前世も今世も裏切られるが、信頼できる仲間と共に理想の世界を作り上げる

焼納豆

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異大陸

ウェインの任務

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 この地下迷宮ダンジョンの魔獣は、今現在通過している浅層である一階層で出てくる魔獣でもキメラであるので、物理特化型とも魔法特化型とも言えずに、両者を混ぜ合わせたような攻撃をしてくるように見える。
 
 実際はグリフ副隊長の動きが早すぎる事と、浅層のため魔獣のレベルが低すぎるので、一切の攻撃を受ける前に通過しきってしまうのだが。

 しかし、次の階層につながるフロアボスについては戦闘をしなくてはならない。
 
 一階層のボスは、蜘蛛の足、胴体は鎧、頭は鳥、そして手は触手の異形魔獣だ。
 レベルは・・・<A:上級>だな。
 一階層からこのレベルが出てくるとは、若手の鍛練に向いている地下迷宮ダンジョンではないだろうか。
 私は、この地下迷宮ダンジョンの評価を一段階上げた。

 そして、グリフ副隊長の戦闘だが、魔獣から繰り出される各種攻撃を全て難なく躱している。
 彼ならば即討伐できるはずだが、この地下迷宮ダンジョンの情報を少しでも得ようとしているのだろう。わざと攻撃させている。
 このあたりの情報収取に対する姿勢も、【諜報部隊】では大いに活用できる。

 魔獣の攻撃は、鳥頭の口から衝撃波、触手には雷魔法が付与されている状態で多方向からの攻撃、そして動きは蜘蛛の足により、壁、天井関係なく動き回っている。

 グリフ副隊長は、少しの間攻撃を躱していたが、これ以上の攻撃が来ないと判断した瞬間に拳を前に軽く突き出して衝撃波を生み出し、フロアボスを粉々に打ち砕いた。
 
 状況判断、情報収集能力、攻撃方法、どれをとっても指導する項目はない。
 この状態が最下層である190階層まで続けられるかによって、今後の鍛練項目が決定してくるだろう。

 と、こんな事を思いつつグリフ副隊長について行くと、侵入から20分程で100階層に到着した。
 なかなかの速さだ。これならば最終目標である190階層に一時間以内と言う目標は達成できるだろう。
 
 これまでフロアボス以外で討伐した魔獣は一本道に待機していた三匹のみで、それ以外は全て速さについてこられずに戦闘にすらなっていない。
 
 しかし、私の<探索>によれば、この100階層からは魔獣のレベルが<S:帝級>になっている。
 通常であれば、このレベルであれば完全に今まで通りに振り切れるレベル差ではあるが、更にここからしばらくは迷路?のようなステージになっているので、よほど道が大きくない限り戦闘を避けることはできない。

 グリフ副隊長も<探索>、<危機回避>、<危険察知>、<身体強化>を上限一杯で使用しだした。
 この階層の危険性を即座に感知し、対応するスキルを瞬時に発動できているのも流石だ。
 本来は、一階層から全てのスキルを全力で使用すればもっと早くこの階層に辿り着けていたはずだが、自らの鍛練も兼ねて少し能力を落としながら攻略していたのだ。

 スキルを発動後、早速攻略を開始し始めた。当然<探索>によって最短の道は把握できているようで、動きに迷いがない。
 だが、最短の経路上には無数の魔獣が待機している。

 一方、遠回りになる経路には今のところ魔獣の気配は少ないが、罠や追加で魔獣が出てくるのだろう。
 我々<アルダ王国>の地下迷宮ダンジョン管理者でいらっしゃるジン様によれば、罠には転移魔方陣もあり、強制的に一階層に飛ばすこともできるそうだ。
 これは幹部であるグリフ副隊長も知っているので、万が一を考えて罠が少なそうな道を選択したと思う。この選択も正しい選択と言える。
 
 グリフ副隊長は、かなりの速度で移動することにより自らの体自体を武器にして、待ち受けている魔獣を霧散させながら進んでいる。
 フロアボスまでたどり着くと、難なくそのボスも討伐した。

 101階層も同様に、スキルを活かした速度で攻略を進めている。 
 スキルを最大で使用している影響からか速度が段違いで、早速一本道に待機していた魔獣と遭遇したが、爆散させて通過した。
 しかし、このまま進むとある程度の空間の部屋を通過することになるが、魔獣がひしめき合っている。
 
