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番外編 ライオネル視点(本編)

失いたくない命

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ミア第二王妃は、権力を望み、そのために全てを仕組んだことを認めた。

内乱によってその座を追われたけれど、玉座に座る心地よさを取り戻したかったのそうだ。

「弱者は従うだけでいい。
上に座るものの意思を、実現するために下がいる。」

これが彼女の本音。

彼女が摂政時代の治世は荒れており、決して国の運営が上手い方ではなかった。

それが民草のせいだと言い切るところが、彼女はダメだ。

そこをなんとかするために、人を集め知恵を集めて、やっていかなくてはならないのに。

それができないならその座を降りて、できるものに任せなくてはいけない。

命令するだけで全てのことが成ると言わんばかりの彼女は、執政に向かない。
王が民の使いっ走りだという話に、彼女は鼻で笑って小馬鹿にしていたが、今の王は真面目な顔をして頷いていた。

「その通りだ。
その一生を民の使いっ走りとして、あらゆる権力を行使する。」

・・・そうだよな。
王は権力は大きいが、好き勝手にできるものでもない。

というか、ミア第二王妃、あんた摂政時代に好き勝手していて内乱を起こされてその座を追われたよな?


「・・・先の王の子供たちを全滅させ、今また私の子供たちを殺し、権力を得ようとしたミア第二王妃。
レモニーではなくお前を刑に処さねばならん。」

と言って、王はいよいよ腹を決めたようだ。

だが、ここで折れるミア第二王妃ではなかった。

「先の王は私の言いなりにできたが、お前は私に溺れることはなかった。
手玉にとれなくて残念だ。」

と言うと、何かを取り出して床に投げつけた。

ものすごい煙があがり、すぐ隣さえもたちまち見えなくなる。

俺はレモニーの手を握ろうとして、手を伸ばすが、彼女がいない!

「だ、誰か!!
ライオネル!!
シャーリーン!!」

遠くに彼女の叫び声が聞こえる。

しまった!!
またイベントだ!
彼女が捕まって連れ出されるシーンなのだろう。

でなければすぐ隣の彼女が、こうも容易たやすく連れ去られたりなどしない。

くそ!!

濃い煙が充満する中、俺は慌てて出口を探す。

嫌な予感がする。

おそらく連れて行ったのは、ミア第二王妃だ。

彼女がレモニーをどうするのか・・・。

まさか・・・まさか!!
レモニカみたいに!?

俺は混乱する謁見の間の中を、縫うように走り出る。

心臓がバクバク鳴っている。
俺の中のライオネラまで不安になっているのだ。

ようやく外に出ると、外にまで煙が立ち込めていた。

これでは方向がわからない!

そこへ、

「レモニカを殺したくせに!
許さない!!」

と、叫ぶレモニーの声がする。

声の方向を見定めて、そちらに向かって走る。

煙が晴れてきて、周囲の様子が見え始めた時、黒い煙が立ち上るのが見えた。

全身が冷水を浴びたように硬直する。

あれは・・・あの光景は!!!

それはライオネラが、かつてレモニカを失ったときに見た煙。

このゲームの世界で見たのか、それとも現実の方の記憶なのか、凄惨な場面が脳裏に蘇る。

恐怖で体が重くなった。

くそっ・・・!!
動け!!!

止まりかける足を必死に動かして、煙の立つ方へと足を進める。

レモニーは生きてる・・・!
助けないと!!

約束した!!
そばにいると!!

俺は息を吸って、大きな声で叫ぶ。

「レモニー!!!」

すると、急に足が動くようになってきた。

ライオネラ・・・?
まさか!?

俺はさらに加速して、黒い煙をあげる場所へと辿り着く。

火刑用の処刑台・・・!!

いつの間にこんなものが。

俺は燃え上がる火刑台の中に飛び込もうとして、地面を這うように進む、レモニーを見つけた。

「レモニー!」

名前を呼んで彼女を抱え上げる。

そこへシャーリーンも走ってきた。

「レモニー様!!」

とりあえずレモニーを煙も火の粉も届かない場所まで運んで、顔を覗き込む。

レモニーはぐったりしていて、人形のように動かない。
その手には、王宮の中庭で手に入れたレマニカルが握られていた。

「レモニー?
レモニー?」

目を開けない。

慌てて胸に耳を当てるが、ほとんど聞こえない。

シャーリーンがプルプルと震え出した。

「レモニー様・・・いや!
嫌です!
目を開けてください!
私・・・私は、どこまでもお供すると言ったじゃないですか!!
置いていかないで!」

と、シャーリーンが悲痛な声を漏らす。

俺はレモニーを下に寝かせると、人工呼吸と心臓マッサージをした。

さっきまで動いていたんだ!

ついさっきまで、道を這っていたのだから、生きてるはずなんだ!!

何度も何度も、蘇生するよう人工呼吸と心臓マッサージを繰り返す。

「目を覚ましてくれ、レモニー!!」

俺も叫ぶ。

失いたくない!

やっとずっと一緒にいられるんだ!

ここまできて・・・!!

・・・どれくらいそうしていただろうか。

レモニーは目を開けない。

俺は彼女を抱きしめた。

「目を開けてくれ・・・。
戻ってきてくれ・・・。」

かつてライオネラがレモニカの亡骸を抱いて、慟哭どうこくしていたように、今度は俺が同じようなことをしている。

なぜだ・・・。
なぜいつも、もぎ取られるように、彼女を失うんだよ。
今度はそばにいたのに・・・。
すぐ隣にいたのに・・・!

レモニー、また俺は間違えたのか?

助けようとして、かえって悪くしてしまったのか?

なら、レモニー・・・このまま俺も一緒に・・・。

その時だ。

「う・・・。」

レモニーが、声を上げた。

そして、うっすら目を開き瞬きをする。

・・・生きてる!!!

俺は思わず抱きしめる。

「よかった・・・。
また、失ったかと・・・。」

と、俺は言った。
安堵が押し寄せてくる。

「うわーん!
レモニー様!
レモニー様がいなかったら、私生きていけません!!」

と、シャーリーンも大泣きしている。

「ごめん・・・ね。
心配かけて・・・ごめん・・・なさい。」

と、レモニーが言った。





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