前世も今世も裏切られるが、信頼できる仲間と共に理想の世界を作り上げる

焼納豆

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領地アルダ

<アルダ>建国へ向けて・・<フラウス王国>へ出立

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 翌朝俺達は門の前に集合した。

 門の中にはウェインを始めとした防衛部隊、そして門の外には父さんをはじめとした俺の家族と神獣、護衛の近衛騎士、そして既に家族の影に潜っている影に潜む護衛である俺の契約召喚魔獣達だ。

「ウェイン、ガジムそして皆、これから我らは<フラウス王国>へ出立するが、留守の間は任せたぞ。諜報員によれば、性懲りもなく<シータ王国>の連中はこの<アルダ王国>に攻める準備をしているとのことだが、彼らは最早最大の収入源である4大地下迷宮ダンジョンに入れない状況だ。彼らとしては一刻も早くここを落としたいのだろうが、準備に時間がかかっているとの報告だ。我々はおそらく1週間程度で帰還できると思っているが、彼らの準備は1月程度必要になると踏んでいるので、余裕がある。だが油断はするな。ウェイン、ガジムの指示を仰ぎ我ら<アルダ王国>を守り抜け!!」

「承知しました」

 一斉に見送りに来ていたメンバーが跪き、固い決意で領地の死守を誓っていた。

 その時俺は、昨日4大地下迷宮ダンジョンを破壊したのはここにいる近衛なのに、なぜ俺が叱られなくてはならなかったのか・・などとくだらないことを考えていた。そう、つまり余裕があるのだ。

 そんなことを思っていると、

「よし、では行くぞ!」

 父の号令で馬車に乗り、<アルダ王国>を出立した。
 
 実は俺、記憶が蘇ってから馬車に乗るの初めてなんだよね。いや、前世でも乗ったことないけどさ・・。

 <フラウス王国>に続く道は、日本で言う所の道ではなく、なんとなく平?な所を進んでいるだけなので、お尻が痛くなるか・・と不安になっていたのだが、父さんの持っている馬車は当然我らがドワーフ一族が手を加えている者らしく、なんと衝撃が伝わらないのだ・・。

 これなら快適な旅?は約束されたも同然だ。
 
 そうして少し高いテンションで家族と何気ない会話を繰り広げていた。

 近衛は外で騎乗している。

 もう一台馬車を準備して乗るように伝えたのだが、警戒しにくいこと、何かあったら対処が少し遅れること、その少しが致命傷になる可能性があることなどから固辞されてしまった。

 そして彼らの武器だが、騎士らしく全員帯剣している。

 本来使う武器は腕輪として装備しているが、外見を整えること、武器は剣のみであるとの間違った情報を相手に与えることを目的として帯剣しているのだ。

 そんな道中、やがて父さんが少し真面目な話をし始めた。父さんはある情報を話してくれたんだ。

「<フラウス王国>だが、以前王都にいた頃に聞いた話によると、昔はここまで栄えておらず、大きい集落のようなものだったらしい。だがある時、<シータ王国>から一人の人族が移住して、その者の持つスキルによって一気に栄えたという事だ。ま、確証がない話だが少しでも情報があった方が良いだろう。その人族がなぜ一人で王都から移住したのか・・などわからないことが沢山あるため、本当の話かも疑わしいところもあるがな」

「なるほど、その頃の王都はショボーンで感じだったのかな?」
 
「ロイド、もうあなたは相変わらずよくわからないわね。父上、その情報ですと、今の<シータ王国>と<フラウス王国>との国交がない状態を考えると、その人族の移住は<シータ王国>から追い出されたか、逃げ出したか、あまりいい理由による物とは思えませんね」

「そうだな、ソフィアの言う通りだろう・・この話が本当の事だとするならばだがな」

 なるほど、流石姉さん、読みが深いな。
 そして母さんはいつも通りおっとり微笑み、余り難しい話には入ってこない。

 きっとこれは、あれだ。そう、優秀な部分は全部長女である姉さんが持って行ってしまったため、兄さんがあんな感じなんだ。
 
 そうこうしている内にお腹がすいてきたので、適当な木陰の近くに馬車を停めて、昼食を取ることにした。

 もちろん俺や神獣達も大好きな串焼きを沢山<空間魔法>で持ってきてある。
 馬車の中で<空間魔法>から食料を取り出し、そのまま外にでる。

 念のため周囲を警戒して、皆で食事をとり始めた。

 残念ながら、影に潜んでいる護衛は<フラウス王国>の部隊がどの様なスキル、魔道具を持っているのか把握していない為、こちらの手の内を知られないように外に出していない。友好的にならない可能性もあるため、油断は禁物だ。

 もちろん彼らには<空間魔法>の空間から直接影の中に転移させて、食料や水を渡している。

 <念話>でリクエストする者もいるので、ここだけではなく馬車の中でも対応していたのだ。優しいでしょ?

 俺はふと気になったことを、神獣達に聞いてみた。

「ソラ、トーカ、シロ、モモ、今は人化しているけど、本来の神獣の姿になった時と<神の権能>は何か違ってくるの?」

 ソラ、トーカ、シロは何やらリスのように串焼きをほおばってモグモグしているので、モモが答えてくれた。

「いいえ、力は何の変化もありません。あの姿になるメリットは正直ないのです。単純に外観からの威圧?でしょうか?」

 他の3人はひたすらモグモグしながら頷いていた。
 そうだったんだ。だとすると、わざわざ元の<神獣>の姿になる必要はもうないかもな?

 それぞれの神獣の外観は、
  モモ<神狼フェンリル>:白銀の毛に覆われた狼
  ソラ<神鳥フェニックス>:赤い炎に覆われた鳥
  トーカ<神龍バハーム>:漆黒の鱗に覆われた龍
  シロ<神猫ベヒーモス>:紫の毛に覆われた猫
 のようになっている。
 
「ソラ、その姿でも空飛べるの?羽なくて大丈夫なの?」

 きっと皆同じことを思っただろ?

「もちろん飛べますよ。問題ありません。モモ、トーカ、シロも皆人化したまま飛ぶことができます。契約主であるジンも飛べるんですよ?」

 でぇ~、俺って飛べたの?ちょっとすごくない?早く言ってよ~!

 今すぐ飛びたい気持ちにかられるが、<フラウス王国>に見られるとまずいので、おとなしくしておこう。
 落ち着いたら皆と空の散歩もしゃれてるかも!

 そうしているうちに、父さん含めて食事も終わったらしく、改めて馬車に乗り込んだ。

『ジン様、マーニカです。<フラウス王国>との国境の壁までは、このペースで行くとあと2時間程で到着できると思いますが、この距離にも関わらず、こちらを伺っている気配を感じます。他の召喚魔獣も同様の判断をしており、それぞれの護衛させて頂いている方々に同じように<念話>で報告させて頂いております。ただし、悪意がある感じはしない事を付け加えさせていただきます。また何かありましたらご連絡いたします』

『ありがとう』

 皆の顔を見ると同じ報告を受けたのだろう、目が合いお互い頷きあった。

 実は俺や神獣は<神の権能>を使用した警戒をしていない。というのも、<神の権能>が使えることがわかってしまった場合も、相手に対策される時間を与えてしまうからだ。そのため、少しでも見つかりにくい影の中にいる契約召喚魔獣達と、地上の護衛が警戒に当たっているのだ。
 
 地上の護衛も同様に若干警戒態勢になっており、何らかの方法で視認されていると判断をしているようだ。

 彼らは、必要に応じて報告をくれることになっているが、今回の訪問の間は、危険があると判断された物のみとしている。

 影の中と、地上から同様の報告を受けると混乱するからね。

 そうして若干警戒しつつも、代わり映えしない外の景色をみて・・もう飽きたが、<フラウス王国>の国境に向かって馬車を走らせた。

 同じ景色が続くと、少しぼーっとしてしまい余計な事を考えてしまう。
 そう、前世の事だ。
 
 裏切ったクズ共は置いておくとして、裏切られた後苛めを受けていた俺に対しても態度を一切変えずに接してくれていた唯一の親友。
 
 前世の父を亡くした時も共に悲しんでくれた・・斎藤 雄二
 きっと俺は前世では行方不明か死亡となっているのだろう。悲しんでいるだろうな。
 
 俺は、この世界で神獣達前世からの家族と、そして今世の家族と、とても仲良く幸せにやってるぞ!!

 窓の外から見える変わらない景色に向かって、親友に向けたメッセージを送ったのだった。

 さあ、もうすぐ<フラウス王国>だ!!
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