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第三防壁内に移動する魔族
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偽りの英雄、そして傲慢不遜が権威と言う服を着ていたと言っても過言ではないクズ兄が、俺の視界から完全に消え失せた。
これで明確な復讐対象はようやく一人減った。
残りの明確な対象は、国王、そしてギルド長だ。
もちろんあの防壁内部の人間全てが復讐対象なので、俺達は決してあいつらを助けることはしない。
「国王陛下!!ゾルドン王子が魔族に手も足も出ずに亡くなりました」
謁見の間に着くや否や、近衛騎士隊長が真っ青な顔で報告する。
「近衛騎士達はどうした!少しでも救出することができたのか!!」
「いえ、ゾルドン王子が勇敢に第三防壁外部に侵攻した時には、既に全滅しておりました。そこに魔族が急襲し、英雄であるゾルドン王子は私を先に防壁内部に逃がしてくれたのです。申し訳ありません」
息を吐くように嘘をつける近衛騎士隊長。
現場を見ていない国王はそのまま信じることになるだろう。
こいつは情報収集の部隊を国内に放ったと言ってはいたが、実際はそいつらも一目散に逃げ出しているので、正確な情報など伝わっているわけがない。
「なんだと、近衛騎士隊が全滅だと??Sランク冒険者達はどうした?」
「彼らも英雄を救おうと必死に応戦しましたが、力及ばず・・・王子の決死の覚悟で作ってくれた時間を無駄にしないよう、共に避難し、現在は控えの間で休息をとっております」
「何と言う事だ。我がフロキル王国存続の危機と言っても過言ではないではないか。おい宰相!」
「は、ここに」
「宝物庫の中身さえあれば、あんな魔獣共を蹴散らすのは容易いはずだ。中のアイテムの行先の目途はついたのか!」
「申し訳ありません、侵入経路も不明で一切の手がかりがございません」
こいつらは、揃いもそろって真っ青な顔をしている。
あまりにも情けない。
「とすると、Sランク冒険者共に最後の防衛を託すしかないと言う事か」
「残念ながら援軍を呼ぶにも防壁の外へは出られませんし、既に近衛騎士隊は全滅です。Sランク冒険者達に防衛を委ねて籠城しつつ、防壁外からの訪問者が異常を察知して行動をおこしてくれるのを待つしか方法がございません」
「何と言う事だ・・・だが、宰相、お前の言う通り救出を待つ以外に方法はないだろうな。何としても第三防壁で奴らの侵入を食い止めろ!」
「全力をもって・・・」
宰相も青い顔のまま謁見の間を出る。
なぜか同時に近衛騎士隊長まで退室している。
「近衛騎士隊長とやらは、本当に逃げるのがうまいじゃねーか。アルフォナ、もしこいつと再び相まみえる機会があったら、騎士道精神を骨の髄まで教えてやれ」
「無論だ」
すごすごと謁見の間を退出した宰相と近衛騎士隊長は、Sランク冒険者達がいる控えの間に移動した。
「皆さん、国王陛下より王命です。現在の魔獣と魔族は第三防壁から先には侵入していないため、そこを防衛最終ラインとして死守せよとの仰せです」
「俺達は指示通りに全力をもって魔獣共を殲滅した。だが、膨大な魔力を消費してしまったために暫くは動けない」
「大変残念だが、私もだ。国家の危機を救うべく全力で攻撃してしまったのでな」
どいつもこいつも、言い訳がましい奴らだ。
「ハン、正直にかないそうにないから行けません、いや、行きたくありません!位言いやがれ!」
「ヘイロンさん、この方達って冒険者の最高ランクなんですよね?ランクは強さで決まるんじゃないんですか?」
「あぁ、本当はそうあるべきだ。いや、ある程度の強さは持っているはずだが、この国の腐った連中は、他人をいかに蹴落として自分が上がるかが重要なんだ。囮、裏切り、そして上に対してヘコヘコできる程ランクが上がりやすいんだ。あの惨状を見りゃわかるだろスミカ?」
