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(38)街道の騒動(2)
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ダイヤキングのアドバイスの元に行動し、目の前の不思議な男性二人に対応すると言い切ったスペードキングの言葉を聞いて、ハートエースはここぞとばかりに再びマッサージを開始し、ロイは即座に微睡の世界に連れて行かれる。
ハートエースとしては、スペードキングがダイヤキングのアドバイスを聞いて対策する以上、万に一つもロイに対して危険はないと確信しており、完全に周囲の雑音を無視してロイの為だけに意識を集中する。
「おふぅー」
再び同じような何とも言えない声が漏れているロイの姿を見て、より嬉しそうな表情になっているハートエースを見ながらも、こちらも再び殺気を放つ男。
「貴様……あの男の仲間か?あの女性を恥も外見も無くあそこまで平然と使い倒して、良心はないのか?」
「……」
スペードキングの反応に少々間があるのは、カード状態のダイヤキングからどのように反応するのかを聞いているのだ。
「貴殿は、我が主に難癖をつけるのか?あの女性が何故嫌そうにしていると断言できるのだ?あの女性は我らの同胞なのだが?」
ダイヤキングとしても、ロイがあらゆる事を大事にしたくないと言い続けているのを知っているし、折角ここまで寛いでいるので穏便に対処したい思いがあるので、初手としては事情を正確に理解してお帰り頂こうかと思っている。
「そんな戯言に騙される俺ではないわ!誰が好き好んでこんな場所であのような行動をする女性がいるのだ!」
「いや、事実、貴殿の目の前にいるではないか?」
スペードエースとしては脊椎反射の様に答えてしまい、ダイヤキングのアドバイスを受けない個人的な回答ではあったのだが、言われた男は煽られていると思い怒りのボルテージが上がって行く。
「俺をコケにしているのか?おい、そこの女!今からこの俺、ジンタ町のジル様がそのふざけた男から解放してやるぞ!」
ゴキゴキと首を馴らして手にしている刃物をちらつかせながら一歩進もうとするのだが、首は動いても足は何故か動かせないジル。
スペードキングが陰魔法を応用して地面から足が離れないようにしているので、全く進む事が出来ずに無駄にその場に留まりながらもがいているように見える。
「若?」
老齢の人物も流石におかしいとは思いつつも、このような状況に陥れる術など見た事も聞いた事も無いので困惑しているが、困惑程度で済んでいるのはどう見てもジルと名乗った男が危険な状況ではないと理解できるからだ。
「貴殿はこの男よりも話が通じそうだ。改めて伝えよう。あそこの女性は我らの仲間であり、同じ主を敬愛してやまない同胞でもある。確かに場所としては適切でないかもしれないが、彼女にとってみれば主に直接奉仕できる滅多にないチャンスなので、邪魔をしないで頂けるとありがたいのだが?」
そこにスペードキングが殺気を抑えていつの間にか近接してこのような事言われてしまったので、確かに有り得ない程に嬉しそうに、中途半端に涎を垂らしている情けない男性の足に触れてマッサージしている笑顔の女性が見え、言われている通りである可能性が高いと判断する。
「あれほど情けない姿なので……コホン、失礼した。あの男性であれば悪事を働いているようには見えませんな」
完全に無防備で情けない姿を曝け出しているロイなので、悪党と言われてもまるで想像もできない事や、奉仕している側の女性が本当に嬉しそうにしている事からも問題ないと判断して、この会話を聞いて嫌でも納得せざるを得なかったジルを引き連れて去って行く。
「何だったんだ、一体」
ジルに対して行使していた陰魔法を解除して解放した後に、ジンタ町方面に向かって去って行く背中を見て思わずこう呟いてしまうスペードキングだが、任務優先である為に再び森に入って陰魔法でロイの近くに移動した。
最悪はこの場で大騒動になっていたかもしれない現場に出くわした面々は今回は何事も無く収まったが、同じような事があっては溜まらないと、美しい女性を見続けたい気持ちを必死で抑えて足を動かし、この場の渋滞は一気に解消される。
騒動を知らない面々が再び集まり始める可能性もあるので、そこを危惧したスペードキングがハートエースに助言して渋々ながらマッサージを終えたので、半ば眠っていたロイはビクッと肩を震わせて意識が戻った。
「ご主人様、かなりお疲れでいたようですね。本日はここで野営になさいますか?」
このままの流れで同衾まで……と言う、少々宜しくない野望を持っているハートエースなのだが、この会話はスペードキングに聞かれておりそこからカード状態の面々に筒抜けなので、カード達からのクレームが激しく来ているとスペードキングから指摘されてしまい、自分にもその声が多数聞こえてくる。
「ハートエース殿、ハートクィーン殿を筆頭にクレームが続いているようだ。望みは分からなくもないが、自制した方が身のためではないか?」
陰の中からではあるが明確にこのような事を格上であるキングから、それも自信が所属する部隊のナンバー2を筆頭にクレームが来ていると言われては抑える他ないハートエースだが、少なくとも今まではロイを独占し、直接足に長時間触れる栄誉を賜っているので、カードに戻った際には散々自慢してやろうと心に決める。
男性のカードであるスペードキングとしては、女性陣のこれほどまで苛烈な争いについて行けない思いがあるのは事実だが、ロイを崇拝している所は同じなのでそのようなモノなのだろうかと言う思いでいる。
