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恵一篇 (5)
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「矢崎大尉! 矢崎大尉!」
当番兵が、兵舎の矢崎の個室のドアを激しく叩く。何度叩いても、中から何の応答もなかったが、当番兵はそのまま引きさがることはできないので、ドアを叩き矢崎の名前を呼び続けた。
突然、ドアが『バァン』という大きな音を立てて内側から開き、中から鬼のような形相をした矢崎が全裸でのっそりと出てきた。体中が刺青で覆われている。当番兵は、矢崎の盛り上がった筋肉と半分勃起した巨大なペニスに、思わずぎょっとした表情を浮かべる。矢崎は当番兵の襟首をつかみ上げ、その体が宙に浮きあがった。矢崎は低く唸って言った。
「てめえこの野郎、俺は、今日非番なんだよ…! 何の用だ? 俺は寝てんだよ。起こしやがって、この野郎、ぶち殺してやる…」
当番兵は、苦痛と恐怖に顔をゆがめて、泣き叫んだ。矢崎が不機嫌なときには、本当に当番兵を半殺しにするというのはただの噂ではない。
「ややややや矢崎大尉、お願いです、お願いします、殺さないでください、お願いです、非常事態です、ちちち治安アラート3です、ふ、ふ、ふふ藤永少佐からの命令です、ひいいいいいい」
「なに?」
「ふふふふ藤永少佐が、…藤永少佐が……ああああああ」
この時点で、当番兵は涙と鼻水で顔がドロドロになっていた。
矢崎は、命令を聞くと渋々軍服に着替えて、士官学校へ向かった。
矢崎は、ほぼ坂本忍と並ぶほどの巨漢だ。浅黒い肌は刺青でびっしり埋め尽くされ、髪の毛を金髪に染め上げ、目つきが極端に悪い。軍服を着ていなければ反社会勢力のならず者に見える。非番で熟睡していたところを叩き起こされた矢崎は、不機嫌に輪をかけて不機嫌だった。その矢崎が士官学校に現れると、教官たちは、あらかじめ連絡を受けていたにも関わらず、顔をひきつらせ黙って道を開けた。
矢崎は「アジト」とされているSTEM教室の準備室に到着すると、鍵のかかっているドアを力任せにぶち破った。つかつかと中に入り、実験台の下に隠れている3名の生徒をすぐに見つけ出し、一人の襟首をつかんで吊り下げた。当番兵にしたのとは異なり、窒息死を考慮に入れた手加減をしなかった。
「この俺様がわざわざこんなところに出向いた理由はわかっているな」
少年は、息ができず鼻水と涙を流して小便を漏らす。それを見ている二人の少年にギョロリと片目を剥いて、
「俺は命令を受けている。お前たちをこの場で殺すこともできる」
少年たちは、何も言うことができず恐怖に震え上がって泣き出した。
ミロは、治安アラート3の発動後、恵一に士官学校に関するいろいろな質問をした。目的のフォード・ピックアップトラックに到着すると、恵一をトラックの荷台に移した。
「ここで待っていろ」
と短く言い、荷台に積み込まれたアーマードスーツを手早く身に着ける。そのまま荷台から飛び降りてバイクよりも早いスピードで走り去った。
「忍!」
ミロが叫び、全力で忍に飛びつき、忍の身体を押しのけた。次の瞬間、忍の髪の毛の先をかすめるようにレーザーが横切り、数メートル先の自動車が5台連続して爆発した。
ミロは忍の身体を圧し潰すようにして瓦礫の山に突っ込んだ。
「忍、ごめん…」
ミロがそう言いかけると、
「ベッドの中以外でお前に抱き着かれるのは、こんなときぐらいしか……ない…な…!」
と言いながら、忍はアーマードスーツの右手からランチャーを連射した。数十メートル先で、さらに大爆発が起こる。
「忍、バックに南方人民解放軍がいる」
「学生の仕事ではなさそうだな」
ミロは、降りかかる銃弾の中、エレクトリックグレネードランチャーを連射しながら全力疾走を開始する。連続する爆発の中、ミロは最高時速160kmで走り抜ける。遺伝子レベルでの操作による強化を施された彼女の肉体は、文字通りの生体兵器だ。その完成度を高めるため、大脳に埋め込まれたチップには、戦闘のたびにデータが収集され大倉研究所に送信されていく。
四谷大隊・第3小隊KIWA部隊が、火炎と煙で赤黒く染まった東京都内上空を飛び交い、制空権を確保する。地上では、ミロが何名もの南方人民解放軍の兵士を確認し一人ずつ確実に仕留めていく。
