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後編
伏せられていた陰謀
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ファイ様はゆっくりと顔を上げると、冷たい目で彼女を睨んだ。
「邪魔するな。今の私は、アイスリーだけのものだ。お前とは、お前が他の男を選んで去った時に終わっている。」
「一度愛したなら貫くべきですわ!
なんです?他の男と楽しんだくらいで。
あなたは、私がどうであろうとひたすら待ち、戻れば大切にする。
それが当たり前で、世の理なのです!!」
「それは、お前の理だろう?
それに付き合う気はない。」
レドリシアの叫び声に、彼はあくまでも冷静だ。
・・・すごい人と付き合っていたのね。
ファイ様は私を抱きしめる腕を緩めると、気絶したままのサラマンダムの方を指さした。
「アイスリー、今のうちにサラマンダムを凍結させてくれないか。もう奴は、自力でアイスリーの魔法を解くことはないから。」
彼は私に優しい声で言うと、再びレドリシアに厳しい目を向ける。
私が気絶したサラマンダムを完全凍結させている間に、ダイヤモンドダストとファイ様に囲まれたレドリシアは、ヘナヘナと座り込んだ。
「皇太子妃を害した罪は重い。
それに私が大切にしている相手に、手を出したものはどうなるか・・・お前はよく知っているな?」
「ひっ・・・お、お、お待ちになって。
私は、ヴィノガン様のご指示通りに動いただけ。何も悪くないんです。」
「どういう作戦だったのか、全て吐け。」
ファイ様は容赦なく、レドリシアを追求する。
けれど、彼女は情報を取引に使えると思ったらしく、どうしようかな?という、顔をした。
「正直に言うと思いますの?
でも、殿下が今からでも私を選んでくださるなら、まあ、考えてもい・・・。」
ファイ様は、レドリシアの言葉を最後まで聞かずに、彼女の顔に自分がかけられた物と同じ粉を振りかけた。
「ゴホッ!や、やりましたわね!!」
レドリシアは涙目でむせながら、彼を睨む。
「さっき、サラマンダムから奪い取った。
アイスリーにしたことを考えれば、このまま痛めつけてもいいが、昔の恋人だったお前に最後の心遣いだ。」
ファイ様にそう言われたレドリシアは、崩れるように気絶した。
私はサラマンダムを凍結し終えて、二人の近くに戻ってくると、彼の隣に立つ。
それを待っていたかのように、レドリシアがムクリと起き上がった。
「知っていることを全て教えろ。」
ファイ様が声をかけると、暗示にかかったレドリシアは、ペラペラと喋りだした。
試練に先行することで先に魔神を服従させて、レマニカルを全て焼き払う予定だったこと。
ところが、レドリシアの試練が思いの外時間がかかったことと、私が試練をすでに終えていたことが、計算外だったと。
「そして魔神には、ヴィノガン様に聞いていた必勝法がまったく通じなかった。どうしてうまくいかなかったのかわかりません。」
レドリシアのいう必勝法、て何かしら。
そんなもの聞いたことない。
ファイ様はその様子を見ながら、レドリシアにさらに質問を重ねる。
「ヴィノガン様は、魔神の心臓を取る目的を、お前に話したか?」
「・・・アイスリー様を葬り去り、ブリザードゥ国に対して優位に立つためだと聞いています。それ以上は何も。」
・・・レドリシアも、ヴィノガン様に利用されたのかしら。
魔神の攻略に必勝法はないし、サラマンダムが負ければ、彼女一人では私たちに勝てない。
あくまで、二体目の魔神を出現させることが、彼女の役割のような気がする。
あのサラマンダムも、レドリシアが魔神に敗北しても慌てることもなく、冷静だった。
そのことをファイ様に話すと、頷いて腕を組んだ。
「おそらく、ヴィノガン様にとってはレドリシアも駒の一つだったんだろう。
レドリシア、このあとはどうする予定だった?」
「・・・心臓を隠して持ち出し、王太后様に最後の毒を与えて病死したように見せかける。
そのあと、ヴィノガン様が書いた王太后様の遺言書を読み上げ、ファイ様を即位させてブリザードゥ国へ宣戦布告する。」
私とファイ様は驚いて顔を見合わせた。
宣戦布告!?
「父上がいるのに、私が即位だと!?
それに、開戦理由はどうする気だ。
戦いたいからと、喧嘩をふっかけるように始めるつもりか!?」
ファイ様の声に、レドリシアは静かに話す。
「ブリザードゥ国の皇太子様が、ヴィノガン様によって極秘に招待されています。
彼には、本日の晩餐の席でアイスリー様が火の試練を強要されて亡くなったと伝え、激昂した勢いで王様と王妃様を氷の魔法で害させる・・・手筈です。」
私は目を見開いた。
アイシスがこの国へ!?
聞いてないわ。何にも知らない弟がそんな話を聞いたら・・・!!
