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可愛い恋人
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アルベルトと別れたロディネは、一度自宅に戻って着替えを済ませると、街へと食材を買いに出かけた。平日は仕事で忙しいので、休日に一週間分まとめて買い出しをしているからだ。
ただ、いつもよりも多く買い込んでしまったのは、もちろん自宅の食材が殆ど無かった事もある。それに、アルベルトの家の冷蔵庫が飲み物しか入っていないことを思い出したからだ。
アルベルトと会う時は外で食事をすませていたので、よもやあんな状態だとは思ってもみなかった。さりとて、ロディネが作れるのは簡単な家庭料理ばかりだ。私が作りますと言えるほど、自信のある腕前ではない。
買い物を終えて重い荷物を抱えながら、料理の勉強を始めようかと考えていると、後ろから男の声で呼び止められた。
嫌な予感がして振り向けば、案の定、兄のルーカスが一人立っていた。
「⋯⋯外では声をかけないで」
「いやぁ、可愛い女の子が重そうな荷物を抱えて歩いているのを、この俺が見過ごせるわけないだろう?」
爽やかに笑い、片手で軽々とロディネの荷物を持つ。ロディネは半眼である。ありがたいが、兄の事なので、うさんくさい。
「仕事は?」
「休みに決まってるだろ。見て分からないか?」
威張るルーカスは私服姿だったから間違いないのだろうが、この兄の場合、軍服を着ていても休んでいるような気がしてならないロディネである。
「それならいいけど。じゃあ、荷物を私の家まで持っていってくれるの?」
「ああ。だけど、その前に――――なぁ?」
ルーカスは空いている手で指さしたのは、喫茶店である。ロディネがアルベルトと朝食をとった店で、昼も近いとあってか、かなり混んでいた。
ロディネは白い目で兄を見た。魂胆が分かったからだ。万年金欠病の兄は、妹にたかる気だ。
「⋯⋯お昼ご飯がまだなのね?」
「鋭いな! さあ、一緒に行こうじゃないか! いつものように、お前が家で作ってくれてもいいぞ!」
「私の家はもう困るわ!」
今度はまたどんな置き土産をされるか分からない。さりとて荷物を人質にされてしまっているロディネは、仕方なくルーカスの後に続いて重い足取りで店に向かう。兄の何番目か分からない恋人に見つかりませんようにと切に願ったが。
その一部始終を、よもや自分の恋人に見聞きされていたとは思わなかった。
自宅に猫を置いて、アルベルトも昼食をとりに外に出た。商店街をぶらついていたら、ロディネを見かけ、声をかけようとした矢先の事だ。彼は凍りつき、しばらく立ち尽くしていた。
ロディネとルーカスは親し気で、やり取りも自然だ。しかも、ルーカスは彼女の家に何度も出入りしているようだった。あの男の服は――――ルーカスの物だったのか。
ならば別れたはずだ。
しかし、彼女は失恋をひきずっていたし、時々様子がおかしい時もあった。今も、彼女の言葉の端々から、ルーカスとの関係が完全に切れていないように思える。
ルーカスの方は言うに及ばない。どれだけ女癖の悪い男か、アルベルトはよく知っていた。
ギリと唇を噛み締め、苦いものがこみ上げる。奔放な母親を見て育ったせいか、アルベルトは恋人を疑うのも、疑われるのも嫌いだ。それこそ、一気に気持ちが冷めてきた。
店に向かう二人の後ろ姿を見つめ、アルベルトは黙って踵を返し、彼らを視界から消そうとした。
それは、彼にとって異常な事でもあった。自分は何も恥じる事などしていないから、逃げる必要などない。今までなら仔細を聞いて、別れるのみだった。
