(R18) Lisztomania ~ アル中の女軍人が男とセックスしまくる純愛物語

Purified Water

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親愛なる坂本葵様 (6)

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その日、忍さんから疲れた声で電話がありました。忍さんは、私と今すぐ会いたい、と言います。もう夕方になっていて夜のとばりが降り始める時間でした。こんなことは今までになかったことです。その夜は、私の両親と夕食にでかける予定でしたが、虫の知らせと好奇心には勝てません。両親には「友だちの母親が交通事故にあったので、今夜は彼女の家に泊まる」という適当な嘘をでっちあげて、忍さんに会いに行きました。

忍さんは、ホテルの部屋に入った瞬間私を抱きしめました。私は一瞬何が起こったのかわからず、混乱し、次の瞬間、唇が塞がれました。忍さんはもうお酒を相当飲んでいたようで、アルコールの匂いがしました。いつもと違う彼の様子に驚いて、心臓が口から飛び出しそうになりましたが、さすがに、私ももう15歳の小娘ではありません。すぐに忍さんの口づけに応えます。忍さんの身体からは、オーデコロンや汗や硝煙や煙草の混ざった香りがして、私は彼の匂いをこれほど間近に感じられることに、喜び興奮しました。
そうして、忍さんは私を抱いたのです。本当に嬉しかった。この喜びが続くなら、死んでもいいと本気で思いました。抱かれるとき、私は、忍さんに避妊具を使わなくていいと言いました。忍さんは、相当酔っていたにもかかわらず、コンドームを使いました。彼とは、その後も数回ベッドを共にしましたけれど、忍さんは頑なに避妊具を使い続けました。しかも、必ず彼が持参したものを彼が自分で着けました。そして彼が始末しました。私は、忍さんの子供を身ごもって結婚したいと思っていたので、これには正直とてもがっかりしたのです。それに、行為の後、彼は絶対に眠りませんでした。しばらく添い寝してくれますが、私がウトウトし始めるとすぐ、ベッドを抜け出して私を置いて出ていきました。軍務があるから、と。最後に、忍さんと寝たのは、もう半年以上前です。とても短いお付き合いでした。最後のお別れのとき、彼は口づけすらしてくれませんでした。忍さんは、いつもと同じように優しかったのですが、とても怒っていました。表情にも態度にも決して表すことはありませんでしたけれど、ほとんど激怒していました。私にはそれがはっきりわかりましたが、彼の怒りの原因がわからなかった。私が、忍さんと結婚したいと考えたことが原因? 私は、忍さんと結婚したかった。忍さんとずっと人生を共にしたかった。けれど、忍さんから、その願いをかなえることはできないと言われました。私は、それでもいいから忍さんとお付き合いを続けたかった。そういう私の気持ちが忍さんを怒らせた? いいえ、忍さんはそんなことでは決して怒りません。きっと困ったとは思いますけれど(笑)。忍さんは、そういう人です。だから、どんなに考えても、今でも忍さんのあの激怒の理由がわからないのです。今思うと、その怒りは私に向けられたものだったのかさえ、実はよくわかりません。
ここまで読んで、もうおわかりかと思います。私が今妊娠しているのは、忍さんの子ではありません。嘘をつきました、本当にごめんなさい。
忍さんに別れを告げられた後、私は呆然自失でした。理由がわからなかった。忍さんの周囲にいるたくさんの女の人たちの誰にも忍さんが本気になっているとは思えなかった。私のどこが忍さんにとって不足なのかわかりませんでした。……というのはあまりにも不遜で傲慢な言い方ですね…でも。私は、自分の未熟さをいま、泣けるほどに実感しながらも、自分が周囲を客観的に観察する力については、たぶん、それなりにあるのだと思います。その私にも、藤永さんのことはわかりませんでした。
その後、私は読書クラブで知り合った人と、短いお付き合いをしました。最初の数週間はお茶をしたり、ランチをしたり。プルデューファーマの社員だと言っていましたが、確かなことはわかりません。連絡先も交換していません。読書クラブで会うたび、その人と2カ月ほど前からベッドを共にしています。それは私にとって必要なことなのです。
けれど…本当のことを知れば父も母も、私を絶対に許しはしないでしょう。ごめんなさい、葵。私は強くありません。
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