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後編
首謀者の末路
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「試練に敗れた?それは王家では恥になりませぬか?」
「本来は自己申告して、魔力剥奪の刑を受けねばなりませぬ。そうせねば、いつ魔物に変わってもおかしくありませぬ。」
貴族たちが、ボソボソと互いに話し合う中、私は王太后様の方を見た。
「ここに魔神の心臓があります。これを使えば、ヴィノガン様を解放することができます。」
私が言うと、王太后様は口を引き結んでヴィノガン様と見つめ合う。
長い沈黙の中、二人は何を思ったんだろう。
そこへ大神官が立ち上がり、頭を下げると、私の持つ魔神の心臓を指さした。
「どうか・・・心臓を使っての解放はお控えください。この方は、その昔自分からその機会を放棄したのです。」
王太后様は、それを聞いて一瞬眉を顰めたけれど、ヴィノガン様から王様へと視線を移す。
「戦乱の功績は確かに大きい。だが・・・和平の使者だったアイシュペレサを騙し、自国を危険に晒し、アイスローズ妃およびアイシス皇太子を害した罪もまた大きい。王よ、私の妹であることは、考慮せずに決めなさい。」
そう言って、王様に向かって片手を上げる。
王様は頷くと大神官を見て、
「叔母上は王族の身分を剥奪、魔力も剥奪して、投獄する。」
と、言った。大神官は、
「わかりました。この場ですぐに?」
と聞くので、王様は再び頷いた。
「構わぬ。魅入られし者は、いつかはダンジョンの魔神を守る魔物に変わってしまう。せめて人のままでいてくれねば、子孫が危ない。」
王様の言葉に、大神官が祝詞をあげると、ヴィノガン様の額の文字が薄くなって消えていった。
魔神はそれを見届けると、その場から遠くへと飛び去っていく。ダンジョンに・・・レドリシアのそばへ戻ったんだ・・・。
空へと消えた魔神を見送って、視線を戻すと、ヴィノガン様の額から、赤い宝石がポロリと出てきて、床に落ちて砕けた。
彼女の魔力の結晶だわ・・・。魔力が剥奪されたのね。
「あぁぁぁ・・・!!妾の魔力が!!
お姉様・・・!ファンティーヌ!!なんて残酷なことを許した?妾よりその氷の民をとるのか?」
膝から崩れ落ちるように、脱力するヴィノガン様の両腕の凍結を、私はそっと解いた。
王太后様は、彼女を見てため息をつく。
「お前は戦う力に酔いすぎたのだ、ヴィノガン。十分にお前は英雄として名声があったのに。火の試練に負けたことも、私にだけでも打ち明けてくれていたら・・・。」
ヴィノガン様は座り込んで床に手をつくと、首を横に振った。
「言えるものか・・・。お姉様は人望があり、戦略も周囲が舌を巻くほどだった。そんなあなたに勝てるのは、魔法だけ。その魔法の試練に敗れたなんて・・・その先にあるのが魔力の剥奪なんて・・・妾に死ねというようなもの。」
ヴィノガン様は静かに目を閉じて、涙を流した。魅入られし者から解放されたせいか、少し穏やかになっている。
「連れて行け、投獄せよ。他の関係者も洗いだし、調査の上処罰する。」
王様の一声に、周囲が動いてヴィノガン様を連行させて退室していく。
ふと、王妃様が私を見て、
「アイスローズ妃、レドリシアはどうなりましたか?」
と聞くので、
「あ、ダンジョンで凍結させています。
死んではいません。」
と、答えた。髪を引っ張ったり、ファイ様を取ろうとしたり、なんならずっと凍結させておきたいくらい。
「彼女も、処罰せねばなりません。ダンジョンの出口に兵を向かわせますので、凍結の魔法を解いておいてください。」
「はい・・・。」
王妃様に言われて、私は渋々凍結の魔法をその場で解いておいた。そのうち出てくるでしょ。
王妃様と貴族たち、ヴィノガン様の私兵たちも王様に促されて退室して行った。
室内には王太后様と大神官、ファイ様の兄弟姉妹と、アイシス、私、ファイ様だけになった。
「終わりましたね・・・。」
王太后様が、大きく息を吐いて呟くように言った。
プロメテクスお義兄様 が、王太后様を抱え上げ、部屋を出ようとすると、大神官が声をかけてきた。
「お待ちくださいませ。皆さま、どうか、このまま中つ森のルーク湖へと向かいましょう。
この魔神の心臓の力を使わねばならぬのです。」
大神官の真剣な声に、私たちは顔を見合わせた。
王太后様も怪訝な表情で、彼を見る。
「ルーク湖?何故だ?あそこは・・・。」
「彼を解き放つ時が来たのです、王太后様。」
その言葉に、王太后様の顔が歪む。
彼?誰のことかしら。
「とにかく、出かけるなら着替えを先にしましょう。王様にもお断りを入れてきます。」
アポロニお義兄様が、私たちの方を見て言うので、みんな急いで着替えてルーク湖へと向かった。
ルーク湖は、中つ森の迎賓館の近くにある。
闇狼もいるので、大神官が大きな結界をはり、私たちはようやく馬車を降りた。
「いつ見ても、綺麗な湖ですねー。」
アイシスが背伸びをする。
呑気なんだから、もう。
でも、私もこんな近くに来たのは初めて。
いつも迎賓館の窓から見るくらいだもの。
王太后様も、車椅子をアポロニお義兄様に押してもらいながら、顔にかかる髪の毛を耳にかけて、眺めている。
どうしてルーク湖に来たんだろう。
あれ?『ルーク』、てたしかアイシュペレサのミドルネーム?