「ブリザードゥ国皇太子が先に手を出したと世界中に知らせて、反撃という名目で攻め込む気だな。」
レドリシアは、こっくりと頷いて気を失った。
私はアイシスが心配になって、すぐに飛び出そうと出口へ向かう。
「待て!アイスリー!!」
ファイ様が、腕を掴んで止める。
「離して!試練は終えた、心臓は取らずに済んだとみんなの前で言うわ!!」
「落ち着け!ヴィノガン様のことだ。
もし、心臓を取らずに出ていけば、アイシス皇太子にやらせるはずの役をアイスリーにさせて、公式に葬ろうとするぞ!」
「王様と王妃様にちゃんとお話するわ!」
「そうなる前に、王太后様の名前で隔離される。いいか、とりあえずレドリシアと、サラマンダムさえ外に行かなければ、中のことは知られないんだ。頼むから、落ち着いて。」
ファイ様に言われて、私は肩で息をした。
そう・・・下手に動けば揚げ足を取られる。
ベロジュで、何度も経験しているわ。
私は深呼吸して、気絶したレドリシアもサラマンダムのように魔法で凍結させた。
「・・・ファイ、私は自分にされたことは我慢できる、でも・・・弟まで巻き込むなんてもう、ヴィノガン様を許せない。」
私は怒りを込めて、拳を握りしめた。
ファイ様も、私に深く頭を下げて謝罪する。
「本当にすまない。
身内の不始末は、必ずカタをつける。
これ以上、彼女の思い通りにはさせない。」
そうよ、ここから反撃しないと。
でも、どうやって?
「ミャオ。」
ダイヤモンドダストが、元の猫の大きさに戻って、私たちの前に来ると、休憩エリアの部屋に向かって歩き出した。
そこに何かあるのかしら。
そういえば試練の時、あそこにアイシュペレサの魔法の鏡があった。
その時、私はまだ見てなかったわ。
私はファイ様と一緒に、ダイヤモンドダストの後ろについていった。
試練の時と同じ場所に、魔法の鏡が浮かび上がる。
「お前はこれを見せたいのね?」
私がダイヤモンドダストに言うと、
「ミャオ。」
と、返してくる。私はそっと鏡に触れた。
鏡の中にアイシュペレサが浮かび上がって、話し始める。
『魔神は服従させた。
だが、ヴィノガンからここで読むようにと、手渡されていた手紙を読むと、驚くことが書いてあった。』
彼はやっぱり魔神を服従させたんだ。
でも、心なしかアイシュペレサの表情が深刻になっている。
『ファンティーヌは、本当は“魅入られし者”なのだ、と。魔力を剥奪せずに彼女を解放するには、魔神の心臓が必要だと書いてある。』
私とファイ様は顔を見合わせた。
王太后様が、魅入られし者?
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
読んでくださってありがとうございました。
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※この物語はフィクションです。表現や人物、団体、学説などは作者の創作によるものです。
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「それは、お前の理だろう?
それに付き合う気はない。」
レドリシアの叫び声に、彼はあくまでも冷静だ。
・・・すごい人と付き合っていたのね。
ファイ様は私を抱きしめる腕を緩めると、気絶したままのサラマンダムの方を指さした。
「アイスリー、今のうちにサラマンダムを凍結させてくれないか。もう奴は、自力でアイスリーの魔法を解くことはないから。」
彼は私に優しい声で言うと、再びレドリシアに厳しい目を向ける。
私が気絶したサラマンダムを完全凍結させている間に、ダイヤモンドダストとファイ様に囲まれたレドリシアは、ヘナヘナと座り込んだ。
「皇太子妃を害した罪は重い。
それに私が大切にしている相手に、手を出したものはどうなるか・・・お前はよく知っているな?」
「ひっ・・・お、お、お待ちになって。
私は、ヴィノガン様のご指示通りに動いただけ。何も悪くないんです。」
「どういう作戦だったのか、全て吐け。」
ファイ様は容赦なく、レドリシアを追求する。
けれど、彼女は情報を取引に使えると思ったらしく、どうしようかな?という、顔をした。
「正直に言うと思いますの?
