2 / 49
倒幕前夜
第一章 妖霊星の宴 2.
しおりを挟む
2.
これだけ近いと、今、己を取り込んでいる『怪異』と、得宗館に現れたという『怪異』が、無縁のものとも思えなくなった。
実のところ、昨今鎌倉の地に於いて、『怪異』話は別段珍しいものではない。
死体が動いた。
犬がしゃべった。
満月に海が干上がった。
異形の群れが夜道を駆けた、というのもあった。
巷でよく言われる、『怪異が現われるは、吉か凶か?』の判じはともかく、それだけ政情が不安定な証(あかし)だと、直義は思っていた。
上にある幕府が乱れれば、否も応もなく、下にいる庶民も巻き込まれる。
(だが全てを『怪異』のせいに出来れば、人の罪は問わずに済む)
執権が、幕府が、政を怠っている――そんなことは、口に出せない。
だからすべては、怪異のせい。
理屈は分かるが、こうして己が巻き込まれてみると、また別の考えも湧いてくる。
(偶然か、それとも……)
――足利の本流である、『源氏』の家系は呪われている。
(父も兄も疑うことのない、先祖代々、念の入った積み重ねだ)
公に認める者もいないだろうが、『物の怪』に襲われるに足る条件なら、一族中が満たしているともいえる。
だがそれとは別に、鎌倉の有力御家人、足利の舎弟として、直義が『物の怪』や人に狙われる理由も少なからず存在する。
(どうする?)
と、思案する間もなく辺りが暗くなった。
鳥どもが日を遮ったというより、一息に周囲が昼から夜に転じたようだった。
進むべき方角を見失った直義は、仕方なしに足を止めた。
腰に下げた刀に、手を掛けて考える。
(果たして、怪異に刀が通じるだろうか?)
通じるにせよ、辺りを包む闇は、ただ一つの刀で押し切れる量ではない。
直義は刀から手を離した。
直義が止まったのを見計らったように、鳥の羽音も次第に収まっていった。
だが、完全に静寂になるのを厭うように、ひときわ大きな羽音がバサリッと辺りに響いた。
それと呼応するように、クックッ笑う声が闇にこだまする。
「このような時間に、このような場所へなぞ、足を踏み入れてはなりませんよ、ご舎弟殿」
若い男の声だが、言葉にねとっとした媚びがある。
他に、いかめしい男や、しわがれた翁の声も割って入ってくる。
「逢魔が時に、獣道へなぞ」
「しかも、供も連れずにお一人で」
「いや剛毅のことよ。さすがは足利の副将軍」
「これこれ、お若い衆を揶揄うてはいかん」
「おお、まさしく紅顔の美青年。あの敦盛殿もかくやかな」
ごちゃごちゃと濁り混じった、様様な嗤い声がやんややんやと耳障りに響く。
キンキンとした高い声は、女のもののようにも聞こえた。
「もういいか」
うんざりと直義が口をはさんだ。
尋常ならざる暗闇に、言葉の通じぬ鳥と残されるのは困るが、どんな形の者でも、人の口を利くならば怖くない。
しかも先程から聞えてくる内容は、おどろおどろしいものでなく、その辺の雑色どもの戯言と変わりはない。
「姿を隠して、こそこそと囀る様は、奇怪を通り越して滑稽だ。それとも異形異類の方々は、揃いも揃ってうぶなのか」
直義は腕を組み、挑発するようにあごを上げた。
途端に辺りは怒声に包まれる。
「生意気な! ただびとの分際で」
「強がっておるだけよ!」
「ここが何処かも分からぬ、無知無謬の輩なれば仕方あるまい」
「帰りたくば、這って許しを乞うがよいぞ!」
直義の口の端が、笑みの形に吊り上る。
一つ息を吸い込み、視線をおもむろに正面へ向けると、直義は闇を一喝した。
「笑止千万!」
戦場にあって、数多の兵を御してきた雄叫びが、闇に隠れた嘲笑を討ち払った。
「俺が膝を折るは、この地にただ一人だけ。それはお前らなどではないわ」
明快に直義が断じると、辺りはしばし静まった。
やがて気を取り直したように、「なるほどなるほど」と、翁の声がした。
「牙を抜かれ、北条の飼い犬に成り下がったとはいえ、八幡太郎の裔か。なかなか肝が据わっておるわ」
謡うように告げられた瞬間、カッと頭の芯が熱くなるのを、直義は感じた。
(犬と呼ばれて怒る矜持が、まだあったか)
己に感心することで、直義は怒りを冷ました。
相手が『物の怪』であろうとなかろうと、何らかの手妻を持っているのは確かだ。
頭に血が上っては、帰路を探るのは難しい。
「さあな。先祖がどなたであろうと、俺は俺だ。『ただびと』に用がないのなら、早々に道を戻すがいい」
「さて。おぬしなんぞに用がなくとも、行きがけの駄賃として鎌倉御家人の身柄を、かたにもろうてもよいのだぞ」
