心配症で不幸体質だと思い込む姫様は、宿敵の呪縛に立ち向かい、隣国の王子に溺愛されるルートへと進みます!

たからかた

文字の大きさ
59 / 64
後編

首謀者の末路

しおりを挟む
「試練に敗れた?それは王家では恥になりませぬか?」

「本来は自己申告して、魔力剥奪まりょくはくだつの刑を受けねばなりませぬ。そうせねば、いつ魔物に変わってもおかしくありませぬ。」

貴族たちが、ボソボソと互いに話し合う中、私は王太后様の方を見た。

「ここに魔神の心臓があります。これを使えば、ヴィノガン様を解放することができます。」

私が言うと、王太后様は口を引き結んでヴィノガン様と見つめ合う。
長い沈黙の中、二人は何を思ったんだろう。

そこへ大神官が立ち上がり、頭を下げると、私の持つ魔神の心臓を指さした。

「どうか・・・心臓を使っての解放はお控えください。この方は、その昔自分からその機会を放棄したのです。」

王太后様は、それを聞いて一瞬眉をひそめたけれど、ヴィノガン様から王様へと視線を移す。

「戦乱の功績は確かに大きい。だが・・・和平の使者だったアイシュペレサをだまし、自国を危険にさらし、アイスローズおよびアイシス皇太子を害した罪もまた大きい。王よ、私の妹であることは、考慮せずに決めなさい。」

そう言って、王様に向かって片手を上げる。
王様はうなずくと大神官を見て、

「叔母上は王族の身分を剥奪はくだつ、魔力も剥奪はくだつして、投獄する。」

と、言った。大神官は、

「わかりました。この場ですぐに?」

と聞くので、王様は再び頷いた。

「構わぬ。魅入みいられし者は、いつかはダンジョンの魔神を守る魔物に変わってしまう。せめて人のままでいてくれねば、子孫が危ない。」

王様の言葉に、大神官が祝詞のりとをあげると、ヴィノガン様の額の文字が薄くなって消えていった。

魔神はそれを見届けると、その場から遠くへと飛び去っていく。ダンジョンに・・・レドリシアのそばへ戻ったんだ・・・。

空へと消えた魔神を見送って、視線を戻すと、ヴィノガン様の額から、赤い宝石がポロリと出てきて、床に落ちて砕けた。

彼女の魔力の結晶だわ・・・。魔力が剥奪はくだつされたのね。

「あぁぁぁ・・・!!わらわの魔力が!!
お姉様・・・!ファンティーヌ!!なんて残酷なことを許した?わらわよりその氷の民をとるのか?」

膝から崩れ落ちるように、脱力するヴィノガン様の両腕の凍結を、私はそっと解いた。

王太后様は、彼女を見てため息をつく。

「お前は戦う力に酔いすぎたのだ、ヴィノガン。十分にお前は英雄として名声があったのに。火の試練に負けたことも、私にだけでも打ち明けてくれていたら・・・。」

ヴィノガン様は座り込んで床に手をつくと、首を横に振った。

「言えるものか・・・。お姉様は人望があり、戦略も周囲が舌を巻くほどだった。そんなあなたに勝てるのは、魔法だけ。その魔法の試練に敗れたなんて・・・その先にあるのが魔力の剥奪なんて・・・わらわに死ねというようなもの。」

ヴィノガン様は静かに目を閉じて、涙を流した。魅入みいられし者から解放されたせいか、少し穏やかになっている。

「連れて行け、投獄せよ。他の関係者も洗いだし、調査の上処罰する。」

王様の一声に、周囲が動いてヴィノガン様を連行させて退室していく。

ふと、王妃様が私を見て、

「アイスローズ妃、レドリシアはどうなりましたか?」

と聞くので、

「あ、ダンジョンで凍結させています。
死んではいません。」

と、答えた。髪を引っ張ったり、ファイ様を取ろうとしたり、なんならずっと凍結させておきたいくらい。

「彼女も、処罰せねばなりません。ダンジョンの出口に兵を向かわせますので、凍結の魔法を解いておいてください。」

「はい・・・。」

王妃様に言われて、私は渋々凍結の魔法をその場で解いておいた。そのうち出てくるでしょ。

王妃様と貴族たち、ヴィノガン様の私兵たちも王様に促されて退室して行った。

室内には王太后様と大神官、ファイ様の兄弟姉妹と、アイシス、私、ファイ様だけになった。

「終わりましたね・・・。」

王太后様が、大きく息を吐いてつぶやくように言った。

プロメテクスお義兄様にいさま が、王太后様を抱え上げ、部屋を出ようとすると、大神官が声をかけてきた。

「お待ちくださいませ。皆さま、どうか、このまま中つ森のルーク湖へと向かいましょう。
この魔神の心臓の力を使わねばならぬのです。」

大神官の真剣な声に、私たちは顔を見合わせた。
王太后様も怪訝けげんな表情で、彼を見る。

「ルーク湖?何故だ?あそこは・・・。」

「彼を解き放つ時が来たのです、王太后様。」

その言葉に、王太后様の顔がゆがむ。
彼?誰のことかしら。

「とにかく、出かけるなら着替えを先にしましょう。王様にもお断りを入れてきます。」

アポロニお義兄様にいさまが、私たちの方を見て言うので、みんな急いで着替えてルーク湖へと向かった。

ルーク湖は、中つ森の迎賓館の近くにある。
闇狼ダークウルフもいるので、大神官が大きな結界をはり、私たちはようやく馬車を降りた。

「いつ見ても、綺麗な湖ですねー。」

アイシスが背伸びをする。
呑気なんだから、もう。

でも、私もこんな近くに来たのは初めて。
いつも迎賓館の窓から見るくらいだもの。

王太后様も、車椅子をアポロニお義兄様に押してもらいながら、顔にかかる髪の毛を耳にかけて、眺めている。

どうしてルーク湖に来たんだろう。
あれ?『ルーク』、てたしかアイシュペレサのミドルネーム?