ただ、どうにも辛く、苦しい。
見間違いにしたくなる。
ただ、去りかけた彼の足は、「ぎゃあ⁉」と珍妙なロディネの声に止まった。すぐに彼女の方を見てみれば、ロディネは店の前で尻もちをついていた。そんな彼女を呆れ返った顔で、立って見下ろしている馬鹿がいる。
「お前さぁ⋯⋯いきなり背中にぶつかってくんなよ。痛えだろ!」
「つまずいたのよ⋯⋯! なんでビクともしないの⁉」
ロディネは、小さな段差に気づかず躓いて、前にいたルーカスの背中にぶつかった。兄の背中はまるで一枚の板のように硬く、ロディネは後ろにふっ飛んで尻もちをついたのだ。
「俺は軍人だぞ。ちょっとやそっとで動じるもの⋯⋯あんぎゃぁあああ⁉」
突然後ろから凄まじい力で肩を掴まれ、ルーカスは激痛に泣いた。
「どけ」
アルベルトは手を離すと、ルーカスを押し退けて、ロディネの前に屈み、手を差し伸べた。
「大丈夫か」
「あ⋯⋯はい!」
ロディネはまたとんでもない所を見られたと頬を染めながらも、彼の手を借りて立ち上がった。アルベルトは黙って、ロディネの膝や服についた土を払い落としてくれる。
ロディネは素直に感動した。おバカな兄のせいで、アルベルトが光り輝いて見える。王子様って現実にいたんだと思ってしまうくらいだ。
何やら感動した眼差しを向けられたアルベルトは、少しだけ表情を緩めた。ロディネの柔らかな眼差しは、普段と変わらない。彼女の自分への想いが完全に消えたわけではないと分かったことが、何だか安心した。
――――⋯⋯渡したくない。
かつて誰にも抱いた事のない感情が込み上げて、アルベルトは既に逃げ腰のルーカスを見据えた。旧友に対し、自分でも驚くほど殺気だった低い声が出た。
「貴様⋯⋯何をしている?」
「ま、待て。アルベルト、落ち着け⋯⋯な?」
「俺は今、人生で一番冷静だ」
「嘘つけ!」
ルーカスは焦る一方である。救いを求めてロディネを見れば、助けてもらった恩を感じたのか妹は頬を赤く染めて嬉しそうだ。
「おい、ロディネ!」
正気に戻れと思って声をかけると、ロディネはようやくルーカスを見たが、同時に彼は全身に鳥肌が立った。誰の仕業か分かるので視線を向けずに、ロディネを凝視し、目で必死に訴える。
「あ、そうね。紹介しなくっちゃ!」
職場では内密にしているが、ルーカスは家族であるし、こうして顔も合わせてしまっているから、もう伏せておいても仕方がない。
ただ、なんだか気恥ずかしくなって、ロディネは頬を染めたが、ルーカスはひきつった笑みを浮かべた。
妹よ、違うんだ。お前の上司は、もう紹介されなくても知っている。それよりも、お前はその男の本性を知っているか。
そいつは、三秒で大の男を地面に沈めるんだぞ。怠慢な仕事をすると、幹部将校たちでさえ凍りつかせて、しばらくまともに顔も見られなくなるほど冷徹なんだぞ。
女子供にも優しい奴だから、俺が嘲笑った事に絶対キレているに違いないんだぞ。
――――頼むから、注意をそらして、俺を逃がしてくれ! さもなければ、俺は今日死ぬ気がする⋯⋯。
「ええと⋯⋯私の職場の上司で⋯⋯こ⋯⋯こ⋯⋯っ」
ロディネの声は上ずる。家族に恋人を紹介するなんて、当然ながら初めてである。どうにも照れて、口ごもってしまう。それを見て、アルベルトが間髪入れずに告げた。
「恋人だ」
「それです!」
ロディネは助け船を出してくれた彼にまたしても感動したが、ルーカスは目を剥いた。
「なに⁉」
ロディネの恋人は、同じような年頃の、まだ少年の域を出ない程度の格好良さで、初めての恋愛に右往左往する妹と同レベルのお子ちゃまではなかったのか。
言葉にならないルーカスだったが、アルベルトがじろりと一瞥してきて、顔が引きつった。怒っている。明らかにこの男は嫉妬している。
以前、自分とロディネが話していた時も、何やら険のある目で見てきていた。あれはただの部下を想ってというわけではなく、彼女にちょっかいをかけていた自分に敵意を抱いていたからに違いない。
あの時と同じくらい――――いや、今は比べ物にならない程だ。よっぽどロディネが可愛いらしい。
思わず後ずさりすると、アルベルトが冷笑した。
「どこへ行く。俺もお前の事を紹介して欲しいんだがな⋯⋯?」
「いや、いらねーだろ!」
ルーカスは絶叫したが、二人を見上げていたロディネが、強く頷いた。
「はい、もちろん!」
俺の人生が終わる、とルーカスは思った。
もしも今、妹が一言でも余計な事を言えば、間違いなく殴られる気がする。頼む、と祈る気持ちが通じたのだろうか。
ロディネは的確な言葉を端的に告げた。
「私の兄のルーカスです!」
「⋯⋯⋯⋯ん?」
アルベルトから敵意が消えたのが分かり、ルーカスは天に感謝の祈りをささげる。そして、互いに見やり、なんとも気まずげな顔になる。そんな二人を不思議そうに見るロディネに、今度はアルベルトが教えてやった。
「⋯⋯俺の仕事を増やす、例の友人だ」
「なんですって!」
あのはた迷惑極まりない男が兄だったとは。これは全力で謝らなければならない案件である。キッと兄を睨みつけると、ルーカスが猛抗議してきた。
「おい、ロディネ。お前の恋人って、アルベルトの事だったのか⁉」
「そうよ! お兄ちゃんまでアルベルトさんに迷惑かけていたなんて⋯⋯恥ずかしいわ! 何が笑顔で地獄に叩き落す嫌な奴だ、よ! お兄ちゃんが悪いんじゃない!」
「お前こそ、眼鏡の度を合わせてこい! こいつのどこが可愛い!? 格好つけの奥手なガキだと思ったじゃねーか!」
「黙って!」
真っ赤になるロディネに、ルーカスは鼻で笑ったが、ハッと我に変える。
黙って聞いていた男の口もとに、うっすらと冷たい笑みが浮かんでいた。
ほらみろ!と、ルーカスは半泣きになった。
ただ、いつもよりも多く買い込んでしまったのは、もちろん自宅の食材が殆ど無かった事もある。それに、アルベルトの家の冷蔵庫が飲み物しか入っていないことを思い出したからだ。
アルベルトと会う時は外で食事をすませていたので、よもやあんな状態だとは思ってもみなかった。さりとて、ロディネが作れるのは簡単な家庭料理ばかりだ。私が作りますと言えるほど、自信のある腕前ではない。
買い物を終えて重い荷物を抱えながら、料理の勉強を始めようかと考えていると、後ろから男の声で呼び止められた。
嫌な予感がして振り向けば、案の定、兄のルーカスが一人立っていた。
「⋯⋯外では声をかけないで」
「いやぁ、可愛い女の子が重そうな荷物を抱えて歩いているのを、この俺が見過ごせるわけないだろう?」
爽やかに笑い、片手で軽々とロディネの荷物を持つ。ロディネは半眼である。ありがたいが、兄の事なので、うさんくさい。
「仕事は?」
「休みに決まってるだろ。見て分からないか?」
威張るルーカスは私服姿だったから間違いないのだろうが、この兄の場合、軍服を着ていても休んでいるような気がしてならないロディネである。
「それならいいけど。じゃあ、荷物を私の家まで持っていってくれるの?」
「ああ。だけど、その前に――――なぁ?」
ルーカスは空いている手で指さしたのは、喫茶店である。ロディネがアルベルトと朝食をとった店で、昼も近いとあってか、かなり混んでいた。
ロディネは白い目で兄を見た。魂胆が分かったからだ。万年金欠病の兄は、妹にたかる気だ。
「⋯⋯お昼ご飯がまだなのね?」