「吝嗇な話だ」
直義がぼそっとつぶやくと、シュッと音がし、何かが飛んで来た。
無造作に刀の柄で払うと、小刀が落ちてきた。
直義は、鞘を抜くべきかどうかと迷った。
――――――――――――――――
※八幡太郎:源氏のヒーロー、源義家のこと。
源頼朝や足利尊氏のご先祖様です。
これだけ近いと、今、己を取り込んでいる『怪異』と、得宗館に現れたという『怪異』が、無縁のものとも思えなくなった。
実のところ、昨今鎌倉の地に於いて、『怪異』話は別段珍しいものではない。
死体が動いた。
犬がしゃべった。
満月に海が干上がった。
異形の群れが夜道を駆けた、というのもあった。
巷でよく言われる、『怪異が現われるは、吉か凶か?』の判じはともかく、それだけ政情が不安定な証(あかし)だと、直義は思っていた。
上にある幕府が乱れれば、否も応もなく、下にいる庶民も巻き込まれる。
(だが全てを『怪異』のせいに出来れば、人の罪は問わずに済む)
執権が、幕府が、政を怠っている――そんなことは、口に出せない。
だからすべては、怪異のせい。
理屈は分かるが、こうして己が巻き込まれてみると、また別の考えも湧いてくる。
(偶然か、それとも……)
――足利の本流である、『源氏』の家系は呪われている。
(父も兄も疑うことのない、先祖代々、念の入った積み重ねだ)
公に認める者もいないだろうが、『物の怪』に襲われるに足る条件なら、一族中が満たしているともいえる。
だがそれとは別に、鎌倉の有力御家人、足利の舎弟として、直義が『物の怪』や人に狙われる理由も少なからず存在する。
(どうする?)
と、思案する間もなく辺りが暗くなった。
鳥どもが日を遮ったというより、一息に周囲が昼から夜に転じたようだった。
進むべき方角を見失った直義は、仕方なしに足を止めた。
腰に下げた刀に、手を掛けて考える。
(果たして、怪異に刀が通じるだろうか?)
通じるにせよ、辺りを包む闇は、ただ一つの刀で押し切れる量ではない。
直義は刀から手を離した。
直義が止まったのを見計らったように、鳥の羽音も次第に収まっていった。
だが、完全に静寂になるのを厭うように、ひときわ大きな羽音がバサリッと辺りに響いた。
それと呼応するように、クックッ笑う声が闇にこだまする。
「このような時間に、このような場所へなぞ、足を踏み入れてはなりませんよ、ご舎弟殿」
若い男の声だが、言葉にねとっとした媚びがある。
他に、いかめしい男や、しわがれた翁の声も割って入ってくる。
「逢魔が時に、獣道へなぞ」
「しかも、供も連れずにお一人で」
「いや剛毅のことよ。さすがは足利の副将軍」
「これこれ、お若い衆を揶揄うてはいかん」
「おお、まさしく紅顔の美青年。あの敦盛殿もかくやかな」
ごちゃごちゃと濁り混じった、様様な嗤い声がやんややんやと耳障りに響く。
キンキンとした高い声は、女のもののようにも聞こえた。
「もういいか」
うんざりと直義が口をはさんだ。
尋常ならざる暗闇に、言葉の通じぬ鳥と残されるのは困るが、どんな形の者でも、人の口を利くならば怖くない。
しかも先程から聞えてくる内容は、おどろおどろしいものでなく、その辺の雑色どもの戯言と変わりはない。
「姿を隠して、こそこそと囀る様は、奇怪を通り越して滑稽だ。それとも異形異類の方々は、揃いも揃ってうぶなのか」
直義は腕を組み、挑発するようにあごを上げた。
途端に辺りは怒声に包まれる。
「生意気な! ただびとの分際で」
「強がっておるだけよ!」
「ここが何処かも分からぬ、無知無謬の輩なれば仕方あるまい」
「帰りたくば、這って許しを乞うがよいぞ!」
直義の口の端が、笑みの形に吊り上る。
一つ息を吸い込み、視線をおもむろに正面へ向けると、直義は闇を一喝した。
「笑止千万!」
戦場にあって、数多の兵を御してきた雄叫びが、闇に隠れた嘲笑を討ち払った。
「俺が膝を折るは、この地にただ一人だけ。それはお前らなどではないわ」
明快に直義が断じると、辺りはしばし静まった。
やがて気を取り直したように、「なるほどなるほど」と、翁の声がした。
「牙を抜かれ、北条の飼い犬に成り下がったとはいえ、八幡太郎の裔か。なかなか肝が据わっておるわ」
謡うように告げられた瞬間、カッと頭の芯が熱くなるのを、直義は感じた。
(犬と呼ばれて怒る矜持が、まだあったか)
己に感心することで、直義は怒りを冷ました。
相手が『物の怪』であろうとなかろうと、何らかの手妻を持っているのは確かだ。
頭に血が上っては、帰路を探るのは難しい。