でも、殿下が今からでも私を選んでくださるなら、まあ、考えてもい・・・。」
ファイ様は、レドリシアの言葉を最後まで聞かずに、彼女の顔に自分がかけられた物と同じ粉を振りかけた。
「ゴホッ!や、やりましたわね!!」
レドリシアは涙目でむせながら、彼を睨む。
「さっき、サラマンダムから奪い取った。
アイスリーにしたことを考えれば、このまま痛めつけてもいいが、昔の恋人だったお前に最後の心遣いだ。」
ファイ様にそう言われたレドリシアは、崩れるように気絶した。
私はサラマンダムを凍結し終えて、二人の近くに戻ってくると、彼の隣に立つ。
それを待っていたかのように、レドリシアがムクリと起き上がった。
「知っていることを全て教えろ。」
ファイ様が声をかけると、暗示にかかったレドリシアは、ペラペラと喋りだした。
試練に先行することで先に魔神を服従させて、レマニカルを全て焼き払う予定だったこと。
ところが、レドリシアの試練が思いの外時間がかかったことと、私が試練をすでに終えていたことが、計算外だったと。
「そして魔神には、ヴィノガン様に聞いていた必勝法がまったく通じなかった。どうしてうまくいかなかったのかわかりません。」
レドリシアのいう必勝法、て何かしら。
そんなもの聞いたことない。
ファイ様はその様子を見ながら、レドリシアにさらに質問を重ねる。
「ヴィノガン様は、魔神の心臓を取る目的を、お前に話したか?」
「・・・アイスリー様を葬り去り、ブリザードゥ国に対して優位に立つためだと聞いています。それ以上は何も。」
・・・レドリシアも、ヴィノガン様に利用されたのかしら。
魔神の攻略に必勝法はないし、サラマンダムが負ければ、彼女一人では私たちに勝てない。
あくまで、二体目の魔神を出現させることが、彼女の役割のような気がする。
あのサラマンダムも、レドリシアが魔神に敗北しても慌てることもなく、冷静だった。
そのことをファイ様に話すと、頷いて腕を組んだ。
「おそらく、ヴィノガン様にとってはレドリシアも駒の一つだったんだろう。
レドリシア、このあとはどうする予定だった?」
「・・・心臓を隠して持ち出し、王太后様に最後の毒を与えて病死したように見せかける。
そのあと、ヴィノガン様が書いた王太后様の遺言書を読み上げ、ファイ様を即位させてブリザードゥ国へ宣戦布告する。」
私とファイ様は驚いて顔を見合わせた。
宣戦布告!?
「父上がいるのに、私が即位だと!?
それに、開戦理由はどうする気だ。
戦いたいからと、喧嘩をふっかけるように始めるつもりか!?」
ファイ様の声に、レドリシアは静かに話す。
「ブリザードゥ国の皇太子様が、ヴィノガン様によって極秘に招待されています。
彼には、本日の晩餐の席でアイスリー様が火の試練を強要されて亡くなったと伝え、激昂した勢いで王様と王妃様を氷の魔法で害させる・・・手筈です。」
私は目を見開いた。
アイシスがこの国へ!?
聞いてないわ。何にも知らない弟がそんな話を聞いたら・・・!!
「ブリザードゥ国皇太子が先に手を出したと世界中に知らせて、反撃という名目で攻め込む気だな。」
レドリシアは、こっくりと頷いて気を失った。
私はアイシスが心配になって、すぐに飛び出そうと出口へ向かう。
「待て!アイスリー!!」
ファイ様が、腕を掴んで止める。
「離して!試練は終えた、心臓は取らずに済んだとみんなの前で言うわ!!」
「落ち着け!ヴィノガン様のことだ。
もし、心臓を取らずに出ていけば、アイシス皇太子にやらせるはずの役をアイスリーにさせて、公式に葬ろうとするぞ!」
「王様と王妃様にちゃんとお話するわ!」
「そうなる前に、王太后様の名前で隔離される。いいか、とりあえずレドリシアと、サラマンダムさえ外に行かなければ、中のことは知られないんだ。頼むから、落ち着いて。」
ファイ様に言われて、私は肩で息をした。
そう・・・下手に動けば揚げ足を取られる。
ベロジュで、何度も経験しているわ。
私は深呼吸して、気絶したレドリシアもサラマンダムのように魔法で凍結させた。
「・・・ファイ、私は自分にされたことは我慢できる、でも・・・弟まで巻き込むなんてもう、ヴィノガン様を許せない。」
私は怒りを込めて、拳を握りしめた。
ファイ様も、私に深く頭を下げて謝罪する。
「本当にすまない。
身内の不始末は、必ずカタをつける。
これ以上、彼女の思い通りにはさせない。」
そうよ、ここから反撃しないと。
でも、どうやって?
「ミャオ。」
ダイヤモンドダストが、元の猫の大きさに戻って、私たちの前に来ると、休憩エリアの部屋に向かって歩き出した。
そこに何かあるのかしら。
そういえば試練の時、あそこにアイシュペレサの魔法の鏡があった。
その時、私はまだ見てなかったわ。
私はファイ様と一緒に、ダイヤモンドダストの後ろについていった。
試練の時と同じ場所に、魔法の鏡が浮かび上がる。
「お前はこれを見せたいのね?」
私がダイヤモンドダストに言うと、
「ミャオ。」
と、返してくる。私はそっと鏡に触れた。
鏡の中にアイシュペレサが浮かび上がって、話し始める。
『魔神は服従させた。
だが、ヴィノガンからここで読むようにと、手渡されていた手紙を読むと、驚くことが書いてあった。』
彼はやっぱり魔神を服従させたんだ。
でも、心なしかアイシュペレサの表情が深刻になっている。
『ファンティーヌは、本当は“魅入られし者”なのだ、と。魔力を剥奪せずに彼女を解放するには、魔神の心臓が必要だと書いてある。』
私とファイ様は顔を見合わせた。
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