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ルーカスの依頼(14)
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「ルーカス様、Sランクの魔獣がいるとなると、こちらももう少し考えなければならないですね」
「俺もそう思います。一体であればルーカス様と俺達の補助で何とかなりますが、これが複数体になってしまうと……」
同じ依頼を受けている【勇者の館】としては、まさかSランク魔獣が納品されるとは思ってもいなかったので、自分達が同じ状況に陥った時の対策を慌てて話し始める。
彼らの判断は正しく、実はフレナブルはジュラを二体仕留めていた。
この魔獣は番で存在していたのだ。
どちらかと言うとシルバ、カスミ組の担当エリアにいた存在だったのだが、二人の安全のためにフレナブルがさっさと仕留めておいたのだ。
その内の一体をギルドに成果として提出の上注意喚起し、一体は【癒しの雫】の鍛冶三人組に渡して活用してもらおうと考えた。
もちろんシアやクオウも了承済みだし、極上の素材を貰えると理解した鍛冶三人組は狂喜乱舞だった。
「だが、そうそうSランクがいるか?いや、事実いたのだから対策は必要か。クソ、なんであいつらの方にSランクがいて、俺達の方にはAランクしかいなかったんだ!」
Sランクがいなかった事に腹を立てているルーカスだが、向かう街道を指定したのはルーカス自身だ。
事前調査を行った上、高ランクの魔獣がいる街道を選択したつもりだったのだが、調査部隊ではSランクの魔獣の気配を察知する事は出来なかった。
逆に遭遇さえしなかったのは幸運だったのだろうが、今のルーカスにそのような事は関係ない。
結果的に【勇者の館】は再び称賛される事には成功したが、それ以上に【癒しの雫】に話題をかっさらわれ、評判を落とす当初の目的は達成できなかったルーカスの機嫌は一気に悪くなる。
結局、そのまま彼らも【勇者の館】に戻るのだった。
その頃には【癒しの雫】に到着しているクオウ一行は各自が個別に行動し、やがて留守番組と共に全員で夕食をして寛いでいる所に、受付側から何やら呼び声が聞こえる。
既にギルドとしては閉じており、何事かと向かうシアとクオウ。
そこには、あの四人の護衛と共に美しい所作で待っていたリリアがいた。
「夜分に申し訳ありません。本来は明日にお伺いさせて頂く予定でしたが、Sランク魔獣を納品されたとお伺いして、来てしまいました」
興奮しているのはリリアだけではなく、護衛の四人も同じようだ。
「ご挨拶が遅れました。私、リリア様の護衛隊長を務めておりますゴルダと申します。このような時間に突然の訪問、お許しください。で……ジュラを納品されたとお伺いしましたが、帰り道、どなたもお怪我をされた様子はありませんでした。無傷で倒されたのですか?」
「えっと、そうですね。【癒しの雫】の冒険者は優秀ですので。あの、どうぞ中にお入りください。宜しければ、改めて【癒しの雫】をご紹介させて頂きますが……」
シアが率先して対応しているので、クオウは口を出さずに優しく見守っている。
「まぁ、それは嬉しいですわ。では、遠慮なく……」
リリアと護衛、見かけ通りに騎士なのだろうが、四人と共にギルドに入り、勧められた席に着く。
「おーい、皆!リリアさん達だよー」
何も知らない少女と言うのは恐ろしい。
そしてそのお目付け役が元魔王のクオウであるならば、この呼びかけは問題ないと判断される。
リリアや護衛も一切気にしないので問題なかったが、他の貴族の護衛であれば、主たる者を市井の者に“さん”付けで呼ばれれば青筋を立てて怒り始めるだろう。もちろん貴族本人もだが……
そんな騒動が起こるわけもなく、奥から【癒しの雫】のメンバーが揃ってギルドとして使っている場所に顔を出す。
「まぁ、リアントさん!ウフフ、さっきぶりですね!寂しかったですか?」
そんな訳はないだろうと【癒しの雫】の誰もが思っているが、微笑むだけで口にはしない。
言われたリアントも空気が読める素晴らしい魔獣なのか、リリアの勢いに少々後退してしまったが、諦めたのか大人しくされるがままになっている。
触角の様な物がこれ以上ない程にヘニャっと垂れ下がっているのは、見なかった事にしている【癒しの雫】。
「改めまして、私がリリア様の護衛隊長のゴルダと申します。こちらが副隊長のラスプ、隊員のシームとフリックです」
既にリリアはリアントに夢中で使い物にならないと判断した隊長ゴルダによって、各自の紹介が進む。
「……そうですか。あなた方が元【鉱石の彩】の皆さんでしたか。どうりで【癒しの雫】の武具の評判も高いわけです。騎士の間でもこちらの武具を欲しがる者が多数おりますが、中々依頼が通らないと嘆いておりました」
「これは申し訳ありません。ですが、【癒しの雫】ではしっかりとした武具を、納得いった武具をお渡しする事を信条としておりますので、安易にお受けする事は出来ないのです。必要な素材入手の関係もありますし……」
