心配症で不幸体質だと思い込む姫様は、宿敵の呪縛に立ち向かい、隣国の王子に溺愛されるルートへと進みます!

たからかた

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後編

真実は塗り潰せない

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それでもヴィノガン様だけが、周りの空気を代弁するかのように嘲笑あざわらった。

「美談のように語るが、敵と情を通じていただけでも汚点ですぞ?王太后様。だからこそ、この氷の民をかばいなさるのでしょう?」

王太后様は、んだ目でヴィノガン様を見つめ返す。

「そうではない。氷の国、ブリザードゥ国との和解は、民の悲願。長い外交努力の果てに、ようやくアイスローズを迎え入れられるようになった今を、失ってはならぬのだ。」

ヴィノガン様は私を見て、納得のいかない顔で反論した。

「は!あのまま戦を続ければ勝てたものを、アイシュペレサに禁断の魔法を止めてもらった恩義を大袈裟おおげさにとりすぎたのです。先王の失策と言わざるを得ませぬ。」

その声に、ヒエン公爵とボムパニス公爵が立ち上がり、片手を胸に当てて王太后様にお辞儀をした。

「あのいくさは、こちらが骨を砕けば、向こうは血を抜いてくるような、そんな泥沼のいくさでした。長引くいくさは、敵よりも国民の貧困による反乱を招き、双方の国は自国の民によって滅ぼされかけたのです。決して繰り返してはなりませぬ。」

「王太后様の御心おこころが、お変わりになられたわけではないと知り、安心いたしました。我らは、火の試練を終えたアイスローズ皇太子妃に改めて忠誠を誓います。」

有力貴族一同が立ち上がり、同じように胸に片手をあてると、私に向かってお辞儀をした。

「異議あり!」

ヴィノガン様は、再び片足をダン!と床に蹴り付けて貴族たちをにらみ返す。 

まだ文句があると言わんばかりの表情に、難癖なんくせをつける気だということがわかる。

「何故です?ヴィノガン様。アイスリーはきちんと火の試練を終えました。それが王家の一員として認める条件だと、おっしゃったのに。」

ファイ様が、ヴィノガン様に向かって尋ねると、彼女は私の腰に下げた皮袋を見つめた。
・・・これを持ち出す気なのね。

「こやつは、アイシュペレサと同じことをしようとしている。我が国に復讐する気なのだ。」

部屋の中にいる人々が、何事かと私に注目し始めた。王太后様も皮袋に気づいて、私を見上げる。

「アイスローズ、それはなんです?」

王妃様も、皆の視線の先にある皮袋を指さしてきた。

アイシュペレサ・・・見守っていて。

私はファイ様の方を見て、彼がうなずくのを確認すると、周囲の人々の前で皮袋を開いて中身を取り出してみせた。

「これは火の魔神の心臓の半分です、王妃様。
ダンジョンの中で、私はアイシュペレサが残したメッセージを聞き、最後に彼によって魔神に託されたこの心臓を受け取ってきたのです。」

そこにいる全員が、息を呑むことがわかる。
みんな初めて目にするその心臓に、目を丸くしていた。

「半分だと?まあいい、皆、見たか?
こやつらは二代に渡り、この国であの禁断の魔法を発動する気なのだ!!氷の民なんぞロクなものではない。捕らえろ!」

ヴィノガン様の私兵が動こうとした時、王様が片手を上げた。

「待て!!動くな!そのつもりなら、もう発動しているはずだ。ここに持ってきたことには、意味があるのだろう?アイスローズ。」

彼の問いに私は頷く。
ヴィノガン様だけが、イライラしたようにして、心臓から目を離さない。
のどから手が出るほど欲しいものだもの。

その様子を見ながら、王太后様も私と心臓を交互に見つめて、私の言葉を待っている。

「はい、かつてアイシュペレサが、魔神を倒して心臓を取り出したのも、ヴィノガン様から教えられたからです。王太后様が魅入みいられし者だ、と。心臓には魔力を剥奪しなくても、魅入られし者を解放する力があります。」

