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未来へ(2)
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「今、アルフォナさん直系の方が魔国アミストナで騎士をして下さっておりますが、その血は争えないようです。騎士道精神を重要視し、心身共に、本当に信頼に足る騎士に成長しております。今尚、自分自身を高める事を命題として、日々騎士道精神を追い求めていますよ。何れ彼が<土剣>所持者になるのではないかと思っております」
「あの方は、唯一私の修行を一貫して喜んで受け入れてくれた方でした。どれ程厳しくしようが、笑顔でこなしていくのです。当時は正直驚いたものです」
<土剣>アルフォナ。
語り継がれているのは、主に対する絶対の忠誠と何をおいても守り抜くと言う確固たる決意と弛まぬ努力。
そしてその気高い精神と行動を表現するかの様に、凛とした人物。
その姿に全ての騎士が憧れ、尊敬し、自らの目標であるとされていた人物であり、今尚、騎士達の伝説的存在となっている。
そのアルフォナの行動の根幹は、自らが提唱する騎士道精神にあった。
その精神に感銘を受けていた者達によって、アルフォナの説法が書籍にされて祭られている程だ。
ヘイロン達と同じく、主の為、仲間の為に自らを犠牲にしてでも行動する崇高な精神。
決して悪を許さず、弱きを助け、自分にも厳しく高みを常に目指し続ける。
誰よりもその精神を重んじて行動し、最後まで実践していた人物。
実はその直系の人物がアミストナの言う通りこの国家で騎士をしており、生まれ変わりかと思う程に同じような考えと行動をしている存在がいるのだ。
「フフフ、あの坊やですか。どれ程アルフォナ殿に近づいたか、少々揉んでやるのも良いかもしれませんね」
「きっと、いいえ、絶対に喜ぶでしょう。ですが、あくまで彼は今の所は一般人。この時点では<六剣>所持者ではないので、十分な手加減をお願いしますよ?」
笑顔で頷くテスラムは、次なる<六剣>所持者を思い浮かべる。
「……ナユラ殿は、結局リスド王国に戻らざるを得なくなりましたが、既に真の<六剣>の力を持っていたので、移動はロイド様の<無剣>の力を使わなくとも、即座に到着できていましたな」
「そうでした。ナユラ殿は兄上であるキルハ国王の補助をされる事になったのでしたね。再び王族に戻り、王族としても、私人としても良くこちらに遊びに来てくださいましたよ。時折、自由な冒険者に戻りたいと愚痴をこぼしておりました」
<光剣>ナユラ。
リスド王国は、同盟のフロキル王国と魔国アミストナと共にこの世界の三大国家として認定されており、全てにおいて多忙な国家と言われていた。
そこを必死で運営していたキルハ国王からの要請、いや、懇願で、王族を離脱したナユラが止む無く復帰し、国家運営を共に行っていたのだ。
しかし彼女は国内のみならず、疲弊している国家にも積極的に手を差し伸べ、必要に応じて荒れた土地を<浄化>して人々の助けになっており、いつの間にかリスドの聖女と呼ばれていたりする。
どちらかと言うと国家の要人としてのイメージが強くなってしまっていたのだが、まぎれもなく<六剣>の内の一振りを持つに相応しい人物であった。
拠点はリスド王国に移していたが、その能力を十分に活用し、魔国アミストナやフロキル王国に気軽に遊びに行き、交流を深めていた人物だ。
当時最低でも一週間に一回は訪問があったのだが、その訪問が無くなった瞬間に、スライムによる連絡で起きていられる時間が極端に短くなってきたと連絡を受けたスミカは、仲間を看取るために暫くリスド王国に留まっていたと言う話もある。
その時に残っていたのは<風剣>テスラムと、<水剣>スミカの二人だけであり、テスラムもその場に駆け付けた事を思い出していた。
二人に対しての最後の言葉……
「スミカちゃん・・・、先に行っているね。皆を看取ってくれてありがとう。辛い思いをさせちゃってごめんね。テスラムさん、<水剣>スミカの事、よろしくお願いします。長い間助けて頂いてありがとうございました。テスラムさんの未来にも幸多からん事を願っております。またいつか向こうでお会いしましょう」
