心配症で不幸体質だと思い込む姫様は、宿敵の呪縛に立ち向かい、隣国の王子に溺愛されるルートへと進みます!

たからかた

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後編

姉妹対決

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「王太后様!!」
「王太后様、お加減は!?」

アイシスやバーニスお義姉様ねえさまも気づいて、寝台に駆け寄った。

王太后様は、みんなを見て嬉しそうに微笑ほほえんだ。

「よかったこと・・・。みんな無事で安心しました。大神官は?」

王太后様の言葉を聞いて、バーニスお義姉様ねえさまが慌てて大神官を立たせる。
弱ってるみたいだけど、この人も無事だったみたいね。

大神官はよろめきながら、寝台の下にひざまずいた。

「王太后様・・・どうかお許しください。
あなたの意に背き、アイスローズに非道な焼印の魔法をかけてしまいました。」

「ヴィノガンが、あなたに強要したのでしょう?」

「はい、王太后様。
私が若い頃に犯した罪を暴露すると言われて、己の立場を守るために、命令を実行いたしました。」

「では、すぐこの場で解呪なさい。」

「は、はい!」

大神官は私に近づくと、焼印を押してある方の手を取り、呪文を唱えた。

すると、焼印が乾いた土のようにポロポロと崩れて、消えていく。

やった・・・!やっと、本当に解放されたんだ!!

ファイ様もそれを見て、私を嬉しそうに抱き上げると、その場でクルクル回った。

「アイスローズ。」

王太后様も微笑みながら、私に声をかけてきた。

「は、はい。王太后様。」

私はファイ様に降ろしてもらって、彼女の寝台の下にひざまずいた。

「あなたには、無用な苦しみをいてしまいました。どうか、ゆるしてください。」

王太后様は、寝台から起き上がると、バーニスお義姉様ねえさまに支えられながら、私に頭を下げた。

「いいえ!そんな・・・王太后様!!」

私は恐縮して、深く頭を下げる。
王太后様は、ゆっくり頭を上げると、静かな声で話し始めた。

「顔をお上げください、アイスローズ
あなたには、感謝しなくてはならないのです。
あなたがもし、母国に助けを求めて声をあげていたら、今頃泥沼のいくさが始まっていたでしょう。」

「そ、そんな。」

ミユキにも同じようなことを言われた。
背筋に冷たい汗が流れていく。

「戦は始めることは容易たやすく、終わらせることがとても難しいのです。
憎悪に既得権益、利害関係・・・民の犠牲。
ヴィノガンは、そこを理解していません。
そんな闇の部分から、目をらしているから。」

「闇・・・ですか。」

「そうです。そして、私もまた姉妹であるヴィノガンを切り捨てることができず、彼女を野放しにしてしまった罪があります。
それが今につながっているのです。」

王太后様がそう言った時、大勢がやってくる足音が近づいてきた。

「ファイバーン、アイスローズ。私を挟むように両側に立ちなさい。」

王太后様に言われて、私たちは言われた通りに立つ。

神獣たちも寝台の周りに座り込んだ。

やがて狭い地下室に、王様、王妃様、ファイ様のご兄弟、ヴィノガン様と彼女の私兵、おまけに有力貴族たちまで押しかけてくる。

「母上!!」

「王太后様!目を覚まされましたのね!」

王様と王妃様が、嬉しそうにひざまずいた。
有力貴族たちも次々とひざまずき、唯一立っていたのは、ヴィノガン様だった。

私が凍らせた腕は戻ってない。
彼女の魔力が足りないんだ・・・。

有力貴族たちは、私がそこにいることに驚いていた。
そうよね、私はレドリシアに変装していたもの。

王太后様は、ヴィノガン様をじっと見ている。

「ヴィノガン、随分と私の名前を使って勝手をしたようですね。」

「お姉様・・・いえ、ファンティーヌ。
わらわは国を思って、動いていたのです。」

「あなたは、アイスローズ妃を生贄いけにえにして、いくさを起こしたかっただけではないのですか?」

二人の姉妹が火花を散らしている。
有力貴族たちが、オロオロしたように王太后様の方を見た。

「お、王太后様、今回のこと全て王太后様のご意志だと我々は言われて、それに従ってきただけでございますっ。」

「そうでございます。
我々は忠実な臣下でございますれば・・・。」

彼らは口々に弁解しながら、ヴィノガン様の後ろから王太后様の寝台へとにじり寄ろうとする。

「お黙りなさい!」

王太后様が一喝した。
ヴィノガン様とは、また違った迫力。

周囲が、水を打ったようにシーンとなった。

「お前たちもお前たちです。
先王のご遺言に背き、王に逆らった。
私は常日頃つねひごろから、王の言葉は私の言葉より重いと言っていたはずです!!」

有力貴族たちは、誰も頭を上げない。
ヴィノガン様だけが、尊大な態度で王太后様を見ている。

この人は、本当に誰に対しても偉そうにしてる。まるで自分は王だと言いたいみたい。

「王が道を誤れば、それを正すのが臣下の役目。何も間違ってはおりません。」

ヴィノガン様は、一切の迷いなく言い切った。

「間違いとは?」

王太后様も、かかってこいといわんばかり。

「それは、氷の民の血を王室に入れようとしたことです。
王太后様は、一体どれほどの同胞が、あのいくさで犠牲になったかもうお忘れになられたか?」

「それを言うなら、私たちも同じです。
多くの氷の民を犠牲にしました。」

ヴィノガン様は忌々しそうに、床を蹴り付けた。

「何故止めるのです?
同胞の恨みを晴らすには、ブリザードゥ国を焼き払い、最後の一人まで葬り去らねば!
そのための生贄いけにえが、向こうから来たのです!」

ヴィノガン様が、私をにらみつける。
私はきっと彼女の前では、『氷の民』という記号だ。

私個人ではなく、属性に対する恨みなのだろうか。

王太后様は、はぁ、と、ため息をついて、あわれむような目をする。

「彼女は、戦の生贄いけにえではありません。
共に手をたずさえて、未来を生きるための尊い同胞なのです。」

ヴィノガン様はそれを聞いて、ゲタゲタと笑い出した。

「同胞?さすがは、敵の男と恋に落ちた恥知らずな女の言うことは、一味違いますわね!」

有力貴族の中でも、高齢のものは下を向き、他の貴族たちは何事かと周りを見ている。

やっぱり、アイシュペレサとの恋は周りの賛同を得にくかったんだ。
この重い空気が、それを物語っている。

「敵の男?」

「黙れ!王太后様の御名みなに傷をつけるな!」

ざわざわと、貴族たちがお互いを見て騒ぎ出す。
王太后様は、一度目を閉じてカッと目を開くと周りを見回した。

「皆、聞け。先王と結婚する前の話だ。
私はブリザードゥ国とのいくさをしていたあの時、敵国の王弟アイシュペレサと戦場で出会い、深い仲になった。」

地下室の中が騒がしくなって、有力貴族たちの中には、けがらわしいものでも見るような目で王太后様を見る人たちまで出てきた。

王太后様は、そんな彼らの目を見ても少しも動じない。素敵・・・こんな人になりたい。


「だが、軍事機密等の交換やいくさの手加減をしたことはない。信じなくとも構わぬ。
情も命も本気でやり取りした、そんな仲だった。」

・・・迷いのないぐな王太后様の瞳。
戦場で出会う以上、ただお互いを想い合っただけじゃない。きっと、憎んでもいたはずだ。

憎みながら愛し合う。人の想いは、決して単純ではないことを思い知らされる。


~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

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※この物語はフィクションです。表現や人物、団体、学説などは作者の創作によるものです。


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