すっかりギルドマスターとして対応できるようになってきたと、【癒しの雫】の誰しもが嬉しそうにシアを見つめている。
「俺もそう思います。一体であればルーカス様と俺達の補助で何とかなりますが、これが複数体になってしまうと……」
同じ依頼を受けている【勇者の館】としては、まさかSランク魔獣が納品されるとは思ってもいなかったので、自分達が同じ状況に陥った時の対策を慌てて話し始める。
彼らの判断は正しく、実はフレナブルはジュラを二体仕留めていた。
この魔獣は番で存在していたのだ。
どちらかと言うとシルバ、カスミ組の担当エリアにいた存在だったのだが、二人の安全のためにフレナブルがさっさと仕留めておいたのだ。
その内の一体をギルドに成果として提出の上注意喚起し、一体は【癒しの雫】の鍛冶三人組に渡して活用してもらおうと考えた。
もちろんシアやクオウも了承済みだし、極上の素材を貰えると理解した鍛冶三人組は狂喜乱舞だった。
「だが、そうそうSランクがいるか?いや、事実いたのだから対策は必要か。クソ、なんであいつらの方にSランクがいて、俺達の方にはAランクしかいなかったんだ!」
Sランクがいなかった事に腹を立てているルーカスだが、向かう街道を指定したのはルーカス自身だ。
事前調査を行った上、高ランクの魔獣がいる街道を選択したつもりだったのだが、調査部隊ではSランクの魔獣の気配を察知する事は出来なかった。
逆に遭遇さえしなかったのは幸運だったのだろうが、今のルーカスにそのような事は関係ない。
結果的に【勇者の館】は再び称賛される事には成功したが、それ以上に【癒しの雫】に話題をかっさらわれ、評判を落とす当初の目的は達成できなかったルーカスの機嫌は一気に悪くなる。
結局、そのまま彼らも【勇者の館】に戻るのだった。
その頃には【癒しの雫】に到着しているクオウ一行は各自が個別に行動し、やがて留守番組と共に全員で夕食をして寛いでいる所に、受付側から何やら呼び声が聞こえる。
既にギルドとしては閉じており、何事かと向かうシアとクオウ。
そこには、あの四人の護衛と共に美しい所作で待っていたリリアがいた。
「夜分に申し訳ありません。本来は明日にお伺いさせて頂く予定でしたが、Sランク魔獣を納品されたとお伺いして、来てしまいました」
興奮しているのはリリアだけではなく、護衛の四人も同じようだ。
「ご挨拶が遅れました。私、リリア様の護衛隊長を務めておりますゴルダと申します。このような時間に突然の訪問、お許しください。で……ジュラを納品されたとお伺いしましたが、帰り道、どなたもお怪我をされた様子はありませんでした。無傷で倒されたのですか?」
「えっと、そうですね。【癒しの雫】の冒険者は優秀ですので。あの、どうぞ中にお入りください。宜しければ、改めて【癒しの雫】をご紹介させて頂きますが……」
シアが率先して対応しているので、クオウは口を出さずに優しく見守っている。
「まぁ、それは嬉しいですわ。では、遠慮なく……」
リリアと護衛、見かけ通りに騎士なのだろうが、四人と共にギルドに入り、勧められた席に着く。
「おーい、皆!リリアさん達だよー」
何も知らない少女と言うのは恐ろしい。
そしてそのお目付け役が元魔王のクオウであるならば、この呼びかけは問題ないと判断される。
リリアや護衛も一切気にしないので問題なかったが、他の貴族の護衛であれば、主たる者を市井の者に“さん”付けで呼ばれれば青筋を立てて怒り始めるだろう。もちろん貴族本人もだが……
そんな騒動が起こるわけもなく、奥から【癒しの雫】のメンバーが揃ってギルドとして使っている場所に顔を出す。
「まぁ、リアントさん!ウフフ、さっきぶりですね!寂しかったですか?」
そんな訳はないだろうと【癒しの雫】の誰もが思っているが、微笑むだけで口にはしない。
言われたリアントも空気が読める素晴らしい魔獣なのか、リリアの勢いに少々後退してしまったが、諦めたのか大人しくされるがままになっている。
触角の様な物がこれ以上ない程にヘニャっと垂れ下がっているのは、見なかった事にしている【癒しの雫】。
「改めまして、私がリリア様の護衛隊長のゴルダと申します。こちらが副隊長のラスプ、隊員のシームとフリックです」
既にリリアはリアントに夢中で使い物にならないと判断した隊長ゴルダによって、各自の紹介が進む。
「……そうですか。あなた方が元【鉱石の彩】の皆さんでしたか。どうりで【癒しの雫】の武具の評判も高いわけです。騎士の間でもこちらの武具を欲しがる者が多数おりますが、中々依頼が通らないと嘆いておりました」
「これは申し訳ありません。ですが、【癒しの雫】ではしっかりとした武具を、納得いった武具をお渡しする事を信条としておりますので、安易にお受けする事は出来ないのです。必要な素材入手の関係もありますし……」
すっかりギルドマスターとして対応できるようになってきたと、【癒しの雫】の誰しもが嬉しそうにシアを見つめている。
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