心配症で不幸体質だと思い込む姫様は、宿敵の呪縛に立ち向かい、隣国の王子に溺愛されるルートへと進みます!

たからかた

文字の大きさ
25 / 64
後編

彼の元恋人まで来るなんて

しおりを挟む
声がした方を見ると、上座の王よりも一段高いところに座る高齢の女性が、杖を床にガツーン!!と打ちつける。

あ、この人は・・・。

ファイアストム国の王と王妃が、その人の方を向いて、

「ヴィノガン叔母上、アイスローズは皇太子妃としての修行を、きちんと終えたのですよ。」

「そうでございます。
披露宴が終わるや否や二人を引き離してまで、無体なことを強いたのです。
何故ご反対されるのですか?」

と、尋ねた。

杖をついたヴィノガン様は椅子から立ち上がり、後ろに設置された寝台に横たわる女性に、ヒソヒソと耳打ちしている。

すると、寝台に横たわる女性はヴィノガン様に、なにやらモゴモゴと伝えていた。

「ヴィノガン叔母上様。
母上・・・いや、王太后おうたいごう様はなんと?」

と、お義父様・・・いえ、ファイアストム国王が聞くと、

「まだアイスローズは、王族の登竜門『火の試練』を受けておらぬ・・・と、おっしゃってます。」

と、ヴィノガン様は答えた。

そんな・・・『火の試練』は、ファイアストム国の王族が成人、もしくは婚姻後に受ける最終試練。

私は氷の魔法しか使えない。

私たち氷の民にとって火の魔法は、魔力の属性が反対なので、無理に使うと拒絶反応を起こして体を壊してしまう。

ファイ様は私を抱きしめたまま、

「アイスリーは、火の魔力を持ちません。
だから、最初から火の試練は免除するという、約束だったはずです!」

と、叫ぶ。
ヴィノガン様は、フンと鼻を鳴らして、

「建前はそうでも、実際は違う。
火の魔力を従えずして、何が皇太子妃か。
だから、最初からこのレドリシアを皇太子妃こうたいしひにすればよかったのです。」

と、言いながら顎をしゃくる。

その時、私と同じ香水の『日向のスウィートオレンジ』の香りがしてきた。
振り向くとそこに一人の女性が立っている。

「はじめまして、アイスリー様。
ファイアストム国司法長官バドリック・モエン公爵の娘、レドリシアと、申します。
父は今丁度病気療養中でして、私一人でご挨拶あいさつうかがいました。」

と、彼女は言った。
勉強したから、モエン公爵のことは知ってる。
法律の道に明るい方で、とても几帳面きちょうめんな性格だとか。

その一人娘、レドリシア・モエン。
法の抜け道に詳しくて、あまりいい噂を聞かない人。

最近、風の国ウィンディ国から帰国したと聞いていたけど。

目の前の目鼻立ちのはっきりした美しい彼女は、赤毛が多いファイアストム国の中で、珍しく色素の薄い髪の色をしている。

薄く青みがかった、純白の私の髪の色に、よく似ていた。

身長も同じくらい。
後ろから見たら、そっくりかもしれない。

美人で自信と色気にあふれて、誰よりも目立つことを自覚している、そんな女性。

胸もすごく大きい。・・・重そう。

・・・あぁ・・・まだ苦手、こういう人。
思わず自分の容姿を確認して、ミユキの方をチラリと見た。

ミユキは離れた所から口をパクパクさせて、

『気持ちで押し負けては、いけません。』

と、言ってる。
私の足元に降りたダイヤモンドダストも、ミュウ、と鳴いて顔をり寄せて応援していた。

そう、そうよ。
ま、負けないんだから!

ファイ様が私から腕をくと、私をかばうように彼女の前に立つ。

「『アイスローズ皇太子妃殿下』と呼べ。不敬だぞ。大体お前がここにいるのはなぜた?」

彼のそんな言葉に、彼女は艶然えんぜんとして見つめ返す。

「ファイバーン皇太子殿下、そう怒らないでください。今日はご挨拶と自己紹介に来たのです。私は、あなたの恋人だったではないですか。」

「!!」

・・・彼女が!?
ホムラが、ファイ様は以前に私と似ている人と、付き合っていたと言った。
でも、まさかその人とご対面するなんて。

私はかつて従姉妹のスノウティに、初恋の人をとられた経験がある。

その時の胸の痛みを思い出して、思わず片手で胸元を握りしめた。

「昔の話だ。
今はここにいるアイスリーが、私の全てだ。」

ファイ様は、毅然きぜんとしてる。
少し安心。

「殿下、私は今でも、あの時と気持ちは変わりません。
それに、この婚姻は所詮しょせんは大国同士の和睦わぼくという名の政略結婚・・・。」

レドリシアは、色っぽくファイ様の胸にしなだれかかろうと近づいてきたので、彼がさっと体をよける。

でも、彼女は計算通りといった感じで、私の前に進み出ると、私と目線を合わせて急に声が低くなった。

「本来の皇太子妃こうたいしひは私だったのに、まつりごととは本当に残酷ですわ。」

そして私ににっこり笑いかける。
・・・目が笑ってないのが怖い。

「黙れ。お前に何もいう資格はない。
アイスリーは私の最愛の女性だ。」

と、ファイ様が私の肩を抱いて言うと、また、ヴィノガン様が杖をガツンと鳴らした。

「この結婚は、もろいものだ。」

その言葉に、レドリシア以外の全員が驚いて注目した。
ヴィノガン様は満足そうに皆を見回して、

「婚姻の承認は、王太后様の息のかかった大神官がおこなっている。
つまり、王太后様がその気になれば、いつでも白紙に戻せるのだ。」

と、言い放った。

今更いまさら!?
今回の婚儀は和平の象徴として、世界中に知られております。
それを王太后様の命令で勝手にするなど!!」

「ブリザードゥ国も黙っていませんよ!
そんなことをしたら、この国は他国の信用を失います!」

「大体・・・そうなら何のための・・・皇太子妃修行・・・だったんです?
彼女は・・・どの妃もやらされたことのない・・・過密スケジュールで・・・課題をこなしたんですよ?」

