前世も今世も裏切られるが、信頼できる仲間と共に理想の世界を作り上げる

焼納豆

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自身と自信

初召喚

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 <神狼>の設定は、何か特別なことがない限り変更する予定はない。
 これからは、俺自身のLvアップを行うことにした。

 自身のLvが低いととんでもない攻撃を受けたり、予期せぬ流れ弾とかで、せっかくの第二の人生を終了させたくないしな。

 でも、俺の行方不明の連絡が、あのクズから父に行くはずなので心配はかけたくない。

 我が家は、父、母、姉、兄、そして使用人さえも皆俺に甘いから、公務すら放棄して全員で探索に来かねない。例え城が無人になろうとも、皆で来る未来が容易に想像できる。

 嬉しいことではあるのだが、<神狼>の今の設定はしばらく調整するつもりもないため、来てもらっては危険がある。
 
 もし来てしまったら、もちろん設定変更するけどね。

 でも、まずは自分自身の「心身共に自信を持てるようにする」を目標に、少し頑張ってみたいんだ。
 記憶が戻る前の俺は、家族や使用人からは誰も言われなかったが、俺の持っているスキルがクズスキル、ゴミスキル、と言われるのを聞くたびに自分に自信が無くなってきたから。

 よし、気持ちを切り替えて、案件を片付けていこう。

 まずは、家への連絡だ。

 これは自分にはいい案がないから、即他力本願でいこう。
 決して意思が弱いわけではない。むしろ自分を客観的に見ることができている証拠だ。

「モモさんや、モモさんや・・・俺が無事であることを家に伝える方法はあるかな? あのクズから行方不明の情報が行くと、ちょっとめんどくさいことになりそうなんで。でも<神狼>踏破の件は伏せておかないと、もっとめんどくさくなるけどね。何か良い方法ないかな?」

『それならば、<神狼>の管理者権限で特殊な魔獣を召喚し、伝達させてはどうでしょうか?』

「そんなこともできるのか。便利だな~管理者。ん~、でも、家にいきなり魔獣が近づいてきたら普通攻撃しない?その場合、伝言が伝わる前に魔獣が消されると思うんだけど。ちなみに、俺の家族、使用人も含めてなぜか強いよ?」

『大丈夫ですよご主人様。例えば、隠密に優れた者、ご主人様の声を直接脳内に再生させることのできるスキルを持つ者、選択肢はいくらでもありますから。この<神狼>のレベル以上の魔獣は召喚できませんが、ここはLv99なので、全ての魔獣を召喚できます』

「ですよね~、でも俺って今まで戦闘には参加していなかったから、魔獣の種類なんてわかんないし、地下迷宮ダンジョンにいない時は、装備の準備とか道中の経路の調査とか雑務が沢山あって勉強なんてできなかったから・・あいつらが酒飲んでくつろいでいる時も、何らかの雑務に追われてたな」

 くそ、思い出したらまた腹立ってきた。

『ご主人様、落ち着いてください。頭に血が上ると、冷静な判断ができなくなりますよ。上った血を下げるために、私が人化致しましょうか?』

「な・・モモさん、なんて嬉しい・・違う。何を言っているのかな?今俺はとてつもなく動揺はしているが、頭に血は上っていないよ?でもそれって、鼻血を出させて頭から血をなくすってこと??とんでもないことを言っている気がするけど、とりあえず人化はしなくても大丈夫だよ。大丈夫だよね?」

『何故疑問形なのかわかりませんが、落ち着いていただければ何よりですが・・・気を取り直して、おすすめの魔獣を紹介したいと思います。100年とても暇でしたから、外の世界にいる一般的な魔獣の情報はたぶん全て把握できていると思います。もちろん<神狼>内部ももう把握しているので、内部にいる魔獣も紹介できますよ』

「あ、そうか、今までは<神狼>内部は見ることができなかったんだね。でも、どんな魔獣でも召喚できるの?」
 
 よしよし、動揺を悟られずに話題転換できたぞ。
 この話はシリアスだから、気を引き締めている感じを出さないとな。

『もちろん可能です。と言うよりも、私が管理補助者になった時に情報が流れ込んできましたが、ご主人様には流れなかったのですか?』

 ・・・ヤバイ、俺にも管理者登録したときに情報は来てた気がするが、・・・そうだ、疲れていたからあまり意識していなかったんだ。そして現在に至ると・・・

 その後、モモのふわふわがあまりにも素晴らしかったから、頭からスコーンと抜けてた。
 気を引き締めている感じを出すと決したばっかりなのに・・・どうしよう。

 助けて、水晶!!

『ジン様、確認させていただきたいことがございます。ジン様のご家族のお住まいはどのあたりでしょうか?』

 よし、ごまかせた。ナイスフォロー、空気読めるね水晶君。今度こそシリアスにいこう。

「えっと、4大地下迷宮ダンジョンの一つの<神猫>があるところだよ」

『ご主人様、ご実家のある<神猫>ではなく、わざわざ<神狼>に来ていただけたのですか?うれしすぎて・・どうしましょう』

 モモ、落ち着け、尻尾の動きでのものすごい竜巻ができてるぞ。
 俺もモモのおかげで<身体強化:Lv10>を使えるので、耐えられるけど、普通なら飛ばされてるぞ・・
 しかも、ここに来たのは俺の意思ではなくクズ共のせいだなんて、もはや言える状況じゃないな。

 あれ?そういえばモモが100年暇と言っていたことで思い出したことがある。
 モモは他の地下迷宮ダンジョンにいる神獣と意思疎通を取っていたと言っていた。

 地下迷宮ダンジョンの名前がそのままそボスの種族名とすると、<神猫>と神の名を冠しているボスが俺の家族である誰かであり、モモの話し相手という事になる。この世界で俺の知る限り神の名を冠する地下迷宮ダンジョンの名前は、辺境伯東西南北の、地下迷宮ダンジョンしか聞いたことがないしね。

 と言うことは、地下迷宮ダンジョンの便利機能で、地下迷宮ダンジョンをまたぐ転移なんてできちゃうんじゃないの?