こんなやり取りがなされているので、すっかりハートエース、即ちカード部隊の女性の顔を認識されてしまったとは分からないので、今回の騒動の発端である男のジルがジンタ町のシンロイ商会で同じ顔の他の面々に対して何か騒ぎを起こす可能性が高い事には意識が向かなかった。
ハートエースとしては、スペードキングがダイヤキングのアドバイスを聞いて対策する以上、万に一つもロイに対して危険はないと確信しており、完全に周囲の雑音を無視してロイの為だけに意識を集中する。
「おふぅー」
再び同じような何とも言えない声が漏れているロイの姿を見て、より嬉しそうな表情になっているハートエースを見ながらも、こちらも再び殺気を放つ男。
「貴様……あの男の仲間か?あの女性を恥も外見も無くあそこまで平然と使い倒して、良心はないのか?」
「……」
スペードキングの反応に少々間があるのは、カード状態のダイヤキングからどのように反応するのかを聞いているのだ。
「貴殿は、我が主に難癖をつけるのか?あの女性が何故嫌そうにしていると断言できるのだ?あの女性は我らの同胞なのだが?」
ダイヤキングとしても、ロイがあらゆる事を大事にしたくないと言い続けているのを知っているし、折角ここまで寛いでいるので穏便に対処したい思いがあるので、初手としては事情を正確に理解してお帰り頂こうかと思っている。
「そんな戯言に騙される俺ではないわ!誰が好き好んでこんな場所であのような行動をする女性がいるのだ!」
「いや、事実、貴殿の目の前にいるではないか?」
スペードエースとしては脊椎反射の様に答えてしまい、ダイヤキングのアドバイスを受けない個人的な回答ではあったのだが、言われた男は煽られていると思い怒りのボルテージが上がって行く。
「俺をコケにしているのか?おい、そこの女!今からこの俺、ジンタ町のジル様がそのふざけた男から解放してやるぞ!」
ゴキゴキと首を馴らして手にしている刃物をちらつかせながら一歩進もうとするのだが、首は動いても足は何故か動かせないジル。
スペードキングが陰魔法を応用して地面から足が離れないようにしているので、全く進む事が出来ずに無駄にその場に留まりながらもがいているように見える。
「若?」
老齢の人物も流石におかしいとは思いつつも、このような状況に陥れる術など見た事も聞いた事も無いので困惑しているが、困惑程度で済んでいるのはどう見てもジルと名乗った男が危険な状況ではないと理解できるからだ。
「貴殿はこの男よりも話が通じそうだ。改めて伝えよう。あそこの女性は我らの仲間であり、同じ主を敬愛してやまない同胞でもある。確かに場所としては適切でないかもしれないが、彼女にとってみれば主に直接奉仕できる滅多にないチャンスなので、邪魔をしないで頂けるとありがたいのだが?」
そこにスペードキングが殺気を抑えていつの間にか近接してこのような事言われてしまったので、確かに有り得ない程に嬉しそうに、中途半端に涎を垂らしている情けない男性の足に触れてマッサージしている笑顔の女性が見え、言われている通りである可能性が高いと判断する。
「あれほど情けない姿なので……コホン、失礼した。あの男性であれば悪事を働いているようには見えませんな」
完全に無防備で情けない姿を曝け出しているロイなので、悪党と言われてもまるで想像もできない事や、奉仕している側の女性が本当に嬉しそうにしている事からも問題ないと判断して、この会話を聞いて嫌でも納得せざるを得なかったジルを引き連れて去って行く。
「何だったんだ、一体」
ジルに対して行使していた陰魔法を解除して解放した後に、ジンタ町方面に向かって去って行く背中を見て思わずこう呟いてしまうスペードキングだが、任務優先である為に再び森に入って陰魔法でロイの近くに移動した。
最悪はこの場で大騒動になっていたかもしれない現場に出くわした面々は今回は何事も無く収まったが、同じような事があっては溜まらないと、美しい女性を見続けたい気持ちを必死で抑えて足を動かし、この場の渋滞は一気に解消される。
騒動を知らない面々が再び集まり始める可能性もあるので、そこを危惧したスペードキングがハートエースに助言して渋々ながらマッサージを終えたので、半ば眠っていたロイはビクッと肩を震わせて意識が戻った。
「ご主人様、かなりお疲れでいたようですね。本日はここで野営になさいますか?」
このままの流れで同衾まで……と言う、少々宜しくない野望を持っているハートエースなのだが、この会話はスペードキングに聞かれておりそこからカード状態の面々に筒抜けなので、カード達からのクレームが激しく来ているとスペードキングから指摘されてしまい、自分にもその声が多数聞こえてくる。
「ハートエース殿、ハートクィーン殿を筆頭にクレームが続いているようだ。望みは分からなくもないが、自制した方が身のためではないか?」
陰の中からではあるが明確にこのような事を格上であるキングから、それも自信が所属する部隊のナンバー2を筆頭にクレームが来ていると言われては抑える他ないハートエースだが、少なくとも今まではロイを独占し、直接足に長時間触れる栄誉を賜っているので、カードに戻った際には散々自慢してやろうと心に決める。
男性のカードであるスペードキングとしては、女性陣のこれほどまで苛烈な争いについて行けない思いがあるのは事実だが、ロイを崇拝している所は同じなのでそのようなモノなのだろうかと言う思いでいる。
こんなやり取りがなされているので、すっかりハートエース、即ちカード部隊の女性の顔を認識されてしまったとは分からないので、今回の騒動の発端である男のジルがジンタ町のシンロイ商会で同じ顔の他の面々に対して何か騒ぎを起こす可能性が高い事には意識が向かなかった。
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