55 / 64
後編
王太后様の元へ
しおりを挟む
「アイスリー!!」
ファイ様の声が聞こえて振り向くと、水が蒸発した水路に氷が張りめぐらされ、彼が水路の奥からソリに乗って戻ってきた。
よかった!意識が戻ったのね!!
アイシスが、彼の後ろからバーニスお義姉様と共に顔を出す。
「もぅ、お二人とも人使いが荒いんです。
ファイ義兄上様は、バーニス様に保護されてすぐに意識が戻ったんですけど、水路を早くソリで逆走させろと急かされて、でも水がないからここまで氷を張る羽目に・・・。」
「アイスローズちゃん、早く乗って!!」
その声にヴィノガン様が、今度はファイ様たちを睨みつける。
「裏切りものめらが!!
こんな子孫たちのために、昔命懸けで戦をしてきたと思うと、嘆かわしいわ!!」
ヴィノガン様は、水路に落ちている小石に火をつけると、ファイ様たちに向かって雨のように降らせてぶつけようとした。
「嘆かわしいのはあなたの方だ!!」
すぐにファイ様が立ち上がり、魔法で火を纏った石の礫を残らず消し炭にして、下に叩き落とした。
ヴィノガン様は諦めずに、さらに魔法を発動しようとする。
キリがない!!
私はヴィノガン様の両腕を素早く凍結させると、
「ダイヤモンドダスト!ツララ!!」
と、叫んで二匹を元の大きさに戻し、腕に抱いてソリに飛び乗った。
「待て!!心臓をよこせ!!」
ヴィノガン様は、腕の凍結を解こうと火の魔法をかけながら、私に叫ぶ。
「お断りします!失礼!!」
私はそう言い放つと、ソリに触れて出口へ向かって高速で滑らせた。
「王太后様は、大神殿の地下にいるそうよ!!でも、もう、最後の毒は打ち込んだって・・・。」
水路を高速で進むソリを操りながら、私がファイ様たちに伝えると、みんな顔を見合わせる。
「少し乱暴だけど・・・やる?ファイ。」
バーニスお義姉様がファイ様に聞くと、彼はすぐに頷いて私を見た。
彼の膝の上から、ファイアボールと、ファイアボールにそっくりなもう一頭の犬が現れる。
もしかしてこの子・・・。
「ファイアボールの番の『メーラ』だ。
アイスリー、ダイヤモンドダストとツララで、この氷のソリを思いっきり固めるんだ。
遠くまで飛ばすぞ!」
「わ、わかった。」
私はダイヤモンドダストとツララに、氷のソリの強度を最高度になるまで固めさせた。
やがて外の光が感じられてきて、もうすぐ水路を抜けることがわかる。
タイミングを見て、ファイ様が二頭の神獣に命令した。
「ファイアボール!メーラ!!爆炎を放て!!」
ソリが水路を飛び出すや否やファイアボールとメーラがソリの後ろに大爆発を起こさせて、爆風でソリが大きく空を飛んだ。
「きゃあぁぁぁぁ!!」
二匹は空中で何度も爆炎の魔法を放ち、その度にソリがものすごい勢いで、空を進んでいく。
「ら、乱暴でーす!!」
アイシスが情けない声で、叫んだ。
「早く慣れてね!
あ、ファイ!大神殿が見えてきたよ!!」
バーニスお義姉様が、ファイ様に声をかけた。
大神殿の周りには、ヴィノガン様の私兵らしき人たちが、出入り口を固めている。
普通に行ってたら、時間がかかったかもしれない。
でも、真上から窓もないのにどうやって入るの?
ファイ様が神獣たちを膝に乗せると、私に声をかけてきた。
「アイスリー!私にしがみつくんだ!
高温で遮蔽物を溶かしながら突っ込むぞ!!」
私が彼に抱きつくと、ファイ様は目を閉じた。
ソリは空中から真っ逆さまに、大神殿へと落ちていく。
屋根にぶつかる!!・・・そう思った時、神殿の屋根がマグマの熱で溶けたようにポッカリと口を開いた。そのまま地下まで、遮るものは全て溶けて口を開いていく。
すごい・・・!熱をこんなに瞬間的に操れるなんて。
感心している間に、地下室が見えてきた。
「ここだわ!!止めるわよ!!」
私は地下室の床から、雪の柱を魔法で作り出して、落ちてくる私たちのソリを受け止めさせた。サラサラの雪の効果で、衝撃を逃しながら床に降りていく。
「王太后様!!」
私たちは、ソリから飛び降りると、地下室に置かれた寝台に眠る王太后様の元へと向かった。
寝台のそばには、鎖に縛られてぐったりとしている大神官もいる。
大神官をバーニスお義姉様とアイシスに任せて、私とファイ様は王太后様の顔を覗き込んだ。
「・・・生きてる?」
「・・・あぁ、生きてる!!」
顔色はよくないけど、微かに呼吸している。
よかった!間に合ったんだ!
