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後編
彼の元恋人まで来るなんて
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声がした方を見ると、上座の王よりも一段高いところに座る高齢の女性が、杖を床にガツーン!!と打ちつける。
あ、この人は・・・。
ファイアストム国の王と王妃が、その人の方を向いて、
「ヴィノガン叔母上、アイスローズ妃は皇太子妃としての修行を、きちんと終えたのですよ。」
「そうでございます。
披露宴が終わるや否や二人を引き離してまで、無体なことを強いたのです。
何故ご反対されるのですか?」
と、尋ねた。
杖をついたヴィノガン様は椅子から立ち上がり、後ろに設置された寝台に横たわる女性に、ヒソヒソと耳打ちしている。
すると、寝台に横たわる女性はヴィノガン様に、なにやらモゴモゴと伝えていた。
「ヴィノガン叔母上様。
母上・・・いや、王太后様はなんと?」
と、お義父様・・・いえ、ファイアストム国王が聞くと、
「まだアイスローズ妃は、王族の登竜門『火の試練』を受けておらぬ・・・と、おっしゃってます。」
と、ヴィノガン様は答えた。
そんな・・・『火の試練』は、ファイアストム国の王族が成人、もしくは婚姻後に受ける最終試練。
私は氷の魔法しか使えない。
私たち氷の民にとって火の魔法は、魔力の属性が反対なので、無理に使うと拒絶反応を起こして体を壊してしまう。
ファイ様は私を抱きしめたまま、
「アイスリーは、火の魔力を持ちません。
だから、最初から火の試練は免除するという、約束だったはずです!」
と、叫ぶ。
ヴィノガン様は、フンと鼻を鳴らして、
「建前はそうでも、実際は違う。
火の魔力を従えずして、何が皇太子妃か。
だから、最初からこのレドリシアを皇太子妃にすればよかったのです。」
と、言いながら顎をしゃくる。
その時、私と同じ香水の『日向のスウィートオレンジ』の香りがしてきた。
振り向くとそこに一人の女性が立っている。
「はじめまして、アイスリー様。
ファイアストム国司法長官バドリック・モエン公爵の娘、レドリシアと、申します。
父は今丁度病気療養中でして、私一人でご挨拶に伺いました。」
と、彼女は言った。
勉強したから、モエン公爵のことは知ってる。
法律の道に明るい方で、とても几帳面な性格だとか。
その一人娘、レドリシア・モエン。
法の抜け道に詳しくて、あまりいい噂を聞かない人。
最近、風の国ウィンディ国から帰国したと聞いていたけど。
目の前の目鼻立ちのはっきりした美しい彼女は、赤毛が多いファイアストム国の中で、珍しく色素の薄い髪の色をしている。
薄く青みがかった、純白の私の髪の色に、よく似ていた。
身長も同じくらい。
後ろから見たら、そっくりかもしれない。
美人で自信と色気に溢れて、誰よりも目立つことを自覚している、そんな女性。
胸もすごく大きい。・・・重そう。
・・・あぁ・・・まだ苦手、こういう人。
思わず自分の容姿を確認して、ミユキの方をチラリと見た。
ミユキは離れた所から口をパクパクさせて、
『気持ちで押し負けては、いけません。』
と、言ってる。
私の足元に降りたダイヤモンドダストも、ミュウ、と鳴いて顔を擦り寄せて応援していた。
そう、そうよ。
ま、負けないんだから!
ファイ様が私から腕を解くと、私を庇うように彼女の前に立つ。
「『アイスローズ皇太子妃殿下』と呼べ。不敬だぞ。大体お前がここにいるのはなぜた?」
彼のそんな言葉に、彼女は艶然として見つめ返す。
「ファイバーン皇太子殿下、そう怒らないでください。今日はご挨拶と自己紹介に来たのです。私は、あなたの恋人だったではないですか。」
「!!」
・・・彼女が!?
