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18.グレースの外出②(ライリー視点)
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ライリーが持ち帰ってきた指示に、屋敷の中はにわかに慌ただしくなった。
「まったくお嬢様の気まぐれに振り回されるこっちの身にもなってほしいわ」
「まあまあ。今日はメイド長もいないんだし、グレース様だってたまには息抜きは必要よ」
なぜかライリーはグレースの肩を持つような言い方になり、同僚のイザベルから不思議そうな目で見られた。
「それに今回は短時間だし、付き添いなら私が行くわ。護衛はマクベスさんが引き受けてくださったし」
継ぎ足した言葉もどこかグレースを弁護するようなものだった。
ライリー自身、どうしてそんな気になっているのか自分でもよくわからなかった。
いつも人形のように笑顔を崩さない彼女が、珍しく色々な表情を見せてきたせいかもしれない。
「でも今まで孤児院なんて見向きもしなかったのに、どういう風の吹き回しかしら」
荷物に防寒用のショールや日傘を詰めながら、まだ不服そうにイザベルがいう。
ライリーもずっとそう思っていた。
けれどグレースの言いっぷりでは、まるで演奏会などの余興より奉仕活動の方に興味があるみたいだった。
それに、ドーラが彼女の行動を止めていたようなのも気になった。
主のフェイトですら彼女一人の外出は控えるようにと注意するだけで、護衛を伴う公的な活動は禁じていなかったはず。
孤児院の訪問はそこまで堅いものではないし、グレースならそつなくこなすだろう。
そもそも、メイド長に女主人の行動を制限する権利などないのに――。
「馬車の用意ができたぞ」
すべての荷物を整えたタイミングで、御者が呼びにきた。
「今行くわ」
ライリーは鞄を携え、グレースの元へ向かった。
「まったくお嬢様の気まぐれに振り回されるこっちの身にもなってほしいわ」
「まあまあ。今日はメイド長もいないんだし、グレース様だってたまには息抜きは必要よ」
なぜかライリーはグレースの肩を持つような言い方になり、同僚のイザベルから不思議そうな目で見られた。
「それに今回は短時間だし、付き添いなら私が行くわ。護衛はマクベスさんが引き受けてくださったし」
継ぎ足した言葉もどこかグレースを弁護するようなものだった。
ライリー自身、どうしてそんな気になっているのか自分でもよくわからなかった。
いつも人形のように笑顔を崩さない彼女が、珍しく色々な表情を見せてきたせいかもしれない。
「でも今まで孤児院なんて見向きもしなかったのに、どういう風の吹き回しかしら」
荷物に防寒用のショールや日傘を詰めながら、まだ不服そうにイザベルがいう。
ライリーもずっとそう思っていた。
けれどグレースの言いっぷりでは、まるで演奏会などの余興より奉仕活動の方に興味があるみたいだった。
それに、ドーラが彼女の行動を止めていたようなのも気になった。
主のフェイトですら彼女一人の外出は控えるようにと注意するだけで、護衛を伴う公的な活動は禁じていなかったはず。
孤児院の訪問はそこまで堅いものではないし、グレースならそつなくこなすだろう。
そもそも、メイド長に女主人の行動を制限する権利などないのに――。
「馬車の用意ができたぞ」
すべての荷物を整えたタイミングで、御者が呼びにきた。
「今行くわ」
ライリーは鞄を携え、グレースの元へ向かった。
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