし、温かさや白さなどの感覚だってある。けれど、きっと何かの毛皮をそう思っただけなんだ。
記憶があまりにもはっきりとしていたから、確かめてみたかったのだ。あの夏の思い出は本物か、空想か。
どうやら空想のようだった。
「はっきりわかってよかった。」
お気に入りの着物を浴衣風に適当にきて、記憶の中よりも古ぼけた鏡にうつしてひとりごちた。鏡の中ではっきりしない私がこちらを見返していた。
おじいちゃんの家には、いけなくなってしまっていた。それというのも、父の転勤のためにそれまで住んでいた家よりももっと遠いところに引っ越しをしたからだ。それまで、夏休みや冬休みなど長期休みのときは必ずいっていたというのに。
ひさしぶりのおじいちゃんの家は、記憶よりも少し小さい気がした。いや、私が大きくなっただけか。
「由香子、大きくなったなあ。」
「そうかな。」
出迎えてくれたおじいちゃんに頭をなでられる。おじいちゃんと会うのはひさしぶりだけれど、電話でたまに話していたからそんなに疎外感もない。おばあちゃんは、私が赤ちゃんのころに他界してしまったので、覚えていない。だから、おじいちゃんは一人で住んでいるのだ。
高校2年の夏。受験前に遊びたいと両親にたのみ、はるばるおじいちゃんの家まできたのだった。
「おじいちゃん、蔵ってまだあるの?」
「由香子は蔵がお気に入りだったもんな。もちろんあるよ。少し掃除はしたけど、鏡や着物はそのままにしてあるはずだ。」
「そうなんだ。よかった。さっそくいってみてもいい?」
「そのまえに、荷物でも整理してからいけば……」
「いってきます。」
ひさしぶりのおじいちゃんの再開だというのに、ろくに話もせずに荷物を置くことさえ億劫になるほどだった。私は蔵へと向かった。向かったとはいえ、家のすぐ隣にある。幼い私の足でもすぐにいけたくらいに近い。
相変わらず、蔵の戸に鍵はかかっていない。不用心だとは思うけれど、このあたりは住人全員が顔見知りだというのと、蔵の中に貴重品をいれていないから困ったことにはならないのだろう。
「……変わってないなあ。」
長持ちの戸をそっとあけると、中には着物が入っていた。
着物なんて、せいぜい浴衣しかしらない。必死に練習をして浴衣だけはなんとか着ることができるようにはなった。家にある父にねだってかってもらった夏らしく赤い金魚が白い生地の中で泳いでいるのは私のお気に入りだ。
「こんなのもあったんだ。」
私のお気に入りだった、着物。柄だけはよく覚えている。桜が舞っているようにみえるのでそれを羽織って踊ってみたものだ。その様子をだれにもみられなくってよかったとおもう、きっと滑稽だったから。
「そういえば、猫さんもいたんだっけ。」
白い大きな猫さん。年を重ねるにつれて記憶の中の猫さんは猫さんではなく白い虎さんではないかと思った。いくらなんでも猫にしては大きすぎたのだ。たとえていうならば、トトロの大きさが近いだろうか。もちろん、トトロみたいに丸くはないけれど。だって、お腹で温かい白い毛にうずもれて昼寝だってできたくらいなのだ。いくら小学校に上がる前の子供だとはいえ大きい。
それでも。虎ではないかとは思っていても記憶はなかなか変えられない。
「猫さん、猫さん。」
以前みたいに呼びかけてみる。……当然でてくるわけもなく。
イマジナリーフレンドなんていって小さい子供が空想上の友達を作り上げたりするなんて話がある。おじいちゃんの家は遊び友達がいなかったから、さみしくなった私が作りあげたのだ。
それにしてはやけに鮮明に記憶に残っているし、温かさや白さなどの感覚だってある。けれど、きっと何かの毛皮をそう思っただけなんだ。
記憶があまりにもはっきりとしていたから、確かめてみたかったのだ。あの夏の思い出は本物か、空想か。
どうやら空想のようだった。
「はっきりわかってよかった。」
お気に入りの着物を浴衣風に適当にきて、記憶の中よりも古ぼけた鏡にうつしてひとりごちた。鏡の中ではっきりしない私がこちらを見返していた。
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