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13話
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あと一寸で大きな拳が僕の顔に当たる。
僕の身体能力よりも遥かに優れているコワさんの拳は、避けることも許されず、一瞬で近付いた。
――――そのとき。
僕を強打するはずだった拳は、やってきた方向へと戻っていく。いや、コワさん自体が僕から一瞬で離れていき、後ろにある壁に激突した。
「ぐはっ!?」
今のって……何かに飛ばされた?
そのとき、僕の肩と頭にモモ達が上がり声を上げる。
「「「「きゅぴぴっ!」」」」
「モモ達?」
「て、てめぇ……何を……したっ……くそ……がぁ……」
「僕も守って……くれたの?」
「きゅぴっ!」
「みんな……ありがとう」
モモ達が僕を殴ろうとした相手に怒っていた。
「くっ……ちくしょ……変な魔法を……使いやがって……」
僕はコワさんから逃げるように裏路地から外に出て宿屋に走った。
最後に振り向いたら気を失いかけているコワさんが見えた。
翌日。
今日はやけに宿屋にお客様が多かったので、リーゼはずっと手伝いに行き、僕は一人で庭園に行った。
いつもと変わらない仕事をして、お昼休みにイマイルおじさんも来てくれた。
「おじさん。一つ聞いてもいいですか?」
「どうしたんじゃ~?」
「モモ達って魔法が使えるんですか?」
「もちろん使えるのじゃよ~彼らは風の精霊だからね~」
「そうなんだ……でもどうして今まで自分達で使って飛ばなかったんですか?」
「精霊について説明していなかったね~精霊は自分だけで魔法を使うことはできないんだ~契約を結ぶことで契約者の魔法の力を借りることで使えるようになるんじゃよ~」
「ほえ~じゃあ、今のモモ達は僕のように風魔法が使えるということですよね?」
「そうじゃな~」
「ほえ……じゃあ、僕と離れても自由に魔法で空が飛べる?」
「それは~難しいと思うのじゃ~モモンガ様達が使う風魔法は強力過ぎて~空を飛ぶには向いてないんじゃよ~」
「あ……そっか……あくまで風魔法を使えるようになるだけ。強さは本来の魔力の強さ?」
「そういうことじゃよ~」
そっか……昨日のコワさんを吹き飛ばした風魔法は、やっぱり強力なモノになっていたんだね。
「ハウくんは冒険者になりたかったんだね~?」
「そうですね。両親が元々冒険者でしたので、僕も両親のように冒険者になりたいです」
「とてもいいことだと思うよ~モモンガ様達と一緒に冒険者を目指してみるのも~」
「!? ダ、ダメです! 庭園のお仕事が……」
「ふふっ~ハウくんはとても優しいね~ならこうしようか~今は六日のうち~五日働いて一日休みだけど~一日働いて一日休みはどうだい~?」
「えっと……庭園の植物達が……」
「気になるけど~ハウくんの人生も大事だからね~でも辞めるわけじゃないから決めるのはハウくん次第だよ~私はハウくんを応援したいし~モモンガ様達もそうだと思う~」
「おじさん……ありがとうございます。少し考えさせてください」
「もちろんさ~いつでも考えを聞かせてくれていいからね~」
「はい!」
お昼ご飯が終わり紅茶を飲んでいると、おじさんが聞いてきた。
「ハウくんは~どうして冒険者になりたいんだい? 両親が冒険者をしていてもハウくんがなる理由にはならないと思うんだ~」
「それは……」
おじさんが疑問に思うのも不思議ではない。僕みたいに弱い才能を持ってる人が、冒険者を目指すなんて、普通に考えればありえないから。
両親が冒険者だったから冒険者になりたい。それも一つの理由だけど……でもそれだけじゃない。
