心配症で不幸体質だと思い込む姫様は、宿敵の呪縛に立ち向かい、隣国の王子に溺愛されるルートへと進みます!

たからかた

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後編

王太后様の元へ

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「アイスリー!!」

ファイ様の声が聞こえて振り向くと、水が蒸発した水路に氷が張りめぐらされ、彼が水路の奥からソリに乗って戻ってきた。

よかった!意識が戻ったのね!!

アイシスが、彼の後ろからバーニスお義姉様ねえさまと共に顔を出す。

「もぅ、お二人とも人使いが荒いんです。
ファイ義兄上様あにうえさまは、バーニス様に保護されてすぐに意識が戻ったんですけど、水路を早くソリで逆走させろと急かされて、でも水がないからここまで氷を張る羽目に・・・。」

「アイスローズちゃん、早く乗って!!」

その声にヴィノガン様が、今度はファイ様たちを睨みつける。

「裏切りものめらが!!
こんな子孫たちのために、昔命懸けでいくさをしてきたと思うと、なげかわしいわ!!」

ヴィノガン様は、水路に落ちている小石に火をつけると、ファイ様たちに向かって雨のように降らせてぶつけようとした。

「嘆かわしいのはあなたの方だ!!」

すぐにファイ様が立ち上がり、魔法で火をまとった石のつぶてを残らず消し炭にして、下に叩き落とした。

ヴィノガン様は諦めずに、さらに魔法を発動しようとする。

キリがない!!

私はヴィノガン様の両腕を素早く凍結させると、

「ダイヤモンドダスト!ツララ!!」

と、叫んで二匹を元の大きさに戻し、腕に抱いてソリに飛び乗った。

「待て!!心臓をよこせ!!」

ヴィノガン様は、腕の凍結を解こうと火の魔法をかけながら、私に叫ぶ。

「お断りします!失礼!!」

私はそう言い放つと、ソリに触れて出口へ向かって高速で滑らせた。

「王太后様は、大神殿の地下にいるそうよ!!でも、もう、最後の毒は打ち込んだって・・・。」

水路を高速で進むソリを操りながら、私がファイ様たちに伝えると、みんな顔を見合わせる。

「少し乱暴だけど・・・やる?ファイ。」

バーニスお義姉様ねえさまがファイ様に聞くと、彼はすぐにうなずいて私を見た。

彼の膝の上から、ファイアボールと、ファイアボールにそっくりなもう一頭の犬が現れる。

もしかしてこの子・・・。

「ファイアボールのつがいの『メーラ』だ。
アイスリー、ダイヤモンドダストとツララで、この氷のソリを思いっきり固めるんだ。
遠くまで飛ばすぞ!」

「わ、わかった。」

私はダイヤモンドダストとツララに、氷のソリの強度を最高度になるまで固めさせた。

やがて外の光が感じられてきて、もうすぐ水路を抜けることがわかる。

タイミングを見て、ファイ様が二頭の神獣に命令した。

「ファイアボール!メーラ!!爆炎を放て!!」

ソリが水路を飛び出すや否やファイアボールとメーラがソリの後ろに大爆発を起こさせて、爆風でソリが大きく空を飛んだ。

「きゃあぁぁぁぁ!!」

二匹は空中で何度も爆炎の魔法を放ち、その度にソリがものすごい勢いで、空を進んでいく。

「ら、乱暴でーす!!」

アイシスが情けない声で、叫んだ。

「早く慣れてね!
あ、ファイ!大神殿が見えてきたよ!!」

バーニスお義姉様が、ファイ様に声をかけた。
大神殿の周りには、ヴィノガン様の私兵らしき人たちが、出入り口を固めている。

普通に行ってたら、時間がかかったかもしれない。
でも、真上から窓もないのにどうやって入るの?

ファイ様が神獣たちを膝に乗せると、私に声をかけてきた。

「アイスリー!私にしがみつくんだ!
高温で遮蔽物しゃへいぶつを溶かしながら突っ込むぞ!!」

私が彼に抱きつくと、ファイ様は目を閉じた。
ソリは空中から真っ逆さまに、大神殿へと落ちていく。

屋根にぶつかる!!・・・そう思った時、神殿の屋根がマグマの熱で溶けたようにポッカリと口を開いた。そのまま地下まで、遮るものは全て溶けて口を開いていく。

すごい・・・!熱をこんなに瞬間的に操れるなんて。

感心している間に、地下室が見えてきた。

「ここだわ!!止めるわよ!!」

私は地下室の床から、雪の柱を魔法で作り出して、落ちてくる私たちのソリを受け止めさせた。サラサラの雪の効果で、衝撃を逃しながら床に降りていく。

「王太后様!!」

私たちは、ソリから飛び降りると、地下室に置かれた寝台に眠る王太后様の元へと向かった。

寝台のそばには、鎖に縛られてぐったりとしている大神官もいる。

大神官をバーニスお義姉様とアイシスに任せて、私とファイ様は王太后様の顔を覗き込んだ。

「・・・生きてる?」

「・・・あぁ、生きてる!!」

顔色はよくないけど、微かに呼吸している。
よかった!間に合ったんだ!

「飲んでくださるかしら。」

私が頭を持ち上げて差し上げると、ダイヤモンドダストがまた王太后様の胸の近くに飛び乗ってきた。

「ミャオ。」

その鳴き声に、王太后様はゆっくり目を開く。

「ダイヤモンドダスト・・・。」

あの時と同じように、彼女はつぶやいた。
ファイ様は、ゆっくりとレマニカルを口に含ませる。

「王太后様、どうか飲み込んでください。」

彼の声に、王太后様はのどを動かした。
飲んでくれた!!もう、大丈夫。

少しずつかすかにしていた呼吸に、力が戻ってくる。
よかった・・・本当によかった。

私は王太后様の枕を整えると、ファイ様のそばに行って、しっかりと抱き締めあった。

「やったな!
あと・・・アイスリー、心配かけてごめん。」

まだ、少し彼の体が熱い。

「大丈夫なの?レマニカルをもう少し飲んだら?私が、まだ持ってるから。」

残りのレマニカルを彼の口に入れると、大人しく飲み込んだ。

彼の顔色が戻り始めると、なんとなくバツが悪そうな顔をしだしたので、何事かとじっと見つめた。

「どうしたの?」

「いや・・・ア、アイシス皇太子によると、俺・・・じゃない、私は熱のせいで色々言ったそうだな。」

「あぁ。」

なんだ、そのこと。
彼は自分の片手で目をおおうと、やってしまったとばかりにため息をついた。

「あんな弱々しい告白なんか、するつもりなかったから・・・その・・・恥ずかしくて。幻滅してないか?」

可愛いところがあるんだな、この人も。
素直で素敵な告白だと思ったのに。

「全然してません。私のことを『最愛の女神』と呼んでくれたよね?その言葉はもう胸にきざんじゃったの。素敵な言葉をありがとう。」

にこにこしながら、彼を見る。
そう、あんなこと言われたのは、初めて。
いつもより自然に言われて、ドキドキしたもの。

それを聞いたファイ様も耳まで赤くして、軽く咳払せきばらいをすると、私を抱き寄せる腕に力がこもった。

「ゴホッ!参ったな・・・アイスリー、後で覚悟してろよ。聞いた以上は、手加減なしだ。」

「お、お手柔てやわらかに。」

「却下。」

ひたいをコツンとあてて、見つめ合う私たちの隣で、王太后様がパッチリと目を開けて、私たちを見た。


~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

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※この物語はフィクションです。表現や人物、団体、学説などは作者の創作によるものです。




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