高嶺の花も恋をしたい!

吉岡ミホ

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新プロジェクト③

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「桃子……」
「どうしたの? 総務部に来るなんて珍しい」
「貸会議室を借りに来たの」
「そうなんだ。わぁ……そのパンツスーツ、似合ってるー! 受付の制服も良かったけど、さらに大人のカッコ良さがあるね。そういうのなんて言うんだっけ」
「……マニッシュ?」
「それだ! パンツスーツなのに色気を感じる」
「やめてよ~。私から一番遠い言葉な気がするよ」

 色気とは出るところがちゃんと出ている人に合った言葉だ。

 チラッと小柄な桃子の胸元を見てみると、うん、しっかりある。可愛い上に胸まであるなんて反則だよ。はぁ……羨ましい。

「花緒、気づいてないんだろうけど、会うたびに色っぽくなってるよ。さては誰かさんのおかげかなー?」
「ちょっ……何言うのよ!」

 こんな廊下で誰が聞いているかもわからないのに。

 桃子には高野と付き合い出したことを報告していた。ビアガーデンで話が盛り上がったこともあり、親友にはちゃんと話しておきたかったのだ。

「ハァ……でも今は会えないよねー」
「若田君もずっと行ったきり?」
「うん。聞いてない? 隣の部屋を借りているそうよ」

 それは聞いていた。でも営業さんも同じように大阪へ全く帰れない状況とは思っていなかった。

 桃子の話によると、膨大な数のオーナー様との打ち合わせが入っているため、休日返上で業務に当たっているそうだ。
 
「割り当てられている数が半端ないみたいだからねー。しばらくは帰ってきそうにないね。男子には申し訳ないけど、いない間にまた飲みに行こうよ」
「あ、うん。そうだね」
「副社長の話もしたいしさ」
 
 え? 副社長?

「今一番の話題だよ。37歳独身で超絶イケメンの夏成の御曹司! ただのお坊ちゃま御曹司じゃなく、仕事もバリバリできるエリート御曹司って話だし」
「そ、そうなんだ」
「しかも、大阪に凱旋するなり美人秘書を従えて新プロジェクトまで立ち上げて」
「美人秘書は余計よ。たまたま建築の基礎知識がある助手を探していただけで――」

「うん、でも」と言った桃子が私に近づき、耳元で声を潜めて言った。

「……私なんかは雲の上の人だと思ってるけどさ、身の程知らずにも本気で狙ってる人が結構いるみたい。だから気を付けてね」
「気を付けるって……?」
「花緒、女性社員から妬まれてるかも」
「――!」

 それって、私が副社長秘書だから?

「何の能力もないのに、高いところを狙う輩はごまんといるの。私が副社長秘書になりたかったのにー! って言ってるような人がね……」
「……」
「建築の基礎知識もないくせにね。まあちょっと私も情報集めておく。近々連絡するね! でもほんと、女の嫉妬って怖いから気を付けて」
「うん……わかった」

 桃子の話に不穏な空気を感じた私は、言いようのない不安に体が震えた。

 まさか、何もないよね……?

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