「アイスローズ、気づいたようですね?
そう、ここは、アイシュペレサが氷の火炎を飲み込みながら亡くなった場所です。彼の力はこの湖の底で、いまくすぶる氷の火炎を封じています。」

「ええ!今もですか?」

「そう、世界を燃やし尽くすまで止まらぬのが、氷の火炎。神獣の瞳を持つ彼の力をもってして、ようやく留められている。それほど恐ろしい魔法なのです。」

私は王太后様の話を聞いて、美しく輝く湖面を見つめながら、その恐ろしさに身震いした。

それでも魔神の心臓の半分の威力なのに。ルーク湖の湖面は、時々白い煙のようなものが立ち上っている。
気温の関係かしら?

「封印の力が弱まってきているのです。あの日から時が流れ過ぎましたから。
時々私がここにきて、話しかけるとまたその力が戻る。ひそかにそれを繰り返してきたのですが・・・。」

王太后様は、湖面をにらんで言った。

そこへ大神官がやってきて、私とファイ様の力を借りたいとお願いされた。


~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

読んでくださってありがとうございました。
お気に召したら、お気に入り登録してくださるとうれしいです♫ とても励みになります。


※この物語はフィクションです。表現や人物、団体、学説などは作者の創作によるものです。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

皇帝陛下の愛娘は今日も無邪気に笑う

下菊みこと
恋愛
愛娘にしか興味ない冷血の皇帝のお話。 小説家になろう様でも掲載しております。

次期騎士団長の秘密を知ってしまったら、迫られ捕まってしまいました

Karamimi
恋愛
侯爵令嬢で貴族学院2年のルミナスは、元騎士団長だった父親を8歳の時に魔物討伐で亡くした。一家の大黒柱だった父を亡くしたことで、次期騎士団長と期待されていた兄は騎士団を辞め、12歳という若さで侯爵を継いだ。 そんな兄を支えていたルミナスは、ある日貴族学院3年、公爵令息カルロスの意外な姿を見てしまった。学院卒院後は騎士団長になる事も決まっているうえ、容姿端麗で勉学、武術も優れているまさに完璧公爵令息の彼とはあまりにも違う姿に、笑いが止まらない。 お兄様の夢だった騎士団長の座を奪ったと、一方的にカルロスを嫌っていたルミナスだが、さすがにこの秘密は墓場まで持って行こう。そう決めていたのだが、翌日カルロスに捕まり、鼻息荒く迫って来る姿にドン引きのルミナス。 挙句の果てに“ルミタン”だなんて呼ぶ始末。もうあの男に関わるのはやめよう、そう思っていたのに… 意地っ張りで素直になれない令嬢、ルミナスと、ちょっと気持ち悪いがルミナスを誰よりも愛している次期騎士団長、カルロスが幸せになるまでのお話しです。 よろしくお願いしますm(__)m

10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました

専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

疎遠だった叔父の遺産が500億円分のビットコインだった件。使い道がないので、隣の部屋の塩対応な美少女に赤スパ投げまくってる件

月下花音
恋愛
貧乏大学生の成瀬翔は、疎遠だった叔父から500億円相当のビットコインが入ったUSBメモリを相続する。使い道に困った彼が目をつけたのは、ボロアパートの薄い壁の向こうから聞こえる「声」だった。隣人は、大学で「氷の令嬢」と呼ばれる塩対応な美少女・如月玲奈。しかしその正体は、同接15人の極貧底辺VTuber「ルナ・ナイトメア」だったのだ! 『今月ももやし生活だよぉ……ひもじい……』 壁越しに聞こえる悲痛な叫び。翔は決意する。この500億で、彼女を最強の配信者に育て上げようと。謎の大富豪アカウント『Apollo(アポロ)』として、5万円の赤スパを投げ、高級機材を即配し、彼女の生活を神の視点で「最適化」していく。しかし彼はまだ知らなかった。「金で買えるのは生活水準だけで、孤独は埋められない」ということに。500億を持った「見えない神様」が、神の座を捨てて、地上の女の子の手を握るまでの救済ラブコメディ。

苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」 母に紹介され、なにかの間違いだと思った。 だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。 それだけでもかなりな不安案件なのに。 私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。 「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」 なーんて義父になる人が言い出して。 結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。 前途多難な同居生活。 相変わらず専務はなに考えているかわからない。 ……かと思えば。 「兄妹ならするだろ、これくらい」 当たり前のように落とされる、額へのキス。 いったい、どうなってんのー!? 三ツ森涼夏  24歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務 背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。 小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。 たまにその頑張りが空回りすることも? 恋愛、苦手というより、嫌い。 淋しい、をちゃんと言えずにきた人。 × 八雲仁 30歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』専務 背が高く、眼鏡のイケメン。 ただし、いつも無表情。 集中すると周りが見えなくなる。 そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。 小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。 ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!? ***** 千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』 ***** 表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101

【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました

ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。 名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。 ええ。私は今非常に困惑しております。 私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。 ...あの腹黒が現れるまでは。 『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。 個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。

処理中です...