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ヒロインにもご協力いただきます!
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「これからどうしますか?」
シャーリーンが、こちらを見つめて尋ねてくる。
「今、わかっていることは、真の黒幕に繋がるのはライオネルだということ。
そして、ケルフェネス王子のところに届いた毒入りのワインは、左大臣の領地にあるワイン農家のものであるということ。」
そう、この二つ。
ライオネルが、左大臣の元従者だと言うことを考えれば、左大臣が一番きな臭い。
本来のストーリーでも、左大臣は毒入りのワインを飲んでも死んではいない。
どんなシーンだったっけ。
確かあれはヒロインが、終盤しつこくつきまとう左大臣に、はっきりとお断りを突きつけるシーンだった。
あなたのためなら、何でもしようと言う左大臣にヒロインが、
「お断りします。」
と、言う。
そこで、左大臣はレモニーから贈られたワインをグラスに注いで、
「この、悪女から贈られたワインには、毒が入っているかもしれませぬぞえ。
まろがそなたのために、毒味をしてしんぜましょ。
それでまろの愛を信じてたもれ。」
と、言うの。
左大臣は、もちろん飲み干して、そして倒れた。
ヒロインは王子を呼び、ワインを贈ったレモニーが糾弾されて、刑に処される。
娘がしたことの責任を取って、右大臣であるレモニーの父親は失脚。
左大臣は、瀕死のまま。
邪魔者はいなくなり、ヒロインは王子と結婚して、おしまい。
考えてみると、ヒロインにとって障害となるものを、左大臣が除いたように見えるわ。
これだけヒロインに尽くして、万が一回復したら、見返りを求めるのではないの?
・・・、そこは、ゲームかしら。
でも・・・。
幸せなヒロインたちの結婚式のラストシーンで、画面が一瞬変わって、左大臣の指がピクリと動くところが挿入されるのよね。
私はシャーリーンを見つめた。
「左大臣が怪しいわ。」
「ライオネルの元主人ですしね。」
「でも、証拠がない。
その毒入りワインは、もうないんでしょ?」
「証拠として、ケルフェネス王子が、保管してらっしゃいます。」
「シャーリーン、あなた、ワインのラベルは私たちの贈呈用のワインと同じだけれど、中身が違うと言ったわね?」
「はい。」
「なぜ、中身がわかったの?」
「香です。」
「香ですって?」
「一度開けて、臭いを嗅いだんです。」
「証拠は、厳重に保管されてたでしょうに、どうやって?」
「今、彼らは私たちを探し回るために、ほとんど出払っているんですよ。
証拠のワインのそばにいるのは、少数の護衛だけ。
労いの言葉をかけて、ことの顛末を聞き出し、隙を見てワインを確認して香りを嗅いだ。
造作も、ございません。」
「すごいわ。」
「光栄です。
でも、左大臣の領地の農家のワイン、というだけでは証拠になりません。
私たちが、持ってきたワインと違うこと、このワイン届けた犯人が誰かということがわからなければ。」
そう。
それが出来なければ、結末が変わらない。
「届けたのは誰かしら。」
「ダニーという、この城の侍従だそうです。
レモニー様からだと言われたと。」
「その侍従にも会う必要があるわね。」
「変装しましょう、レモニー様。」
私はふと、逃げ込んだこの部屋をよく見た。
あ!ここは、ヒロイン付きの侍女クリスタの部屋。
確か、身内の不幸で、しばらく帰ってこないんだったわね。
うまいところに、隠れてたんだ。
「クローゼットに、侍女の服があるわ。
着替えましょう。
それから、まずはヒロイ・・・いえ、ライカ様と話をつける必要があるわ。」
「そうですね。
私たちが持ち込んだ贈呈用のワインも、ティモシー王子の部屋にありますし。
あれも立派な証拠です。」
私たちはいそいそと着替えて、髪型を少し変えると、ティモシー王子たちの部屋へと向かった。
廊下を歩くときは少し緊張したけど、意外と気づかれない。
ティモシー王子の部屋にノックをして入ると、いつものティモシー専用のBGMが流れている。
部屋に入った途端、ライカ・・・すなわちプレイヤーが突進してきた。
「あぁ!