ホムラが、ファイ様は以前に私と似ている人と、付き合っていたと言った。
でも、まさかその人とご対面するなんて。
私はかつて従姉妹のスノウティに、初恋の人をとられた経験がある。
その時の胸の痛みを思い出して、思わず片手で胸元を握りしめた。
「昔の話だ。
今はここにいるアイスリーが、私の全てだ。」
ファイ様は、毅然としてる。
少し安心。
「殿下、私は今でも、あの時と気持ちは変わりません。
それに、この婚姻は所詮は大国同士の和睦という名の政略結婚・・・。」
レドリシアは、色っぽくファイ様の胸にしなだれかかろうと近づいてきたので、彼がさっと体をよける。
でも、彼女は計算通りといった感じで、私の前に進み出ると、私と目線を合わせて急に声が低くなった。
「本来の皇太子妃は私だったのに、政とは本当に残酷ですわ。」
そして私ににっこり笑いかける。
・・・目が笑ってないのが怖い。
「黙れ。お前に何もいう資格はない。
アイスリーは私の最愛の女性だ。」
と、ファイ様が私の肩を抱いて言うと、また、ヴィノガン様が杖をガツンと鳴らした。
「この結婚は、脆いものだ。」
その言葉に、レドリシア以外の全員が驚いて注目した。
ヴィノガン様は満足そうに皆を見回して、
「婚姻の承認は、王太后様の息のかかった大神官がおこなっている。
つまり、王太后様がその気になれば、いつでも白紙に戻せるのだ。」
と、言い放った。
「今更!?
今回の婚儀は和平の象徴として、世界中に知られております。
それを王太后様の命令で勝手にするなど!!」
「ブリザードゥ国も黙っていませんよ!
そんなことをしたら、この国は他国の信用を失います!」
「大体・・・そうなら何のための・・・皇太子妃修行・・・だったんです?
彼女は・・・どの妃もやらされたことのない・・・過密スケジュールで・・・課題をこなしたんですよ?」
「この1ヶ月間、やたらとファイの皇太子の宮にレドリシアが出入りしていたのは、うまいこと誘惑させようというおつもりだったんですか!?」
と、次から次にファイ様の兄弟姉妹が、食ってかかった。
「喧しい!妾への反論は、王太后様へ反論するようなもの!
王太后様が病で喋れなくなってから、双子の妾しか意思を通じるものはいないというのに!!」
と、ヴィノガン様は杖をガンガンと、床に何度も叩きつけた。
王様と王妃様が、慌てて仲裁している。
私は別のことが気になっていた。
・・・ちょっと待って。
出入りしていた?
この人が?
私がファイ様とレドリシアの方を見ると、レドリシアは案の定、意味深に笑っている。
・・・スノウティの顔にそっくり。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
読んでくださってありがとうございました。
お気に召したら、お気に入り登録してくださるとうれしいです♫ とても励みになります。
※この物語はフィクションです。表現や人物、団体、学説などは作者の創作によるものです。
あ、この人は・・・。
ファイアストム国の王と王妃が、その人の方を向いて、
「ヴィノガン叔母上、アイスローズ妃は皇太子妃としての修行を、きちんと終えたのですよ。」
「そうでございます。
披露宴が終わるや否や二人を引き離してまで、無体なことを強いたのです。
何故ご反対されるのですか?」
と、尋ねた。
杖をついたヴィノガン様は椅子から立ち上がり、後ろに設置された寝台に横たわる女性に、ヒソヒソと耳打ちしている。
すると、寝台に横たわる女性はヴィノガン様に、なにやらモゴモゴと伝えていた。
「ヴィノガン叔母上様。
母上・・・いや、王太后様はなんと?」
と、お義父様・・・いえ、ファイアストム国王が聞くと、
「まだアイスローズ妃は、王族の登竜門『火の試練』を受けておらぬ・・・と、おっしゃってます。」
と、ヴィノガン様は答えた。
そんな・・・『火の試練』は、ファイアストム国の王族が成人、もしくは婚姻後に受ける最終試練。
私は氷の魔法しか使えない。
私たち氷の民にとって火の魔法は、魔力の属性が反対なので、無理に使うと拒絶反応を起こして体を壊してしまう。
ファイ様は私を抱きしめたまま、
「アイスリーは、火の魔力を持ちません。
だから、最初から火の試練は免除するという、約束だったはずです!」
と、叫ぶ。
ヴィノガン様は、フンと鼻を鳴らして、
「建前はそうでも、実際は違う。
火の魔力を従えずして、何が皇太子妃か。
だから、最初からこのレドリシアを皇太子妃にすればよかったのです。」
と、言いながら顎をしゃくる。
その時、私と同じ香水の『日向のスウィートオレンジ』の香りがしてきた。
振り向くとそこに一人の女性が立っている。
「はじめまして、アイスリー様。
ファイアストム国司法長官バドリック・モエン公爵の娘、レドリシアと、申します。
父は今丁度病気療養中でして、私一人でご挨拶に伺いました。」
と、彼女は言った。
勉強したから、モエン公爵のことは知ってる。
法律の道に明るい方で、とても几帳面な性格だとか。
その一人娘、レドリシア・モエン。
法の抜け道に詳しくて、あまりいい噂を聞かない人。
最近、風の国ウィンディ国から帰国したと聞いていたけど。
目の前の目鼻立ちのはっきりした美しい彼女は、赤毛が多いファイアストム国の中で、珍しく色素の薄い髪の色をしている。
薄く青みがかった、純白の私の髪の色に、よく似ていた。
身長も同じくらい。
後ろから見たら、そっくりかもしれない。
美人で自信と色気に溢れて、誰よりも目立つことを自覚している、そんな女性。
胸もすごく大きい。・・・重そう。
・・・あぁ・・・まだ苦手、こういう人。
思わず自分の容姿を確認して、ミユキの方をチラリと見た。
ミユキは離れた所から口をパクパクさせて、
『気持ちで押し負けては、いけません。』
と、言ってる。
私の足元に降りたダイヤモンドダストも、ミュウ、と鳴いて顔を擦り寄せて応援していた。
そう、そうよ。
ま、負けないんだから!