 ここは単純に通過するというわけにはいかないので、戦闘になる。
 グリフ副隊長の戦闘スタイルを改めて確認させてもらおう。

 程無くして、予定通り魔獣ひしめく部屋に到着した。
 当然グリフ副隊長にも現状は理解できているので、部屋に侵入する前に右拳に<炎魔法>を溜めておき、侵入と同時に拳圧と共に放った。
 なかなかのセンスだ。拳圧による衝撃波によって直線状にいた魔獣と、入口近辺に放射状に広がった<炎魔法>によって、入口近くの魔獣は爆散した。

 このため、自由に動けるスペースを確保できたグリフ副隊長は、魔法系統を一切使わずに、体術のみで<S:帝級>の魔獣を蹂躙した。
 私の<神の権能>によれば、グリフ副隊長はこの討伐によりいくつかのスキルレベルが上昇したようだ。

 この部屋にいた魔獣総数は78匹。その内初撃で爆散したのが37匹。残り41匹の討伐に40秒少々。悪くない数値ではあるが、魔獣の攻撃をさばいている最中の全体把握にやや問題があった。
 そのため、次の攻撃が決して効率的ではなかったのだ。
 
 この程度も魔獣であれば、体術のみで対応したとしても10秒を切る必要がある。我ら【諜報部隊】の副隊長であれば、その程度はできて貰わないと困る。
 グリフ副隊長の今後の課題が見えたのは僥倖だ。

 だが、本来の任務はグリフ副隊長の改善点の発見ではない。今後同様の魔獣の密集地帯を通過することになった場合、数にもよるが目標の一時間を超えてきてしまうかもしれない。
 
 当人も当然わかっているので、攻略速度を上げだした。
 この速度であれば、若干余裕ができる。

 フロアボスも、何の苦労もなくクリアして、最下層である190階層ボス部屋前までたどり着いた。
 
 地下迷宮ダンジョン進入から56分だ。
 今後この地下迷宮ダンジョンを鍛錬に使用させて頂けるようになった場合、各ドロップの収集も含めて50分を切るようにしてもらおう。
 
 そんな事を考えながら、<影魔法>を解除してグリフ副隊長の前に姿を見せる。

「隊長、スキルや体術の使用方法はどうでしたでしょうか?」
 
 任務以外にも、自らの攻略に対する私の評価が気になるようだ。
 正直に思ったままを伝える。

「魔獣の溜まり場の討伐時に無駄な動きが見えた。この辺りを改善して、攻略時間を短縮する必要がある。だが、他の動きや判断は素晴らしい物だと思う。
「ありがとうございます。落ち着いたら指導お願いします」
「承知した」

 彼のみならず、<アルダ王国>の副隊長は隊長に指導をしてもらうのを楽しみにしている節がある。
 我々隊長としても、副隊長の力が増し、<アルダ王国>の安泰・繁栄につながるので時間が許す限り積極的に対応している。
 そのため、よく北野には活躍してもらっているのだが、今回ジン様のおかげで<SS:聖級>の的が増えたので、鍛錬方法に幅を持たせることができる。
 ガジム隊長とも相談して、鍛錬場の効率的な運用を検討した方が良いかもしれない。

 と、色々な考えを巡らせつつ最下層のボスを難なく討伐して制御室に転移させられた。
 ジン様からの情報の通り水晶はあるが、その他にも何やら封印の力がある魔方陣に囲われた状態の女性が座っている。

「あなたがこの<コビア大陸>の神でよろしいですか?」
「はい、ですが神とは名ばかりで、既に<神の権能>は使えません。そのおかげで、この魔方陣の呪縛からも逃れることができないのです。地下迷宮ダンジョン最下層まで来られる程の力があるあなた方であれば、私が神でここに封印されている事情もご存じと思います。そんなあなた方のお力をあてにして申し訳ないのですが、この魔方陣を破壊していただけないでしょうか?」
 
 元よりそのつもりであったので、<神の権能>を使用して魔方陣を全て無効化した。

「これは・・・あなたは<SSS:神級>の力があるのですね?この魔方陣は私の力を奪った魔神により作られたもので、解除にも同等以上の力が必要になるのですが・・・お願いしておいてなんですが、こんなにあっさり解除していただけるとは・・・」

 む?私としてはあまり力を入れていない状態なのだが、やはり二コラ隊長の情報通り、ここの魔獣達、魔神も含めて総じて大したレベルではないのだろうか?

「いえ、あなたの開放は私の主の命であるため、例には及びません。今後、<アルダ王国>に来ていただけると安全を保障できますが、同行していただけるという事でよろしいでしょうか?」

 これで管理者登録が終了すれば、<転移>や<念話>も問題ないため、即帰還することができる。
 これで先ずは任務完了だ。
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