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充実した忙しさ
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「お、自分で来ちゃったの?よしよし」
ギルド【癒しの雫】に戻ったクオウは、目の前にいるラトールを見て微笑んでいる。
この時には、リリアは用事があるのか名残惜しそうにしながらリアントを見つつも【癒しの雫】を後にしていた。
ラトールは、漸く久しぶりに会えたクオウの胸に飛び込んで嬉しそうに短い尻尾をお尻ごとフリフリしている。
因みにラトールを平然と受け止めているクオウだが、普通の人がラトールの飛び込んで来るのを受け止めようとした場合、上半身が無くなっていたりする。
「ラトール、俺には大丈夫だけど、他の仲間には本当にそ~っと飛び込むんだよ?これだけは絶対に守ってね?」
もちろんクオウはラトールに注意するが、一度教えれば決して粗相をしないラトールなので、すっかり安心している。
この後、魔族であると知っている仲間達にラトールの存在、そして少々控えめにその力を教え、リアントと共に【癒しの雫】のマスコット的な存在に収まる事になったラトール。
自身の力と比べると遥かに格下であるのは事実であるが、クオウの仲間と認識されているリアントも仲間であると正しく認識しているので、仲良く接する事ができているラトール。
リアント同様に人言を発する事はないが、クオウは直接眷属にしているのでラトールの言いたい事は全てわかる。
そこから得た情報と、ギルド本部で得た情報をギルド内部で共有する事にした。
「えっと、俺達が不在の間にこの町を襲いに来た二体の魔獣がいたとの情報を得ました。マスターもきっとその情報を得ていますよね?」
「はい。ですが【勇者の館】が始末したと聞いています」
「えぇ?怪しいですわ。信じられません。あの【変質者の館】程度で始末できる魔獣達だったのでしょうか?」
未だフレナブルは辛辣だ。
「そこですが、特殊個体と思われるスピナ二体だったそうです。国家の判断では【勇者の館】に緊急依頼を出し、同時に俺達にも緊急帰国の指示を出したそうですが、【勇者の館】によって始末された為に帰国の指示は途中で取りやめになったみたいです」
クオウの説明で緊急帰国の依頼が届かなかった理由は理解したが、本当に【勇者の館】がスピナ二体を倒したのかは未だ疑問が残っていたので、何やら納得いかなそうな顔をしている。
特にフレナブルが……
「そしてラトールによれば、俺の匂いを探してこの近くまで辿り着いた所にスピナと遭遇し、俺を探す邪魔になると思い始末したそうです。で、その周辺には気絶している冒険者が複数いた……と」
「アハハハ、クオウの旦那!それなら納得できるぜ。なぁ?フレナブルさん」
「えぇ、ミハイルさんの仰る通りですね。手も足も出ずに無様に気絶している間にラトールがスピナを始末して、その成果を横取りする。やはり【変質者の館】に相応しい行いですね。これならば納得できます!」
ようやく納得する全員だが、夫婦の冒険者であるシルバは思わずこんな事を妻のカスミに呟いていた。
「なぁ、カスミ。俺達、こんな超常の話に慣れてきて、感覚がおかしくなってないか?」
「そうね。でもシルバも相当強くなっているわよ」
フレナブルやペトロによる鍛錬、あり得ない素材から鍛冶三人組が作成する武具による強化によって、今の二人であればスピナも軽々始末できる程度には強くなっている。
「今後俺達が仮に不在であったとしても、ラトールがいるのでギルドも町も安全です。これからもしっかりと【癒しの雫】として積極的に活動していきましょう!」
クオウの一声でスピナ関連の話は終了する。
「本当に凄いですね。私がギルドマスターをさせて貰っているシアです。宜しくお願いしますね、ラトールちゃん!」
クオウに指摘されていた通り、本当に優しくシアの腕に飛び移って目を細めているラトール。
そんな魔獣を優しく撫でながら、マスターとしてシアも話し始める。