当番兵が、兵舎の矢崎の個室のドアを激しく叩く。何度叩いても、中から何の応答もなかったが、当番兵はそのまま引きさがることはできないので、ドアを叩き矢崎の名前を呼び続けた。
突然、ドアが『バァン』という大きな音を立てて内側から開き、中から鬼のような形相をした矢崎が全裸でのっそりと出てきた。体中が刺青で覆われている。当番兵は、矢崎の盛り上がった筋肉と半分勃起した巨大なペニスに、思わずぎょっとした表情を浮かべる。矢崎は当番兵の襟首をつかみ上げ、その体が宙に浮きあがった。矢崎は低く唸って言った。
「てめえこの野郎、俺は、今日非番なんだよ…! 何の用だ? 俺は寝てんだよ。起こしやがって、この野郎、ぶち殺してやる…」
当番兵は、苦痛と恐怖に顔をゆがめて、泣き叫んだ。矢崎が不機嫌なときには、本当に当番兵を半殺しにするというのはただの噂ではない。
「ややややや矢崎大尉、お願いです、お願いします、殺さないでください、お願いです、非常事態です、ちちち治安アラート3です、ふ、ふ、ふふ藤永少佐からの命令です、ひいいいいいい」
「なに?」
「ふふふふ藤永少佐が、…藤永少佐が……ああああああ」
この時点で、当番兵は涙と鼻水で顔がドロドロになっていた。
矢崎は、命令を聞くと渋々軍服に着替えて、士官学校へ向かった。
矢崎は、ほぼ坂本忍と並ぶほどの巨漢だ。浅黒い肌は刺青でびっしり埋め尽くされ、髪の毛を金髪に染め上げ、目つきが極端に悪い。軍服を着ていなければ反社会勢力のならず者に見える。非番で熟睡していたところを叩き起こされた矢崎は、不機嫌に輪をかけて不機嫌だった。その矢崎が士官学校に現れると、教官たちは、あらかじめ連絡を受けていたにも関わらず、顔をひきつらせ黙って道を開けた。
矢崎は「アジト」とされているSTEM教室の準備室に到着すると、鍵のかかっているドアを力任せにぶち破った。つかつかと中に入り、実験台の下に隠れている3名の生徒をすぐに見つけ出し、一人の襟首をつかんで吊り下げた。当番兵にしたのとは異なり、窒息死を考慮に入れた手加減をしなかった。
「この俺様がわざわざこんなところに出向いた理由はわかっているな」
少年は、息ができず鼻水と涙を流して小便を漏らす。それを見ている二人の少年にギョロリと片目を剥いて、
「俺は命令を受けている。お前たちをこの場で殺すこともできる」
少年たちは、何も言うことができず恐怖に震え上がって泣き出した。
ミロは、治安アラート3の発動後、恵一に士官学校に関するいろいろな質問をした。目的のフォード・ピックアップトラックに到着すると、恵一をトラックの荷台に移した。
「ここで待っていろ」
と短く言い、荷台に積み込まれたアーマードスーツを手早く身に着ける。そのまま荷台から飛び降りてバイクよりも早いスピードで走り去った。
「忍!」
ミロが叫び、全力で忍に飛びつき、忍の身体を押しのけた。次の瞬間、忍の髪の毛の先をかすめるようにレーザーが横切り、数メートル先の自動車が5台連続して爆発した。
ミロは忍の身体を圧し潰すようにして瓦礫の山に突っ込んだ。
「忍、ごめん…」
ミロがそう言いかけると、
「ベッドの中以外でお前に抱き着かれるのは、こんなときぐらいしか……ない…な…!」
と言いながら、忍はアーマードスーツの右手からランチャーを連射した。数十メートル先で、さらに大爆発が起こる。
「忍、バックに南方人民解放軍がいる」
「学生の仕事ではなさそうだな」
ミロは、降りかかる銃弾の中、エレクトリックグレネードランチャーを連射しながら全力疾走を開始する。連続する爆発の中、ミロは最高時速160kmで走り抜ける。遺伝子レベルでの操作による強化を施された彼女の肉体は、文字通りの生体兵器だ。その完成度を高めるため、大脳に埋め込まれたチップには、戦闘のたびにデータが収集され大倉研究所に送信されていく。
四谷大隊・第3小隊KIWA部隊が、火炎と煙で赤黒く染まった東京都内上空を飛び交い、制空権を確保する。地上では、ミロが何名もの南方人民解放軍の兵士を確認し一人ずつ確実に仕留めていく。
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