「この1ヶ月間、やたらとファイの皇太子の宮にレドリシアが出入りしていたのは、うまいこと誘惑させようというおつもりだったんですか!?」

と、次から次にファイ様の兄弟姉妹が、食ってかかった。

やかましい!わらわへの反論は、王太后様へ反論するようなもの!
王太后様が病でしゃべれなくなってから、双子のわらわしか意思を通じるものはいないというのに!!」

と、ヴィノガン様は杖をガンガンと、床に何度も叩きつけた。

王様と王妃様が、慌てて仲裁ちゅうさいしている。

私は別のことが気になっていた。
・・・ちょっと待って。
出入りしていた?
この人が?

私がファイ様とレドリシアの方を見ると、レドリシアは案の定、意味深に笑っている。

・・・スノウティの顔にそっくり。

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

読んでくださってありがとうございました。
お気に召したら、お気に入り登録してくださるとうれしいです♫ とても励みになります。


※この物語はフィクションです。表現や人物、団体、学説などは作者の創作によるものです。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

皇帝陛下の愛娘は今日も無邪気に笑う

下菊みこと
恋愛
愛娘にしか興味ない冷血の皇帝のお話。 小説家になろう様でも掲載しております。

次期騎士団長の秘密を知ってしまったら、迫られ捕まってしまいました

Karamimi
恋愛
侯爵令嬢で貴族学院2年のルミナスは、元騎士団長だった父親を8歳の時に魔物討伐で亡くした。一家の大黒柱だった父を亡くしたことで、次期騎士団長と期待されていた兄は騎士団を辞め、12歳という若さで侯爵を継いだ。 そんな兄を支えていたルミナスは、ある日貴族学院3年、公爵令息カルロスの意外な姿を見てしまった。学院卒院後は騎士団長になる事も決まっているうえ、容姿端麗で勉学、武術も優れているまさに完璧公爵令息の彼とはあまりにも違う姿に、笑いが止まらない。 お兄様の夢だった騎士団長の座を奪ったと、一方的にカルロスを嫌っていたルミナスだが、さすがにこの秘密は墓場まで持って行こう。そう決めていたのだが、翌日カルロスに捕まり、鼻息荒く迫って来る姿にドン引きのルミナス。 挙句の果てに“ルミタン”だなんて呼ぶ始末。もうあの男に関わるのはやめよう、そう思っていたのに… 意地っ張りで素直になれない令嬢、ルミナスと、ちょっと気持ち悪いがルミナスを誰よりも愛している次期騎士団長、カルロスが幸せになるまでのお話しです。 よろしくお願いしますm(__)m

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました

専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。

疎遠だった叔父の遺産が500億円分のビットコインだった件。使い道がないので、隣の部屋の塩対応な美少女に赤スパ投げまくってる件

月下花音
恋愛
貧乏大学生の成瀬翔は、疎遠だった叔父から500億円相当のビットコインが入ったUSBメモリを相続する。使い道に困った彼が目をつけたのは、ボロアパートの薄い壁の向こうから聞こえる「声」だった。隣人は、大学で「氷の令嬢」と呼ばれる塩対応な美少女・如月玲奈。しかしその正体は、同接15人の極貧底辺VTuber「ルナ・ナイトメア」だったのだ! 『今月ももやし生活だよぉ……ひもじい……』 壁越しに聞こえる悲痛な叫び。翔は決意する。この500億で、彼女を最強の配信者に育て上げようと。謎の大富豪アカウント『Apollo(アポロ)』として、5万円の赤スパを投げ、高級機材を即配し、彼女の生活を神の視点で「最適化」していく。しかし彼はまだ知らなかった。「金で買えるのは生活水準だけで、孤独は埋められない」ということに。500億を持った「見えない神様」が、神の座を捨てて、地上の女の子の手を握るまでの救済ラブコメディ。

苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」 母に紹介され、なにかの間違いだと思った。 だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。 それだけでもかなりな不安案件なのに。 私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。 「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」 なーんて義父になる人が言い出して。 結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。 前途多難な同居生活。 相変わらず専務はなに考えているかわからない。 ……かと思えば。 「兄妹ならするだろ、これくらい」 当たり前のように落とされる、額へのキス。 いったい、どうなってんのー!? 三ツ森涼夏  24歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務 背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。 小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。 たまにその頑張りが空回りすることも? 恋愛、苦手というより、嫌い。 淋しい、をちゃんと言えずにきた人。 × 八雲仁 30歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』専務 背が高く、眼鏡のイケメン。 ただし、いつも無表情。 集中すると周りが見えなくなる。 そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。 小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。 ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!? ***** 千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』 ***** 表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101

喪女なのに狼さんたちに溺愛されています

和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です! 聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。 ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。 森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ? ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。

処理中です...