「飲んでくださるかしら。」
私が頭を持ち上げて差し上げると、ダイヤモンドダストがまた王太后様の胸の近くに飛び乗ってきた。
「ミャオ。」
その鳴き声に、王太后様はゆっくり目を開く。
「ダイヤモンドダスト・・・。」
あの時と同じように、彼女は呟いた。
ファイ様は、ゆっくりとレマニカルを口に含ませる。
「王太后様、どうか飲み込んでください。」
彼の声に、王太后様は喉を動かした。
飲んでくれた!!もう、大丈夫。
少しずつ微かにしていた呼吸に、力が戻ってくる。
よかった・・・本当によかった。
私は王太后様の枕を整えると、ファイ様のそばに行って、しっかりと抱き締めあった。
「やったな!
あと・・・アイスリー、心配かけてごめん。」
まだ、少し彼の体が熱い。
「大丈夫なの?レマニカルをもう少し飲んだら?私が、まだ持ってるから。」
残りのレマニカルを彼の口に入れると、大人しく飲み込んだ。
彼の顔色が戻り始めると、なんとなくバツが悪そうな顔をしだしたので、何事かとじっと見つめた。
「どうしたの?」
「いや・・・ア、アイシス皇太子によると、俺・・・じゃない、私は熱のせいで色々言ったそうだな。」
「あぁ。」
なんだ、そのこと。
彼は自分の片手で目を覆うと、やってしまったとばかりにため息をついた。
「あんな弱々しい告白なんか、するつもりなかったから・・・その・・・恥ずかしくて。幻滅してないか?」
可愛いところがあるんだな、この人も。
素直で素敵な告白だと思ったのに。
「全然してません。私のことを『最愛の女神』と呼んでくれたよね?その言葉はもう胸に刻んじゃったの。素敵な言葉をありがとう。」
にこにこしながら、彼を見る。
そう、あんなこと言われたのは、初めて。
いつもより自然に言われて、ドキドキしたもの。
それを聞いたファイ様も耳まで赤くして、軽く咳払いをすると、私を抱き寄せる腕に力がこもった。
「ゴホッ!参ったな・・・アイスリー、後で覚悟してろよ。聞いた以上は、手加減なしだ。」
「お、お手柔らかに。」
「却下。」
額をコツンとあてて、見つめ合う私たちの隣で、王太后様がパッチリと目を開けて、私たちを見た。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
読んでくださってありがとうございました。
お気に召したら、お気に入り登録してくださるとうれしいです♫ とても励みになります。
※この物語はフィクションです。表現や人物、団体、学説などは作者の創作によるものです。
ファイ様の声が聞こえて振り向くと、水が蒸発した水路に氷が張りめぐらされ、彼が水路の奥からソリに乗って戻ってきた。
よかった!意識が戻ったのね!!
アイシスが、彼の後ろからバーニスお義姉様と共に顔を出す。
「もぅ、お二人とも人使いが荒いんです。
ファイ義兄上様は、バーニス様に保護されてすぐに意識が戻ったんですけど、水路を早くソリで逆走させろと急かされて、でも水がないからここまで氷を張る羽目に・・・。」
「アイスローズちゃん、早く乗って!!」
その声にヴィノガン様が、今度はファイ様たちを睨みつける。
「裏切りものめらが!!
こんな子孫たちのために、昔命懸けで戦をしてきたと思うと、嘆かわしいわ!!」
ヴィノガン様は、水路に落ちている小石に火をつけると、ファイ様たちに向かって雨のように降らせてぶつけようとした。
「嘆かわしいのはあなたの方だ!!」
すぐにファイ様が立ち上がり、魔法で火を纏った石の礫を残らず消し炭にして、下に叩き落とした。
ヴィノガン様は諦めずに、さらに魔法を発動しようとする。
キリがない!!
私はヴィノガン様の両腕を素早く凍結させると、
「ダイヤモンドダスト!ツララ!!」
と、叫んで二匹を元の大きさに戻し、腕に抱いてソリに飛び乗った。
「待て!!心臓をよこせ!!」
ヴィノガン様は、腕の凍結を解こうと火の魔法をかけながら、私に叫ぶ。
「お断りします!失礼!!」
私はそう言い放つと、ソリに触れて出口へ向かって高速で滑らせた。
「王太后様は、大神殿の地下にいるそうよ!!でも、もう、最後の毒は打ち込んだって・・・。」
水路を高速で進むソリを操りながら、私がファイ様たちに伝えると、みんな顔を見合わせる。
「少し乱暴だけど・・・やる?ファイ。」
バーニスお義姉様がファイ様に聞くと、彼はすぐに頷いて私を見た。
彼の膝の上から、ファイアボールと、ファイアボールにそっくりなもう一頭の犬が現れる。
もしかしてこの子・・・。
「ファイアボールの番の『メーラ』だ。
アイスリー、ダイヤモンドダストとツララで、この氷のソリを思いっきり固めるんだ。
遠くまで飛ばすぞ!」
「わ、わかった。」
私はダイヤモンドダストとツララに、氷のソリの強度を最高度になるまで固めさせた。
やがて外の光が感じられてきて、もうすぐ水路を抜けることがわかる。
タイミングを見て、ファイ様が二頭の神獣に命令した。
「ファイアボール!メーラ!!爆炎を放て!!」
ソリが水路を飛び出すや否やファイアボールとメーラがソリの後ろに大爆発を起こさせて、爆風でソリが大きく空を飛んだ。
「きゃあぁぁぁぁ!!」
二匹は空中で何度も爆炎の魔法を放ち、その度にソリがものすごい勢いで、空を進んでいく。
「ら、乱暴でーす!!」
アイシスが情けない声で、叫んだ。
「早く慣れてね!
