心配症で不幸体質だと思い込む姫様は、宿敵の呪縛に立ち向かい、隣国の王子に溺愛されるルートへと進みます!

たからかた

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後編

レドリシアたちに追いついて

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下の階の魔物は、流石さすが手強てごわくなってくる。
それでも、ファイ様とダイヤモンドダストも頑張ってくれるから、負けてられない。

魔物も火属性ばかりではなく、地、風、水、氷、光、闇の属性を持つ者も混じりだして、魔法に応用をきかせながら進んでいく。

ようやく最下層にいる魔神の部屋の一つ手前にある、最後の休憩エリアの扉の前にきた。

ここで・・・さっきはレドリシアたちに会ったんだ。

苦い記憶が浮かんで、口を引き結ぶ。
ファイ様が、そんな私の肩に手を置いて、安心させるように笑った。

中に入ろうと扉に手をかける私の隣で、ダイヤモンドダストが毛を逆立てる。

「どうしたの?」

私が声をかけると、ファイ様がさっと口元に指を立てて、静かにするように目線で訴えてきた。

私はうなずいて、頭を低くしながら扉を少し開いて中をうかがう。

「プシュー、レドリシア。そのままでは、魔神の試練に屈してしまうぞ。」

サラマンダムの、のんびりした声が聞こえてきて、私たちは顔を見合わせた。

・・・やけに冷静ね。

今彼女は、試練を受けている真っ最中なんだ。
苦戦しているみたいね。

試練だけは本人しか受けられないので、サラマンダムにもどうにもできない。

彼女が、どんなクエストを受けているのか知らないけれど、魔神は挑戦者の素の部分を試すようなクエストを仕掛けてくる。

辛くても挑む以上は、最後までやらないと・・・。

「きゃぁぁぁぁー!いやぁぁぁぁぁ!!!」

レドリシアの叫び声が、響いた。

「プシュー、フゥ、敗北しやがった。
新たな『魅入みいられし者』の誕生か。
あの無駄な自信はどこからきてたんだ。」

サラマンダムは、奥の部屋に向かってあきれたように話している。

試練の最中は、魔神の部屋に挑戦者以外は入れないから、助けることもできない。

でも、今なら彼の気がれているわ。

ダイヤモンドダストが、そっと気配を消してサラマンダムの後ろに迫ると、襟元えりもとを噛んで後ろに引き倒した。

素早くファイ様が、みぞおちに拳を叩き込んで首を締め上げて気絶させると、サラマンダムをしばり上げる。

レドリシアの叫び声が止んだので、私たちも魔神の部屋へと続く扉の窓から中をのぞき込んだ。

中では、魔神にのしかかられたレドリシアが、ひたいに爪で刻印されているのが見える。
見たことのない文字。

「なんて書いてあるの?」

と、私が尋ねると、ファイ様が眉をしかめて、

「古代語で『敗北者』と、彫られている。
見ろ、文字が消えていく。
ああなると、この場を見てない者にはわからなくなる。」

そういえば王妃様も言っていた。
魔神の試練に屈したものは、『魅入みいられし者』となるけれど、見分けられるのは魔神だけしかいないと。

魔神がレドリシアから離れると、彼女は魔神に怯えながら、ゆっくり起き上がる。

次の瞬間、ダンジョンの床に紋章が浮かび上がって、外の光が上から差し込んできた。

あ、あそこが外の世界へと続くゲートなのね。

レドリシアは、よろよろとそこへ向かって歩き始めた。その間、魔神がじっとレドリシアの方を見つめている。

「プシュー。」

後ろで聞き慣れた呼吸音が響いた。
ファイ様がすぐ振り向いて、剣を抜くとガキン!と火花が散る。
衝撃でファイ様の頭に被っていた、フルフェイスのかぶとが床に転がり落ちた。

サラマンダム!?
どうして?さっきまで気絶して縛られていたのに!

よく見ると、彼をしばっていた縄が解かれていた。

「プシュー、これはこれは皇太子殿下。
変装がお得意と聞いておりましたが、見事にだまされました。さぁ、アイスローズ皇太子妃殿下を、お渡しください。」

ギリギリと二人の剣がきしみをあげる。
よく見ると、サラマンダムの剣はとても大きくて、秘宝の剣であることがわかった。

「断る、アイスリーになんの用だ。」

ファイ様の低い声に、サラマンダムがゆっくりと私の方を見た。

「プシュー、彼女にしかできないことを、してもらうため・・・。」

「!!」

魔神の心臓を取らせる気!?
私は、剣を構えたままのサラマンダムを、素早く魔法で凍りつかせた。

私の魔法の発動とほぼ同時に、彼の剣がキラリと光る。
・・・なに?今の。

「行きましょう!今のうちに・・・。」

パキン!

