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③
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「ん…………」
「エリシア!」
目が覚めると、視界に見慣れた顔が映る。
「殿下……?」
「そうだ! 俺だ! 分かるか?」
「はい……マシュー殿下……お会いしたかった…………」
「俺もだとも! 話はマリーから聞いた。後は心配するな。全て俺に任せておけ」
「はい…………」
そう話すマシュー王子は、エリシアの力がない手を強く握り締める。
その温かさに思わず涙を流す。
「ゆっくり休め。これから王城に君を連れて帰る。もうあの家には居させないから心配するな」
「ありがとう……ございます…………殿下……」
何故かまた気を失うエリシアであった。
「…………くっくっくっ」
王子の笑い声が病室に響き渡った。
◇
エリシアが次に目を覚ました時は、すでに病院ではない場所であった。
本来なら暖かい場所で目を覚ますはずだったエリシアだったが、ひんやりと伝う床の感触に一瞬で目が覚ます。
「こ、ここは!?」
周囲を眺めると、とてもじゃないが、自分がいるとは信じられない光景が広がっていた。
「えっ!? ど、どうして、私が…………牢獄に?」
冷たい石で作られたベッドに、壁一面が開いているが、ここが牢獄だと分かるように見えている鉄格子がエリシアの視界に映った。
自分は婚約者であるマシュー王子に会ったはずで、こんな場所に入れられるはずがない。
現状が飲み込めず、ただ鉄格子の向こうにひらひらと燃え上っている松明を眺める。
「あら、お目覚めですの? ――――――お姉様」
想像だにしなかった声に、ますます現実が飲み込めない。
「うふふ。まさか自分が牢獄の中に入れられるなんて、思いもしませんでしたのね?」
エリシアは思わず自分のほっぺたを自らの手でつねる。
嘘であって欲しかった。
だが、自分の頬に感じる痛みは本物だ。
「残念ながら夢ではなくてよ? さあ、そろそろもう少し絶望を与えましょう」
そう話すセーナは、視線を横に向ける。
すると足音が聞こえ、そこに現れたのは――――
「えっ? マシュー殿下……?」
「うむ。やっと気が付いたのだな。エリシア」
「殿下……? えっ? これは一体……?」
「エリシア。お前との婚約を破棄させてもらう」
「えっ?」
マシュー王子から言い渡された言葉が納得いかず、ただただ驚くエリシア。
そして、王子からさらに信じられない言葉が放たれる。
「お前にはこれから――――王太子の暗殺を企てた女。としてここで死んで貰う」
「私が? そんな事などしていません!」
王子に必死に訴えるエリシアだったが、王子は不敵な笑みを浮かべる。
「ああ。お前がやってない事など、俺が一番知っているさ。何故なら――――その事件の犯人が俺だからな」
「マシュー…………殿下? …………どうして?」
「お前に理解されようとも思わないが、ずっとあの兄に蔑まれて来た。だからあの邪魔者には退場して貰ったのさ!」
「そ、そんな…………」
「その全ての罪をお前が被ってくれ。元婚約者としてな!」
「い、嫌です! どうして私が!」
「どうしてか…………なんてことない。こういう事だ」
直後、王子は隣に立っているセーナを強引に抱き締め、唇を重ねた。
その姿にいつも優しかったマシューの姿はなく、ただ女の欲する男の表情が浮かべている。
「殿下~姉の前ではしたないですわ」
「いいではないか。姉への最後の土産としてな」
「うふふふ。それもそうですわね。お姉様? マシュー殿下はお姉様にはもったいないお方ですもの。もう諦めてくださいまし」
ただただ声を抑えて泣き崩れるエリシア。
最愛だったはずの婚約者が忌々しい妹と繋がっている事がどうしても納得いかない。
「エリシア。お前には最後の慈悲をくれてやる」
そう話すマシュー王子は、彼女に向かい少し大きめな錠剤を投げ込んだ。
「あのメイドから死薬を貰えたみたいだな? まさか、計画が終わる前にお前が屋敷から逃げられたのには驚いたぞ」
「っ!?」
「おい、連れてこい」
横に向かってそう話すと、エリシアの前にマリーを連れた兵士がやってくる。
マリーは両手と口を縛られ、大きな涙を流していた。
「この娘を助けたくはないか?」
「マリーに何をする気なの!?」
「それはこれからのお前次第だ。その死薬を飲めば、この娘の命だけは生かしてやる」
目の前の死薬は、先日飲んだ小さなモノとは比べられないほどに大きい。
飲めば間違いなく死ぬだろう。
だが、ここまで尽くしてくれたメイドの為に、今自分が出来る事をやるしかないエリシアは、目の前に落ちている大きな死薬を握り締めた。
そして、涙を流しながら王子と妹を睨む。
「貴方達に天罰が下るのを楽しみにしているわ」
