前世も今世も裏切られるが、信頼できる仲間と共に理想の世界を作り上げる

焼納豆

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スキルの目覚め

モモの想い

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 私は、ご主人様の忠実な番犬であったモモ。
 ある日、久しぶりに悠里なる女が私達の家に鍵を使って入ってきた。

 この女は、以前ご主人様と仲良くしており、一時期私達の食事も用意したりしてくれていたが、ご主人様によれば、平気で裏切ったらしい。

 私達は、即に警戒態勢に入った。
 怪しい気配を感じ、普段庭にいるトカゲのトーカも、少し壊れた窓の隙間から侵入してきた。

 あの女は、我々を気にすることもなく、我が家を漁り始めた。
 裏切り行為も許せないが、ご主人様と私達の家を漁るなど決して許されるものではない。

 九官鳥のソラも、

「カエレ、カエレ、カエレ・・」
 
 と言い続けている。

 そんな中、あの女は何やら目的のものを見つけたらしい。
 それは、アクセサリで、ご主人様と仲が良かったころ、ご主人様があの女にプレゼントしたものだ。
 女がよく家に来ていたころ、置き忘れて帰っていったのだろう。

 裏切られた後も、ご主人様はこのアクセサリを何故か大切にしていた。
 幸せだった頃の思い出として保管していたのだろうか・・。

 それなのに、あの女は平気でご主人様の気持ちを更に踏みにじろうとしているのだ。
 私たちは怒りに我を忘れ、4匹全員攻撃を開始した。

「ギャン・・」

 ・・グシャ・・バキ・・

 こちらの攻撃は何一つ当たらないうちに、突然私たちは反撃を受けた。

 うまく動けなくなっている中で周りを見ると、すでにトーカはつぶされ、ソラも明らかに死んでいる。
 シロも痙攣しており、私も長くはもたないことを理解させられた。

「ちっ、手間かけさせやがって・・」

 きっとこの男が、ご主人様のおっしゃっていた裏切りのきっかけになった北野なのだろう。
 なぜか、北野を守るように複数の男もいるが・・

「北野君、またせてごめんね。ネックレスあったから、即売りに行こうかな。こんなものまだ持ってるなんてあいつもキモイ」

 あの女が何もなかったように話しかけている。
 ご主人様を裏切った挙句、この言いよう。私は最後の命を振り絞って立とうとするも、北野に蹴られて意識を失った。

「モモ、モモ・・・しっかりしてくれ、モモ・・俺を一人にしないでくれ・・・モモ・・・」

 泣きそうなご主人様の声で、朦朧としながらも意識がすこし覚醒した。

 ご主人様は、無残になった我々の体を、ご自身の体が汚れることも厭わず優しく包み込んでいたのだ。
 他の3匹は既に事切れており、かろうじて命をつなげているのは私だけのようだ。

 私は、ご主人様を守れなかったこと、これからご主人様と共に生きていけないことを激しく後悔し、地球での生涯を終えた・・・。

 その後、意識が覚醒すると、我々4匹の前に女性がいた。
 なぜ我々は無事なのか、ここはどこなのか、わからない事だらけの私たちに、女性は話しかけてきた。

「私は地球を管理する神の1柱です。あなた方は、主人に対する絶対の忠誠を誓い、その命を懸けてまで主人とその名誉を守ろうとしたことにより、神格への転生条件を満たしました。よって、これからある世界で神獣として改めて活動をしていただきます」

 どうやら、私たちは新たな条件で再度活動をするらしいが、4匹共にご主人様のために生きたい思いは変わっていなかった。

「「「「私は、ご主人様と共に生きていきたいのですが・・」」」」

 全員完全一致した思いだった。

「ここまで思われて、あなた方のご主人様は幸せですね。わかりました。仮にも神となるあなた方の総意なので、あなた方のご主人様さえよければ、同じ世界に転生できるようにいたしましょう。きっと受け入れてくれるでしょう。ただし、あなた方は、今の状態から神獣への転生となるために、持つ力が巨大になりすぎます。よって、力が完全になじむまで、ある意味幽閉のような状態になってしまいますが、異世界の地下迷宮ダンジョンと呼ばれる仮の管理者となり、最下層にいて頂きます。これは、転生先の神の1柱の指示によるものです」

 幽閉と、何となく恐ろしい言葉が聞こえてきたが、ご主人様と再度共に生きていけるという、うれしい思いが溢れすぎて、あまり気にならなかった。
 さらに神様は続けて、

「力が完全になじむまで100年程の歳月を有するため、あなた方のご主人様の転生は100年後とします。その後、同じ世界で生きることはできますが、会えるかどうかは運次第になります。あちらの世界に私は干渉することができないので、申し訳ありません。でも、こっそりと、こちらでできることはしておきますので、悲観せずにお待ちくださいね。では、行ってらっしゃい」

 あまり時間がないのか、質問する時間は頂けなかったが、優しい神様は、私達をとても暖かく見送ってくれた。

 私も、ご主人様に再び会った時には、神様のように暖かく接することができればいいな・・

 そして私達4匹は、異世界にて新たな神格である神獣として、巨大な地下迷宮ダンジョンに、それぞれ100年を心待ちにしつつ君臨していた。

 地下迷宮ダンジョンでの生活は、正直退屈だった。
 最下層から上層に移動することもできず、地下迷宮ダンジョン内部のどの階層の情報も得ることができない。

 但し、地下迷宮ダンジョン外の情報については、ある程度入手することができていた。
 また、他の地下迷宮ダンジョンにいる仲間との意思疎通もできたことから、お互いにご主人様についての話をし続けていた。

 そして、100年がたったある日、今まで誰1人として到達することのなかった地下迷宮ダンジョン<神狼>最下層に、突然人が表れた。

 かなり驚いたが、さらに驚くことにこの匂いは間違いなくご主人様だったのだ。

 私は、気が付いたら全力でご主人様に抱き着いていた。
 今思えば、ご主人様に暫定的に加護がついていたからよかったものの、生身の人間であれば爆散していてもおかしくない状態であった。  反省反省・・

 そして、ご主人様に無事契約していただき今に至る。

 実は、ご主人様のステータスを見させていただいた時に私しか契約者がいなかったことから、この世界で他の神獣よりも先にお会いできた幸運に体を震わせ、ちょっとだけ興奮状態になり、他の神獣から異常状態であると認識され心配されてしまったのはご愛敬。
 
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