「さあな。先祖がどなたであろうと、俺は俺だ。『ただびと』に用がないのなら、早々に道を戻すがいい」
「さて。おぬしなんぞに用がなくとも、行きがけの駄賃として鎌倉御家人の身柄を、かたにもろうてもよいのだぞ」
「吝嗇な話だ」
直義がぼそっとつぶやくと、シュッと音がし、何かが飛んで来た。
無造作に刀の柄で払うと、小刀が落ちてきた。
直義は、鞘を抜くべきかどうかと迷った。
――――――――――――――――
※八幡太郎:源氏のヒーロー、源義家のこと。
源頼朝や足利尊氏のご先祖様です。
0
あなたにおすすめの小説
無用庵隠居清左衛門
蔵屋
歴史・時代
前老中田沼意次から引き継いで老中となった松平定信は、厳しい倹約令として|寛政の改革《かんせいのかいかく》を実施した。
第8代将軍徳川吉宗によって実施された|享保の改革《きょうほうのかいかく》、|天保の改革《てんぽうのかいかく》と合わせて幕政改革の三大改革という。
松平定信は厳しい倹約令を実施したのだった。江戸幕府は町人たちを中心とした貨幣経済の発達に伴い|逼迫《ひっぱく》した幕府の財政で苦しんでいた。
幕府の財政再建を目的とした改革を実施する事は江戸幕府にとって緊急の課題であった。
この時期、各地方の諸藩に於いても藩政改革が行われていたのであった。
そんな中、徳川家直参旗本であった緒方清左衛門は、己の出世の事しか考えない同僚に嫌気がさしていた。
清左衛門は無欲の徳川家直参旗本であった。
俸禄も入らず、出世欲もなく、ただひたすら、女房の千歳と娘の弥生と、三人仲睦まじく暮らす平穏な日々であればよかったのである。
清左衛門は『あらゆる欲を捨て去り、何もこだわらぬ無の境地になって千歳と弥生の幸せだけを願い、最後は無欲で死にたい』と思っていたのだ。
ある日、清左衛門に理不尽な言いがかりが同僚立花右近からあったのだ。
清左衛門は右近の言いがかりを相手にせず、
無視したのであった。
そして、松平定信に対して、隠居願いを提出したのであった。
「おぬし、本当にそれで良いのだな」
「拙者、一向に構いません」
「分かった。好きにするがよい」
こうして、清左衛門は隠居生活に入ったのである。
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
偽夫婦お家騒動始末記
紫紺
歴史・時代
【第10回歴史時代大賞、奨励賞受賞しました!】
故郷を捨て、江戸で寺子屋の先生を生業として暮らす篠宮隼(しのみやはやて)は、ある夜、茶屋から足抜けしてきた陰間と出会う。
紫音(しおん)という若い男との奇妙な共同生活が始まるのだが。
隼には胸に秘めた決意があり、紫音との生活はそれを遂げるための策の一つだ。だが、紫音の方にも実は裏があって……。
江戸を舞台に様々な陰謀が駆け巡る。敢えて裏街道を走る隼に、念願を叶える日はくるのだろうか。
そして、拾った陰間、紫音の正体は。
活劇と謎解き、そして恋心の長編エンタメ時代小説です。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
日露戦争の真実
蔵屋
歴史・時代
私の先祖は日露戦争の奉天の戦いで若くして戦死しました。
日本政府の定めた徴兵制で戦地に行ったのでした。
日露戦争が始まったのは明治37年(1904)2月6日でした。
帝政ロシアは清国の領土だった中国東北部を事実上占領下に置き、さらに朝鮮半島、日本海に勢力を伸ばそうとしていました。
日本はこれに対抗し開戦に至ったのです。
ほぼ同時に、日本連合艦隊はロシア軍の拠点港である旅順に向かい、ロシア軍の旅順艦隊の殲滅を目指すことになりました。
ロシア軍はヨーロッパに配備していたバルチック艦隊を日本に派遣するべく準備を開始したのです。
深い入り江に守られた旅順沿岸に設置された強力な砲台のため日本の連合艦隊は、陸軍に陸上からの旅順艦隊攻撃を要請したのでした。
この物語の始まりです。
『神知りて 人の幸せ 祈るのみ
神の伝えし 愛善の道』
この短歌は私が今年元旦に詠んだ歌である。
作家 蔵屋日唱
神典日月神示 真実の物語
蔵屋
歴史・時代
私は二人の方々の神憑りについて、今から25年前にその真実を知りました。
この方たちのお名前は
大本開祖•出口なお(でぐちなお)、
神典研究家で画家でもあった岡本天明(おかもとてんめい)です。
この日月神示(ひつきしんじ)または日尽神示(ひつくしんじ)は、神典研究家で画家でもあった岡本天明(おかもとてんめい)に「国常立尊(国之常立神)という高級神霊からの神示を自動書記によって記述したとされる書物のことです。