ファイ様が私から腕を解くと、私を庇うように彼女の前に立つ。
「『アイスローズ皇太子妃殿下』と呼べ。不敬だぞ。大体お前がここにいるのはなぜた?」
彼のそんな言葉に、彼女は艶然として見つめ返す。
「ファイバーン皇太子殿下、そう怒らないでください。今日はご挨拶と自己紹介に来たのです。私は、あなたの恋人だったではないですか。」
「!!」
・・・彼女が!?
ホムラが、ファイ様は以前に私と似ている人と、付き合っていたと言った。
でも、まさかその人とご対面するなんて。
私はかつて従姉妹のスノウティに、初恋の人をとられた経験がある。
その時の胸の痛みを思い出して、思わず片手で胸元を握りしめた。
「昔の話だ。
今はここにいるアイスリーが、私の全てだ。」
ファイ様は、毅然としてる。
少し安心。
「殿下、私は今でも、あの時と気持ちは変わりません。
それに、この婚姻は所詮は大国同士の和睦という名の政略結婚・・・。」
レドリシアは、色っぽくファイ様の胸にしなだれかかろうと近づいてきたので、彼がさっと体をよける。
でも、彼女は計算通りといった感じで、私の前に進み出ると、私と目線を合わせて急に声が低くなった。
「本来の皇太子妃は私だったのに、政とは本当に残酷ですわ。」
そして私ににっこり笑いかける。
・・・目が笑ってないのが怖い。
「黙れ。お前に何もいう資格はない。
アイスリーは私の最愛の女性だ。」
と、ファイ様が私の肩を抱いて言うと、また、ヴィノガン様が杖をガツンと鳴らした。
「この結婚は、脆いものだ。」
その言葉に、レドリシア以外の全員が驚いて注目した。
ヴィノガン様は満足そうに皆を見回して、
「婚姻の承認は、王太后様の息のかかった大神官がおこなっている。
つまり、王太后様がその気になれば、いつでも白紙に戻せるのだ。」
と、言い放った。
「今更!?
今回の婚儀は和平の象徴として、世界中に知られております。
それを王太后様の命令で勝手にするなど!!」
「ブリザードゥ国も黙っていませんよ!
そんなことをしたら、この国は他国の信用を失います!」
「大体・・・そうなら何のための・・・皇太子妃修行・・・だったんです?
彼女は・・・どの妃もやらされたことのない・・・過密スケジュールで・・・課題をこなしたんですよ?」
「この1ヶ月間、やたらとファイの皇太子の宮にレドリシアが出入りしていたのは、うまいこと誘惑させようというおつもりだったんですか!?」
と、次から次にファイ様の兄弟姉妹が、食ってかかった。
「喧しい!妾への反論は、王太后様へ反論するようなもの!
王太后様が病で喋れなくなってから、双子の妾しか意思を通じるものはいないというのに!!」
と、ヴィノガン様は杖をガンガンと、床に何度も叩きつけた。
王様と王妃様が、慌てて仲裁している。
私は別のことが気になっていた。
・・・ちょっと待って。
出入りしていた?
この人が?
私がファイ様とレドリシアの方を見ると、レドリシアは案の定、意味深に笑っている。
・・・スノウティの顔にそっくり。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
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