「鋭いな! さあ、一緒に行こうじゃないか! いつものように、お前が家で作ってくれてもいいぞ!」
「私の家はもう困るわ!」
今度はまたどんな置き土産をされるか分からない。さりとて荷物を人質にされてしまっているロディネは、仕方なくルーカスの後に続いて重い足取りで店に向かう。兄の何番目か分からない恋人に見つかりませんようにと切に願ったが。
その一部始終を、よもや自分の恋人に見聞きされていたとは思わなかった。
自宅に猫を置いて、アルベルトも昼食をとりに外に出た。商店街をぶらついていたら、ロディネを見かけ、声をかけようとした矢先の事だ。彼は凍りつき、しばらく立ち尽くしていた。
ロディネとルーカスは親し気で、やり取りも自然だ。しかも、ルーカスは彼女の家に何度も出入りしているようだった。あの男の服は――――ルーカスの物だったのか。
ならば別れたはずだ。
しかし、彼女は失恋をひきずっていたし、時々様子がおかしい時もあった。今も、彼女の言葉の端々から、ルーカスとの関係が完全に切れていないように思える。
ルーカスの方は言うに及ばない。どれだけ女癖の悪い男か、アルベルトはよく知っていた。
ギリと唇を噛み締め、苦いものがこみ上げる。奔放な母親を見て育ったせいか、アルベルトは恋人を疑うのも、疑われるのも嫌いだ。それこそ、一気に気持ちが冷めてきた。
店に向かう二人の後ろ姿を見つめ、アルベルトは黙って踵を返し、彼らを視界から消そうとした。
それは、彼にとって異常な事でもあった。自分は何も恥じる事などしていないから、逃げる必要などない。今までなら仔細を聞いて、別れるのみだった。
ただ、どうにも辛く、苦しい。
見間違いにしたくなる。
ただ、去りかけた彼の足は、「ぎゃあ⁉」と珍妙なロディネの声に止まった。すぐに彼女の方を見てみれば、ロディネは店の前で尻もちをついていた。そんな彼女を呆れ返った顔で、立って見下ろしている馬鹿がいる。
「お前さぁ⋯⋯いきなり背中にぶつかってくんなよ。痛えだろ!」
「つまずいたのよ⋯⋯! なんでビクともしないの⁉」
ロディネは、小さな段差に気づかず躓いて、前にいたルーカスの背中にぶつかった。兄の背中はまるで一枚の板のように硬く、ロディネは後ろにふっ飛んで尻もちをついたのだ。
「俺は軍人だぞ。ちょっとやそっとで動じるもの⋯⋯あんぎゃぁあああ⁉」
突然後ろから凄まじい力で肩を掴まれ、ルーカスは激痛に泣いた。
「どけ」
アルベルトは手を離すと、ルーカスを押し退けて、ロディネの前に屈み、手を差し伸べた。
「大丈夫か」
「あ⋯⋯はい!」
ロディネはまたとんでもない所を見られたと頬を染めながらも、彼の手を借りて立ち上がった。アルベルトは黙って、ロディネの膝や服についた土を払い落としてくれる。
ロディネは素直に感動した。おバカな兄のせいで、アルベルトが光り輝いて見える。王子様って現実にいたんだと思ってしまうくらいだ。
何やら感動した眼差しを向けられたアルベルトは、少しだけ表情を緩めた。ロディネの柔らかな眼差しは、普段と変わらない。彼女の自分への想いが完全に消えたわけではないと分かったことが、何だか安心した。
――――⋯⋯渡したくない。
かつて誰にも抱いた事のない感情が込み上げて、アルベルトは既に逃げ腰のルーカスを見据えた。旧友に対し、自分でも驚くほど殺気だった低い声が出た。
「貴様⋯⋯何をしている?」
「ま、待て。アルベルト、落ち着け⋯⋯な?」
「俺は今、人生で一番冷静だ」
「嘘つけ!」
ルーカスは焦る一方である。救いを求めてロディネを見れば、助けてもらった恩を感じたのか妹は頬を赤く染めて嬉しそうだ。
「おい、ロディネ!」