 そうすれば時間がかからないから、俺が直接事情を簡単に説明してもいいし?

 よし、水晶に確認してみよう。

『ジン様、残念ながら異なる管理者の地下迷宮ダンジョンに転移することはできません』

 って、心読んでるのかよ!!
 ま、良いよ。わかってたよ。そんな都合の良いことできるわけないよね。俺は冷静だよ。

『この<神狼>から<神猫>まで、隠密系魔獣で移動した場合、Lvが高い者であれば影を移動することができるため、ジン様の期待通りの瞬間とまではいきませんが、おそらく2日以内にたどり着くことができる上、道中の危険も無い物と思われます』

 上出来だ。俺があのクズ共と<神狼>に来た時は、家から馬車で4週間かかったからな。
 それに、2日以内であれば、クズの家から行方不明の情報が家族に伝わる前に、こちらの情報を伝えることができる。

 「ガセの行方不明情報も来る予定」と伝えることができれば、「ガセ情報」がクズを介して伝えられた時点で、俺からの情報だという事の信憑性が増すだろう。

 不安要素はなるべく潰しておきたいので、こちらからの情報の信憑性を更に上げたい。
 そうすると方法は一つだ。

「モモ、俺が転移魔方陣で飛ばされたときに唯一持っていたナイフ。これは俺が冒険者登録をしたときに、家族全員が心を込めて俺に送ってくれたもので、どんな時でも肌身離さず持っていたものだ。当然、家族の証である紋章やナイフ独自のデザインから俺のものだと確実にわかってくれる。隠れた機能も付いているので、これを魔獣に持たせたい。そして、返事を持ち帰り、さらにこちらから返事を持たせれば完全に信用してくれるのではないだろうか?」

『さすがご主人様です。そしてご家族も素晴らしいですね。早くお会いしてご挨拶させていただきたく思います』
 
「近いうちに必ずな。ただ、今回モモが行くのは俺が不安になるから、できればやめてほしいんだけどな・・」

 やっと前世の家族に会えたんだ。いきなり異世界で別行動なんて正直心が持たない。

『もちろんです。私はご主人様のおそばを離れるつもりはございません』

「モモ・・・」

『ジン様、ちょっといい感じのところよろしいでしょうか?』

 さすが水晶、空気読めるぜ・・

「なぁ~に?」

『私の方で、該当魔獣を選別させていただきました。ジン様の声を再生でき、ナイフと、必要であれば手紙を異空間に保管できて、影移動ができる魔獣になります』

「すごいな。ではさっそく会ってみたいので、ここに連れてきてくれ」

『承知しました。呼び出す魔獣は、幻獣<双鬼>になります。今回のミッション終了後は<神狼>所属の魔獣としフロアを管理させますか?ジン様のお手元に置いておく選択肢もありますが?』

「いや、まだ<双鬼>について何もわからないから、そのあたりは保留とさせてくれ」

 『承知しました。召喚します。召喚された魔獣はジン様の命令に忠実に動きますが、必要であれば<テイマー:Lv10>で契約をしてください。魔獣のステータスはこのようになります』

 もしかして管理者権限で召喚した魔獣を契約すれば、信頼度とかもはや関係なく無敵になれるのか?

 そんな思いを抱きながら、ステータスを確認した。

-------------------------------
名前:ウェイン
種族:双鬼(幻獣)
Lv:58・・A(上級)
HP:400/400
MP:700/700
MT:250/250
【スキル】
 <影魔法:Lv6>・・上級
 <身体強化:Lv4>・・中級
 <空間魔法:Lv5>・・上級
 <風魔法:Lv3>・・中級
 <複写:Lv3>・・中級
 <隠密:Lv4>・・中級
 <探索:Lv3>・・中級
【称 号】
 ジンの僕
-------------------------------

 なかなかの強さだ。

 どうやら魔獣も、人族と同じレベル表記となるようだから、強さがわかりやすくて助かる。
 これで<テイマー:Lv10>の契約をすれば、双鬼の持つ魔法が使えるようになるから、ホントチートだよな。

 でも、実は<テイマー:Lv10>、神級と言われているスキルにも制約は存在する。
 神級であって、神ではないからな。ないよね?

 その制約とは、スキルのLvによって、最大契約数が決まってくるのだ。
 もちろんLv10のため、破格の性能ではあるのだが・・

 その性能は、契約魔獣の合計Lvが999以下である必要がある。
 そもそもこの世界の最大Lvは99なので、ぶっ壊れ性能と言えるだろう。

『では、召喚します』

 やがて、部屋に魔方陣が発生し、人型だが、額に小さい角のようなものが二つ飛び出ているイケメンが出てきて、俺に向かって跪き挨拶してきた。

「ジン様、私ウェインを召喚いただきまして感謝の念に堪えません。粉骨砕身ご命令を遂行させていただきます」

 これは、顔良し、態度良し、能力良しでスリーアウトチェンジだ。このミッション終了後帰還確定かな。

 器の小ささを全開にしながら、どのような手紙を書くかに意識を持って行った。
 
 
 
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