気高い王族として、そして<六剣>の一員として全ての想いを告げたのだ。
「それにしても、まさか私が引き継ぐとは思ってもみませんでした」
そう言いながらアミストナが顕現させた剣は、黒い宝玉が一際大きくなっている剣、<六剣>の内の一つである<闇剣>だ。
「それがヨナ殿、そしてロイド殿の意志でしたからな。それに、私達<六剣>の総意でもありますよ、今代<闇剣>所持者殿」
<闇剣>ヨナ。
最早<六剣>本来の力が必要な程の外敵は無くなり、<無剣>の護衛と言う立ち位置から解放されたヨナは、最後の時に次代<闇剣>所持者にアミストナを指名した。
解放された<六剣>であれば、上位存在である<無剣>に反する事は出来ないのは変わらないが、所持者の意志を汲んで次代の所持者を選定する事が出来るようになっているので、テスラムと共に長きを生きる存在であるアミストナを指名したのだ。
「アミストナ。貴方にこれを託します。テスラムさんと共に、幸あらん事を……」
「ヨナさんの意志、影より<無剣>を支える意志、そして民を支える意志、このアミストナの生ある限り違えないと誓います」
「ヨナ殿。<闇剣>アミストナ殿と共に<無剣>を支える事、この<風剣>テスラムにお任せ下さい!」
その場には、<水剣>スミカ、<光剣>ナユラ、<風剣>テスラム、そしてスライムを通して呼ぶように言われていたアミストナがいた。
その意図が、<闇剣>の継承だったのだ。
アミストナだけではなく、テスラムもヨナの意志を継ぐと明言したのを聞いて、優しく微笑みながらヨナはその生涯を終えた。
そのヨナの視線の先には立派な青年……<無剣>ロイドと<闇剣>ヨナの最愛の息子であり、既に指輪と<無剣>を継承している存在が悲しみながらも慈しむように、母であるヨナを見ていた。
流石は元魔王、現国王である悪魔のアミストナ。
テスラム同様、<闇剣>を使いこなすのにはあまり時間は必要としなかった。
その修行を行いつつも、宣言通りにロイドとヨナの息子、そして<炎剣>ヘイロンと<水剣>スミカ亡き後の娘、更には<土剣>アルフォナの娘をフロキル王国の王族、リスド王国の王族、テスラムと共に立派に育て上げ、どこに出しても恥ずかしくない人物にしたのだ。
当然時代は過ぎ、もう何代目かの<無剣>所持者を見てきただろうか。
ユリナス、ロイド、脈々と受け継がれている<無剣>の意志は、褪せる事無く引き継がれている。
「あの方は、唯一私の修行を一貫して喜んで受け入れてくれた方でした。どれ程厳しくしようが、笑顔でこなしていくのです。当時は正直驚いたものです」
<土剣>アルフォナ。
語り継がれているのは、主に対する絶対の忠誠と何をおいても守り抜くと言う確固たる決意と弛まぬ努力。
そしてその気高い精神と行動を表現するかの様に、凛とした人物。
その姿に全ての騎士が憧れ、尊敬し、自らの目標であるとされていた人物であり、今尚、騎士達の伝説的存在となっている。
そのアルフォナの行動の根幹は、自らが提唱する騎士道精神にあった。
その精神に感銘を受けていた者達によって、アルフォナの説法が書籍にされて祭られている程だ。
ヘイロン達と同じく、主の為、仲間の為に自らを犠牲にしてでも行動する崇高な精神。
決して悪を許さず、弱きを助け、自分にも厳しく高みを常に目指し続ける。
誰よりもその精神を重んじて行動し、最後まで実践していた人物。
実はその直系の人物がアミストナの言う通りこの国家で騎士をしており、生まれ変わりかと思う程に同じような考えと行動をしている存在がいるのだ。
「フフフ、あの坊やですか。どれ程アルフォナ殿に近づいたか、少々揉んでやるのも良いかもしれませんね」
「きっと、いいえ、絶対に喜ぶでしょう。ですが、あくまで彼は今の所は一般人。この時点では<六剣>所持者ではないので、十分な手加減をお願いしますよ?」
笑顔で頷くテスラムは、次なる<六剣>所持者を思い浮かべる。
「……ナユラ殿は、結局リスド王国に戻らざるを得なくなりましたが、既に真の<六剣>の力を持っていたので、移動はロイド様の<無剣>の力を使わなくとも、即座に到着できていましたな」
「そうでした。ナユラ殿は兄上であるキルハ国王の補助をされる事になったのでしたね。再び王族に戻り、王族としても、私人としても良くこちらに遊びに来てくださいましたよ。時折、自由な冒険者に戻りたいと愚痴をこぼしておりました」
<光剣>ナユラ。
リスド王国は、同盟のフロキル王国と魔国アミストナと共にこの世界の三大国家として認定されており、全てにおいて多忙な国家と言われていた。
そこを必死で運営していたキルハ国王からの要請、いや、懇願で、王族を離脱したナユラが止む無く復帰し、国家運営を共に行っていたのだ。
しかし彼女は国内のみならず、疲弊している国家にも積極的に手を差し伸べ、必要に応じて荒れた土地を<浄化>して人々の助けになっており、いつの間にかリスドの聖女と呼ばれていたりする。
どちらかと言うと国家の要人としてのイメージが強くなってしまっていたのだが、まぎれもなく<六剣>の内の一振りを持つに相応しい人物であった。
拠点はリスド王国に移していたが、その能力を十分に活用し、魔国アミストナやフロキル王国に気軽に遊びに行き、交流を深めていた人物だ。
当時最低でも一週間に一回は訪問があったのだが、その訪問が無くなった瞬間に、スライムによる連絡で起きていられる時間が極端に短くなってきたと連絡を受けたスミカは、仲間を看取るために暫くリスド王国に留まっていたと言う話もある。
その時に残っていたのは<風剣>テスラムと、<水剣>スミカの二人だけであり、テスラムもその場に駆け付けた事を思い出していた。
二人に対しての最後の言葉……
「スミカちゃん・・・、先に行っているね。皆を看取ってくれてありがとう。辛い思いをさせちゃってごめんね。テスラムさん、<水剣>スミカの事、よろしくお願いします。長い間助けて頂いてありがとうございました。テスラムさんの未来にも幸多からん事を願っております。またいつか向こうでお会いしましょう」
気高い王族として、そして<六剣>の一員として全ての想いを告げたのだ。
「それにしても、まさか私が引き継ぐとは思ってもみませんでした」
そう言いながらアミストナが顕現させた剣は、黒い宝玉が一際大きくなっている剣、<六剣>の内の一つである<闇剣>だ。
「それがヨナ殿、そしてロイド殿の意志でしたからな。それに、私達<六剣>の総意でもありますよ、今代<闇剣>所持者殿」
<闇剣>ヨナ。
最早<六剣>本来の力が必要な程の外敵は無くなり、<無剣>の護衛と言う立ち位置から解放されたヨナは、最後の時に次代<闇剣>所持者にアミストナを指名した。
解放された<六剣>であれば、上位存在である<無剣>に反する事は出来ないのは変わらないが、所持者の意志を汲んで次代の所持者を選定する事が出来るようになっているので、テスラムと共に長きを生きる存在であるアミストナを指名したのだ。
「アミストナ。貴方にこれを託します。テスラムさんと共に、幸あらん事を……」
「ヨナさんの意志、影より<無剣>を支える意志、そして民を支える意志、このアミストナの生ある限り違えないと誓います」
「ヨナ殿。<闇剣>アミストナ殿と共に<無剣>を支える事、この<風剣>テスラムにお任せ下さい!」
その場には、<水剣>スミカ、<光剣>ナユラ、<風剣>テスラム、そしてスライムを通して呼ぶように言われていたアミストナがいた。
その意図が、<闇剣>の継承だったのだ。
アミストナだけではなく、テスラムもヨナの意志を継ぐと明言したのを聞いて、優しく微笑みながらヨナはその生涯を終えた。
そのヨナの視線の先には立派な青年……<無剣>ロイドと<闇剣>ヨナの最愛の息子であり、既に指輪と<無剣>を継承している存在が悲しみながらも慈しむように、母であるヨナを見ていた。
流石は元魔王、現国王である悪魔のアミストナ。
テスラム同様、<闇剣>を使いこなすのにはあまり時間は必要としなかった。
その修行を行いつつも、宣言通りにロイドとヨナの息子、そして<炎剣>ヘイロンと<水剣>スミカ亡き後の娘、更には<土剣>アルフォナの娘をフロキル王国の王族、リスド王国の王族、テスラムと共に立派に育て上げ、どこに出しても恥ずかしくない人物にしたのだ。
当然時代は過ぎ、もう何代目かの<無剣>所持者を見てきただろうか。
ユリナス、ロイド、脈々と受け継がれている<無剣>の意志は、褪せる事無く引き継がれている。
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