王太后様はそれを聞くと、震える手をもう片方の手で握り締めて、体を乗り出してきた。

「どういうことですか?アイスローズ
アイシュペレサは、私のために魔神の心臓をとったのですか?」

私はダンジョンで見た、アイシュペレサのメッセージを伝えた。

氷の民にしか反応しないあの魔法の鏡を見れたのは、私と、一緒にいたファイ様だけ。

王太后様は、信じられないという顔でヴィノガン様を見ている。

「王太后様が、魅入みいられし者かどうかは、アイシュペレサも疑問に思っていました。
でも、見分けられるのは魔神だけ。
魔神を連れ出せない以上、心臓を取るしかなかったんです。」

まさか、当時のアイシュペレサ本人がメッセージを残すなんて、誰も思っていなかったんじゃないかしら。

私の言葉に、ヴィノガン様はワナワナと震えだした。

「あの男は試練に敗北し、魅入みいられし者となったから、心臓を持ち出したのだ!そして力の誘惑に負けて氷の火炎を撃ち、その恐ろしさに自分で始末して果てた!ボムパニス公、ヒエン公、そなたらも見たであろう!!」

ヴィノガン様に名指しされた二人の公爵は、顔を見合わせると、

「私どもは、アイシュペレサをダンジョンの入り口まで送ったあと、出口でヴィノガン様が従者と共に待機していらっしゃったこと、そして、氷の火炎を止めた彼の姿しか知りませぬ。」

「はい、それに氷の火炎は、火の禁断の魔法です。氷の民に火の魔力はないので、そもそも彼にも、アイスローズ妃にも、不可能な魔法ですぞ?」

と、説明してくれた。
氷の火炎は火の魔法なのね。『氷』なんてつくから、てっきり氷の魔法なのかと誤解してた。

ヴィノガン様はあせったように私を見る。

「な・・・!試練を終えても、火の魔法は使えないだと!?」

私はコクンと頷く。

「はい、種火を用いてその勢いや方向を操ることはできますが、火の魔法を自分から発動することはできません。」

そう、火の魔力を宿すわけじゃないから、結局火の魔法は使えない。
これは氷の民にしかわからない。

ヴィノガン様は悪くなる状況に憤慨して、大声で叫んだ。

「えぇい!皆の者よく聞け!!
氷の民は、冷酷で残酷な民だ!見よ!この腕を!!これはよこしまなアイスローズによって、凍結させられた。水路で迷っていたところを保護しようとしただけなのに!」

凍った腕を見せられた貴族たちは、驚いて私の方を見る。

「どういうことだ?」

「ヴィノガン様を攻撃したのか?」

ざわざわと疑問を口にする貴族たちに、王太后様が声をかける。

「静かに!まずは話を聞きましょう。アイスローズ、ヴィノガンの腕を凍結させた理由の説明を。」

「わかりました。こちらをご覧ください。
ツララ、ダイヤモンドダスト、氷の魔法の鏡を壁にはりなさい。」

私の指示で、二匹は近くの壁一面に大きな氷の魔法の鏡を魔力を使って作り出す。

「私は、アイシスが極秘に招かれて、利用されるという話をレドリシアから聞きました。彼を保護するために変装して帰還し、彼がいる王太后様のお部屋に行きましたが、罠が仕掛けられていて、追手に追われて水路に避難したのです。」

私が腕を振ると、魔法の鏡に私と彼女の戦いの様子と、ヴィノガン様がアイシュペレサに心臓を取らせ、氷の火炎を撃ったことを認める話をしている場面が映し出された。

これが動かぬ証拠よ。
今度こそ認めてもらう!


~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

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※この物語はフィクションです。表現や人物、団体、学説などは作者の創作によるものです。




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