昭和19年から27年(昭和23・26年も無し)に一連の神示が降り、6年後の昭和33、34年に補巻とする1巻、さらに2年後に8巻の神示が降りたとされています。
その神示を纏めた書類です。
私はこの日月神示(ひつきしんじ)に出会い、研究し始めてもう25年になります。
日月神示が降ろされた場所は麻賀多神社(まかたじんじゃ)です。日月神示の最初の第一帖と第二帖は第二次世界大戦中の昭和19年6月10日に、この神社の社務所で岡本天明が神憑りに合い自動書記さされたのです。
殆どが漢数字、独特の記号、若干のかな文字が混じった文体で構成され、抽象的な絵のみで書記されている「巻」もあります。
本巻38巻と補巻1巻の計39巻が既に発表されているが、他にも、神霊より発表を禁じられている「巻」が13巻あり、天明はこの未発表のものについて昭和36年に「或る時期が来れば発表を許されるものか、許されないのか、現在の所では不明であります」と語っています。
日月神示は、その難解さから、書記した天明自身も当初は、ほとんど読むことが出来なかったが、仲間の神典研究家や霊能者達の協力などで少しずつ解読が進み、天明亡き後も妻である岡本三典(1917年〈大正6年〉11月9日 ~2009年〈平成21年〉6月23日)の努力により、現在では一部を除きかなりの部分が解読されたと言われているます。しかし、一方では神示の中に「この筆示は8通りに読めるのであるぞ」と書かれていることもあり、解読法の一つに成功したという認識が関係者の間では一般的です。
そのために、仮訳という副題を添えての発表もありました。
なお、原文を解読して漢字仮名交じり文に書き直されたものは、特に「ひふみ神示」または「一二三神示」と呼ばれています。
縄文人の祝詞に「ひふみ祝詞(のりと)」という祝詞の歌があります。
日月神示はその登場以来、関係者や一部専門家を除きほとんど知られていなかったが、1990年代の初め頃より神典研究家で翻訳家の中矢伸一の著作などにより広く一般にも知られるようになってきたと言われています。
この小説は真実の物語です。
「神典日月神示(しんてんひつきしんじ)真実の物語」
どうぞ、お楽しみ下さい。
『神知りて 人の幸せ 願うのみ
神のつたへし 愛善の道』
歌人 蔵屋日唱
【読者賞】江戸の飯屋『やわらぎ亭』〜元武家娘が一膳でほぐす人と心〜
旅する書斎(☆ほしい)
歴史・時代
【第11回歴史・時代小説大賞 読者賞(読者投票1位)受賞】
文化文政の江戸・深川。
人知れず佇む一軒の飯屋――『やわらぎ亭』。
暖簾を掲げるのは、元武家の娘・おし乃。
家も家族も失い、父の形見の包丁一つで町に飛び込んだ彼女は、
「旨い飯で人の心をほどく」を信条に、今日も竈に火を入れる。
常連は、職人、火消し、子どもたち、そして──町奉行・遠山金四郎!?
変装してまで通い詰めるその理由は、一膳に込められた想いと味。
鯛茶漬け、芋がらの煮物、あんこう鍋……
その料理の奥に、江戸の暮らしと誇りが宿る。
涙も笑いも、湯気とともに立ち上る。
これは、舌と心を温める、江戸人情グルメ劇。
別れし夫婦の御定書(おさだめがき)
佐倉 蘭
歴史・時代
★第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★
嫡男を産めぬがゆえに、姑の策略で南町奉行所の例繰方与力・進藤 又十蔵と離縁させられた与岐(よき)。
離縁後、生家の父の猛反対を押し切って生まれ育った八丁堀の組屋敷を出ると、小伝馬町の仕舞屋に居を定めて一人暮らしを始めた。
月日は流れ、姑の思惑どおり後妻が嫡男を産み、婚家に置いてきた娘は二人とも無事与力の御家に嫁いだ。
おのれに起こったことは綺麗さっぱり水に流した与岐は、今では女だてらに離縁を望む町家の女房たちの代わりに亭主どもから去り状(三行半)をもぎ取るなどをする「公事師(くじし)」の生業(なりわい)をして生計を立てていた。
されどもある日突然、与岐の仕舞屋にとっくの昔に離縁したはずの元夫・又十蔵が転がり込んできて——
※「今宵は遣らずの雨」「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」「大江戸の番人 〜吉原髪切り捕物帖〜」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる