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伊集院司令官篇 (3)
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南方戦線から、ようやく東京へ戻り四谷本部での総括ミーティングも終了した。忍は疲れ切っていた。すぐにでも松濤の自宅へ戻りたかった。にもかかわらず、忍は、伊集院司令官に呼ばれていた。ミロを含む特殊第四小隊(四特)と南方戦線参加のすべての中隊には、既に2日間の休暇命令が出ている。長時間の戦闘と移動で疲弊してるからだ。忍は「なぜ今」という訝しさと泥のような疲労を感じながら、司令官室をノックした。
「入れ」
部屋に入ると、伊集院司令官が忍に背を向けて座っていた。
「サイパン戦線ではご苦労だった。あれは間違いなくターニングポイントになる。次の人事で、貴様は大佐に昇進だ」
忍は黙って敬礼した。伊集院が背を向けたまま、忍の顔を見ようとしないので、しばらくの間があった。忍は、
「ありがとうございます」
と口に出してみた。
「ああ、そういえば」
と伊集院は、忍に背を向けたまま、ようやく言った。
「藤永ミロ。あれは本当に良かったよ」
忍は、一瞬意味がわからなかったが、すぐに理解した。その刹那、自分の心臓が鼓動を止めたかのように感じた。伊集院は、ようやくギシリと音を立てて回転椅子を回し、顔の半分を忍に向けて言った。
「お前さえよければ、藤永ミロの面倒はうちで…伊集院の本家でみる」
今日、ここへ呼ばれた本当の理由はこれだったのだ。忍は噴き上げる感情を必死に押し込めた。
「藤永ミロの件については、自分の父が本部の命令を受け、それを自分が引き継いでいます。叔父さんもご存知のはず」
「ああ。しかし残念だが弟は他界した。今後は、私が面倒を見てもいい」
忍は、全身の血が逆流するのを感じた。
「藤永に関しては自分が最後まで責任を持ちます。…お気遣いには心から感謝します。」
忍は伊集院司令官にくるりと背を向け、部屋を出るためにドアへ向かって歩いていく。
忍は、ドアノブへ手をかける。
「……叔父貴。俺はいつかあなたを殺す」
背を向けたまま静かにそう言い放つと、忍は部屋を出た。
「入れ」
部屋に入ると、伊集院司令官が忍に背を向けて座っていた。
「サイパン戦線ではご苦労だった。あれは間違いなくターニングポイントになる。次の人事で、貴様は大佐に昇進だ」
忍は黙って敬礼した。伊集院が背を向けたまま、忍の顔を見ようとしないので、しばらくの間があった。忍は、
「ありがとうございます」
と口に出してみた。
「ああ、そういえば」
と伊集院は、忍に背を向けたまま、ようやく言った。
「藤永ミロ。あれは本当に良かったよ」
忍は、一瞬意味がわからなかったが、すぐに理解した。その刹那、自分の心臓が鼓動を止めたかのように感じた。伊集院は、ようやくギシリと音を立てて回転椅子を回し、顔の半分を忍に向けて言った。
「お前さえよければ、藤永ミロの面倒はうちで…伊集院の本家でみる」
今日、ここへ呼ばれた本当の理由はこれだったのだ。忍は噴き上げる感情を必死に押し込めた。
「藤永ミロの件については、自分の父が本部の命令を受け、それを自分が引き継いでいます。叔父さんもご存知のはず」
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