正気に戻れと思って声をかけると、ロディネはようやくルーカスを見たが、同時に彼は全身に鳥肌が立った。誰の仕業か分かるので視線を向けずに、ロディネを凝視し、目で必死に訴える。
「あ、そうね。紹介しなくっちゃ!」
職場では内密にしているが、ルーカスは家族であるし、こうして顔も合わせてしまっているから、もう伏せておいても仕方がない。
ただ、なんだか気恥ずかしくなって、ロディネは頬を染めたが、ルーカスはひきつった笑みを浮かべた。
妹よ、違うんだ。お前の上司は、もう紹介されなくても知っている。それよりも、お前はその男の本性を知っているか。
そいつは、三秒で大の男を地面に沈めるんだぞ。怠慢な仕事をすると、幹部将校たちでさえ凍りつかせて、しばらくまともに顔も見られなくなるほど冷徹なんだぞ。
女子供にも優しい奴だから、俺が嘲笑った事に絶対キレているに違いないんだぞ。
――――頼むから、注意をそらして、俺を逃がしてくれ! さもなければ、俺は今日死ぬ気がする⋯⋯。
「ええと⋯⋯私の職場の上司で⋯⋯こ⋯⋯こ⋯⋯っ」
ロディネの声は上ずる。家族に恋人を紹介するなんて、当然ながら初めてである。どうにも照れて、口ごもってしまう。それを見て、アルベルトが間髪入れずに告げた。
「恋人だ」
「それです!」
ロディネは助け船を出してくれた彼にまたしても感動したが、ルーカスは目を剥いた。
「なに⁉」
ロディネの恋人は、同じような年頃の、まだ少年の域を出ない程度の格好良さで、初めての恋愛に右往左往する妹と同レベルのお子ちゃまではなかったのか。
言葉にならないルーカスだったが、アルベルトがじろりと一瞥してきて、顔が引きつった。怒っている。明らかにこの男は嫉妬している。
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あの時と同じくらい――――いや、今は比べ物にならない程だ。よっぽどロディネが可愛いらしい。
思わず後ずさりすると、アルベルトが冷笑した。
「どこへ行く。俺もお前の事を紹介して欲しいんだがな⋯⋯?」
「いや、いらねーだろ!」
ルーカスは絶叫したが、二人を見上げていたロディネが、強く頷いた。
「はい、もちろん!」
俺の人生が終わる、とルーカスは思った。
もしも今、妹が一言でも余計な事を言えば、間違いなく殴られる気がする。頼む、と祈る気持ちが通じたのだろうか。
ロディネは的確な言葉を端的に告げた。
「私の兄のルーカスです!」
「⋯⋯⋯⋯ん?」
アルベルトから敵意が消えたのが分かり、ルーカスは天に感謝の祈りをささげる。そして、互いに見やり、なんとも気まずげな顔になる。そんな二人を不思議そうに見るロディネに、今度はアルベルトが教えてやった。
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「なんですって!」
あのはた迷惑極まりない男が兄だったとは。これは全力で謝らなければならない案件である。キッと兄を睨みつけると、ルーカスが猛抗議してきた。
「おい、ロディネ。お前の恋人って、アルベルトの事だったのか⁉」
「そうよ! お兄ちゃんまでアルベルトさんに迷惑かけていたなんて⋯⋯恥ずかしいわ! 何が笑顔で地獄に叩き落す嫌な奴だ、よ! お兄ちゃんが悪いんじゃない!」
「お前こそ、眼鏡の度を合わせてこい! こいつのどこが可愛い!? 格好つけの奥手なガキだと思ったじゃねーか!」
「黙って!」
真っ赤になるロディネに、ルーカスは鼻で笑ったが、ハッと我に変える。
黙って聞いていた男の口もとに、うっすらと冷たい笑みが浮かんでいた。
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