「皆さん、お疲れ様でした。やはり町の人々の細かい依頼が少々溜まっておりますので、明日は一日本部の依頼は受けない方向で行きたいと思います。宜しくお願いします」
こうしてギルド昇格に必要な本部の評価を得る事はない、市民からの直接的な依頼を一日かけて全員が受ける事にした【癒しの雫】。
通常でも受けているのだが、全員で対処すれば早く終わる上に少々鈍った体を解す機会にもなると考えたのだ。
当然報酬は二の次。
【癒しの雫】が困窮していた時の恩を返しきれていないと思っているシアを始めとして、その【癒しの雫】に救われているメンバー全員が同じ気持ちでいる。
「皆さんへの依頼はこれです」
机の上に、シア手書きの依頼書が並べられる。
食器の作成、刃物の修正、草むしり、掃除、害虫駆除、買い出し、食事のサポートと、ペットの捜索等、多種多様な仕事が書かれている。
「じゃあ俺は、リアントと共に草むしりと害虫駆除を担当します」
「俺達は、掃除……で良いか?カスミ」
「任せて!シルバ。未だにお料理はクオウさんに勝てていないけど、お掃除なら負けない……はずよ」
「俺達三人は、当然食器やら刃物やらの担当だな」
「では、私は買い出し、食事のサポートに致します」
「探し物、探索は私に任せて下さい!」
マスターであるシアと、事務職のクオウ以外の仕事が決まる。
この二人はギルドに残って【癒しの雫】用の食糧の調達、食事の準備、今回の依頼の記録・処理、そしてギルドを開ける以上は誰かが残らなくてはならいので、冒険者が残っても仕方がないのでこうなっている。
因みにラトールもギルドでお留守番だ。
このような依頼も、楽しく受けて楽しく作業が出来る【癒しの雫】。
財務基盤も盤石になっているからこその余裕である事は否定できないが、シアを筆頭に楽しい仲間に囲まれて作業できる喜びをかみしめていた。
「一番乗り!って、あ~、やっぱりミハイルさん達の方が早いか~」
「残念だったな、カスミ。俺達三人にかかれば、あの仕事量は顔を洗うのと何ら変わらねーからな」
「バカ、ミハイル!お前はまともに顔なんて洗わないんだから、例えになっていないだろ?」
「プッ、本当のことを言うなよ、ロレアル」
そこから、いつもの通り楽しくも騒がしくなるギルトだ。
ギルド【癒しの雫】に戻ったクオウは、目の前にいるラトールを見て微笑んでいる。
この時には、リリアは用事があるのか名残惜しそうにしながらリアントを見つつも【癒しの雫】を後にしていた。
ラトールは、漸く久しぶりに会えたクオウの胸に飛び込んで嬉しそうに短い尻尾をお尻ごとフリフリしている。
因みにラトールを平然と受け止めているクオウだが、普通の人がラトールの飛び込んで来るのを受け止めようとした場合、上半身が無くなっていたりする。
「ラトール、俺には大丈夫だけど、他の仲間には本当にそ~っと飛び込むんだよ?これだけは絶対に守ってね?」
もちろんクオウはラトールに注意するが、一度教えれば決して粗相をしないラトールなので、すっかり安心している。
この後、魔族であると知っている仲間達にラトールの存在、そして少々控えめにその力を教え、リアントと共に【癒しの雫】のマスコット的な存在に収まる事になったラトール。
自身の力と比べると遥かに格下であるのは事実であるが、クオウの仲間と認識されているリアントも仲間であると正しく認識しているので、仲良く接する事ができているラトール。
リアント同様に人言を発する事はないが、クオウは直接眷属にしているのでラトールの言いたい事は全てわかる。
そこから得た情報と、ギルド本部で得た情報をギルド内部で共有する事にした。
「えっと、俺達が不在の間にこの町を襲いに来た二体の魔獣がいたとの情報を得ました。マスターもきっとその情報を得ていますよね?」
「はい。ですが【勇者の館】が始末したと聞いています」
「えぇ?怪しいですわ。信じられません。あの【変質者の館】程度で始末できる魔獣達だったのでしょうか?」
未だフレナブルは辛辣だ。
「そこですが、特殊個体と思われるスピナ二体だったそうです。国家の判断では【勇者の館】に緊急依頼を出し、同時に俺達にも緊急帰国の指示を出したそうですが、【勇者の館】によって始末された為に帰国の指示は途中で取りやめになったみたいです」