「アイスローズ妃、気づいたようですね?
そう、ここは、アイシュペレサが氷の火炎を飲み込みながら亡くなった場所です。彼の力はこの湖の底で、未だ燻る氷の火炎を封じています。」
「ええ!今もですか?」
「そう、世界を燃やし尽くすまで止まらぬのが、氷の火炎。神獣の瞳を持つ彼の力をもってして、ようやく留められている。それほど恐ろしい魔法なのです。」
私は王太后様の話を聞いて、美しく輝く湖面を見つめながら、その恐ろしさに身震いした。
それでも魔神の心臓の半分の威力なのに。ルーク湖の湖面は、時々白い煙のようなものが立ち上っている。
気温の関係かしら?
「封印の力が弱まってきているのです。あの日から時が流れ過ぎましたから。
時々私がここにきて、話しかけるとまたその力が戻る。密かにそれを繰り返してきたのですが・・・。」
王太后様は、湖面を睨んで言った。
そこへ大神官がやってきて、私とファイ様の力を借りたいとお願いされた。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
読んでくださってありがとうございました。
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※この物語はフィクションです。表現や人物、団体、学説などは作者の創作によるものです。
「本来は自己申告して、魔力剥奪の刑を受けねばなりませぬ。そうせねば、いつ魔物に変わってもおかしくありませぬ。」
貴族たちが、ボソボソと互いに話し合う中、私は王太后様の方を見た。
「ここに魔神の心臓があります。これを使えば、ヴィノガン様を解放することができます。」
私が言うと、王太后様は口を引き結んでヴィノガン様と見つめ合う。
長い沈黙の中、二人は何を思ったんだろう。
そこへ大神官が立ち上がり、頭を下げると、私の持つ魔神の心臓を指さした。
「どうか・・・心臓を使っての解放はお控えください。この方は、その昔自分からその機会を放棄したのです。」
王太后様は、それを聞いて一瞬眉を顰めたけれど、ヴィノガン様から王様へと視線を移す。
「戦乱の功績は確かに大きい。だが・・・和平の使者だったアイシュペレサを騙し、自国を危険に晒し、アイスローズ妃およびアイシス皇太子を害した罪もまた大きい。王よ、私の妹であることは、考慮せずに決めなさい。」
そう言って、王様に向かって片手を上げる。
王様は頷くと大神官を見て、
「叔母上は王族の身分を剥奪、魔力も剥奪して、投獄する。」
と、言った。大神官は、
「わかりました。この場ですぐに?」
と聞くので、王様は再び頷いた。
「構わぬ。魅入られし者は、いつかはダンジョンの魔神を守る魔物に変わってしまう。せめて人のままでいてくれねば、子孫が危ない。」
王様の言葉に、大神官が祝詞をあげると、ヴィノガン様の額の文字が薄くなって消えていった。
魔神はそれを見届けると、その場から遠くへと飛び去っていく。ダンジョンに・・・レドリシアのそばへ戻ったんだ・・・。
空へと消えた魔神を見送って、視線を戻すと、ヴィノガン様の額から、赤い宝石がポロリと出てきて、床に落ちて砕けた。
彼女の魔力の結晶だわ・・・。魔力が剥奪されたのね。
「あぁぁぁ・・・!!妾の魔力が!!
