心配症で不幸体質だと思い込む姫様は、宿敵の呪縛に立ち向かい、隣国の王子に溺愛されるルートへと進みます!

たからかた

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後編

挑む者たち

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翌日、私は火の試練を受けるため、武器と防具を身につけてダンジョンの扉の前にやってきた。

幸運のキャンディは食べてきたし、ダイヤモンドダストもいる。

背嚢には回復薬も入れてるし、ファイ様の魔力を込めた指輪もしてる。

あとは進むだけ。

そこへレドリシアもやってくる。
その格好を見て、驚いた。

・・・なんでヘソ出しで、太腿の見える鎧なんか着てるの?
肩当てだけで、腕もき出し。

またもや、色気を全面に押し出すようなファッションできめている。

女戦士によくある格好だけど、戦闘慣れしてない人がするものじゃないはず。

ダンジョンに入るのよ?
怪我しちゃっても知らないから。

「ニャオン。」

ダイヤモンドダストが、鳴いて肩に飛び乗ってくる。

元気づけてくれるの?

私は、肩に乗ってきたダイヤモンドダストを撫でた。

レドリシアは、私を見るとお辞儀をして、また上から下までじーっと眺めてクスッと笑う。

・・・はぁ。
私は肌の見えないよろいを着てるもの。

これでも、高強度のミスリルとドラゴンの皮革の素材を組み合わせて、軽量と防御力の高さを組み合わせた実戦的なもの。

回復薬も途中補給できないんだから、極力体力温存するための工夫は、ダンジョンでは必須なのに。

魔物がアイテムを落とすことを、あてにはできないから。

「うふふふ、重そうな重装備ですね、アイスリー様。王女から女竜騎士にでも、ジョブチェンジなさるの?」

レドリシアの含み笑いしながら、見下みくだすような態度に、ほんっと腹が立つ。

「そちらこそ、急所を守らずに大丈夫なの?」

「あら、火の魔神のダンジョンですのよ?
中は灼熱しゃくねつですもの。
少しでも肌は出さないと、暑さで消耗しょうもうしますわ。」

・・・なるほど、一応彼女も考えてるのね。
でも、背嚢はいのうもしてない。
回復薬や道具はどうするんだろ。
灼熱しゃくねつならなおのこと肌を守らないと、火膨ひぶくれを起こすんじゃない?

「プシュー・・・これを全部持たせる気か!?」

ガスの抜けるような呼吸音と共に、後ろから男性の声が聞こえて振り向くと、顔に傷のある眼光の鋭い剣士が重そうな袋を抱えて、そこにいた。

口元には、ガスマスクのような独特の器具が付けてある。

い、いつからそこにいたの!?
足音が全然聞こえなかった。

まさか・・・この人がサラマンダム?
レドリシアの護衛ごえいに雇われた魔法剣士。

「ふん、女性に重い物を持たせる気?
バカ高い前金は受け取りましたわよね?
契約書にも捺印なついんしてる以上、文句言わないでいただきたいわ。」

レドリシアは、ツンとした態度で腰に手を当てて彼を見る。

彼は無言で中の物をその場で仕分けると、彼女の分を背嚢はいのうに入れて強制的に背負わせた。
その時も音が一つもしない。

「きゃ!
な、何て失礼な人なの!?
昨夜は、私を命懸いのちがけで守ると誓ったのに!」

「プシュー、馬鹿か。
恥をかかせないよう、のってやっただけだ。
あの無駄な色仕掛いろじかけに動じるほど、俺は間抜けじゃない。」

「バッ・・・馬鹿ですって!?」

「プシュー、ダンジョンを甘く見るな。
魔物に色仕掛いろじかけは一切通用しない。
わかったら、俺の指示に従え。」

レドリシアは彼に叱られ、ぶつぶつ言いながら背嚢はいのうを背負い直していた。

サラマンダムは、私をチラリと見て礼儀正しくひざまずく。

彼の動作には、無駄がない。
油断したら私をれる人だと、なんとなくわかった。

「プシュー、初めてお目にかかります、アイスローズ皇太子妃殿下こうたいしひでんか
レドリシア様の護衛ごえいの任を授かりました、サラマンダムと申します。
どうぞ、お見知りおきを。」

