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7話
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確かめたはいいけれど、虎さんを名乗る不思議な男の人に連れ去られてしまったもんな。これからどうしよう。ベッドの上でぼんやり思案にくれていた。
部屋中をきょろきょろと見渡し、みて回っただけでベッドから降りる気力もわかなかった。ベッドからおりてしまったらこれが現実だと認めてしまいそうで怖かった。
すると急に睡魔におそわれたのでそのまま目をつぶった。知らない場所で、知らない人しかいないところで眠るなんて無防備きわまりないけれど、投げやりだった。
「………」
どれくらい寝たのだろう。ふと、起きると私の隣には虎さんがいた。虎さんって全裸の変態なんだよなと思いつつも、逃げるなんてこともましてや離れるなんてこともしないまま、ぎゅうっと抱きついた。変態だろうがなんだろうが、虎さんには違いない。私が嫌がるから全裸の変態には戻らないだろうし。
しばらくすると、虎さんが起きたみたいでみじろぎしだした。と、思うと私の腕から抜けていった。そして後ろを振り返って私をじっとみて、鼻先でドアを押しあけそのまま部屋からでていった。
「あーあ。いっちゃった。」
虎さんのいたあとをさわるとまだほんのりとぬくもりが残っている。
コンコンとドアをノックされた。
「ご飯できたけど、食べる?」
虎さんと名乗った変態の声。
「ううん。いらない。」
そういえば、さっき晩御飯できたら呼ぶっていってたっけ。
こちらにきてからどれくらい時間がたったかわからないけれど、空腹はあまり感じないし何かを食べる気になれなかった。
「でもさ、一人で食べるのさみしいからいっしょにたべよう。」
「……一人で食べれば……」
「いこうよ。」
腕を優しくつかまれて軽くひっぱられた。抵抗はできるしすぐにふりほどける。
けれど、私は口では抵抗しながらもそのままひっぱっていかれた。
久しぶりにふれた人のぬくもりが暖かかったからだ。
ひっぱっていかれた先には、4人がけのテーブルがあった。その奥に台所があるらしく、
「どこでもいいから座ってて。」と言われ近くの椅子に腰かけた。
変態は奥に消えていった。
少しして、鍋を抱えて戻ってきた。
「シチュー、作ったんだ。お口にあうといいけど。」
そんなことをいいながら、お玉でシチューをすくい、お皿によそった。
お皿もお玉も木でできていた。お皿は木をくりぬいたようで、もつと軽いけれど、シチューの熱さを手に伝えないようになっている。
「ごめん、忘れてた。」
シチューを2人分よそって、さあ食べようとなったとき、変態はまた奥へと消えた。
パンののったお皿を2つ持ってきてくれた。
「これがないとね。」
「「いただきます。」」
2人で声をそろえた。
食欲なんてなかったはずだが、いいにおいのするおいしそうなシチューとそれにパンがあると食べないという選択肢がなくなった。
ほどよく煮こまれたお肉が口のなかでほろほろととろける。一緒に煮込まれたにんじんもじゃがいももほくほくしていておいしい。
おいしいものをたべている間は無言になる。
そのまま食べ続け、お互いがスプーンを奥まで無言だった。
私が綺麗に食べたのをみて変態はにっこりと笑った。
「「ごちそうさまでした。」」
変態は空になった食器をもって奥へと消えた。
『私も手伝う』なんて殊勝なことがいえればいいのだが、そんな気にはなれなかった。
「ねえ、由香子。本当に戻りたいの?」
くちくなったお腹を抱え、『歯磨いて寝たいな。』なんて考えていた私に降り注いできた問い。
私は深く考えずに答えてしまった。
「あんまり戻りたくない。」
「じゃあさ、僕のお嫁さんになろうよ。」
「はあ?何いってんの。会ったばっかりだし。そういえば、へんた……あなたの名前だって知らないんだよ。」
思っていたことをつい正直にいってしまいそうになる。虎さんが人間の姿になるとつい『変態』と呼びたくなってしまう。
「名前を言えば、お嫁さんになってくれるの?」
「ならない。自己紹介は人間関係の基本です。」
「ごめんごめん。そういえば名乗ってなかったね。僕の名前はルヒトだよ。」
それからルヒトはいろいろ話してくれた。
私の先祖がルヒトを助けたことで、ルヒトは私たちの一族を見守ってきたということを。
「たまに、世界が歪んでしまうことがあるんだ。違う世界に入り込んでそこの獣に襲われてね。そんなところを由香子のご先祖が助けてくれたんだ。だから僕は誓ったんだ。由香子の家を守るってね。」
「そうなんだ……。でも私がこっちにきたのも『世界が歪んだ』から?」
「そ、そうだよ。こちらの世界と君の世界はたまに歪むことがあってね。でも、帰ることは可能だから安心してね。」
「わかった。」
「僕は、由香子たちを守ると決めたときにね、いろいろ準備してたんだ。だから、由香子の世界のものもこっちにあるよ。お風呂とか。」
ルヒトは私の心を読んだのだろうか。お腹がくちくなってきたらなんとなくお風呂に入りたくなっていたのだ。
「きて、こっち。着替えもあるよ。」
「なんでそんなに準備がいいの……」
「前からいうでしょ?備えあれば憂いなしって。」
