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後編
魅入られし者は誰か
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その場にいる全員が、息を呑んでヴィノガン様を見る。
「ご自身でアイスリーを殺そうとしましたね、ヴィノガン様・・・もはやあなたを、身内とは思いません。」
ファイ様が眉間に皺を寄せて、立ち昇る殺気を隠そうともしない。
「ヴィノガン・・・お前・・・。
アイシュペレサを騙して、心臓を取らせた。そして、氷の火炎を撃った・・・。」
王太后様の目が、冷たく光る。
ヴィノガン様は周りを睨み返すと、壁のそばまで歩いていって、氷の鏡を蹴り付けた上に、火の魔法で溶かそうとした。
「無駄です、ヴィノガン様。」
私が声をかけると、彼女は振り向かずにさらに火力を上げて溶かそうとする。
それでも氷は溶けずに、自分のやったことを告白する場面が繰り返し映し出されて、彼女は雄叫びを上げた。
「わあぁぁぁぁ!氷の民ごときに、虫ケラ如きに・・・潰されてたまるか!!妾は英雄だ!
妾こそこの国の要にして、真の王になるべき存在だったのだ!!」
それでも氷の鏡は溶けない。
彼女は、狭い室内で大きな火炎を魔法で生み出したので、みんなが一斉に壁際に避難し、熱さから逃れようとした。
「ヴィノガン!やめよ、見苦しい!!」
王太后様が一喝した。
ヴィノガン様が王太后様を振り返る。
「見苦しい、だと?」
「そうだ、ヴィノガン。腕の凍結の魔法すら自分で破れぬのなら、勝負は決まっている。
つまりお前は、アイスローズ妃より弱いということだ。」
「弱い・・・?妾が?戦場を駆け抜けて、輝かしい戦功を挙げてきた妾が?」
ヴィノガン様は、震えながら王太后様のところに歩いてくる。
「嘘だ・・・。妾は敵に恐れられ、味方に賛美された英雄だ・・・。なのにこんな小娘にも勝てぬと?」
「ヴィノガン・・・。お前は、アイスローズ妃を見下しすぎる。ファイと同じく、神獣の瞳を持つ存在なのだ。彼女の力に拮抗できるのは、ファイしかいないのだぞ?」
「認めぬ・・・妾はこの氷の民に敵わぬなど、認めぬ。もう一度あの大戦を引き起こし、英雄として返り咲いてやる・・・妾の望む居場所を作り出してやるのだ。」
そして一歩一歩私に近づいてくる。
ファイ様がすぐ私の横に駆けつけてきて、肩を抱き寄せた。
ヴィノガン様は、歩きながら空中にいくつもの火球を作り出し、全て私めがけてぶつけようとする。
すぐに隣のファイ様が、全ての火球を魔法のシールドで受け止めて無効化した。
かなり魔力を消費しているはずなのに、ヴィノガン様は、まだ余力を持って歩いてくる。
「うぅ~・・・魔神の心臓をよこせ、アイスローズ。魅入られし者になったかもしれぬお前が、持つべきではない。」
「嫌です。私は魅入られし者になってない。
そして、王太后様も、もちろん違う。」
それを聞くと、ヴィノガン様は再び頭上に巨大な火の塊を魔法で作り出した。
「なぜ、わかる!?見分けられるのは・・・。」
私は自分の影を見つめた。
「そう・・・魔神だけ。」
次の瞬間、私の影から魔神が飛び出してきた。
私とファイ様と、王家の人々以外は、驚いて部屋の端に駆け寄る。
ヴィノガン様は、発動しかけた魔法を打ち消して、自分の私兵の後ろに隠れた。
「な、なんだ!?」
その場にいる全員が、驚いていたけれど、試練を受けた王家の人々は、魔神を知っているので、そこまで驚かない。
「何故だ!!何故魔神がここにいる!?」
ヴィノガン様が怯えきって叫んだ。
私は魔神を見ながら、静かに彼女に言う。
「私や王太后様が、魅入られし者ではないと証明するために。」
魔神の放つ光を浴びて、王家の人々の額に、魔神を服従させた証の印が浮かび上がる。
王太后様の額にも、ファイ様たちと同じ印が浮かんでいた。
ファイ様が、私を見て微笑むと、
「アイスリーにもある。氷の試練も受けているから、二つ浮かんでる。」
と、言った。自分では見えないけど、あるならそれでいい。
私は隠れたまま出てこないヴィノガン様に、声をかけた。
「ヴィノガン様?ちゃんと見てください。
私も王太后様も、試練を終えた証が見えます。」
でも、彼女は出てこない。
やっぱり、彼女は・・・!
