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カミングアウトの時
カミングアウトの時⑦
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退院してからも、毎週火曜日は必ず『クッキングアイドルかれん』を見たし、骨折が治って部活に戻ってからは、録画してまで見るようになっていた。
(この録画で、母親にバレたんだよな)
「最初は『こいつすごいな』『今日も頑張ってるな』って、妹を応援するような気持ちで見守っていたと思う。
だがそれがだんだん執着になって、可愛いと思うようになった……」
「――!」
「あ、誤解するなよ? 俺はロリコンじゃない!
ただそういうバックグラウンドを含めて、頑張っている姿が可愛いと思ったんだ。
それに……聞きたくないかもしれないが、京香に興味を持ったのも、あいつがピンクばかり着ているからだった。
その頃もまだ俺にとっての基準は……その……かれんだったから」
「永真さん…………じゃあ推しのカラーって、私の衣装の色だったの?」
「……まぁ、そういうことだ」
そこまで言うと、我ながら変態のように聞こえるのだが、叶恋は引いているだろうか。
ベッドに座る叶恋をチラッと見ると、顔を真っ赤にしている。
これは、照れているのだろうか。
「し、仕事で忙しくしている両親が、私の番組をとても楽しみにしてくれていたんです。
もちろん、いつも撮影に付き合ってくれた祖母もですね。
頑張ってると喜んでくれるし、いっぱい褒めてもらえます。
あの頃はまだ子供だったから、家族に褒められるのが嬉しかった。
そんなめちゃくちゃ単純で子供っぽい理由だったんです、頑張ってたのは……」
そう自嘲気味に言いながら「でも、テレビの向こうで、頑張っているところを見てくれている人がいたんだと思うと、嬉しい……」と、大人になったかれんは微笑んだ。
『クッキングアイドルかれん』の最終回で初めて番組が終わることを知った俺。
その後どこを探しても、かれんの行先はわからなかった。
テレビの画面越しだが、いつも会えていたかれんに突然会えなくなって初めて、俺はかれんに恋していたのだと気づいた。
だが気づいたところでどうしようもない。
番組が続いていたとしても、相手は芸能人だ。
結局のところ、傍から見ればただのファンでしかない。住む世界が違うのだから。
「わー……ちょっと……」
「なんだ?」
「まさか私だと思わなくて……」
初めてクッキングアイドルをしててよかったと思う、と言いながら、叶恋は紅潮した頬を両手で押え、目をキラキラさせている。
正直、ドン引きされてもおかしくない話だが、この様子なら喜んでくれていると見てよさそうだ。
ホッとしながら、俺は叶恋の隣に座った。
「信じられないのは俺の方だ」
「え?」
「まさか、本当に叶恋があのかれんだと思わなかった。
正直、俺が触れていいのかと思う」
「プッ……なんですか、それ。私、もうとっくに大人ですよ?」
「叶恋……」
クスクス笑う大人になった叶恋の唇を奪う。
あの頃の幼いかれんを思い浮かべると、一瞬自分が信じ難いことをしている背徳感に襲われるが、俺の腕の中にいる叶恋はしっかり応えてくれる。
「……たしかに、大人だな」
「そ、そういう意味じゃなくて……んッ、あ、待って……」
「待てない……今すぐ叶恋が欲しい」
昔も今も、叶恋は変わっていなかった。
家族を大切にする叶恋、頑張り屋の叶恋、メガネをかけると目が小さくなる叶恋、その全てを愛おしく思う。
こうやって俺の腕の中にいる叶恋の温かさを感じると、愛おしさが込み上げる。
「好きだ」
「……っ! 永真さん……」
「今すぐ叶恋の中に入らないとおかしくなりそうなくらい好きだ」
「なっ……何言ってるんですか、もぉ~っ!」
叶恋が俺の胸をポカポカと叩く。全く痛くないのだが、その手を掴み、引き寄せ俺の腕の中に閉じ込めた。
「愛してる」
「…………私も、愛してる」
顔を上げた叶恋が俺に口付けてきた。
叶恋からのキスは初めてた。
やっぱり、今夜は帰せそうにないな――
(この録画で、母親にバレたんだよな)
「最初は『こいつすごいな』『今日も頑張ってるな』って、妹を応援するような気持ちで見守っていたと思う。
だがそれがだんだん執着になって、可愛いと思うようになった……」
「――!」
「あ、誤解するなよ? 俺はロリコンじゃない!