「以前、お母さんに、どうして僕を家に一人にして冒険に出掛けるのかって聞いたことがあるんです。そのときのお母さんは……まだ見たこともない世界を冒険して、その世界を僕にも見せたいからって言ってくれました。あのときの僕はよくわからなかったけど……きっとお母さんもお父さんも冒険者であることが重要だったんだと思います。だから、僕は見たいんです。お母さんとお父さんが生涯をかけて冒険者として歩んだ道を、僕も歩いてみたい。二人の――――息子として」
静かに聞いていたおじさんに視線を向ける。
「おじさん!?」
「あ……すまないね。歳を取ると涙が脆くなってしまってね~ハウくんの覚悟はよくわかったよ~なおさら私も応援したくなったよ~」
「ありがとうございます……ただ……それだけじゃなくて、多分ですけど……僕は二人が見れなかった冒険も見てみたいんだと思います。両親の代わり……だなんて言えるほど力も才能も持ってるわけじゃないですけど」
「才能は大事で力も大事……でも何より大事なのは、自分がどうしたいか。自分の足で歩き、自分の手で取り、感じることなんだ~ハウくんもこれからは自分の目標に向かって頑張るといいよ~」
「はいっ! お仕事のことは、少しだけ考えさせてください。ちゃんと自分なりに答えを出しますから!」
おじさんは笑顔で頷いてくれた。
その日も庭園の仕事をしながら、モモ達が気持ちよく空高く飛んでる姿を見ながら、僕もモモ達みたいに羽ばたきたいと思った。
両親はどうして冒険者になり、冒険者として生きていたのか……僕がそれを知る術はないけれど、二人の背中を追いかければわかるようになるかもしれない……。
いつも楽しそうに冒険であったことを話してくれた両親の顔が思い浮かんだ。
――【あとがき】――
いつもそよ風を楽しんでいただきありがとうございます!
昨日追加された「いいね機能」を使い、さっそくいいねをくださったみなさまありがとうございした!
HOTランキングがもう上がれなくなり、気が滅入っていましたが、とても励みになりました。
受賞したいから書き上げた作品でこのままではかなり厳しそうですが……コンテストが終わるまではできる限り頑張っていきます。
変わらず応援して頂けたら幸いです。
僕の身体能力よりも遥かに優れているコワさんの拳は、避けることも許されず、一瞬で近付いた。
――――そのとき。
僕を強打するはずだった拳は、やってきた方向へと戻っていく。いや、コワさん自体が僕から一瞬で離れていき、後ろにある壁に激突した。
「ぐはっ!?」
今のって……何かに飛ばされた?
そのとき、僕の肩と頭にモモ達が上がり声を上げる。
「「「「きゅぴぴっ!」」」」
「モモ達?」
「て、てめぇ……何を……したっ……くそ……がぁ……」
「僕も守って……くれたの?」
「きゅぴっ!」
「みんな……ありがとう」
モモ達が僕を殴ろうとした相手に怒っていた。
「くっ……ちくしょ……変な魔法を……使いやがって……」
僕はコワさんから逃げるように裏路地から外に出て宿屋に走った。
最後に振り向いたら気を失いかけているコワさんが見えた。
翌日。
今日はやけに宿屋にお客様が多かったので、リーゼはずっと手伝いに行き、僕は一人で庭園に行った。
いつもと変わらない仕事をして、お昼休みにイマイルおじさんも来てくれた。
「おじさん。一つ聞いてもいいですか?」
「どうしたんじゃ~?」
「モモ達って魔法が使えるんですか?」
「もちろん使えるのじゃよ~彼らは風の精霊だからね~」
「そうなんだ……でもどうして今まで自分達で使って飛ばなかったんですか?」
「精霊について説明していなかったね~精霊は自分だけで魔法を使うことはできないんだ~契約を結ぶことで契約者の魔法の力を借りることで使えるようになるんじゃよ~」
「ほえ~じゃあ、今のモモ達は僕のように風魔法が使えるということですよね?」
「そうじゃな~」
「ほえ……じゃあ、僕と離れても自由に魔法で空が飛べる?」
「それは~難しいと思うのじゃ~モモンガ様達が使う風魔法は強力過ぎて~空を飛ぶには向いてないんじゃよ~」
