神から与えられたスキルは“ドールマスター”

みょん

文字の大きさ
1 / 28

ドールマスター

しおりを挟む
 この世界にはスキルと呼ばれるものがある。それは生きている人間全てに与えられるもので、12歳の誕生日に神から授けられると言われている。

 どんなスキルがあるのか、多種に分かれているが大体戦いに精通するものである。
 この世界には人間とは別に魔獣も存在しており、そういうのもあって戦うためのスキルがまず重要だと言われているのだ。

 戦うことの出来ないスキルは冷遇されがちで、ギルドで雇ってもらえることはほぼなく、冒険者たちのパーティに入れてもらえることもそうそうない。

 なのでまずは戦うためのスキルをもらうことから未来への投資が始まっている。ま、ギルドとかそういったものに関わらなければスキルなんてものは必要ないが、それでも高い地位に付きたかったり金儲けがしたいと考えるならスキルは必須だろう。

 さて、そんな世界に生きる俺もまた今日という日がやってきた。周りの子供たちは与えられたスキルに一喜一憂し、木刀を振り回しながら勇者になるなんて言ってる奴もいる。

 俺としてはのんびりゆっくり過ごしたい。だからそこそこ使えるスキルがいいなと楽観的に考えていた。

 祭壇の前に立ち、形だけの神に対する祈りをする。俺自身神なんて存在は信じちゃいないし、居ても居なくてもどうでもいいというのが素直な考えだ。こんなことを神を信仰する教会の連中に聞かれれば、いくら子供といえど鞭打ちくらいはされるかもしれない。

「シロト・リスカム! 前へ!」

 よし、呼ばれたな。
 せめて形だけでもちゃんとしないと、そんな軽い気持ちで祭壇に触れた。淡い光が立ち込めて俺の体を包み込み、ものすっごく簡単ではあるがスキルは授けられた。

「……ドールマスター?」

 聞き覚えはない、だがスキルは与えられた時点でその人に情報が行き渡る仕組みになっている。

 俺が与えられたドールマスター、それは自らのイメージする存在を人の形として生み出し使役することが出来るらしい。
 そして生まれた人形たちには特別な能力が備わっており、制約として生み出す人形たちは決して同じ能力は持たないらしい。

「……ふむ」
「ほら、終わったのなら退け!」

 ドンと背中を押され俺は祭壇から退けられた。無事にこうしてスキルはもらえたが、これは当たりなのかハズレなのかよく分からない。
 そもそもの話、それを確かめるための人形がまだ生まれていない状態だ。判断のしようがない。

「……待てよ」

 意思を持った人形を生み出すことが出来るということはつまり、人の代わりを生み出すことが出来るということだ。冒険者の相方として、或いは家の掃除をするメイドであったり……おやおや、もしかしてこれは金稼ぎにかなり有効なスキルなのでは。

「……人形を生み出すために必要なのが魔力か。まさか人形一人生み出すだけでぶっ倒れたりするのかな?」

 ええい、何も試してないので何も分からん! こうなったら早速帰ってこのスキルを使うことにしよう!

 そうだ。思えばここが俺にとっての分岐点だった。ドールマスターなんていうよく分からないスキルをもらい、苦労しながらも“彼女たち”に助けられることになる俺の人生の始まり、その瞬間だった。





「……?」

 肩を揺すられ、俺の目は覚めた。何か懐かしい夢を見た気がするが、生憎と思い出せない。

「起きましたか? マスター」
「……あぁ、寝てたのか」
「気持ちよく眠られていましたけど、そろそろ起きないとご飯が冷めてしまいますよ」

 そう言われるとお腹が空いてきた。俺は起こしてくれた彼女に礼をいうために視線を向けた。

「ありがとう、リーシャ」
「いえ、仕える者として当然です」

 深く頭を下げた彼女の名前はリーシャ。
 メイド服姿の彼女はセミロングの紫の髪を持ち、少しだけ幼い顔立ちは愛らしく、身長も155ほどで女性としては少し低いのか? まあそれはそれとして、彼女の胸部はその圧倒的な存在感を知らしめる。

「マスター? 胸ばかり見るのはやめてください」
「すまん」
「マスターがそうお作りになられたんですからね?」

 それに関しては言い訳のしようもない。俺はリーシャのジトっとした視線から逃げるように顔を逸らした。

 さて、今彼女が口にした俺が作ったという言葉を聞いただろう。
 俺の持つスキル、ドールマスターの能力で生み出された記念すべき一体目の人形が彼女になる。
 作ったのは俺が12歳の時、スキルをもらって本当にすぐのことだった。

『取り敢えず想像……想像かぁ』

 無から有を生み出すということで、俺の想像がそのまま形になるらしい。
 どうせなら俺の好みドンピシャを生み出したいということで、下世話な話だが俺が良いと思った要素全てを詰め込んで生まれたのが彼女だった。

『お初にお目に掛かります。マスター、これより貴方様に仕え永遠の忠誠を誓います』

 全裸の小柄な巨乳美女が目の前に現れたら、いくらガキとはいえ……ねえ? まあその後に数日ぶっ倒れたのは予想外だったけど。

 とまあこんな感じで彼女は生まれた。そして俺の考えた計画、俺の能力で生み出した彼女たちを売りに出すこと……まあ気は進まなかったがその計画を話したんだよね。するとこの世の絶望というか、涙を流して嫌だと縋るもんだからその計画は一瞬で頓挫した。
 いくら生み出した人形とはいえ、女の子にそんな顔をされてしまっては非情になれなかったんだ俺は。

「……でもなぁ」

 ニコニコと見つめてくるリーシャを見つめ返してみる。こうして見ると本当に人間と何も変わらない。感情はあるし痛覚とかも存在するし、飯だって食うし何なら排泄だってする。能力から生み出した関係上人形と言っているが……どうなんだろうねこれは。

「マスター?」
「いや、何でもない」

 まあそんなことを気にしてももう仕方ない。俺はリーシャが作ってくれた食事に手を付け、完全に俺の好みを理解したその味に美味いと絶賛するのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

異世界ラグナロク 〜妹を探したいだけの神災級の俺、上位スキル使用禁止でも気づいたら世界を蹂躙してたっぽい〜

Tri-TON
ファンタジー
核戦争で死んだ俺は、神災級と呼ばれるチートな力を持ったまま異世界へ転生した。 目的はひとつ――行方不明になった“妹”を探すことだ。 だがそこは、大量の転生者が前世の知識と魔素を融合させた“魔素学”によって、 神・魔物・人間の均衡が崩れた危うい世界だった。 そんな中で、魔王と女神が勝手に俺の精神世界で居候し、 挙句の果てに俺は魔物たちに崇拝されるという意味不明な状況に巻き込まれていく。 そして、謎の魔獣の襲来、七つの大罪を名乗る異世界人勇者たちとの因縁、 さらには俺の前世すら巻き込む神々の陰謀まで飛び出して――。 妹を探すだけのはずが、どうやら“世界の命運”まで背負わされるらしい。 笑い、シリアス、涙、そして家族愛。 騒がしくも温かい仲間たちと紡ぐ新たな伝説が、今始まる――。 ※小説家になろう様でも掲載しております。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺

マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。 その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。 彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。 そして....彼の身体は大丈夫なのか!?

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

付きまとう聖女様は、貧乏貴族の僕にだけ甘すぎる〜人生相談がきっかけで日常がカオスに。でも、モテたい願望が強すぎて、つい……〜

咲月ねむと
ファンタジー
この乙女ゲーの世界に転生してからというもの毎日教会に通い詰めている。アランという貧乏貴族の三男に生まれた俺は、何を目指し、何を糧にして生きていけばいいのか分からない。 そんな人生のアドバイスをもらうため教会に通っているのだが……。 「アランくん。今日も来てくれたのね」 そう優しく語り掛けてくれるのは、頼れる聖女リリシア様だ。人々の悩みを静かに聞き入れ、的確なアドバイスをくれる美人聖女様だと人気だ。 そんな彼女だが、なぜか俺が相談するといつも様子が変になる。アドバイスはくれるのだがそのアドバイス自体が問題でどうも自己主張が強すぎるのだ。 「お母様のプレゼントは何を買えばいい?」 と相談すれば、 「ネックレスをプレゼントするのはどう? でもね私は結婚指輪が欲しいの」などという発言が飛び出すのだ。意味が分からない。 そして俺もようやく一人暮らしを始める歳になった。王都にある学園に通い始めたのだが、教会本部にそれはもう美人な聖女が赴任してきたとか。 興味本位で俺は教会本部に人生相談をお願いした。担当になった人物というのが、またもやリリシアさんで…………。 ようやく俺は気づいたんだ。 リリシアさんに付きまとわれていること、この頻繁に相談する関係が実は異常だったということに。

処理中です...