「何となくそんな気はしてたんですけどね・・・」
映像の中のSランク冒険者達は動く気配を見せなかったが、長期的に見ればあの第一防壁の中も安全地帯ではない事、そして自分は転移魔道具を持っている事に気が付いたのだろう。使えなくなっているがな・・・
突然魔獣討伐の準備をしに第三防壁内部の自らの居住に戻ると言い始めた。
「宰相閣下、私はこのフロキル王国存続の危機に再度立ち向かうため、魔力回復のアイテムを自宅に取りに戻ります」
「そうだった。私もアイテムの存在をすっかりと忘れていた。自宅に戻れば丁度第三防壁に近い。私も即戻って再度戦闘の準備をするとしよう」
「おお、やってくださいますか。お願いします。魔獣討伐がなされた暁には、国王陛下にあなた方に対する正当な報酬を行うよう進言いたします」
いつの間にか防衛ではなく討伐になっているが、結果は変わらんだろう。
その映像の横に、テスラムさんの配慮か国王の映像と音声が入る。
「この国は最早だめかもしれんな。いざとなったら私だけでもこの転移の魔道具を使って避難するとしよう。宰相もこんな状態になるまで放置するとは使えないやつだ。冒険者共が魔獣を討伐できた場合でも、あんな無能はクビだな・・・だが、あのキュロス辺境伯すら出撃して行方不明になっている現状を考えると・・・厳しいかもしれんな。そうは言っても最終的には国王たる私が生き残れば国家は存続できる。そうだ、そうなのだ」
謁見の間の玉座に座りながら、足をせわしなく動かして独り言を呟いている。
こんなクズ国王でも、万が一の可能性を考えて最後の最後までこの国に残るらしい。
「ブハハ、宰相ちゃん!一応今だけは必死で頑張ってるのに、クビだってよ!冒険者共はトンズラする気満々だしな」
宰相は、冒険者たちが控えの間から退出するのを見て安堵の表情を浮かべている。
もちろん、退出した冒険者達は宣言通りに第三防壁内にある自宅に帰還している最中だ。
彼らは、まだ第三防壁内部が安全であると判断しての行動だ。会話を拾えばそう考えていることが容易にわかる。
「落ち着いて考えれば、あの第四防壁でさえ超えられるのに時間がかかっていたんだ。堅牢な第三防壁を突破できるとは思えんな」
「ああ、だが油断は禁物だ。あの魔族は別格の強さだったのは間違いない。私が本調子であればあんな魔族は脅威でも何でもないのだが・・・」
一応自分の力が魔族に通じると言う虚勢を張るのは忘れない。
「いや、いくら第三防壁でも数日は持つだろうが、それほど長い時間がかからずに突破されるだろう。あれ程の魔獣がいるんだ。魔族に進化する個体も相当数になるはずだからな」
最後の一言で、かなり昔に修羅場をくぐった経験があるSランク冒険者達は黙り込んだまま彼らの自宅に向かっている。
第三防壁、第二防壁内部の住民は達は、若干落ち着きを取り戻してはいるが、避難解除はしていない。
つまり、第三防壁内部にいるのは、Sランク冒険者達だけだ。
「こいつら、読みが甘いんじゃねーか?こんな防壁なんて簡単に破られるだろうが。それに、あの程度の高さの防壁であれば破壊せずとも超えるのは簡単だろう?」
「それは<六剣>を持つ私達だからそう思うのであって、大した実力もない彼らではそんな思いには至らないんじゃないですか?」
「そうかもしれねーな。だがお前も言うようになったじゃねーかスミカ。テスラムさんの地獄の特訓を経験しているだけあるな」
「フフフ、本当に地獄ですからね・・・」
ヘイロンの言う通り、防壁上部に魔法的な防御を施しているわけではない第三防壁。こんな壁であれば、魔獣に進化した個体であれば難なく超えてくるはずだ。
クズ兄を襲った魔族は第三防壁の壁際から動く様子を見せなかったが、おそらくSランク冒険者達の気配を察知したのか、第三防壁を予想通りに簡単に飛び越えてきた。
Sランク冒険者達は意気消沈しながら自宅に向かっている。
