心配症で不幸体質だと思い込む姫様は、宿敵の呪縛に立ち向かい、隣国の王子に溺愛されるルートへと進みます!

たからかた

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後編

アイシュペレサのメッセージ

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「ミャオン」

ダイヤモンドダストが肩に飛び乗ると、鳴いて私に頭をり付けてきた。

待って、今は・・・。

「ミャオミャオ~。」

耳元で大声で鳴かれて、私たちは苦笑くしょうしながら、顔を離した。

「わかったよ、ダイヤモンドダスト。
お前は正しい。」

「そ、そうだった。まだ、最下層に行ってないものね。」

私たちが自覚した途端、ダンジョンの暑さが身に染みてきた。
ファイ様も、額の汗を拭って落ちていたかぶとかぶった。

「それにしても、もう魔神を攻略したとはね。
普通は、最下層まで降りてから始まるのに。」

「時をさかのぼってきたのなら、またやり直しかな。」

「いや、多分それはない。
おそらくアイスリーは、魔神の作り出す異空間にまねかれて戻ってきただけだと思うから。
凄いことなんだよ。ひと握りの王族にしか起きない現象なんだ。」

「そ、そうなのね。でも、はぁ・・・、また最下層まで降りるのね。」

あかしを魔神からもらわないといけないからな。
それに・・・サラマンダムたちも待ち構えている。魔神の心臓の件も終わってないからな。」

そうだった・・・。
火の魔神を服従させただけの状態。
まだ、気は抜けない。

アイシュペレサのメッセージも、出てくるかもしれないし。

私たちは、改めてダンジョンの中を進んでいった。

火の魔神を服従させた後だからかもしれないけど、中の魔物達から火の攻撃を受けても、そこまでダメージがないことが印象的だった。

どうにもならないのは、この暑さ!
今更いまさらながら、レドリシアのあの肌の露出の多い装備が羨ましくなってくる。

さっきはこんなに感じなかったのに。
そんな私を救ったのは、アイシュペレサのメッセージだった。

ダンジョンの要所ごとに、アイシュペレサの魔法の鏡が埋め込まれている。

彼のアドバイスは適切で、氷の民である私にはとても参考になった。

これも、さっきの攻略の時にはなかったもの。

『ダンジョンの中の熱気は、常に鎧の中に“氷の息吹いぶき”を吹き込むことでしのげる。諦めるな。』

『序盤は中ボス程度であれば、先に倒した方が、雑魚ざこの敵も一緒に退散するから効率がいい。きっとできる。』

『ダンジョンの落とし穴は、先にダイヤモンドダストに歩かせて、その後ろを歩け。
彼は匂いで正解がわかる。信頼していいぞ。』

などなど。
本当にわかりやすくて、彼の人柄がしのばれる。
優しい人だったみたい。

ようやくダンジョンの三分のニあたりまで来て、敵が出てこない休憩地点にやってきた。

レドリシアたちは、最下層についたのかな。
ここにいないところを見ると、魔神と対峙している頃かも。

「しばらく休んでから、行きましょう。」

私は自分と彼の鎧の中に、“氷の息吹いぶき”を吹き込んで、中を涼しく保つ。

灼熱しゃくねつのダンジョンの中で、涼が取れる手段の一つ。

ダイヤモンドダストの周りにも、魔法で小さな雪雲ゆきぐもを作って、体を冷やしてあげた。

「あー、やっぱり生き返るな。
私の試練の時も、アイスリーと来たかった。」

ファイ様が、フルフェイスのかぶといで、笑って喜んでくれた。
よかった、役に立てて。

「“氷の息吹いぶき”は、氷の民なら一番深い呼吸をした時、自然と出るものなの。
魔力を消費しないから、何度も使える。
アイシュペレサの指示は的確よ。」

私は汗をきながら、あたりを見回す。
ここには、彼のメッセージはないのかしら。

壁のくぼみの中に、光る氷の魔法の鏡が見える。
そっと手を触れると、アイシュペレサが現れた。

『ようやくここまできた。最下層まで、あと少し。この先は強敵との連戦だ。
・・・それでも、外の世界のいくさに比べたら、まだマシな方だろうな。』

それまで、明るい顔しかしていなかった彼の顔が、珍しくくもっている。
そうか、彼の時代は氷の国と火の国が、いくさをしていたんだもの。

『これを見ている君の時代は、平和だろうか。
同胞や家族の死を、見ないで済んでいるか?
私は故国では、裏切り者とののしられているが、最善の手段を取ったつもりだ。これ以上民を戦火に巻き込まないために』

アイシュペレサの横から、ダイヤモンドダストが映り、彼の肩に顔をり付けて甘えているのが見えた。

ファイ様も横からのぞき込んで、話を聞きながらつぶやく。

「彼は、この時代では相当恨まれたと思う。
神獣の瞳を持つものが、敵国に人質として自らおもむくことは、降伏こうふくするようなものだから。」

・・・降伏こうふく。負けを認めたようなものだと。
ボムパニス公爵は、勝負のつかないいくさだったと言っていた。

つまりずっと引き分け。
犠牲だけが積み重なっていく毎日。

誰かが、もうやめようとこぶしろさないと終われなかった時代。

その勇気は、口で言うほど簡単ではなかったはず。

鏡の中のアイシュペレサは、真剣な顔で話し続ける。

『ファンティーヌも、両国の疲弊ひへい国庫こっこ枯渇こかつに心を痛めていた。だから、同盟国の離反りはんと国民の逃亡を防ぐために私を招いた、という形になるよう、王を説得してくれたのだ。
実際これ以上いくさを続ければ、現実になる話だ。
互いに戦費がかさみ、領地では反乱がえない。』

彼はそこまで言うと、目を伏せながらため息をつく。
ファイアストム国も、本当はいくさを止めたい人がいたんだ。

『彼女も国内の好戦派から、裏切り者とののしられながら、それでもまとめあげる手腕は見事なものだ。唯一彼女に同意しないのは、彼女の双子の妹、ヴィノガン。徹底抗戦を主張して、殲滅せんめつ作戦を実行しようとしている。』

ここでもヴィノガン様は変わらないのね。
王太后様と、激しく議論したんだろうな。

『彼女のいくさに対する執着は異常だ。
魔力を使い果たすまで、攻撃魔法を放たないと満足しない。私に火の試練を受けるように、最初に言ったのも彼女だ。』

アイシュペレサがそう言って、私とファイ様は顔を見合わせる。

「ここでもヴィノガン様は、火の試練を受けるように言ったんだわ。」

「王太后様の伴侶になりたければ、受けろということか?」

なんだか、私と同じような条件を出されたみたいね。
でも、なんだろう、この違和感。

アイシュペレサは、鏡の中で彼の時代のダイヤモンドダストの頭を撫でながら、再び口を開いた。

『ヴィノガンは言った。私が火の試練を受ければ、反対派を解散させて、ブリザードゥ国との和解も受け入れるし、ファンティーヌとの仲も邪魔しないと。だが、何か裏がありそうだ。』

そう言って、鏡の中に消えていった。
私は振り向いて、ダイヤモンドダストの方を見る。

ダイヤモンドダストは、私に頭をり付けてきて、ゴロゴロと鳴いた。

「ダイヤモンドダスト・・・。
お前は最後まで見届けたのでしょう?
彼に何があったの?」

ダイヤモンドダストのあごでながら、顔をのぞき込む。

「ミュウ。ミャオン。」

・・・わかんない。

「先に進むしかない。もう少し休んだら行こう。」

ファイ様が、かぶとかぶり直して私を見た。
私と彼は、ダイヤモンドダストを連れて、ダンジョンのさらに下へと進んで行く。


~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

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※この物語はフィクションです。表現や人物、団体、学説などは作者の創作によるものです。




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