あなた・・・侍女じゃないわね?
レモニー!
どこに行ってたの!?
話が全然進まなくなったの。
ティモシーは、同じセリフばかり繰り返して!
私も、部屋から出れなくなってしまったのよ!!」
肩を掴まれて、ガクガクと揺さぶられる。
「ご、ごめんなさい。
ライカ様。
お話があります。」
「なに!?
また、悪役は嫌だとかいうの!?」
「いや・・・あの。
これは、あなたにも知っていてもらいたくて・・・。」
私が言うと、彼女が瞬きをする。
「私は、あなたと同じ、といえばわかります?」
「・・・、まさか・・・。
プレイヤーなの?」
「ええ。
魂ごと、この体に入りました。
あなたは?」
「私は違うわ。
VRゴーグルをつけて、今ここに来てる。
え、つまりあなたは、私がプレイするこのゲームの中に転生してきてるの?」
「そうなりますね。
あの・・・、実はご相談が・・・。」
私はかいつまんで説明する。
「そんな話聞いたことないわよ。
公式設定にもないし。」
「そ、そうなんですけど、毒入りワインは結局真相が不明なままでしょ。」
「ネットでそう言う議論はあったけど、裏シナリオが存在するなら、もう誰か攻略してネタバレをしてもおかしくないでしょ?」
「いいえ。
レモニーは、悪役令嬢の中でも、一番嫌われたキャラクターです。
わざわざ、裏シナリオを探りたいとも、思われない。」
「それはそれだけの・・・。」
「性格の悪さですよね。
でも、これはどうやらそうなるように、誰かが意図的に動いて、悪女になるよう仕立てているようなんです。」
「な、何のために。」
「これは、私の予想なんですけど・・・。
ヒロイン、つまりあなたを、手に入れるためではないかと。」
シャーリーンが、こちらを見つめて尋ねてくる。
「今、わかっていることは、真の黒幕に繋がるのはライオネルだということ。
そして、ケルフェネス王子のところに届いた毒入りのワインは、左大臣の領地にあるワイン農家のものであるということ。」
そう、この二つ。
ライオネルが、左大臣の元従者だと言うことを考えれば、左大臣が一番きな臭い。
本来のストーリーでも、左大臣は毒入りのワインを飲んでも死んではいない。
どんなシーンだったっけ。
確かあれはヒロインが、終盤しつこくつきまとう左大臣に、はっきりとお断りを突きつけるシーンだった。
あなたのためなら、何でもしようと言う左大臣にヒロインが、
「お断りします。」
と、言う。
そこで、左大臣はレモニーから贈られたワインをグラスに注いで、
「この、悪女から贈られたワインには、毒が入っているかもしれませぬぞえ。
まろがそなたのために、毒味をしてしんぜましょ。
それでまろの愛を信じてたもれ。」
と、言うの。
左大臣は、もちろん飲み干して、そして倒れた。
ヒロインは王子を呼び、ワインを贈ったレモニーが糾弾されて、刑に処される。
娘がしたことの責任を取って、右大臣であるレモニーの父親は失脚。
左大臣は、瀕死のまま。
邪魔者はいなくなり、ヒロインは王子と結婚して、おしまい。
考えてみると、ヒロインにとって障害となるものを、左大臣が除いたように見えるわ。
これだけヒロインに尽くして、万が一回復したら、見返りを求めるのではないの?
