塩対応の汐宮先生は新人医局秘書にだけ甘くとける

吉岡ミホ

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汐宮先生がかまってくる?

汐宮先生がかまってくる?①

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 やらかしてしまった。一度ならず二度までも。

 元々アルコールには弱かったけれど、まさか自分がここまで問題児だとは思っていなかった。

 反省しなさいよ、叶恋! もう二度と飲むな!

 私は明るくなった自宅のリビングで深ーく反省しながら頭を抱えた。

 夜中、母が寝る前に一度起こされたのは覚えていた。

「コンタクトを外しなさい!」と言われ、その場で使い捨てコンタクトを外したのは覚えている。

 しかしそのまま、あまりの眠たさにまた寝てしまったのだ。

 目が覚めたのは朝の6時前。自宅のソファで寝ていたことを不思議に思いながらシャワーを浴びた。
 浴室を出たところで母に捕まり、昨日の顛末を聞かされたのだ。

 本当に、穴があったら入りたい……。
 汐宮先生に二度も迷惑をかけた上に、自分の歓迎会で寝てしまうという失態を犯している。

 ハァ…………行きたくない。

 しかし、出勤時間は刻刻とやってくるもので、8時過ぎには医局に到着していた。

 医局内にはまだ誰も出勤していなかった。
 そこへ内線が鳴る。
 
「おはよう。伊原さん早いね! コーヒーを一杯頼むよ」

 ひぇ……教授だ。
 これはもう早々に謝るしかない。

 菜々ちゃんから教えられた通り、教授専用のマグカップに一杯立てのドリップコーヒーを注ぎ、砂糖とミルクを一杯ずつ入れる。

 マグカップは陶芸を嗜まれている奥様の手作りだそうだ。いざ、教授室へ!

 コンコン

「おはようございます。コーヒーをお持ちしました」

「ああ、ありがとう。体調はどうだい?」

「すみません。昨日はせっかく歓迎会を開いていただいたのに寝てしまって……」

「いや、アルコールに弱かったんだね。
言ってくれたらよかったのに。
今はハラスメントの時代だからねぇ。
私たちも無理に勧めるようなことは絶対にしないんだよ。第一、医者は体調を管理する側なのに、無理やり勧めるなんてもってのほかだ」

「そんな、無理に勧められたなんて思っていません。
とても楽しくて飲みすぎてしまったというか……その、自分でもそこまで弱いと思っていなくて」

 そう。それが事実だ。
 楽しかったのもあるけど、イシハラに勤めているときはそこまで弱くなかった。
 ジョッキ一杯くらいは飲めたはずなのに……。
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