私はうなずいてレドリシアを見る。
レドリシアは、わざとらしく私の周りを見回して笑い出した。

「あら?
アイスリー様は、護衛ごえいをおつけにならないの?
ふふふふ、たくましいですわぁ。」

・・・普通試練は受ける人だけ行くものよ。

やがて太鼓の音が聞こえだして、王家の人々と、家臣たち一同が少し離れた場所に設けられた天幕の中から現れる。

「ただ今より、火の試練をとりおこなう!
両者、くれぐれも命を落とさぬように!」

王が声高こえたからかに片手を上げて宣言した。
私たちはひざまずいて、王の方を見る。

王の隣に立つファイ様が私を見ると、王に向かって何か耳打ちしていた。

王はうなずきながらヴィノガン様に、

護衛ごえいをレドリシアにつけるなら、ファイもアイスローズ護衛ごえいとして同伴したいと言っております。よろしいですね。」

と、言っている。

ヴィノガン様は首を振って、拒否した。

「ならぬ。
護衛ごえいならばいくらでも家臣の中から、腕利きの猛者もさをつければ良い。
皇太子に何かあったらどうする気だ。」

「ファイは、この試練を終えた猛者もさの一人です。剣術も魔法も問題なくこなせます。」

「ふん、神獣の瞳を持つ国宝を護衛ごえいにつけるなど、家臣も納得せぬ。
それにアイスローズは故国で氷の試練を終えた、王族じゃ。過保護に過ぎる。」

ヴィノガン様は、ゆずらない。
やっぱりファイ様が同伴することは、難しいみたいね。

「それなら・・・私・・・行きます。」

ファイリアお義姉様ねえさまが、ゆっくり立ち上がって、王様たちに挨拶あいさつをする。

え!?
義姉様ねえさまが!?

「お前が?」

ヴィノガン様も驚いている。
彼女はうなずいて私を見る。

「大事な・・・義妹いもうとですもの・・・。
それに・・・私もこの試練を・・・終えてますから。」

王様と王妃様は、問題ないと送り出そうとしていた。

彼女は天幕に戻り、武器と防具を装備してマントを羽織ると、こちらに歩いてくる。

まさか・・・ファイ様じゃないよね?
距離があると、私にもわからないな。

おまけに頭には、フルフェイスのかぶとをかぶっていて顔が見えない。

「待て!!」

ヴィノガン様が呼び止める。
ファイリアお義姉様ねえさまは、私の前で足を止めた。

「ファイには、影武者が何人かいる。
ホムラやその他の影武者たちは、この場に来れぬようにしているが、ファイリアとファイもよく似ているからな。」

ヴィノガン様の指摘に、私も背中に嫌な汗をかいてきた。
疑われてる・・・!!

「ヴィノガン様、いい加減にしてください。
この上さらなる言いがかりをなさるなら、この試練に何か仕込みがあると疑われますよ。」

王様も、目を細めてヴィノガン様を見る。
彼女はそれを受け流して、そばに立つファイ様を見た。

「皆の前で、上着を脱ぐが良い。」

「!!」

周囲がざわざわと騒ぎ出す。

「えぇ!ヴィノガン様?
皇太子の肌をここでさらせとおっしゃるの!?」

王妃様が、慌てたように叫ぶ。
ヴィノガン様はニヤリと笑って、

「あそこにいる、ファイリアのよろいいでもよいぞ?
この厳正な火の試練に、不正なきようおこなえと、王太后様から言われておるのじゃ。
さあ、ファイ。」

と、言って彼を指さす。
ファイ様は、少し目を伏せたあと、上着のボタンを外し始めた。

ど、どうしよう!!
あれがファイリアお義姉様ねえさまなら、みんなの前で肌を見せることになっちゃう!

目の前にいるファイリアお義姉様ねえさまが本物なら、問題ないけれど。


~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

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※この物語はフィクションです。表現や人物、団体、学説などは作者の創作によるものです。

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