あ、ファイ!大神殿が見えてきたよ!!」
バーニスお義姉様が、ファイ様に声をかけた。
大神殿の周りには、ヴィノガン様の私兵らしき人たちが、出入り口を固めている。
普通に行ってたら、時間がかかったかもしれない。
でも、真上から窓もないのにどうやって入るの?
ファイ様が神獣たちを膝に乗せると、私に声をかけてきた。
「アイスリー!私にしがみつくんだ!
高温で遮蔽物を溶かしながら突っ込むぞ!!」
私が彼に抱きつくと、ファイ様は目を閉じた。
ソリは空中から真っ逆さまに、大神殿へと落ちていく。
屋根にぶつかる!!・・・そう思った時、神殿の屋根がマグマの熱で溶けたようにポッカリと口を開いた。そのまま地下まで、遮るものは全て溶けて口を開いていく。
すごい・・・!熱をこんなに瞬間的に操れるなんて。
感心している間に、地下室が見えてきた。
「ここだわ!!止めるわよ!!」
私は地下室の床から、雪の柱を魔法で作り出して、落ちてくる私たちのソリを受け止めさせた。サラサラの雪の効果で、衝撃を逃しながら床に降りていく。
「王太后様!!」
私たちは、ソリから飛び降りると、地下室に置かれた寝台に眠る王太后様の元へと向かった。
寝台のそばには、鎖に縛られてぐったりとしている大神官もいる。
大神官をバーニスお義姉様とアイシスに任せて、私とファイ様は王太后様の顔を覗き込んだ。
「・・・生きてる?」
「・・・あぁ、生きてる!!」
顔色はよくないけど、微かに呼吸している。
よかった!間に合ったんだ!
「飲んでくださるかしら。」
私が頭を持ち上げて差し上げると、ダイヤモンドダストがまた王太后様の胸の近くに飛び乗ってきた。
「ミャオ。」
その鳴き声に、王太后様はゆっくり目を開く。
「ダイヤモンドダスト・・・。」
あの時と同じように、彼女は呟いた。
ファイ様は、ゆっくりとレマニカルを口に含ませる。
「王太后様、どうか飲み込んでください。」
彼の声に、王太后様は喉を動かした。
飲んでくれた!!もう、大丈夫。
少しずつ微かにしていた呼吸に、力が戻ってくる。
よかった・・・本当によかった。
私は王太后様の枕を整えると、ファイ様のそばに行って、しっかりと抱き締めあった。
「やったな!
あと・・・アイスリー、心配かけてごめん。」
まだ、少し彼の体が熱い。
「大丈夫なの?レマニカルをもう少し飲んだら?私が、まだ持ってるから。」
残りのレマニカルを彼の口に入れると、大人しく飲み込んだ。
彼の顔色が戻り始めると、なんとなくバツが悪そうな顔をしだしたので、何事かとじっと見つめた。
「どうしたの?」
「いや・・・ア、アイシス皇太子によると、俺・・・じゃない、私は熱のせいで色々言ったそうだな。」
「あぁ。」
なんだ、そのこと。
彼は自分の片手で目を覆うと、やってしまったとばかりにため息をついた。
「あんな弱々しい告白なんか、するつもりなかったから・・・その・・・恥ずかしくて。幻滅してないか?」
可愛いところがあるんだな、この人も。
素直で素敵な告白だと思ったのに。
「全然してません。私のことを『最愛の女神』と呼んでくれたよね?その言葉はもう胸に刻んじゃったの。素敵な言葉をありがとう。」
にこにこしながら、彼を見る。
そう、あんなこと言われたのは、初めて。
いつもより自然に言われて、ドキドキしたもの。
それを聞いたファイ様も耳まで赤くして、軽く咳払いをすると、私を抱き寄せる腕に力がこもった。
「ゴホッ!参ったな・・・アイスリー、後で覚悟してろよ。聞いた以上は、手加減なしだ。」
「お、お手柔らかに。」
「却下。」
額をコツンとあてて、見つめ合う私たちの隣で、王太后様がパッチリと目を開けて、私たちを見た。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
読んでくださってありがとうございました。
お気に召したら、お気に入り登録してくださるとうれしいです♫ とても励みになります。
※この物語はフィクションです。表現や人物、団体、学説などは作者の創作によるものです。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜
ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。
そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、
理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。
しかも理樹には婚約者がいたのである。
全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。
二人は結婚出来るのであろうか。
「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」
透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。
そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。
最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。
仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕!
---
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる