前世も今世も裏切られるが、信頼できる仲間と共に理想の世界を作り上げる

焼納豆

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領地アルダ

<アルダ>建国へ向けて・・<フラウス王国>国王と謁見

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 マーニカの言う通り、体感で2時間程度馬車に揺られた結果、国境にそびえたつ強大な壁に到着した。
 
 そして壁に沿って馬車を少し走らせると門のような所が見えたため、そこで一旦皆は馬車から降りた。

 この壁は、スキルを使用していないのでわからないが、何となく雰囲気で<アルダ王国>のドワーフの匂いがする。そう、何かしら高い術か何かが付与されている感じがするのだ。

 それも、ドワーフたちが扱う錬金術ではなく、異なる種類?の錬金術である感じがする。

 壁を少しノックしたり、撫でてみたり、色々試しているが詳細は<神の権能>を使用した鑑定を行わないとわからないだろう。

 壁で遊んでいると、門がこちら<アルダ王国>側に開き、中から騎士のような恰好をした明らかに人族ではない容姿をした4名と、人族1名が出てきた。

 父さんはすかさず彼らにゆっくりと・・・・・近づき、挨拶を始めた。

 相手を刺激しないようにゆっくりと行動しているのだ。加えて父さんは帯剣していない。武器を持っていないのだ。

 このあたりはいくらこちらに帯剣した近衛がいるとしても、少しは安心してもらえるのではないだろうか。

 そうして、父さんは話し始めた。

「私は、<シータ王国>より独立し、この辺境を領土とする<アルダ王国>の初代国王、ダン・アルダと申す。そしてこちらにいるのは私の家族と近衛騎士達だ。<シータ王国>自体を含めて長い間国交がない状態での急な訪問をお詫び申し上げる。実は我らは建国直後の国であり、隣国となった貴国と有効な関係を結びたく伺った次第なのだが、貴国の重鎮に謁見することは可能だろうか?」

 父さんは媚びるでもなく不敬でもない微妙な線で挨拶をしている。

 その話を黙って聞いていた<フラウス王国>の人族は、左手につけていた指輪が青く光ったのを確認してこう言った。

「貴公の言葉に偽りはないようだ。謁見については我らの一存では決めかねるため少々お待ちいただけるか?」

「承知した。心使い感謝する」

 きっとあの指輪はうそ発見器のようなものだな。今この場で<念話>を使うと、彼らがどのような魔道具で感知するかわからず、場合によっては不信感を与える可能性があるため控えている。
 
 当然父さんや皆も・・兄さんは分からないが・・あの指輪が真偽を何等かの方法で確認するアイテムであることは分かっているだろうから、わざわざリスクを負ってまで伝える必要はない。

 待つこと数分、何やら壁の向こう<フラウス王国>の領地でごそごそしていた彼らはこちらに戻り、

「謁見の許可が下りました。ダン国王様。我らが王がお待ちですのでご案内いたします」

 何故か急に対応が良くなった気がするが、悪い変化ではない為皆で彼等の後を歩きでついて行った。
 門を潜り、<フラウス王国>の中に入ると、複数の魔道具の前に魔方陣が展開されているのが見えた。

 国境にある壁の状態、彼が持っている真偽を判断する魔道具、そして魔方陣を展開できる魔道具、どうやらここは魔道具に特化した国なのかもしれない。

 とすると、土産として持って来たドロップアイテム2つは、異なる技術?の物なので、大層喜ばれるのではないだろうか?

「皆様、我が<フラウス王国>はお気付きの通り、魔道具作成に優れた国でございます。失礼ながらダン国王様を始めとした皆様には、敵意がないことを魔道具にて確認させて頂いております」

「少々反応がおかしなところもありましたが・・」

 最後は少し小さい声で呟いていたが、父さん、母さんを除く皆はLvが高いため全員聞こえているだろう。
 そしてそのおかしな反応というのも兄さん以外は気が付いているはずだ。

 そう、影の中にいる召喚魔獣達の反応が出てしまっているのかもしれない。
 
 実は少し油断があった。<神の権能>を使用しないことにしていたのだが、影の中にいるからと安心せず、影の中でも<隠密>系統のスキルを発動させておくべきだったのだ。
 
 過ぎたことは仕方がない。彼らの好意的な態度に変化はないためにこのまま進むとしよう。しかし、いつの間にか敵意を測定したのかな?

 そう思っていると、

「お待たせしました。皆さま、こちらに移動していただけますでしょうか?」

 そう言って、周りから若干盛り上がった円形の石畳の上に案内された。
 皆と、<フラウス王国>の人族、騎士?も同じ位置にいる。

 そして人族が手を上から下にした瞬間に、目の前の景色が一変した。
 俺たちの<転移>と同じだ。

 目の前にはいきなり玉座に座った王?らしき人が数段上の位置におりこちらを見下ろしていたが、椅子から立ち上がり階段を下りてきた。

 父さんがまずは同じようにゆっくりと階段下まで進み、王と挨拶をしていた。

 近衛騎士たちは表情や態度には出さないが、俺から見ると足の筋肉は膨張し、呼吸も若干浅く早くなっている。
 いつでも護衛できるような状態にしているのだ。

 もちろん父さん、そして父さんの後ろに控えている母さんの影の中にいる契約召喚魔獣の幻獣ユフロ、幻獣レイラも警戒態勢を上げているようだ。

 もちろん我々も警戒は怠っていないが、時間が経つにつれて緊張は和らいでいった。

 というのも、父さんと<フラウス王国>の王は談笑を始めたからだ。

 やがて父さんは俺を呼び、王国の王にこう述べた。

「リンデム王、こちらは我が<アルダ>王国の2男のジン・アルダです。彼はあなたの仰る通り、この世界以外の記憶を持ちます」

 へ~、ここの王様はリンデム様っていうのか。ってそこじゃない。俺が前世の記憶を持つことをさらっと言ってしまうのも焦ったが、父さんなんて言った?あなたの仰る通り??

 リンデム王は、俺が他の世界の記憶があることを知っていた??

 頭がこんがらがってきて、動くことができなくなってしまったが、こういう時には必ず前世からの家族が近くにきて優しく4方から抱きしめてくれるのだ。

 <アルダ王国>ではこんな状態でも皆スルーしてくれたが、ここは初めて来た場所で、ましてや国王様がいる謁見の間。多数の護衛や重鎮がいる中で、絶世の美女4人に抱き着かれている俺をみて、スルー出来るやつはいないだろう。

 ざわざわ・・・ぶつぶつ・・・羨ましい・・・畜生・・・ざわざわ・・・ふざけんな・・・4人だと?・・・

 <フラウス王国>皆さんは、どうやら面白い人たちらしいことが分かった。

 それに、改めてぶつぶつと聞こえてくる方を見ると、人族以外が多数いるのだ。

 <シータ王国>ではこのような謁見の場に他種族がいることなど考えられない。貴族の家にいることはあるが、奴隷などひどい扱いなのだが、ここは皆この場にふさわしい身なりをしている。発言はふさわしくないが・・

 とすると、父さんとリンデム王があまり時間を掛けずに打ち解けられたのは、同じ志があったからかもしれない。

 だとすると、影の護衛に関しても不義になる可能性があるため、早めに出した方がよいか? 
 
 考えが色々な方向に行ってしまったが、落ち着いた。

「皆、ありがとう。もう大丈夫だよ」
 
 そういうと、神獣の皆は優しい笑顔をして一旦俺から離れ、一歩下がった位置にいてくれた。

 ・・ざわざわ・・ちくしょう・・がやがや・・なんでだ・・・

 またうるさい人たちた。
 しかしここはスルーして、先ずは挨拶をするべきだな。

「お初にお目にかかります。リンデム王。私は<アルダ王国>次男のジン・アルダと申します。ただいま父より紹介いただきました通り、私には前世の記憶がございます。不躾な質問ですが、なぜお分かりになったのでしょうか?」

「初めまして、ジン殿。実は我が<フラウス王国>は以前は自給自足が精一杯の大きな集落だったのだよ。そこに<シータ王国>から来た人族の不思議な力でここまで発展することができた。あまりに不思議な力のため、我ら祖先はなぜそのような力を使えるか聞いたらしい。その時に彼はこの世界の者ではなく、異なる世界から呼び寄せられたと言っていたそうだ」

「異なる世界・・・」

「そうだ。そして彼はもし異なる世界の者がいて、その者が困っていたら、この<フラウス王国>で助けてあげてほしい・・と言ったのだ。これは我ら王族に伝わる伝承だ。そしてこの伝承を証明するように、異世界の記憶を持つものに対して反応する魔道具も伝承と共に継承され続けており、それが反応したのだよ。ただ、異世界の者は場合によっては強大な力を持つため、敵意がある物は入口で判別して弾けるようにしてある」

「そうだったのですか。その人は呼び寄せられたといったのですね?というと、召喚術があるという事でしょうか?」

「ある。<シータ王国>の王族にはその方法が伝授されているはずだ。実際その彼も<シータ王国>に無理やり召喚されてこき使われたため逃げ出したと聞いている。なので我ら<フラウス王国>は、<シータ王国>とは国交を結んでおらんのだ」

 馬車で父さんが説明してくれたことは概ね合っており、姉さんの予想もその通りだったようだ。

 しかし、敵意や異世界の記憶等の魔道具を<フラウス王国>が持っていなかったら、我々も<シータ王国>の者として判別され、入領さえできなかったかもしれないな。
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