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(24)教会への訪問者(3)
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勇者達は、<賢者>ホルドの薄っぺらい英知により教会の三人を引き込む為に二日ほど兵糧攻めを行っている。
普段から貧相な教会であり、善意の商人による寄付があってギリギリであると把握していたので、王族・貴族の力を使ってその商人の行動を制限した。
二日程度で干上がるだろうと判断していたのだが、三日経っても変化は読み取れず、ダンジョン再侵入の刻限が迫っている事から、再び教会を訪れる。
……バン……
「神父!最早猶予はない。魔王の脅威からユガル王国、いや、この世界を守る必要があるのだ。その栄誉ある一員として、この勇者パーティーに同行させてやると言っている。そうすれば間違いなく国家からこの萎びた教会に寄付があるだろう。お前に断ると言う選択肢は存在しな……」
いつも以上に激しく乗り込み神父の姿が見えた瞬間に喚き始める<勇者>グレイブだが、その言葉は三人の癒し手ではなく、神父の前で話をしている女性二人に視線が行った際に止まってしまう。
三人の癒し手も相当美しい雰囲気だが、その姿はベールに覆われており良く分からない。
一方の二人、夜中にこの教会に助けを求めてやってきた二人は姿を隠す事はしておらず、メイド服を着ていない方の人物が、どこをどう見ても高貴な人材であると言わんばかりのオーラ、洗練された所作、そして美しい見た目をしていた。
王族や上位貴族にありがちな金髪縦ロールで、優しそうな金色の目。
傍にいるメイド服の女性はその茶色い髪を清潔感溢れる状態で一纏めにしており、どう見ても上位の存在に仕えるための力量を備えたメイドである事が分かる。
グレイブと、ついでにホルドも二人に目を奪われている中で、王族である<聖女>スサリナは二人の内の一人に会った事があるような気がしていた。
神父の目の前の二人も、突然激しく扉が開いて大声で喚いていたグレイブ達に視線が行っている。
「は~、またですか。既に明確にお断りをしております。それに、スサリナ様が聖女として同行される以上、称号持ちではない癒し手が行っても足手纏いになるだけです。その結果、戦闘の最中に取り残される可能性もあるのではありませんか?」
イリヤに対する行い、今も含めてあまりにも身勝手な物言い、商人に対する強制的な寄付の制限等、やりたい放題のグレイブ一行に対していい加減に頭に来ている神父ホリアス。
多少棘がある言い方ではあるが、きっぱりと再び明確に同行を拒絶する。
「……お前程度では世界の為にこの身を削っている俺達の苦労などわかりはしない。おい、そこの三人。聞いていただろう?俺達は勇者パーティーであり、王族・貴族だ。そんなパーティーに、魔王討伐と言う世界を救う大偉業を行うパーティーの中に入れてやる。こんな萎びた教会でチマチマ癒しを行うよりもよっぽど有意義で、世界の為になる行動だ。どちらが重要か、言わずともわかるな?」
「グレイブ様の仰る通りです。これは国家、いいえ、世界を救うための聖戦なのです。あなた方が癒している民の繁栄にもつながる闘い。同行して頂けますね?そもそもこれは私達からの命令です!」
いくら神父ホリアスに言っても埒が明かないと判断した勇者パーティーは、魔族とは知らない三人に対して直接交渉をするが、最終的には強制になっている。
<勇者>グレイブと<聖女>スサリナに続き、<聖盾>ルナ、<剣神>ミア、<賢者>ホルドも何とか都合の良い雑用兼癒し手を手に入れようと追随する。
「そうだぜ。結果、褒賞もたんまり貰えるし、成果によっては爵位まで貰える可能性もある」
「これは、聖戦。正義の戦い」
「僕も、皆さんには同行を強く勧めますよ。この教会にも褒賞が出るでしょうしね。悪い事は無いのではないですか?」
一方的に話している中で神父の目の前の二人の内の一人が、勇者パーティーに対して初めて口を開く。
「部外者が口を挟んで申し訳ありません。確かに魔王顕現の一報は広く聞き及んでおりますが、討伐完了の報も同じく広く伝わっております。今のお話を聞く限り、誤報だったのでしょうか?」
「……本当に部外者が何を言っている?お前には関係がないだろう?俺達は確かに魔王を始末したが、何故か復活しやがったんだ。次は復活できない程に細切れにしてやる」
真夜中に助けを求めた侍女であるサリハとしては、本当に疑問に思った事を聞いただけだ。
普通、自らが勇者パーティーであり、王族・貴族であると言っている者に対してメイドがこれほどの質問をする事は出来ないので、サリハのこの態度に相当な違和感を覚えているスサリナは、漸く目の前の何となく見覚えがある人物が誰なのかを思い出した。
「キャスカ様、何故あなたがこのような所に?」
目の前のメイドではない方の金髪縦ロールの女性の名前はキャスカと言い、ユガル王国とは友好関係にあるシナバラス王国の第二王女。
王女であるキャスカの名前を突然言い当てられて、思わずスサリナに視線を向けるグレイブとホルド。
「スサリナ様、あの女性をご存じで?」
立場は王女である為、いくら公爵家の者である勇者のグレイブも言葉は多少丁寧になる。
「えぇ、シナバラス王国の第二王女です」
神父ホリアスと、三人の魔族以外が目を見開く。