私は魔神に話しかけた。
「この中に“魅入られし者”はいる?」
魔神はゆっくりと、その目から赤い光の線を伸ばしていって、ヴィノガン様のいる場所を照らしていく。
彼女の周りにいた私兵たちも、赤い光のにあたるのを嫌がって避けたために、壁際まで避難していたヴィノガン様の姿が、はっきりと見えた。
魔神の光は彼女の額に、ピタリとあたっている。
「ううっ・・・見るな・・・見るでない!!」
ヴィノガン様は必死に額を隠していた。
王太后様は、王の方を向いて頷くので、王様が貴族たちに命令した。
「ヴィノガン叔母上を、王太后様の前に連行せよ!!」
貴族たちは、慌ててヴィノガン様の両脇を抱えると、私たちの前に連れてくる。
「離せ!離せ、妾は王太后様の妹で、王の叔母だ!!うぬらが手を触れていい存在ではない!!」
再び頭上に炎の塊を魔法で作り出して、周りに放とうとするので、私は氷の魔法で炎を凍結させて、粉々に砕いた。
往生際が悪いんだから!
「くそ!氷の民がぁ!!
覚えておけ!骨も残らぬほど燃やし尽くしてやる!!」
目をギラギラさせたヴィノガン様の額には、レドリシアと同じ文字が浮かび上がっている。
「王太后様・・・!これは?」
文字に気づいた周りの貴族たちが、王太后様の方を見る。
「・・・古代文字で『敗北者』と書いてある。
ヴィノガン・・・お前は“魅入られし者”になっていたか・・・。試練に敗れていたのだな。」
王太后様は、悔しそうな目で彼女を見ている。
周りの人々がざわめきだして、恐れたように彼女から離れていく。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
読んでくださってありがとうございました。
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※この物語はフィクションです。表現や人物、団体、学説などは作者の創作によるものです。
「ご自身でアイスリーを殺そうとしましたね、ヴィノガン様・・・もはやあなたを、身内とは思いません。」
ファイ様が眉間に皺を寄せて、立ち昇る殺気を隠そうともしない。
「ヴィノガン・・・お前・・・。
アイシュペレサを騙して、心臓を取らせた。そして、氷の火炎を撃った・・・。」
王太后様の目が、冷たく光る。
ヴィノガン様は周りを睨み返すと、壁のそばまで歩いていって、氷の鏡を蹴り付けた上に、火の魔法で溶かそうとした。
「無駄です、ヴィノガン様。」
私が声をかけると、彼女は振り向かずにさらに火力を上げて溶かそうとする。
それでも氷は溶けずに、自分のやったことを告白する場面が繰り返し映し出されて、彼女は雄叫びを上げた。
「わあぁぁぁぁ!氷の民ごときに、虫ケラ如きに・・・潰されてたまるか!!妾は英雄だ!