サラマンダムを凍りつかせた氷が、割れる音がする。
ど、どうして!?

「アイスリー、魔神の部屋に飛び込むぞ!
サラマンダムは、全属性魔法を半減させる大剣エクスカリバーを持ってる!
奴が手にしている間は、魔法が効きにくいから、長くはもたない!!」

ファイ様が叫び、ダイヤモンドダストを呼んですぐに次の部屋に飛び込んた。

魔神の部屋では、二体の魔神が待っていた。
一体はひざまずき、もう一体は立ったままで、奥を向いている。

ひざまずいている方は、私の試練を担当した魔神ね。
立っている方は、レドリシアの魔神だわ。
ファイ様が私の肩に手を置いて、話しかけてくる。

「アイスリー、ひざまずく魔神のそばへ行って、試練のあかしをもらうんだ。」

「あ、ファイ。薬草『レマニカル』も取らないと。」

「私が採取しておく、アイスリーは魔神の元へ!気をつけろ、魔神が消えていないということはレドリシアもどこかに隠れている。」

ファイ様に言われて、私はすぐにひざまずく魔神の元へと駆け寄った。
魔神は私のひたいに指を当てると、

「グルルル・・・なんじは、火の試練を突破した二人目の氷の民となる。
火の魔力の加護を与え、ここにあかしを刻まん。」

と、言った。
全身が赤い光に包まれて、やがておさまっていく。

魔神の指が離れて、私はファイ様とダイヤモンドダストの方を見た。
レドリシアは見当たらない、今なら!!

「終わったわ!さあ、外に・・・!」

「グルルル・・・少し待て。
なんじには、渡すも・・・。」

魔神が何か言いかけた時、部屋の奥から巨大な火炎が飛んできたので、思わず氷のシールドで防ぐ。

「誰!?あ・・・!」

暗がりから、レドリシアが出てくる。
片手を私に突き出したまま、怒りの形相ぎょうそうで私を見ていた。

「どういうことです?何故あなたは来たばかりで、魔神が服従しているのですか!?試練は!?」

彼女から見たらそうよね。
先に試練を済ませてるなんて、わからないはず。

「試練はもう受けたの。
ダンジョンに入ってすぐ受けたのよ。」

「嘘!そんな話聞いたこともない。
ヴィノガン様に聞いた話と違いますわ!
わ、私も終えましたけどね!」

レドリシアは必死に虚勢きょせいを張っている。
私はチラリと、外の光が差し込む出口のゲートの方を見た。

レドリシアはすぐに出ると思ったのに、何故なぜ残っていたのかしら。

「とにかく、私はもうここを出る。
ちゃんと、試練を終えたんだから廃位もされない。」

私はレドリシアに宣言すると、ファイ様とダイヤモンドダストを連れて、出口へと向かった。

でも、ダイヤモンドダストだけ、私たちの前に回り込んで立ち止まり、休憩エリアの方を見ると、

「ミュウー。」

と、鳴いた。

「ほら、いい子ね。外に出ましょう。」

私はダイヤモンドダストの背中を撫でて、そう話しかけていると、レドリシアの冷たい声が響く。

「あなたは、ここを出れません。」

確信を込めた声に、私は不安になってくる。
ファイ様は、彼女の方を振り向いて目を細めた。

「サラマンダムなら、そこの部屋で足止めされてここに来れない。
お前一人で、我々を止めるのは無理だ。」

彼は私の肩を抱くと、出口へと歩き出す。
レドリシアは、ククク・・・と、笑い出した。

「あら、殿下。やはりあちらは偽物にせものでしたわね。すっかりだまされました。」

「レドリシア、お前は『魅入みいられし者』。ここを出れば、待っているのは魔力剥奪まりょくはくだつの刑だ。
覚悟しておくんだな。」

ファイ様の毅然きぜんとした態度にも、彼女はひるまない。構わず歩き出す私たちを、自信満々な目で見ている。

「アイスリー様の貞操ていそうの焼印が消えるのは、このダンジョンの中だけなんですよ、殿下。」

レドリシアの低い声に、私たちはぴたりと足を止めた。
彼女は、体をしならせながら笑い出す。



~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

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※この物語はフィクションです。表現や人物、団体、学説などは作者の創作によるものです。



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