お姉様・・・!ファンティーヌ!!なんて残酷なことを許した?妾よりその氷の民をとるのか?」
膝から崩れ落ちるように、脱力するヴィノガン様の両腕の凍結を、私はそっと解いた。
王太后様は、彼女を見てため息をつく。
「お前は戦う力に酔いすぎたのだ、ヴィノガン。十分にお前は英雄として名声があったのに。火の試練に負けたことも、私にだけでも打ち明けてくれていたら・・・。」
ヴィノガン様は座り込んで床に手をつくと、首を横に振った。
「言えるものか・・・。お姉様は人望があり、戦略も周囲が舌を巻くほどだった。そんなあなたに勝てるのは、魔法だけ。その魔法の試練に敗れたなんて・・・その先にあるのが魔力の剥奪なんて・・・妾に死ねというようなもの。」
ヴィノガン様は静かに目を閉じて、涙を流した。魅入られし者から解放されたせいか、少し穏やかになっている。
「連れて行け、投獄せよ。他の関係者も洗いだし、調査の上処罰する。」
王様の一声に、周囲が動いてヴィノガン様を連行させて退室していく。
ふと、王妃様が私を見て、
「アイスローズ妃、レドリシアはどうなりましたか?」
と聞くので、
「あ、ダンジョンで凍結させています。
死んではいません。」
と、答えた。髪を引っ張ったり、ファイ様を取ろうとしたり、なんならずっと凍結させておきたいくらい。
「彼女も、処罰せねばなりません。ダンジョンの出口に兵を向かわせますので、凍結の魔法を解いておいてください。」
「はい・・・。」
王妃様に言われて、私は渋々凍結の魔法をその場で解いておいた。そのうち出てくるでしょ。
王妃様と貴族たち、ヴィノガン様の私兵たちも王様に促されて退室して行った。
室内には王太后様と大神官、ファイ様の兄弟姉妹と、アイシス、私、ファイ様だけになった。
「終わりましたね・・・。」
王太后様が、大きく息を吐いて呟くように言った。
プロメテクスお義兄様 が、王太后様を抱え上げ、部屋を出ようとすると、大神官が声をかけてきた。
「お待ちくださいませ。皆さま、どうか、このまま中つ森のルーク湖へと向かいましょう。
この魔神の心臓の力を使わねばならぬのです。」
大神官の真剣な声に、私たちは顔を見合わせた。
王太后様も怪訝な表情で、彼を見る。
「ルーク湖?何故だ?あそこは・・・。」
「彼を解き放つ時が来たのです、王太后様。」
その言葉に、王太后様の顔が歪む。
彼?誰のことかしら。
「とにかく、出かけるなら着替えを先にしましょう。王様にもお断りを入れてきます。」
アポロニお義兄様が、私たちの方を見て言うので、みんな急いで着替えてルーク湖へと向かった。
ルーク湖は、中つ森の迎賓館の近くにある。
闇狼もいるので、大神官が大きな結界をはり、私たちはようやく馬車を降りた。
「いつ見ても、綺麗な湖ですねー。」
アイシスが背伸びをする。
呑気なんだから、もう。
でも、私もこんな近くに来たのは初めて。
いつも迎賓館の窓から見るくらいだもの。
王太后様も、車椅子をアポロニお義兄様に押してもらいながら、顔にかかる髪の毛を耳にかけて、眺めている。
どうしてルーク湖に来たんだろう。
あれ?『ルーク』、てたしかアイシュペレサのミドルネーム?
「アイスローズ妃、気づいたようですね?
そう、ここは、アイシュペレサが氷の火炎を飲み込みながら亡くなった場所です。彼の力はこの湖の底で、未だ燻る氷の火炎を封じています。」
「ええ!今もですか?」
「そう、世界を燃やし尽くすまで止まらぬのが、氷の火炎。神獣の瞳を持つ彼の力をもってして、ようやく留められている。それほど恐ろしい魔法なのです。」
私は王太后様の話を聞いて、美しく輝く湖面を見つめながら、その恐ろしさに身震いした。
それでも魔神の心臓の半分の威力なのに。ルーク湖の湖面は、時々白い煙のようなものが立ち上っている。
気温の関係かしら?
「封印の力が弱まってきているのです。あの日から時が流れ過ぎましたから。
時々私がここにきて、話しかけるとまたその力が戻る。密かにそれを繰り返してきたのですが・・・。」
王太后様は、湖面を睨んで言った。
そこへ大神官がやってきて、私とファイ様の力を借りたいとお願いされた。
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