そう言い残したエリシアは、メイドの為に薬を飲み込んだ。
「エリシア!」
目が覚めると、視界に見慣れた顔が映る。
「殿下……?」
「そうだ! 俺だ! 分かるか?」
「はい……マシュー殿下……お会いしたかった…………」
「俺もだとも! 話はマリーから聞いた。後は心配するな。全て俺に任せておけ」
「はい…………」
そう話すマシュー王子は、エリシアの力がない手を強く握り締める。
その温かさに思わず涙を流す。
「ゆっくり休め。これから王城に君を連れて帰る。もうあの家には居させないから心配するな」
「ありがとう……ございます…………殿下……」
何故かまた気を失うエリシアであった。
「…………くっくっくっ」
王子の笑い声が病室に響き渡った。
◇
エリシアが次に目を覚ました時は、すでに病院ではない場所であった。
本来なら暖かい場所で目を覚ますはずだったエリシアだったが、ひんやりと伝う床の感触に一瞬で目が覚ます。
「こ、ここは!?」
周囲を眺めると、とてもじゃないが、自分がいるとは信じられない光景が広がっていた。
「えっ!? ど、どうして、私が…………牢獄に?」
冷たい石で作られたベッドに、壁一面が開いているが、ここが牢獄だと分かるように見えている鉄格子がエリシアの視界に映った。
自分は婚約者であるマシュー王子に会ったはずで、こんな場所に入れられるはずがない。
現状が飲み込めず、ただ鉄格子の向こうにひらひらと燃え上っている松明を眺める。
「あら、お目覚めですの? ――――――お姉様」
想像だにしなかった声に、ますます現実が飲み込めない。
「うふふ。まさか自分が牢獄の中に入れられるなんて、思いもしませんでしたのね?」
エリシアは思わず自分のほっぺたを自らの手でつねる。
嘘であって欲しかった。
だが、自分の頬に感じる痛みは本物だ。
「残念ながら夢ではなくてよ? さあ、そろそろもう少し絶望を与えましょう」
そう話すセーナは、視線を横に向ける。
すると足音が聞こえ、そこに現れたのは――――
「えっ? マシュー殿下……?」
「うむ。やっと気が付いたのだな。エリシア」
「殿下……? えっ? これは一体……?」
「エリシア。お前との婚約を破棄させてもらう」
「えっ?」
マシュー王子から言い渡された言葉が納得いかず、ただただ驚くエリシア。
そして、王子からさらに信じられない言葉が放たれる。
「お前にはこれから――――王太子の暗殺を企てた女。としてここで死んで貰う」
「私が? そんな事などしていません!」
王子に必死に訴えるエリシアだったが、王子は不敵な笑みを浮かべる。
「ああ。お前がやってない事など、俺が一番知っているさ。何故なら――――その事件の犯人が俺だからな」
「マシュー…………殿下? …………どうして?」
「お前に理解されようとも思わないが、ずっとあの兄に蔑まれて来た。だからあの邪魔者には退場して貰ったのさ!」
「そ、そんな…………」
「その全ての罪をお前が被ってくれ。元婚約者としてな!」
「い、嫌です! どうして私が!」
「どうしてか…………なんてことない。こういう事だ」
直後、王子は隣に立っているセーナを強引に抱き締め、唇を重ねた。
その姿にいつも優しかったマシューの姿はなく、ただ女の欲する男の表情が浮かべている。
「殿下~姉の前ではしたないですわ」
「いいではないか。姉への最後の土産としてな」
「うふふふ。それもそうですわね。お姉様? マシュー殿下はお姉様にはもったいないお方ですもの。もう諦めてくださいまし」
ただただ声を抑えて泣き崩れるエリシア。
最愛だったはずの婚約者が忌々しい妹と繋がっている事がどうしても納得いかない。
「エリシア。お前には最後の慈悲をくれてやる」
そう話すマシュー王子は、彼女に向かい少し大きめな錠剤を投げ込んだ。
「あのメイドから死薬を貰えたみたいだな? まさか、計画が終わる前にお前が屋敷から逃げられたのには驚いたぞ」
「っ!?」
「おい、連れてこい」
横に向かってそう話すと、エリシアの前にマリーを連れた兵士がやってくる。
マリーは両手と口を縛られ、大きな涙を流していた。
「この娘を助けたくはないか?」
「マリーに何をする気なの!?」
「それはこれからのお前次第だ。その死薬を飲めば、この娘の命だけは生かしてやる」
目の前の死薬は、先日飲んだ小さなモノとは比べられないほどに大きい。
飲めば間違いなく死ぬだろう。
だが、ここまで尽くしてくれたメイドの為に、今自分が出来る事をやるしかないエリシアは、目の前に落ちている大きな死薬を握り締めた。
そして、涙を流しながら王子と妹を睨む。
「貴方達に天罰が下るのを楽しみにしているわ」
そう言い残したエリシアは、メイドの為に薬を飲み込んだ。
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