心配症で不幸体質だと思い込む姫様は、宿敵の呪縛に立ち向かい、隣国の王子に溺愛されるルートへと進みます!

たからかた

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後編

ルーク湖

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「お二人の力と、この心臓の片割れがあれば、氷の火炎を火の魔力の源泉へと戻すことができます。」

ファイ様が怪訝けげんな顔をして、大神官を見る。

「それは構わないが・・・なぜ、あなたが?」

大神官はそれを聞いて俯いた。

「私が、ヴィノガン様に禁断の魔法の放ち方を、お教えしてしまった罪人だからです。」

その場にいる一同が、全員大神官に注目する。
この人が?まさか、あの日そばにいたヴィノガン様の従者、て・・・。

大神官は、魔神の心臓を見ながら、あの日を思い出すように遠い目をした。

「あの頃の私は、まだ神官ではなく、魔法を研究する研究員でした。早く戦を終わらせたくて、威力の高い禁断の魔法の研究もしていました。ヴィノガン様も興味を持たれて、支援してくださっていた。」

その言葉に、王太后様も身を乗り出した。
ご存じなかったみたいね。

「初めて聞く話ですね、大神官。
では、お前はずっとヴィノガンがあの魔法を撃ったことを知っていたのですか。」

「はい、王太后様。今まで口止めされていました。あの日、従者としてヴィノガン様について行き、アイシュペレサから心臓を受け取る様子を見ていました。てっきり、ご自身を魅入みいられし者から解放するために使うのだと思っていたら、あのようなことに。」

大神官は、ルーク湖に向かってひざまずくと、深々と頭を下げた。

「アイシュペレサは、皇太子の救出に向かった王太后様の後を追うために、その場を離れました。ヴィノガン様はそのすきに、撃ったのです。世界を燃やし尽くすまで止まらないと、警告していたのに・・・!」

フワッと風が吹いて、湖面を揺らす。
ヴィノガン様は、ただ、大きな力が行使できることだけに酔っていたのだわ・・・。

王太后様も目を閉じて、吹いてくる風の音に耳を澄ませているようだった。

私はファイ様と手をつなぐと、大神官の方を見た。私たちの力で何とかなるのなら、やらないと。

「教えてください、どうすれば?」

大神官は立ち上がり、私たちを向き合わせて、私の両手に何か文字を書き込んだ心臓を置き、その手をファイ様の両手で包むように持たせた。

「お二人の力を最大限に高めていただきます。
それから、アイシュペレサの封印を破り、氷の火炎を包み込んでこの心臓へ還れと念じるのです。」

周りのみんなは、距離をとって離れていく。
私たちは互いに魔力に集中して、言われた通りにした。

あの時と同じように、私たちの体からオーラか立ち昇り、その力が合わさって湖の中へと入っていく。いつもより高めた魔力に、私が少し怯えると、ファイ様が力強く手を握って数を数えだした。