やがて、自宅のエリアである第三防壁付近に近づいた時、壁際に立ちつつ自分達を見つめている魔族に気が付いたようだ。
これで明確な復讐対象はようやく一人減った。
残りの明確な対象は、国王、そしてギルド長だ。
もちろんあの防壁内部の人間全てが復讐対象なので、俺達は決してあいつらを助けることはしない。
「国王陛下!!ゾルドン王子が魔族に手も足も出ずに亡くなりました」
謁見の間に着くや否や、近衛騎士隊長が真っ青な顔で報告する。
「近衛騎士達はどうした!少しでも救出することができたのか!!」
「いえ、ゾルドン王子が勇敢に第三防壁外部に侵攻した時には、既に全滅しておりました。そこに魔族が急襲し、英雄であるゾルドン王子は私を先に防壁内部に逃がしてくれたのです。申し訳ありません」
息を吐くように嘘をつける近衛騎士隊長。
現場を見ていない国王はそのまま信じることになるだろう。
こいつは情報収集の部隊を国内に放ったと言ってはいたが、実際はそいつらも一目散に逃げ出しているので、正確な情報など伝わっているわけがない。
「なんだと、近衛騎士隊が全滅だと??Sランク冒険者達はどうした?」
「彼らも英雄を救おうと必死に応戦しましたが、力及ばず・・・王子の決死の覚悟で作ってくれた時間を無駄にしないよう、共に避難し、現在は控えの間で休息をとっております」
「何と言う事だ。我がフロキル王国存続の危機と言っても過言ではないではないか。おい宰相!」
「は、ここに」
「宝物庫の中身さえあれば、あんな魔獣共を蹴散らすのは容易いはずだ。中のアイテムの行先の目途はついたのか!」
「申し訳ありません、侵入経路も不明で一切の手がかりがございません」
こいつらは、揃いもそろって真っ青な顔をしている。
あまりにも情けない。
「とすると、Sランク冒険者共に最後の防衛を託すしかないと言う事か」
「残念ながら援軍を呼ぶにも防壁の外へは出られませんし、既に近衛騎士隊は全滅です。Sランク冒険者達に防衛を委ねて籠城しつつ、防壁外からの訪問者が異常を察知して行動をおこしてくれるのを待つしか方法がございません」
「何と言う事だ・・・だが、宰相、お前の言う通り救出を待つ以外に方法はないだろうな。何としても第三防壁で奴らの侵入を食い止めろ!」
「全力をもって・・・」
宰相も青い顔のまま謁見の間を出る。
なぜか同時に近衛騎士隊長まで退室している。
「近衛騎士隊長とやらは、本当に逃げるのがうまいじゃねーか。アルフォナ、もしこいつと再び相まみえる機会があったら、騎士道精神を骨の髄まで教えてやれ」
「無論だ」
すごすごと謁見の間を退出した宰相と近衛騎士隊長は、Sランク冒険者達がいる控えの間に移動した。
「皆さん、国王陛下より王命です。現在の魔獣と魔族は第三防壁から先には侵入していないため、そこを防衛最終ラインとして死守せよとの仰せです」
「俺達は指示通りに全力をもって魔獣共を殲滅した。だが、膨大な魔力を消費してしまったために暫くは動けない」
「大変残念だが、私もだ。国家の危機を救うべく全力で攻撃してしまったのでな」
どいつもこいつも、言い訳がましい奴らだ。
「ハン、正直にかないそうにないから行けません、いや、行きたくありません!位言いやがれ!」
「ヘイロンさん、この方達って冒険者の最高ランクなんですよね?ランクは強さで決まるんじゃないんですか?」
「あぁ、本当はそうあるべきだ。いや、ある程度の強さは持っているはずだが、この国の腐った連中は、他人をいかに蹴落として自分が上がるかが重要なんだ。囮、裏切り、そして上に対してヘコヘコできる程ランクが上がりやすいんだ。あの惨状を見りゃわかるだろスミカ?」
「何となくそんな気はしてたんですけどね・・・」
映像の中のSランク冒険者達は動く気配を見せなかったが、長期的に見ればあの第一防壁の中も安全地帯ではない事、そして自分は転移魔道具を持っている事に気が付いたのだろう。使えなくなっているがな・・・