クオウの説明で緊急帰国の依頼が届かなかった理由は理解したが、本当に【勇者の館】がスピナ二体を倒したのかは未だ疑問が残っていたので、何やら納得いかなそうな顔をしている。
特にフレナブルが……
「そしてラトールによれば、俺の匂いを探してこの近くまで辿り着いた所にスピナと遭遇し、俺を探す邪魔になると思い始末したそうです。で、その周辺には気絶している冒険者が複数いた……と」
「アハハハ、クオウの旦那!それなら納得できるぜ。なぁ?フレナブルさん」
「えぇ、ミハイルさんの仰る通りですね。手も足も出ずに無様に気絶している間にラトールがスピナを始末して、その成果を横取りする。やはり【変質者の館】に相応しい行いですね。これならば納得できます!」
ようやく納得する全員だが、夫婦の冒険者であるシルバは思わずこんな事を妻のカスミに呟いていた。
「なぁ、カスミ。俺達、こんな超常の話に慣れてきて、感覚がおかしくなってないか?」
「そうね。でもシルバも相当強くなっているわよ」
フレナブルやペトロによる鍛錬、あり得ない素材から鍛冶三人組が作成する武具による強化によって、今の二人であればスピナも軽々始末できる程度には強くなっている。
「今後俺達が仮に不在であったとしても、ラトールがいるのでギルドも町も安全です。これからもしっかりと【癒しの雫】として積極的に活動していきましょう!」
クオウの一声でスピナ関連の話は終了する。
「本当に凄いですね。私がギルドマスターをさせて貰っているシアです。宜しくお願いしますね、ラトールちゃん!」
クオウに指摘されていた通り、本当に優しくシアの腕に飛び移って目を細めているラトール。
そんな魔獣を優しく撫でながら、マスターとしてシアも話し始める。
「皆さん、お疲れ様でした。やはり町の人々の細かい依頼が少々溜まっておりますので、明日は一日本部の依頼は受けない方向で行きたいと思います。宜しくお願いします」
こうしてギルド昇格に必要な本部の評価を得る事はない、市民からの直接的な依頼を一日かけて全員が受ける事にした【癒しの雫】。
通常でも受けているのだが、全員で対処すれば早く終わる上に少々鈍った体を解す機会にもなると考えたのだ。
当然報酬は二の次。
【癒しの雫】が困窮していた時の恩を返しきれていないと思っているシアを始めとして、その【癒しの雫】に救われているメンバー全員が同じ気持ちでいる。
「皆さんへの依頼はこれです」
机の上に、シア手書きの依頼書が並べられる。
食器の作成、刃物の修正、草むしり、掃除、害虫駆除、買い出し、食事のサポートと、ペットの捜索等、多種多様な仕事が書かれている。
「じゃあ俺は、リアントと共に草むしりと害虫駆除を担当します」
「俺達は、掃除……で良いか?カスミ」
「任せて!シルバ。未だにお料理はクオウさんに勝てていないけど、お掃除なら負けない……はずよ」
「俺達三人は、当然食器やら刃物やらの担当だな」
「では、私は買い出し、食事のサポートに致します」
「探し物、探索は私に任せて下さい!」
マスターであるシアと、事務職のクオウ以外の仕事が決まる。
この二人はギルドに残って【癒しの雫】用の食糧の調達、食事の準備、今回の依頼の記録・処理、そしてギルドを開ける以上は誰かが残らなくてはならいので、冒険者が残っても仕方がないのでこうなっている。
因みにラトールもギルドでお留守番だ。
このような依頼も、楽しく受けて楽しく作業が出来る【癒しの雫】。
財務基盤も盤石になっているからこその余裕である事は否定できないが、シアを筆頭に楽しい仲間に囲まれて作業できる喜びをかみしめていた。
「一番乗り!って、あ~、やっぱりミハイルさん達の方が早いか~」
「残念だったな、カスミ。俺達三人にかかれば、あの仕事量は顔を洗うのと何ら変わらねーからな」
「バカ、ミハイル!お前はまともに顔なんて洗わないんだから、例えになっていないだろ?」
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