「1、2、3・・・大丈夫だよ・・・。」

その声に安心して、私も数を数えながら、さらに魔力を高める。

やがて何かが破れる感触がして、飛び出してきた大きな力を漏らさず包み込んでいく。

とてつもなく巨大で忌まわしい力だわ。
熱くもなく冷たくもなく、それでいてそこにあるものをなぶるように燃やし尽くしてしまう炎。

氷の火炎は、私たちの力に逆らって飛び出そうとする。彼と二人で際限なく魔力を高めて封じながら引っ張り出していく。

還れ・・・この心臓に還れ・・・。
ひたすら念じて心臓を握っていると、力が流れ込んできて、次第に重たくなってきた。

次の瞬間、ドン!!と衝撃を感じて、心臓を見ると、赤黒く膨らんでいる。

大神官が近づいてきて、祝詞のりとをあげると、心臓はカッと光って溶けるように消えていった。

「あ、アイシュペレサ!」

王太后様の声がして湖の方を見ると、アイスブルーのオーラが天に昇っていくのが見えた。

彼の力が天に還っていくんだわ・・・。
そのオーラの中に一際輝く何かが、チラッと見える。

思わず冷風を送って引き寄せると、美しいアイスブルーの宝石だった。

アイシュペレサの力の結晶。
これがずっと封印していたのね。
私は、王太后様のところへ行って、その結晶を彼女の手に握らせた。

「王太后様が持つべきものです。」

私の言葉に、王太后様は両手を握り締めて泣き崩れる。

私たちは、王太后様を取り囲んで、彼女が泣き止むまで、そこにいた。

どれくらい時間がっただろうか。
次第に落ち着いた王太后様にほっとして、みんなそれぞれくつろぎだした。

王太后様は、湖のほとりを追いかけっこしだした、アイシスとバーニスお義姉様ねえさまを眺めて、目を細める。

私は王太后様の寂しそうな横顔に、彼からの伝言を伝えるべきかどうか悩んだ。

余計辛くさせそうで怖い。でも、自分が死んだら伝えてくれと、彼は言っていたから・・・。

「・・・王太后様、アイシュペレサからの伝言を・・・預かっています。」

私が言うと、王太后様は深呼吸して、私を見つめた。

「お願いします、ぜひ、聞きたい。」

「はい・・・『私は君との未来より、君が心から待ち望んでいた平和な世界の方を選んだ』と。」

話を聞いた王太后様は、ふっと泣き笑いのような複雑な表情を浮かべた。
見ている私の方が辛くなってくる。

また、泣かせてしまったかしら・・・。
そう思っていた時だ。

「笑って、ファンティーヌ。」

王太后様は、いきなりそう言った。
私が、え?と驚いていると、王太后様は片目を閉じた。

「アイシュペレサが、私によくそう言っていたのです。何を呑気のんきなことをと最初は怒っていたんですけど、二人で会う時、彼はあの手この手で私を笑わせようとした。」

「お二人は、敵同士・・・でしたよね?」

「えぇ、でも戦場は交渉することも多いし、当時は他国の夜盗や、人を襲う魔物なども入り込んでいたので、共闘することもあったのです。」

王太后様は、遠い目をする。
アイシュペレサとは、その時に愛を育んだんだろうな・・・。

「ミャオ。」

ダイヤモンドダストが、王太后様の膝の上にちょこんと飛び乗る。
王太后様は、優しくダイヤモンドダストの頭を撫でた。

「いつの間にか、心は彼に囚われて、深く愛し合いました。あなたと、ファイのように。」

王太后様はファイ様を手招きすると、その手をとって私の手を握らせた。

「いつの時代でも、どんな状況下でも、誰かと愛し合うことはできます。
もし、想いが通じ合えた人がいたら、どうかその手を離さないで。次にまた繋げられるとは限りませんから。」

私たちはうなずいて、つないだ手の温もりを感じながら、微笑ほほえみあった。

「大丈夫です、二人で手をつないで、数を数えて歩いて行けば、どこまでも行けますから。」

ファイ様が、王太后様の方を見て言うので、私も言葉をつなげる。

「私がずっと、ファイ様と手を繋いでいてあげます。」

王太后様は、その様子を見たアポロニお義兄様にいさまから耳打ちされて、笑ってうなずきながら、私の方を向いて聞いた。

「それは、結婚してくれる、てこと?」

あの時の王妃様の言葉。
私は顔を赤くしながら頷いた。

「はい。もう、しました!」

私はそう言って、背伸びをしてファイ様の頬にキスをした。

「懐かしい光景だな。ねぇ、プロメテクス兄様。」

アポロニお義兄様にいさまが、プロメテクスお義兄様にいさまに声をかけた。

「まったくだ。ファイには勿体無い花嫁だ。なあ、ファイリア。」

プロメテクスお義兄様にいさまも、ファイリアお義姉様ねえさまと一緒に歩いてくる。

「私は・・・この時いなかった・・・けど、アイスローズちゃんと・・・キスもハグもしたから・・・また・・・したいな。」

それを聞いたアイシスが、慌てて私の近くに走り寄ってくる。

「え!?姉上、浮気したんですか!?」

前のめりなアイシスをなだめるように、バーニスお義姉様ねえさまが彼と腕を組んで、頭を肩にもたれさせた。

「アイシス様、落ち着いて?ね?
アイスローズちゃんは、うちの兄様たちに大人気なんです。いつも狙われてるんですよー。」

目を白黒させるアイシスの前で、ファイ様はさっと私をかかえる。

「心配しなくても、アイシス皇太子の姉上は、誰にも渡しませんので。」

と、宣言した。
周りから冷やかしの声が上がり、お義兄様にいさまたちが、油断するなよ?とさりげなく牽制けんせいしている。

もう、からかってばかりなんだから。

「アイスリー、笑って。」

ファイ様の優しい声に、私は笑顔を浮かべて彼の顔を引き寄せた。


~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

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※この物語はフィクションです。表現や人物、団体、学説などは作者の創作によるものです。



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