猫だと思ったらトラでした。

だいたい石田

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3話

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そのときだった。
鏡の中で白いものが動いた気がした。私がいま着ている着物は紺色だから着物ではない。

「猫……さん?」
それまでいたかのように猫さんは現れた。
だが、その大きさや猫にはあるまじき威厳、体にある白と黒の縞模様からすると。
「虎さん?」
呼び方を改めたときには、猫さん改め虎さんは私の真横まで来ていた。
「……会いたかった!!!」
私はがばっと抱きついた。私の妄想かもしれないと思っていた虎さんが実在していたことよりも、その極上の毛ざわりを味わいたかった。

考えてもみてほしい。
物心ついてからすぐに、ふわふわで暖かく、私がお腹でお昼ねできるくらいに大きくて、なおかつさわらせてくれるという天使の化身のような虎さんに会ってしまった。
私の中で猫=虎さんというイメージが定着してしまった。だから、町行く野良猫が触らせてくれないのもショックだったし、友達の飼っている猫様を触らせていただいたときも、嬉しかったけれどなぜか物足りなかった。だって、その子たちは虎さんではないから。年齢を重ねるにつれてどんどんあいまいになっていく記憶と感覚をなつかしみながらもどうしても忘れられなかった。私の至高の虎さん。

「ああ、最高。」
虎さんはいきなり私に抱きつかれたというのに、微動だにせずにしてくれている。調子にのって、頭をなでなでし、お腹のあたりにうずもれた。生きている毛皮布団。しかも獣くさくなくお日様の匂いがする。最高だ。夏しちょっと暑いような気もするけれど、蔵の中はいつでもひんやりしているからちょうどいいくらいだ。

「今までこれなくてごめんね。お父さんの転勤で遠くに引っ越したからこれなくなったの。次もいつこれるか分からないんだけどね。」
しっかりと抱きつきながらそういったとき、正確には『次もいつこれるかわからない』のときに、耳がピンとたった。
「耳……たった?」
ちょっといぶかしく思ったけれど、まさか私の言葉に反応したとも思えないので、そのまま、お腹にうずもれた。暖かいし、ふわふわもふもふで最高なので少しだけと思い目を閉じた。そうそう、おじいちゃんの家にくるまで、電車を2回乗りついて駅からバスで1時間ほどかけてきたのだ。電車の中でも寝ていたけれどやはり疲れはたまる。夕食時くらいには、虎さんは起こしてくれるだろう。前もそうだったのだし私は眠りの世界へと旅立った。

私は昔も今も虎さんのことを不思議に思わなかったし、だれにも言わなかった。

はっと眠りから覚めた。直前まで何か夢をみていたような気がするがおぼえてはいない。
寝ぼけたままの頭で、そういえば、蔵の中で虎さんにうずもれてねていたんだっけと思い出す。
いま何時くらいだろう。腕時計に目をやると4時になっていた。
おじいちゃんの家についたのが2時くらいで蔵にきたのが2時半くらい。1時間半はねていたんだ。

「あれ?」
気づいた。私は虎さんのお腹でねていない。なぜか、ベッドの上にいる。おじいちゃんの家は全部の部屋が畳だから当然、お布団だ。ってことはここは蔵でもおじいちゃんの家でもない。
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