・・・、そこは、ゲームかしら。
でも・・・。
幸せなヒロインたちの結婚式のラストシーンで、画面が一瞬変わって、左大臣の指がピクリと動くところが挿入されるのよね。
私はシャーリーンを見つめた。
「左大臣が怪しいわ。」
「ライオネルの元主人ですしね。」
「でも、証拠がない。
その毒入りワインは、もうないんでしょ?」
「証拠として、ケルフェネス王子が、保管してらっしゃいます。」
「シャーリーン、あなた、ワインのラベルは私たちの贈呈用のワインと同じだけれど、中身が違うと言ったわね?」
「はい。」
「なぜ、中身がわかったの?」
「香です。」
「香ですって?」
「一度開けて、臭いを嗅いだんです。」
「証拠は、厳重に保管されてたでしょうに、どうやって?」
「今、彼らは私たちを探し回るために、ほとんど出払っているんですよ。
証拠のワインのそばにいるのは、少数の護衛だけ。
労いの言葉をかけて、ことの顛末を聞き出し、隙を見てワインを確認して香りを嗅いだ。
造作も、ございません。」
「すごいわ。」
「光栄です。
でも、左大臣の領地の農家のワイン、というだけでは証拠になりません。
私たちが、持ってきたワインと違うこと、このワイン届けた犯人が誰かということがわからなければ。」
そう。
それが出来なければ、結末が変わらない。
「届けたのは誰かしら。」
「ダニーという、この城の侍従だそうです。
レモニー様からだと言われたと。」
「その侍従にも会う必要があるわね。」
「変装しましょう、レモニー様。」
私はふと、逃げ込んだこの部屋をよく見た。
あ!ここは、ヒロイン付きの侍女クリスタの部屋。
確か、身内の不幸で、しばらく帰ってこないんだったわね。
うまいところに、隠れてたんだ。
「クローゼットに、侍女の服があるわ。
着替えましょう。
それから、まずはヒロイ・・・いえ、ライカ様と話をつける必要があるわ。」
「そうですね。
私たちが持ち込んだ贈呈用のワインも、ティモシー王子の部屋にありますし。
あれも立派な証拠です。」
私たちはいそいそと着替えて、髪型を少し変えると、ティモシー王子たちの部屋へと向かった。
廊下を歩くときは少し緊張したけど、意外と気づかれない。
ティモシー王子の部屋にノックをして入ると、いつものティモシー専用のBGMが流れている。
部屋に入った途端、ライカ・・・すなわちプレイヤーが突進してきた。
「あぁ!
あなた・・・侍女じゃないわね?
レモニー!
どこに行ってたの!?
話が全然進まなくなったの。
ティモシーは、同じセリフばかり繰り返して!
私も、部屋から出れなくなってしまったのよ!!」
肩を掴まれて、ガクガクと揺さぶられる。
「ご、ごめんなさい。
ライカ様。
お話があります。」
「なに!?
また、悪役は嫌だとかいうの!?」
「いや・・・あの。
これは、あなたにも知っていてもらいたくて・・・。」
私が言うと、彼女が瞬きをする。
「私は、あなたと同じ、といえばわかります?」
「・・・、まさか・・・。
プレイヤーなの?」
「ええ。
魂ごと、この体に入りました。
あなたは?」
「私は違うわ。
VRゴーグルをつけて、今ここに来てる。
え、つまりあなたは、私がプレイするこのゲームの中に転生してきてるの?」
「そうなりますね。
あの・・・、実はご相談が・・・。」
私はかいつまんで説明する。
「そんな話聞いたことないわよ。
公式設定にもないし。」
「そ、そうなんですけど、毒入りワインは結局真相が不明なままでしょ。」
「ネットでそう言う議論はあったけど、裏シナリオが存在するなら、もう誰か攻略してネタバレをしてもおかしくないでしょ?」
「いいえ。
レモニーは、悪役令嬢の中でも、一番嫌われたキャラクターです。
わざわざ、裏シナリオを探りたいとも、思われない。」
「それはそれだけの・・・。」
「性格の悪さですよね。
でも、これはどうやらそうなるように、誰かが意図的に動いて、悪女になるよう仕立てているようなんです。」
「な、何のために。」
「これは、私の予想なんですけど・・・。
ヒロイン、つまりあなたを、手に入れるためではないかと。」
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