「あ……そっか……あくまで風魔法を使えるようになるだけ。強さは本来の魔力の強さ?」
「そういうことじゃよ~」
そっか……昨日のコワさんを吹き飛ばした風魔法は、やっぱり強力なモノになっていたんだね。
「ハウくんは冒険者になりたかったんだね~?」
「そうですね。両親が元々冒険者でしたので、僕も両親のように冒険者になりたいです」
「とてもいいことだと思うよ~モモンガ様達と一緒に冒険者を目指してみるのも~」
「!? ダ、ダメです! 庭園のお仕事が……」
「ふふっ~ハウくんはとても優しいね~ならこうしようか~今は六日のうち~五日働いて一日休みだけど~一日働いて一日休みはどうだい~?」
「えっと……庭園の植物達が……」
「気になるけど~ハウくんの人生も大事だからね~でも辞めるわけじゃないから決めるのはハウくん次第だよ~私はハウくんを応援したいし~モモンガ様達もそうだと思う~」
「おじさん……ありがとうございます。少し考えさせてください」
「もちろんさ~いつでも考えを聞かせてくれていいからね~」
「はい!」
お昼ご飯が終わり紅茶を飲んでいると、おじさんが聞いてきた。
「ハウくんは~どうして冒険者になりたいんだい? 両親が冒険者をしていてもハウくんがなる理由にはならないと思うんだ~」
「それは……」
おじさんが疑問に思うのも不思議ではない。僕みたいに弱い才能を持ってる人が、冒険者を目指すなんて、普通に考えればありえないから。
両親が冒険者だったから冒険者になりたい。それも一つの理由だけど……でもそれだけじゃない。
「以前、お母さんに、どうして僕を家に一人にして冒険に出掛けるのかって聞いたことがあるんです。そのときのお母さんは……まだ見たこともない世界を冒険して、その世界を僕にも見せたいからって言ってくれました。あのときの僕はよくわからなかったけど……きっとお母さんもお父さんも冒険者であることが重要だったんだと思います。だから、僕は見たいんです。お母さんとお父さんが生涯をかけて冒険者として歩んだ道を、僕も歩いてみたい。二人の――――息子として」
静かに聞いていたおじさんに視線を向ける。
「おじさん!?」
「あ……すまないね。歳を取ると涙が脆くなってしまってね~ハウくんの覚悟はよくわかったよ~なおさら私も応援したくなったよ~」
「ありがとうございます……ただ……それだけじゃなくて、多分ですけど……僕は二人が見れなかった冒険も見てみたいんだと思います。両親の代わり……だなんて言えるほど力も才能も持ってるわけじゃないですけど」
「才能は大事で力も大事……でも何より大事なのは、自分がどうしたいか。自分の足で歩き、自分の手で取り、感じることなんだ~ハウくんもこれからは自分の目標に向かって頑張るといいよ~」
「はいっ! お仕事のことは、少しだけ考えさせてください。ちゃんと自分なりに答えを出しますから!」
おじさんは笑顔で頷いてくれた。
その日も庭園の仕事をしながら、モモ達が気持ちよく空高く飛んでる姿を見ながら、僕もモモ達みたいに羽ばたきたいと思った。
両親はどうして冒険者になり、冒険者として生きていたのか……僕がそれを知る術はないけれど、二人の背中を追いかければわかるようになるかもしれない……。
いつも楽しそうに冒険であったことを話してくれた両親の顔が思い浮かんだ。
――【あとがき】――
いつもそよ風を楽しんでいただきありがとうございます!
昨日追加された「いいね機能」を使い、さっそくいいねをくださったみなさまありがとうございした!
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受賞したいから書き上げた作品でこのままではかなり厳しそうですが……コンテストが終わるまではできる限り頑張っていきます。
変わらず応援して頂けたら幸いです。
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