不遇弓使いの英雄譚ー無敵スキル『絶対反転』を得て救世主となる

たからかた

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三章

新天地トゥンカル・ミズ国

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俺たちは、気がつくとトゥンカル・ミズ国の国境付近へと来ていた。

「ありがたいことだな。強引だけど」

国境は高い塀で囲まれていて、時々襲ってくる魔族を大砲で撃ち払っている。

「特殊な呪が刻まれた、砲弾のようじゃな。各街の塀の壁の中に砲台があるのじゃ。これで外からの侵入を防ぐ」

と、魔道士ティトが説明してくれた。どこの国も、こうやって魔族から自国を防衛しているのが普通だ。

「中に侵入されたら、どうするんだろうな」

俺が質問すると、聖騎士ギルバートが砲台を見て、首を傾げた。

「多分……壁の厚さから見るに、内側に向けて設置された大砲もあると思う。滅多にないだろうけど」

なるほどな。しかし、下手をすると中の住民も巻き添えを食う。余程の時だけ、使うんだろうな。

さあ、トゥンカル・ミズ国へと入ろう。

みんなで入国管理事務所に入ると、呼ばれるまで待合室で待つようにと、小さな部屋に通された。

「何やら今日は人が多いらしい。今後のことも含めて、話をしようか」

ケルヴィン殿下は、身分証明書を取り出して、いつでも出せるように準備していた。

「まさか、偽造してる……とか?」

俺が聞くと、聖騎士ギルバートは、刷毛で毛艶を整えながら頷いた。

「もちろん。こういう時のために、スペシャリストに頼んでちゃーんと作ってるんだよ。ボクたちは、買い付けにきた商人とその護衛」

「聖騎士の格好で?」

「あ、美しすぎてかえってだめかな? 大丈夫、魔導士ティトの幻術で、それなりに傭兵に見えてるはずだから」

壁にかけられた鏡に映る彼の姿は、確かに半人半馬の普通の鎧を着た傭兵になっていた。

なるほどな。
こう見えるのか。

さて、俺もこの仲間たちの一員として、生死を共にするんだ。

ちゃんとご挨拶しておこう。

「みんな、これから、よろしくお願いします」

俺は改めて、みんなに頭を下げた。
ケルヴィン殿下たちは、ニコニコと笑って喜んでくれる。

「考え直してくれて、嬉しいよ」

「はい、フィオのおかげです」

そう、フィオが呼んでくれたから。
行かなきゃ、と、決心できた。

フィオは急に言われて、顔を真っ赤にしていたけれど、尻尾がゆっくり左右に振れだした。

耳をペタンと垂らして、上目遣いで俺を見ると、

「その顔、ズルい……」

と、言って俯いてしまう。
何がズルいのかわからないけど、可愛いな。
彼女の仕草は愛らしい。

「それで、みんなを仲間だと思うから、ちゃんと言っておきたいことがある。俺が、なぜこの力を得たのか。なぜみんなのところへ行けたのか」

俺は、これまでの経緯を話した。
わかってくれる人たちだと、思ったから。

話を聞き終えたみんなは、目を丸くして驚いている。

「そんなことがあったのか。いや、ネプォン義兄上ならやりかねないな。なあ、ギルバート」

「なんて奴らだ。胸糞悪いですね、ケルヴィン殿下」

「シ、シャーリー様がそんな……!」

「いや、ワシはかえって得心したぞよ。それに、自分からちゃんと明かしてくれるとはな。じゃが、読めぬのはイルハートじゃな」

みんな、それぞれ感想を言っていた。
特に魔導士ティトは、険しい顔になる。 

確かに、イルハートの本心はわからないから、不安要素なんだよな。

「イルハートは、立ち回りの上手い女でな。ネプォン王と必ずしも、一枚岩ではない。アーチロビンに手を貸したということは、今後使える駒として目をつけた証拠じゃ」

彼女はそう言って、俺の前に片手を翳した。
な、何?

「古から続く契約に従い、我の前にその正体を現せ、ロッブド・ルフ・セピス」

詠唱が終わると、俺のブレスレットに怪しげな紋章が浮き上がる。

「なんだこれ!?」

「やはりな。追跡するための枝をつけていたようじゃな」

「枝……」

「あの女狐に、手を握られたじゃろ?」

「あ……」

「その時につけられたのじゃ。色香に惑ったか? アーチロビン。あの女はそうやって男を惑わし、己の都合よく使おうとするぞ」

魔導士ティトは、俺のブレスレットに手を重ねて、もう一度詠唱した。

「この者を解き放て、ルペスリーリス!」

ブレスレットから紋章が消える。
イルハートめ、やっぱり油断ならない相手だ。

妖艶な美女だから、ドキドキするのは仕方ないけど、都合よく使われるのは頭にくる。

「大魔導士イルハートか。臣下の連中のほとんどが、彼女に夢中だよ。ヤケドしてもいいから付き合いたい、てね」

ケルヴィン殿下が、ため息をついた。
まぁ、スタイルがいい美人だからな。

「あー、でもわからなくはないかな。後ろ姿の腰つきの、悩ましさときたら」

聖騎士ギルバートが、腕を組んでうんうんと頷く。

「体にぴったりフィットしたドレスも、スリットの深い切れ込みから見える足も、たまらないよな」

ケルヴィン殿下も、思い出すように目を閉じて語りだす。

「まぁ、確かに胸は大きいし、いつも胸元の開いた格好してるから、自然と目がいきますよね」

俺も思わず、彼女の容姿を思い浮かべる。男性三人で顔を見合わせ、

「いいよなぁ」

と、言ってしまった。

男のサガというか……イルハートがどうというより、単純にあの容姿は目を引くのだ。

ただ、それだけなんだけど。

「こんの、馬鹿どもが!! 疾く行きて、雷を招かん、ラサンダイト!」

魔導士ティトが、俺たちの頭に小さな雷を落とす。

「いた!」
「いて!」
「いったぁ!!」

「お前たち、既に奴の術中にハマっているではないか! 特に殿下! お目を覚ますのじゃ!!」

「す、すまん、ティト」

ケルヴィン殿下が、平謝りをしている隣で、フィオがプイッとそっぽを向いた。

「いやらしい! なんて人たち!!」

「す、すみません」

俺たち三人は、女性陣に頭を下げて反省する。
何やってんだか、俺たち。

痛む頭を撫でていると、コンコン、とノックの音がして、順番が回ってきたと言われた。

俺たちは、テキパキと入国手続きを済ませる。

トゥンカル・ミズ国は初めてだ。

先ずは情報収集だな。

俺たちは宿屋を取って荷物を置くと、街へ繰り出した。


~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

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※この物語はフィクションです。表現や人物、団体、学説などは作者の創作によるものです。
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