(R18) Lisztomania ~ アル中の女軍人が男とセックスしまくる純愛物語

Purified Water

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劉少奇その2 篇 (1)

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村瀬と寝ても、忍は満たされない。忍が本当にベッドを共にしたいのはミロだった。村瀬と会うときの定宿にしているのは、旧東京駅近くにある外資系ホテルだ。ショック状態の村瀬は泣き続けた。村瀬をなだめながら、忍は彼女を抱いた。明け方近く、いつものように一睡もしないまま、忍は村瀬を残してチェックアウトした。
「もしかして」と一縷の望みを託して、四谷のマンションに行ったが、予想通りミロは不在だった。松濤に帰宅する気持ちにもなれず、そのまま四谷でもう一度シャワーを浴びて眠った。ベッドにはミロの匂いが残っている。
昼前、あまり眠れないまま目覚めた忍は、阿川に確認の連絡をした。
「ミロは、香港だな?」
「……それが…」
阿川大尉は言いづらそうに言葉に詰まる。忍は、思わず問い詰める口調になる。
「ミロはどこにいるんだ?」
「……藤永少佐は、長春基地へ寄ってから香港に行くと言われて、今、長春市内にいます」
「……了解だ。私は、今から香港へ向かう。ミロには、命令通り時間厳守で出頭するように伝えろ」
「承知しました」
あの男だ、と忍は苦々しく思う。ミロが、北方人民解放軍のトップパイロットと寝ているという噂は、忍の耳にも入っていた。しかしミロが軍事機密を漏らす危険は皆無であったし、むしろ彼女が相手から引き出してくる情報のほうに価値がある。忍は、自分が胸に抱えるどす黒い嫉妬をミロには絶対に見せたくない。黙認するしかなかった。
何か飲もうと巨大な冷蔵庫を開けると、大きなサワークリームのバケツと、何本ものビールが入っているだけだ。刺すような悲しみが突然、忍を襲う。ペントハウスの高いガラス天井から見えるのは、今にも雨が降り出しそうな曇り空だった。

ミロには、今回の「士官学校の反乱」と南方人民解放軍の関係を調査するために香港基地へ直ちに出動するよう命令が下っていた。出頭時間は、翌日の午後3時となっている。ミロは、「緑眼IIの寒冷地テスト」という適当な理由をでっち上げ、長春に立ち寄ってから香港に行くことにした。変更行動計画表をKIWA機内から送信し、関西空港上空を通過中に進路を北に変更した。長春を昼過ぎにでれば、午後3時には香港基地に余裕で到着できる。
長春基地では、日防の最新特別機である「緑眼II」の着陸を歓迎こそすれ、拒む者はいなかった。しかし、緑眼IIプロトタイプは、ミロ本人がいなければ稼働どころか起動もしない……つまり通電しないから扉を開くこともできない、ただの鉄の塊となる。機体内部をほんのわずかであれ調査することは不可能だった。
ミロが機体から降りると、常駐している何名かの日防将校たちが格納庫までわざわざ挨拶にやって来るのが見えた。ミロは素早く視線を走らせ劉少奇を探した。日防の同僚と敬礼を交わし、状況報告の後、適当な世間話をする。日防は長春基地に間借りをしている立場なので、ここにいる軍人は、ほとんどが解放軍だ。多数の下士官や将校が忙しく作業をしていたが、劉少奇の姿は見当たらなかった。
何名かの佐官クラスの将校が、ミロを長春市街での食事にさそったが、ミロは断った。時刻は夜9時を過ぎていた。
無駄足だったな、とミロは気落ちする。何をやっても、もがいても、どうにもならないときがある。仕方がなく前回と同じように自室で何杯かウィスキーを飲み干すと、軍服を着たまま基地内の食堂へ向かう。食堂の扉を開けようとすると、後ろから大きな手が伸びてきてミロより先に扉を開けた。
「俺と寝に来たな、藤永ミロ」
劉は、ミロの顔も見ないでそのままミロを食堂内へ案内した。劉はすたすたと先に歩いてバーカウンターへ行き、マティーニを2杯注文した。
「今日は、こいつを飲んでから、市街へ出る」
ミロは返事をせずに劉の顔をまっすぐ見つめた。劉はようやく視線をミロに合わせた。
「ここのバーテンが作るマティーニはなかなかうまい」
「わざわざ市街へ?」
「飯を食いに行く」
「食事のためだけに外出はしない主義でね」
「貴様は、好きなように飲め。だが飲みすぎるな。泥酔した女を抱くのは好みではない」
ミロは、顔がかっと熱くなるのを感じた。それを見た劉は、口元に微かな笑みを浮かべて、オリーブの実を口に放り込んだ。
前回同様、好奇に満ちた周囲の視線を浴びながら、劉とミロは兵舎を出て長春市街へ向かった。ミロが、劉のSUVを運転しようと申し出たが、劉には、ミロがこの時点で相当飲んでいるとわかっていた。
「凍り付いた路面での飲酒運転は、貴様には無理だ」
と言い、自分でそのBMWを運転した。劉に連れていかれたのは、真っ赤な伝統的中華電飾に飾られた深夜営業の大衆食堂だった。ピーナツと生の大蒜がテーブルに置いてある。劉は、豚の耳の酢の物、キクラゲの前菜、酸っぱい白菜の漬物、塩漬けのアヒルの卵や、水餃子などを注文して、ミロには高粱白酒をボトルで取ってくれた。白酒の瓶が半分空になるあたりで、劉はすべてをほとんど一人で食べ終えた。もう1杯飲もうとするミロの手を劉の手が抑える。
「言っただろう。意識が朦朧となった女と寝るのは好きではない」
ミロは、既にかなり酔っていたので抵抗しなかった。劉は、再び自分で運転して市街地の中心部にある高級低層マンションの駐車場へ車を入れた。ミロは、兵舎へ戻るものとばかり思っていたので、訝し気に劉の顔を見た。
「俺の一時的な私宅だ。ついてこい」
と言い、駐車場エレベーターから直接部屋へ上がっていく。最上階の5階のワンフロアすべてが劉の部屋になっていた。室内は、まるでモデルルームのようにきれいに片付き、アメリカ西海岸スタイルのモダンで上品な家具で飾られている。まるで生活感の無い部屋だな、とミロは思う。自分の四谷のマンションも似たようなものだ。恐らく、劉がここに立ち寄るのは、月に何度もないのであろう。ミロと同じだ。劉は、そのまま無言で寝室へ向かう。寝室だけは、人が住んでいる気配がある。きれいにベッドメイクされていたが、確かに劉がここに寝泊まりしているという空気が漂っていた。
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