神父ホリアスは、キャスカを襲撃して来た者から事情を聞きだしたイリヤから全てを聞いており、グレイブ達がこの場に到着する前からその話をしていた所だったので一切の驚きはない。
普段から貧相な教会であり、善意の商人による寄付があってギリギリであると把握していたので、王族・貴族の力を使ってその商人の行動を制限した。
二日程度で干上がるだろうと判断していたのだが、三日経っても変化は読み取れず、ダンジョン再侵入の刻限が迫っている事から、再び教会を訪れる。
……バン……
「神父!最早猶予はない。魔王の脅威からユガル王国、いや、この世界を守る必要があるのだ。その栄誉ある一員として、この勇者パーティーに同行させてやると言っている。そうすれば間違いなく国家からこの萎びた教会に寄付があるだろう。お前に断ると言う選択肢は存在しな……」
いつも以上に激しく乗り込み神父の姿が見えた瞬間に喚き始める<勇者>グレイブだが、その言葉は三人の癒し手ではなく、神父の前で話をしている女性二人に視線が行った際に止まってしまう。
三人の癒し手も相当美しい雰囲気だが、その姿はベールに覆われており良く分からない。
一方の二人、夜中にこの教会に助けを求めてやってきた二人は姿を隠す事はしておらず、メイド服を着ていない方の人物が、どこをどう見ても高貴な人材であると言わんばかりのオーラ、洗練された所作、そして美しい見た目をしていた。
王族や上位貴族にありがちな金髪縦ロールで、優しそうな金色の目。
傍にいるメイド服の女性はその茶色い髪を清潔感溢れる状態で一纏めにしており、どう見ても上位の存在に仕えるための力量を備えたメイドである事が分かる。
グレイブと、ついでにホルドも二人に目を奪われている中で、王族である<聖女>スサリナは二人の内の一人に会った事があるような気がしていた。
神父の目の前の二人も、突然激しく扉が開いて大声で喚いていたグレイブ達に視線が行っている。
「は~、またですか。既に明確にお断りをしております。それに、スサリナ様が聖女として同行される以上、称号持ちではない癒し手が行っても足手纏いになるだけです。その結果、戦闘の最中に取り残される可能性もあるのではありませんか?」
イリヤに対する行い、今も含めてあまりにも身勝手な物言い、商人に対する強制的な寄付の制限等、やりたい放題のグレイブ一行に対していい加減に頭に来ている神父ホリアス。
多少棘がある言い方ではあるが、きっぱりと再び明確に同行を拒絶する。
「……お前程度では世界の為にこの身を削っている俺達の苦労などわかりはしない。おい、そこの三人。聞いていただろう?俺達は勇者パーティーであり、王族・貴族だ。そんなパーティーに、魔王討伐と言う世界を救う大偉業を行うパーティーの中に入れてやる。こんな萎びた教会でチマチマ癒しを行うよりもよっぽど有意義で、世界の為になる行動だ。どちらが重要か、言わずともわかるな?」
「グレイブ様の仰る通りです。これは国家、いいえ、世界を救うための聖戦なのです。あなた方が癒している民の繁栄にもつながる闘い。同行して頂けますね?そもそもこれは私達からの命令です!」
いくら神父ホリアスに言っても埒が明かないと判断した勇者パーティーは、魔族とは知らない三人に対して直接交渉をするが、最終的には強制になっている。
<勇者>グレイブと<聖女>スサリナに続き、<聖盾>ルナ、<剣神>ミア、<賢者>ホルドも何とか都合の良い雑用兼癒し手を手に入れようと追随する。
「そうだぜ。結果、褒賞もたんまり貰えるし、成果によっては爵位まで貰える可能性もある」
「これは、聖戦。正義の戦い」
「僕も、皆さんには同行を強く勧めますよ。この教会にも褒賞が出るでしょうしね。悪い事は無いのではないですか?」
一方的に話している中で神父の目の前の二人の内の一人が、勇者パーティーに対して初めて口を開く。
「部外者が口を挟んで申し訳ありません。確かに魔王顕現の一報は広く聞き及んでおりますが、討伐完了の報も同じく広く伝わっております。今のお話を聞く限り、誤報だったのでしょうか?」
「……本当に部外者が何を言っている?お前には関係がないだろう?俺達は確かに魔王を始末したが、何故か復活しやがったんだ。次は復活できない程に細切れにしてやる」
真夜中に助けを求めた侍女であるサリハとしては、本当に疑問に思った事を聞いただけだ。
普通、自らが勇者パーティーであり、王族・貴族であると言っている者に対してメイドがこれほどの質問をする事は出来ないので、サリハのこの態度に相当な違和感を覚えているスサリナは、漸く目の前の何となく見覚えがある人物が誰なのかを思い出した。
「キャスカ様、何故あなたがこのような所に?」
目の前のメイドではない方の金髪縦ロールの女性の名前はキャスカと言い、ユガル王国とは友好関係にあるシナバラス王国の第二王女。
王女であるキャスカの名前を突然言い当てられて、思わずスサリナに視線を向けるグレイブとホルド。
「スサリナ様、あの女性をご存じで?」
立場は王女である為、いくら公爵家の者である勇者のグレイブも言葉は多少丁寧になる。
「えぇ、シナバラス王国の第二王女です」
神父ホリアスと、三人の魔族以外が目を見開く。
神父ホリアスは、キャスカを襲撃して来た者から事情を聞きだしたイリヤから全てを聞いており、グレイブ達がこの場に到着する前からその話をしていた所だったので一切の驚きはない。
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