猫だと思ったらトラでした。

だいたい石田

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8話

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「わあああ!!!」
思わず歓声をあげた。
脱衣所で着替えて、そのままお風呂へと向かったのだが、そこにあったのは露天風呂。香りのよい檜の浴槽と、満点の星空が私を迎えてくれた。
星空をみて気付く。今は夜なんだと。時計なんてもっていないし、ルヒトの家にもなかったから時間の感覚があまりなかった。腕時計なんてものはしていなかったし、スマホだって、近くの蔵にいくのだからと持っていなかった。そういえば、ルヒトだって『晩御飯つくる』っていってたしな。

とりあえずは、身体を洗ってから。ボディシャンプーはと探すと、見慣れた容器が。
「ここほんとに異世界?」
なぜか家でつかっているのと同じ、弱酸性をうたうメーカーのものがあった。
その横には、オレンジ色の容器に入ったシャンプーとリンス。これも家でつかってるやつだ。
もちろん、洗顔剤も。
たまたまなのか、それとも……とは思ったが深くは考えないようにしようと思った。有名なメーカーばかりだしたまたまそろっただけ。異世界?らしいこちらに同じものがあるのも気にしない。というか、ルヒトが異世界っていっただけでここは異世界じゃないのかもしれないし。それじゃあただの誘拐になるけど……
「まあ、なるようになるでしょう。」
身体を洗って髪を洗って。家で使っているものと同じ香りに安心しながら、そのままの流れで広い湯船につかる。
いくら一人だからとはいえ、泳ごうとは思わないしけれど、泳げるくらいに広い湯船。
……そういえば私泳げないんだった。
バカなことを考えつつ、ほうと一息ついて、満点の星空を見上げる。
季節は夏だから、同じ星座が見えるのかななんて思った。とはいえ、夏の大三角形とさそり座くらいしかわからないけど。
けれど、どちらも見つけることはできなかった。こと座のベガ ・ わし座のアルタイル ・ はくちょう座のデネブどれも見つけきれない。星の並びが違うような気すらしてきた。
「怖い。やっぱりここって。」
ふるふると頭をふってそのまま、ざばっと湯船にあごまでつかる。
じんわりとした温かさが全身にしみこんできて気持ちいい。それに、家では到底味わえない、檜の浴槽の香りだって最高だ。
そのまま湯船につかっていると、あれだけ寝たはずなのに睡魔がしのびよってきた。家だと、だめだと思いつつもついついそのまま寝てしまうからそのまま眠気に身をまかせた。
家では、お湯の温度がさがってプールくらいの水温になるから目覚めるのだ。ここではそれがないということに気付いていなかった。




「由香子!!!由香子!!!!!」
気持ちよく寝ていたはずなのに、だれかに呼びかけられる。あまり聞き覚えのないこの声はルヒトだ。

「……」
なに、といおうとしたのに声がでない。なぜか頭がくらくらする。
「何もいわなくていいからこれを飲んで。」
口元にコップを押しあてられて常温の水が少し流れ込んでくる。のど元にながれこむまま、嚥下すると少しはめまいが治まった気がした。
そういえば私は湯船につかってたんじゃなかったっけ?なんでここに……。
天井をみただけでわかる。ここはわたしが最初にいた部屋のベッドの上。
「お風呂で寝ちゃだめだよ。ほら、もう少し、ううん、コップ1杯のんで。」
言われるがままに、こくこくと水を飲み干す。常温のそれはのどをするすると通り過ぎていく。身体から抜けていった水分を戻すために。

「私……お風呂に……」
「いつまでたっても出てこないし、呼びかけてもなんの反応もないから。見てみたら、浴槽で真っ赤になってたよ。」
「……っっみたの?」
助けられた感謝よりも出てきたのは裸をみられたことの羞恥と抵抗感。
「身体ふいて服着せるのに目をつぶってはできないよ。なるべくみないようにはしたけど……」
言われて気付く。たしかに服は着せられている。いつのまにか、水色と白ストライプのパジャマみたいなのを着ている。けれど、胸元はスースーしている。ブラはつけてない。パンツははいているみたいだ。さわってもしくはみて確認なんてできないけれど、感触でわかる。

「みたんだ……」
「不可抗力だし。あのままだったら、由香子は脱水症状で危なかったよ。はい、またお水のんで。」
また水を飲ませられて気付く。しょっぱい。塩を混ぜてくれているみたいだ。
「もう大丈夫だから……」
「そう?でも心配だから僕も一緒に寝るから。その前にお風呂入ってくる。」
なんだか爆弾発言をされた気がする。
「ちょっと……」
意図を聞く前にルヒトは浴槽へと向かっていってしまった。
私は茫然とその背中を見送った。
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