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焼納豆

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大同盟

大同盟の交流・・(16)大会2日目 龍人族VS人族

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 第三試合、<フラウス王国>龍人族 VS <イグイム王国>人族の両者がステージに上がった。

 龍人族は兄弟で予選通過を達成したが、既に一方は負けてしまっている。
 そして対戦相手の人族、こちらは狐獣人と同じ予選の通過者で、狐獣人から距離を取って戦っていたために予選を通過できた人だ。
 と思うのだが、ウェインと同じ予選を通過した力のないと判断してしまった人族も素晴らしい試合を見せてくれたので、先入観を無くして彼にも期待しよう。

 二人目の龍人族は長い鎖の端を左手で持ち、自分の体を中心として円を描くように鎖を配置している。
 そしてもう片方の手には針のような細い棒を数本握っているようだ。
 この龍人族も予選と違う戦い方をするようで、今の状態から予想すると・・鎖を武器と防御両方に使って、牽制で針を投げる・・か?

 そして対戦相手の人族。彼は予選と全く同じで、小型の盾を左腕に装備し、右手で剣を持っている。

 う~ん、やはりこの試合開始直前の状態を見ても、さっきの人族と違い、この人族からは覇気?というのか、力があるようにはとても見えないのだ。

 これは先入観を持たないようにとか言ってしまったが、期待を悪い意味で裏切らないで瞬殺かもしれないな。

 そして試合が開始された。

 開始直後に龍人族は左手で持っている鎖を何かのスキルで制御し、人族に対して攻撃を仕掛けた。その鎖は帯電しているようだ。

 鎖を制御しつつ帯電させる技術・・さっきの人族のように剣に炎を付与するのと同じで、二つ以上のスキルを同時にバランスよく、絶妙な制御をしている。
 かなり鍛錬しないと、<B:上級>の制限がかかっている状態でこのような制御はできない。

 一方人族は、剣を龍人族に向かって投げたのだ。
 おい!あの剣って投げる剣だったのか?

 「なあ、モモ。俺の知っているあの長さの剣は投げる為の物じゃなくて、斬撃とか防御とかに使うんだと思ったんだけど、この世界は俺の常識と違っているのかな?」

 「ご主人様、私もあの長さの剣を投げる方、始めてみました。面白い戦い方ですね。あの剣見事に避けられていますが、その後の武器はどうすのでしょうね?」

 やっぱり俺の常識であっているようだ。
 人族と龍人族との間にはそれなりの距離があり、人族が投げた剣は龍人族に苦も無く躱されてしまった。

 余裕を持って躱してはいるのだが、回避行動のせいで鎖の制御が若干乱れたらしく、鎖が人族へ当たることはなった。
 やはり、制限がかかっている状態でのスキル制御は、微妙なバランスの上に成り立っているので、少しでも集中力が乱れるとこのようになってしまう。
 
 人族は・・モモの言う通りこの後の武器をどうするのだろうか。<体術>でも持っていると話は違ってくるのだが・・どのように戦いを進めていくのかとても気になる。

 と言うか、頼むぞ。このまま負けなんてやめてくれよ。これまでの試合が素晴らしかっただけに、テンションが下がっちゃうからな。

 人族の状態を見て、龍人族は当然好機と捉えたらしく、俺の思った通り右手に持っていた針を人族めがけて投げつけると共に、伸びた鎖を引き戻している。

 投げられた針は4本だが、何と人族にたどり着く途中で分裂し40本程になっている。
 
 人族が持っている盾は左手に装着するタイプで、とても体全体を覆えるような代物ではない。
 これは・・・ハリネズミ状態になって決着か・・・
 
 誰もがそう思っただろう。ところが、この人族やってくれた。
 盾が突然黒光りし、全ての針を打ち返してしまったのだ。
 
 龍人族もこの人族の見た目や、既に武器が無くなっている状態から油断してしまっていたのだろう。更に、鎖を引き戻すためにスキルも使用しているはずなので、そちらにも意識が持っていかれて、注意力が普段より落ちていたはずだ。

 そんな状態の魔族は、なんと自分の投げた針を全て打ち返されて、殆どの針を被弾してしまっている。
 被弾するまでの間、龍人族は鎖を操作すると共に、逆に投げた針に何かのスキルを付与しているように見えたのだ。なので針が分裂したのだろう。

 結果的に、自らが自らの攻撃でダメージを負ってしまったことになる。
 
 あの人族、剣をわざと投げて油断させ、遠距離から強い攻撃をさせる作戦だったのだろうか。
 今現在も人族からは強者の雰囲気が漂っていない為・・・きっとあの盾、おそらく魔道具なのだろうが、この機能に全てを懸けた作戦で剣を投げたに違いない。

 相当なリスクがある作戦だ。
 魔族が・・例えば予選で見せた<影魔法>を使用して背後に近接すれば、きっとこの人族はなす術なく敗退していただろう。
 
 作戦勝ちだ。こういった戦い方もあるのか・・俺も相手のスキル等を見て作戦を立てる事が有る。だが、今回はあの変哲もない魔道具の盾の機能を知らなかったら同じ目にあっているの可能性が高い。
 実際は地力も違うのであそこまでのダメージは受けないが、油断することなく、知略を駆使した戦い方に対抗できるようにする必要がある。

 この試合中は<神の権能>を一切使っていないので、確実なことは言えないが、あの剣は本当に何でもないその辺で販売されている量産品だと思う。つまり、何も付与されていないし、逆に装備者のステータスを補助する物でもない。
 
 主たる攻撃に使用する武器を鑑定する者はいても、防御・・しかも小さくて変哲がなく見える盾を鑑定する者は中々いないのではないだろうか。
 大体は本人と攻撃の鑑定をして、あまりにも平凡であれば盾まで・・・となってしまう作戦だったのか??。
 
 いや、本当の生死をかけた戦いではそんなことはもちろんしないが、ある意味イベントの戦いであれば、少し気が緩んでしまうのも否定できない。
 結果的には、その辺りの心理を突いた作戦勝ちなのだろう。
 
 まあ、もしかしたらまだ別の奥の手を持っているのかもしれないが・・

 と、そこに場内とカードに案内があった。

 闘技場のメンテナンスを行う必要があるので、第四試合開始までは1時間程時間が必要になるとの事。

 この案内を聞いた(見た)人たちは、一時闘技場から出ていくようだ。
 もちろんこの闘技場周りにも出店が沢山あるので、食事をしたり、細かい買い物を楽しんだり・・ちょうど良い息抜きになるのではないだろうか。

 正直手に汗握る戦いが続いているので、小休止を入れるのは良いことだと思う。でも、予定にはなかったはずだけど・・・・確認しておくか。

 父さんも同じように、護衛に立っているレイラの状況確認をお願いしているようだ。それはそうだよね、他国の王族もいるのだから、予定のないメンテナンスと言われると、設備に不具合があったのか・・とか今後の試合は見られるのか・・とか気になるだろうから。

『ガジム隊長、何かトラブル?』

『ジン様、今丁度レイラ隊長からも同じ<念話>で問い合わせを受けています。お二人に同時に回答します』

 おっと、かぶってしまったようだが、同時に回答してくれるなら助かる。
 
『一応他の隊長にも同時に回答を入れてくれるかな?』

『承知しました。こちら【技術開発部隊】のガジムです。今回の設備メンテナンスに関しまして説明します。この第三試合で負傷した魔族の選手ですが、相当なダメージを受けており、致命傷と言っても過言ではありませんでした。この闘技場については場外に出た瞬間に全て回復することができますが、その機能を発動させるには膨大な魔力を使用しています。もちろん闘技場の保護・再生にも一部魔力を使用しているため、常時、魔力発生装置と魔力保管用の魔道具を運用して供給しています。修復の度合いによって使用する魔力が違うのですが、今回の致命傷では、どうやら針に何やら術が付与してあり、回復に膨大な魔力を必要としました』

 そうか、あの回復する機能は全然理解できないけど、魔力を使用しているわけか。

 まだガジムの説明は続く。

『今回の魔力消費は、魔力保管用の魔道具を100本用意ししていますが、30本程使用することになりました。通常の怪我ではこの保管用の魔道具から使用するまでもなく、発生装置からの魔力で補えるのですが・・今後の試合展開を考えると、使用した魔力保管用魔道具を完全に充填しておく必要があるために3時間程必要になります。今後も同じような状況になった場合は、都度メンテナンスを実施させて頂くことになります』
 
 そうか、きっと今後の展開・・と明言は避けているが、制限無しの試合にでる者達の事を言っているのだろうな。
 試合に出る者のダメージだけではなく、いや、むしろ闘技場の回復側に使う魔力を心配しているのではないだろうか。

『今回1時間の休憩中に補填できる保管用魔道具の本数は10本です。その後第四試合を実施中にも補填作業を継続しますが、必要に応じて制限無しの開始時間を変更していただく可能性があります』

 父さんが各国の王族に状況を報告している。

 この大会期間中、一番忙しいのは【治安維持部隊】ではなく、【技術開発部部隊】なのではないだろうか。
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