妾こそこの国の要にして、真の王になるべき存在だったのだ!!」
それでも氷の鏡は溶けない。
彼女は、狭い室内で大きな火炎を魔法で生み出したので、みんなが一斉に壁際に避難し、熱さから逃れようとした。
「ヴィノガン!やめよ、見苦しい!!」
王太后様が一喝した。
ヴィノガン様が王太后様を振り返る。
「見苦しい、だと?」
「そうだ、ヴィノガン。腕の凍結の魔法すら自分で破れぬのなら、勝負は決まっている。
つまりお前は、アイスローズ妃より弱いということだ。」
「弱い・・・?妾が?戦場を駆け抜けて、輝かしい戦功を挙げてきた妾が?」
ヴィノガン様は、震えながら王太后様のところに歩いてくる。
「嘘だ・・・。妾は敵に恐れられ、味方に賛美された英雄だ・・・。なのにこんな小娘にも勝てぬと?」
「ヴィノガン・・・。お前は、アイスローズ妃を見下しすぎる。ファイと同じく、神獣の瞳を持つ存在なのだ。彼女の力に拮抗できるのは、ファイしかいないのだぞ?」
「認めぬ・・・妾はこの氷の民に敵わぬなど、認めぬ。もう一度あの大戦を引き起こし、英雄として返り咲いてやる・・・妾の望む居場所を作り出してやるのだ。」
そして一歩一歩私に近づいてくる。
ファイ様がすぐ私の横に駆けつけてきて、肩を抱き寄せた。
ヴィノガン様は、歩きながら空中にいくつもの火球を作り出し、全て私めがけてぶつけようとする。
すぐに隣のファイ様が、全ての火球を魔法のシールドで受け止めて無効化した。
かなり魔力を消費しているはずなのに、ヴィノガン様は、まだ余力を持って歩いてくる。
「うぅ~・・・魔神の心臓をよこせ、アイスローズ。魅入られし者になったかもしれぬお前が、持つべきではない。」
「嫌です。私は魅入られし者になってない。
そして、王太后様も、もちろん違う。」
それを聞くと、ヴィノガン様は再び頭上に巨大な火の塊を魔法で作り出した。
「なぜ、わかる!?見分けられるのは・・・。」
私は自分の影を見つめた。
「そう・・・魔神だけ。」
次の瞬間、私の影から魔神が飛び出してきた。
私とファイ様と、王家の人々以外は、驚いて部屋の端に駆け寄る。
ヴィノガン様は、発動しかけた魔法を打ち消して、自分の私兵の後ろに隠れた。
「な、なんだ!?」
その場にいる全員が、驚いていたけれど、試練を受けた王家の人々は、魔神を知っているので、そこまで驚かない。
「何故だ!!何故魔神がここにいる!?」
ヴィノガン様が怯えきって叫んだ。
私は魔神を見ながら、静かに彼女に言う。
「私や王太后様が、魅入られし者ではないと証明するために。」
魔神の放つ光を浴びて、王家の人々の額に、魔神を服従させた証の印が浮かび上がる。
王太后様の額にも、ファイ様たちと同じ印が浮かんでいた。
ファイ様が、私を見て微笑むと、
「アイスリーにもある。氷の試練も受けているから、二つ浮かんでる。」
と、言った。自分では見えないけど、あるならそれでいい。
私は隠れたまま出てこないヴィノガン様に、声をかけた。
「ヴィノガン様?ちゃんと見てください。
私も王太后様も、試練を終えた証が見えます。」
でも、彼女は出てこない。
やっぱり、彼女は・・・!
私は魔神に話しかけた。
「この中に“魅入られし者”はいる?」
魔神はゆっくりと、その目から赤い光の線を伸ばしていって、ヴィノガン様のいる場所を照らしていく。
彼女の周りにいた私兵たちも、赤い光のにあたるのを嫌がって避けたために、壁際まで避難していたヴィノガン様の姿が、はっきりと見えた。
魔神の光は彼女の額に、ピタリとあたっている。
「ううっ・・・見るな・・・見るでない!!」
ヴィノガン様は必死に額を隠していた。
王太后様は、王の方を向いて頷くので、王様が貴族たちに命令した。
「ヴィノガン叔母上を、王太后様の前に連行せよ!!」
貴族たちは、慌ててヴィノガン様の両脇を抱えると、私たちの前に連れてくる。
「離せ!離せ、妾は王太后様の妹で、王の叔母だ!!うぬらが手を触れていい存在ではない!!」
再び頭上に炎の塊を魔法で作り出して、周りに放とうとするので、私は氷の魔法で炎を凍結させて、粉々に砕いた。
往生際が悪いんだから!
「くそ!氷の民がぁ!!
覚えておけ!骨も残らぬほど燃やし尽くしてやる!!」
目をギラギラさせたヴィノガン様の額には、レドリシアと同じ文字が浮かび上がっている。
「王太后様・・・!これは?」
文字に気づいた周りの貴族たちが、王太后様の方を見る。
「・・・古代文字で『敗北者』と書いてある。
ヴィノガン・・・お前は“魅入られし者”になっていたか・・・。試練に敗れていたのだな。」
王太后様は、悔しそうな目で彼女を見ている。
周りの人々がざわめきだして、恐れたように彼女から離れていく。
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