高嶺の花も恋をしたい!

吉岡ミホ

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副社長秘書になりました②

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「はぁ……しかし副社長たっての希望ですからね。仕方なくあなたを採用することになりました。容姿がいいからといって中途半端な仕事をすれば、せっかく取り立ててくださった副社長の顔に泥を塗ることになります。いいですか、顔で甘やかされると思ったら大間違いですよ。もし副社長に色仕掛けで言い寄ったり、迷惑をかけるような行動をすれば、この私の権限ですぐに秘書課を出て行っていただきますからね」

 まただ。『副社長たっての希望』?
 副社長は私のことを知っているの?

 入社から今までを思い返してみても、夏崎翔多という人と会った覚えが全くない。受付にいる私を見たことがあるということかしら。

「聞いているのですか、高嶺さん!?」

 ハッ! まずい……考え事をしている場合じゃなかったわ。

「は、はい! 副社長や皆様にもご迷惑をおかけしないよう、精進いたします。末永課長、仲野さん、氏家さん、どうぞご指導くださいませ!」
「フン、まあいいでしょう」

 とりあえず望んでいた返事が聞けたからなのか、それ以上ネチネチと言われることはなかった。

「じゃあ課長、私が細々とした説明をしますね」

 仲野さんが立ち上がって私を副社長室へ案内してくれた。

「ごめんなさいね。課長、ちょっとネチネチした性格なの。でも悪い人じゃないから。くそ真面目なだけなのよ」
「はあ……」
「若い時に現在の会長……社長のお父様の秘書をされていたことがあって、夏崎家に心酔しているの。別名『夏崎家の執事』って言われてるわ」
「執事!」

 なるほど。確かにテールコートを着てお屋敷をバックに立っていたら似合いそうだ。ちょっと笑いがこみ上げてきた。

「副社長室はここよ」

 副社長室に入ると、そこは四畳ほどの前室で、秘書用のデスクとキャビネットが置かれていた。ここが私のデスクになるのだろう。
 さらに奥のドアを開けると、日当たりの良い副社長室が現れた。立派なデスクに、ダークブラウンの革張りのソファとローテーブルの応接セットは、いかにも役員のための部屋という感じだった。
 その後システム情報部から秘書用のパソコンが届き、パスワードの設定が終わると、仲野さんの指導が始まった。

「よし、じゃあとりあえず私たちが普段常務から頼まれる内容を教えておくわね。副社長が就任されたら、あとは直接指示に従ってもらえばいいと思う」
「はい!」

 その三日後のこと、出勤すると副社長室に人影が。全面ガラス張りのバックを背に逆光になっていて、顔が見えにくいけれど、ここにいるってことは……。

「おはようございます……あの……?」
「あ、花緒ちゃん?」

 え? 突然の花緒ちゃん呼び⁉

「来週から副社長に就任する夏崎翔多です」
「ハッ……た、高嶺花緒です! 三日前から副社長秘書としてこちらでお世話になっております。秘書業務は全くの未経験ですが頑張りますのでよろしくお願いいたします!」

 私は最敬礼で挨拶をした。

「ハハハ、そんなに畏まらなくてもいいよ。頭を上げて?」
「は、はい……」

 こちらに近づいてきた副社長は、長身ですらっとした体格に一目でわかる上質なスーツを着ていた。

 意志の強そうな切れ長の目に、鼻筋の通った男性らしいお顔。眼鏡をかけていても隠せないくらいのとんでもないイケメンだ。

 もちろん私には高野の方が好みだけど……いや、どこか高野に似ている?

 自信に満ちた男性らしいところが似ているのかな。

 なぜか副社長の顔に既視感があるのだ。本当に会ったことがある気がするのだけれど、どこで会ったのか思い出せない。



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