ただそういうバックグラウンドを含めて、頑張っている姿が可愛いと思ったんだ。
それに……聞きたくないかもしれないが、京香に興味を持ったのも、あいつがピンクばかり着ているからだった。
その頃もまだ俺にとっての基準は……その……かれんだったから」
「永真さん…………じゃあ推しのカラーって、私の衣装の色だったの?」
「……まぁ、そういうことだ」
そこまで言うと、我ながら変態のように聞こえるのだが、叶恋は引いているだろうか。
ベッドに座る叶恋をチラッと見ると、顔を真っ赤にしている。
これは、照れているのだろうか。
「し、仕事で忙しくしている両親が、私の番組をとても楽しみにしてくれていたんです。
もちろん、いつも撮影に付き合ってくれた祖母もですね。
頑張ってると喜んでくれるし、いっぱい褒めてもらえます。
あの頃はまだ子供だったから、家族に褒められるのが嬉しかった。
そんなめちゃくちゃ単純で子供っぽい理由だったんです、頑張ってたのは……」
そう自嘲気味に言いながら「でも、テレビの向こうで、頑張っているところを見てくれている人がいたんだと思うと、嬉しい……」と、大人になったかれんは微笑んだ。
『クッキングアイドルかれん』の最終回で初めて番組が終わることを知った俺。
その後どこを探しても、かれんの行先はわからなかった。
テレビの画面越しだが、いつも会えていたかれんに突然会えなくなって初めて、俺はかれんに恋していたのだと気づいた。
だが気づいたところでどうしようもない。
番組が続いていたとしても、相手は芸能人だ。
結局のところ、傍から見ればただのファンでしかない。住む世界が違うのだから。
「わー……ちょっと……」
「なんだ?」
「まさか私だと思わなくて……」
初めてクッキングアイドルをしててよかったと思う、と言いながら、叶恋は紅潮した頬を両手で押え、目をキラキラさせている。
正直、ドン引きされてもおかしくない話だが、この様子なら喜んでくれていると見てよさそうだ。
ホッとしながら、俺は叶恋の隣に座った。
「信じられないのは俺の方だ」
「え?」
「まさか、本当に叶恋があのかれんだと思わなかった。
正直、俺が触れていいのかと思う」
「プッ……なんですか、それ。私、もうとっくに大人ですよ?」
「叶恋……」
クスクス笑う大人になった叶恋の唇を奪う。
あの頃の幼いかれんを思い浮かべると、一瞬自分が信じ難いことをしている背徳感に襲われるが、俺の腕の中にいる叶恋はしっかり応えてくれる。
「……たしかに、大人だな」
「そ、そういう意味じゃなくて……んッ、あ、待って……」
「待てない……今すぐ叶恋が欲しい」
昔も今も、叶恋は変わっていなかった。
家族を大切にする叶恋、頑張り屋の叶恋、メガネをかけると目が小さくなる叶恋、その全てを愛おしく思う。
こうやって俺の腕の中にいる叶恋の温かさを感じると、愛おしさが込み上げる。
「好きだ」
「……っ! 永真さん……」
「今すぐ叶恋の中に入らないとおかしくなりそうなくらい好きだ」
「なっ……何言ってるんですか、もぉ~っ!」
叶恋が俺の胸をポカポカと叩く。全く痛くないのだが、その手を掴み、引き寄せ俺の腕の中に閉じ込めた。
「愛してる」
「…………私も、愛してる」
顔を上げた叶恋が俺に口付けてきた。
叶恋からのキスは初めてた。
やっぱり、今夜は帰せそうにないな――
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