突然魔獣討伐の準備をしに第三防壁内部の自らの居住に戻ると言い始めた。
「宰相閣下、私はこのフロキル王国存続の危機に再度立ち向かうため、魔力回復のアイテムを自宅に取りに戻ります」
「そうだった。私もアイテムの存在をすっかりと忘れていた。自宅に戻れば丁度第三防壁に近い。私も即戻って再度戦闘の準備をするとしよう」
「おお、やってくださいますか。お願いします。魔獣討伐がなされた暁には、国王陛下にあなた方に対する正当な報酬を行うよう進言いたします」
いつの間にか防衛ではなく討伐になっているが、結果は変わらんだろう。
その映像の横に、テスラムさんの配慮か国王の映像と音声が入る。
「この国は最早だめかもしれんな。いざとなったら私だけでもこの転移の魔道具を使って避難するとしよう。宰相もこんな状態になるまで放置するとは使えないやつだ。冒険者共が魔獣を討伐できた場合でも、あんな無能はクビだな・・・だが、あのキュロス辺境伯すら出撃して行方不明になっている現状を考えると・・・厳しいかもしれんな。そうは言っても最終的には国王たる私が生き残れば国家は存続できる。そうだ、そうなのだ」
謁見の間の玉座に座りながら、足をせわしなく動かして独り言を呟いている。
こんなクズ国王でも、万が一の可能性を考えて最後の最後までこの国に残るらしい。
「ブハハ、宰相ちゃん!一応今だけは必死で頑張ってるのに、クビだってよ!冒険者共はトンズラする気満々だしな」
宰相は、冒険者たちが控えの間から退出するのを見て安堵の表情を浮かべている。
もちろん、退出した冒険者達は宣言通りに第三防壁内にある自宅に帰還している最中だ。
彼らは、まだ第三防壁内部が安全であると判断しての行動だ。会話を拾えばそう考えていることが容易にわかる。
「落ち着いて考えれば、あの第四防壁でさえ超えられるのに時間がかかっていたんだ。堅牢な第三防壁を突破できるとは思えんな」
「ああ、だが油断は禁物だ。あの魔族は別格の強さだったのは間違いない。私が本調子であればあんな魔族は脅威でも何でもないのだが・・・」
一応自分の力が魔族に通じると言う虚勢を張るのは忘れない。
「いや、いくら第三防壁でも数日は持つだろうが、それほど長い時間がかからずに突破されるだろう。あれ程の魔獣がいるんだ。魔族に進化する個体も相当数になるはずだからな」
最後の一言で、かなり昔に修羅場をくぐった経験があるSランク冒険者達は黙り込んだまま彼らの自宅に向かっている。
第三防壁、第二防壁内部の住民は達は、若干落ち着きを取り戻してはいるが、避難解除はしていない。
つまり、第三防壁内部にいるのは、Sランク冒険者達だけだ。
「こいつら、読みが甘いんじゃねーか?こんな防壁なんて簡単に破られるだろうが。それに、あの程度の高さの防壁であれば破壊せずとも超えるのは簡単だろう?」
「それは<六剣>を持つ私達だからそう思うのであって、大した実力もない彼らではそんな思いには至らないんじゃないですか?」
「そうかもしれねーな。だがお前も言うようになったじゃねーかスミカ。テスラムさんの地獄の特訓を経験しているだけあるな」
「フフフ、本当に地獄ですからね・・・」
ヘイロンの言う通り、防壁上部に魔法的な防御を施しているわけではない第三防壁。こんな壁であれば、魔獣に進化した個体であれば難なく超えてくるはずだ。
クズ兄を襲った魔族は第三防壁の壁際から動く様子を見せなかったが、おそらくSランク冒険者達の気配を察知したのか、第三防壁を予想通りに簡単に飛び越えてきた。
Sランク冒険者達は意気消沈しながら自宅に向かっている。
やがて、自宅のエリアである第三防壁付近に近づいた時、壁際に立ちつつ自分達を見つめている魔族に気が付いたようだ。
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