でも、ルヒトの一人暮らしなのに女物の着替え、それに下着まであるとは思わなかった。はいと手渡されて一瞬戸惑ったけれど、手渡された着替えは、袋にはいったままで開けられた形跡がなかったのでありがたく使わせてもらうことにした。
部屋中をきょろきょろと見渡し、みて回っただけでベッドから降りる気力もわかなかった。ベッドからおりてしまったらこれが現実だと認めてしまいそうで怖かった。
すると急に睡魔におそわれたのでそのまま目をつぶった。知らない場所で、知らない人しかいないところで眠るなんて無防備きわまりないけれど、投げやりだった。
「………」
どれくらい寝たのだろう。ふと、起きると私の隣には虎さんがいた。虎さんって全裸の変態なんだよなと思いつつも、逃げるなんてこともましてや離れるなんてこともしないまま、ぎゅうっと抱きついた。変態だろうがなんだろうが、虎さんには違いない。私が嫌がるから全裸の変態には戻らないだろうし。
しばらくすると、虎さんが起きたみたいでみじろぎしだした。と、思うと私の腕から抜けていった。そして後ろを振り返って私をじっとみて、鼻先でドアを押しあけそのまま部屋からでていった。
「あーあ。いっちゃった。」
虎さんのいたあとをさわるとまだほんのりとぬくもりが残っている。
コンコンとドアをノックされた。
「ご飯できたけど、食べる?」
虎さんと名乗った変態の声。
「ううん。いらない。」
そういえば、さっき晩御飯できたら呼ぶっていってたっけ。
こちらにきてからどれくらい時間がたったかわからないけれど、空腹はあまり感じないし何かを食べる気になれなかった。
「でもさ、一人で食べるのさみしいからいっしょにたべよう。」
「……一人で食べれば……」
「いこうよ。」
腕を優しくつかまれて軽くひっぱられた。抵抗はできるしすぐにふりほどける。
けれど、私は口では抵抗しながらもそのままひっぱっていかれた。
久しぶりにふれた人のぬくもりが暖かかったからだ。
ひっぱっていかれた先には、4人がけのテーブルがあった。その奥に台所があるらしく、
「どこでもいいから座ってて。」と言われ近くの椅子に腰かけた。
変態は奥に消えていった。
少しして、鍋を抱えて戻ってきた。
「シチュー、作ったんだ。お口にあうといいけど。」
そんなことをいいながら、お玉でシチューをすくい、お皿によそった。
お皿もお玉も木でできていた。お皿は木をくりぬいたようで、もつと軽いけれど、シチューの熱さを手に伝えないようになっている。
「ごめん、忘れてた。」
シチューを2人分よそって、さあ食べようとなったとき、変態はまた奥へと消えた。
パンののったお皿を2つ持ってきてくれた。
「これがないとね。」
「「いただきます。」」
2人で声をそろえた。
食欲なんてなかったはずだが、いいにおいのするおいしそうなシチューとそれにパンがあると食べないという選択肢がなくなった。
ほどよく煮こまれたお肉が口のなかでほろほろととろける。一緒に煮込まれたにんじんもじゃがいももほくほくしていておいしい。
おいしいものをたべている間は無言になる。
そのまま食べ続け、お互いがスプーンを奥まで無言だった。
私が綺麗に食べたのをみて変態はにっこりと笑った。
「「ごちそうさまでした。」」
変態は空になった食器をもって奥へと消えた。
『私も手伝う』なんて殊勝なことがいえればいいのだが、そんな気にはなれなかった。
「ねえ、由香子。本当に戻りたいの?」
くちくなったお腹を抱え、『歯磨いて寝たいな。』なんて考えていた私に降り注いできた問い。
私は深く考えずに答えてしまった。
「あんまり戻りたくない。」
「じゃあさ、僕のお嫁さんになろうよ。」
「はあ?何いってんの。会ったばっかりだし。そういえば、へんた……あなたの名前だって知らないんだよ。」
思っていたことをつい正直にいってしまいそうになる。虎さんが人間の姿になるとつい『変態』と呼びたくなってしまう。
「名前を言えば、お嫁さんになってくれるの?」
「ならない。自己紹介は人間関係の基本です。」
「ごめんごめん。そういえば名乗ってなかったね。僕の名前はルヒトだよ。」
それからルヒトはいろいろ話してくれた。
私の先祖がルヒトを助けたことで、ルヒトは私たちの一族を見守ってきたということを。
「たまに、世界が歪んでしまうことがあるんだ。違う世界に入り込んでそこの獣に襲われてね。そんなところを由香子のご先祖が助けてくれたんだ。だから僕は誓ったんだ。由香子の家を守るってね。」
「そうなんだ……。でも私がこっちにきたのも『世界が歪んだ』から?」
「そ、そうだよ。こちらの世界と君の世界はたまに歪むことがあってね。でも、帰ることは可能だから安心してね。」
「わかった。」
「僕は、由香子たちを守ると決めたときにね、いろいろ準備してたんだ。だから、由香子の世界のものもこっちにあるよ。お風呂とか。」
ルヒトは私の心を読んだのだろうか。お腹がくちくなってきたらなんとなくお風呂に入りたくなっていたのだ。
「きて、こっち。着替えもあるよ。」
「なんでそんなに準備がいいの……」
「前からいうでしょ?備えあれば憂いなしって。」
でも、ルヒトの一人暮らしなのに女物の着替え、それに下着まであるとは思わなかった。はいと手渡されて一瞬戸惑ったけれど、手渡された着替えは、袋にはいったままで開けられた形跡がなかったのでありがたく使わせてもらうことにした。
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