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二人の秘密
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二人の翌朝は、
「うぅう⋯⋯」
という、ロディネの絶望的なうめき声から始まった。
やはり全く記憶がない。目が覚めてみたら、アルベルトの寝室で寝ていた。隣にはいつの間にか帰って来ていたアルベルトが寝ていて、ロディネが起きるとすぐに彼も目を覚ましたが、彼女の動転ぶりからすぐに察した。
「また覚えていないようだな」
「あの⋯⋯」
「酒を飲むなと言っただろう」
アルベルトは素っ気なく言うと、ベッドから降りた。目覚めた事に気づいた猫が、餌を強請って寝室までやって来たからだ。ロディネは頭を抱えた。
朝食を済ませ、支度を整えて、ロディネは帰路についたが、道中、生きた心地がしない。家まで送っていくと言って同行してくれたアルベルトの顔が、まともに見れない。
必死で記憶をたどったが、やはり全く思い出せずにいる。幸いにして、水晶玉は鞄の中に入っていたので、彼に見られてはいないだろうが、なにに使う物か知られたら恥ずかしくて仕方がない。慌ててさらに奥へと突っ込んでいた。
家に着くと、ロディネはそれでも彼にお茶を淹れてもてなそうと、中に招き入れた。ソファーに座ってもらい、支度をしようと台所に向かおうとしたが。
「ロディネ、鞄を貸せ」
「な、なぜですか⁉」
ぎょっとするロディネに、アルベルトは不敵な笑みを浮かべる。
「ルーカスに貰ったものが入っているだろう? 昨夜、机の上に置いてあったから、トラがいじくって遊んでいたぞ」
「あの⋯⋯何に使うかはご存じですか?」
「あぁ」
「中身を見ましたか⁉」
「見ていない。割れると困るから、お前の鞄に入れておいただけだ」
「そうですか⋯⋯」
一度見た後、熱く語る映像は消したつもりだったが、万が一残っていたら大変だ。それに、何が映っているかも知らずに、なぜ彼は欲しがるのだと困惑する。アルベルトに言われて鞄から水晶玉を取り出して手渡したロディネは、全身から冷や汗が出た。
再生ボタンを押されたら、残っていたら、と思うと気が気ではない。
「面白い物があるもんだな」
「そ、そうですね⋯⋯!」
アルベルトはそのまま水晶玉を自分の傍に置いた。
――――い、今すぐ割りたいわ⋯⋯。
ロディネは物騒な思考が頭を過ったが、すぐにそれどころではなくなった。
「ところで、俺と似た男とは、その後どうなった?」
「⋯⋯⋯⋯え?」
「他の奴と一緒にいるのは、納得できないそうだな。何度も聞いたぞ」
ロディネは滝のような汗が出る。いつだ。どこで彼は自分の趣味を知ったのだ。やはり自分は余計な事を言ったのか。それとも、兄の仕業か。
――――そうだとしたら、もう絶対にご飯を作らないわ!
と、密かな決意を固める。今にも泣きだしそうな情けない顔になったロディネに、アルベルトは苦笑すると、彼女を手招きして呼んだ。
真っ赤になりながら、傍らに座ったロディネに、アルベルトは短く告げる。
「たとえ、そうであったとしても、お前は渡さない」
「え⋯⋯?」
驚いた顏で見返してきた彼女を見つめ、彼は一つ息を吐くと、きっぱりと言った。
「お前の恋人で、誰よりもお前を愛しているのは、俺だ。それだけは、よく覚えておけ」
真摯な眼差しで告げられて、ロディネはしばらく返答できなかった。
自分も好きだと彼に言うのは、勇気を振り絞らなければならなかった。
そして、アルベルトも行動で愛情を示してくれてはいたが、直接的な言葉はあまり聞けていなかった。見れば、アルベルトの頬も薄っすらと赤い。
ここに来るまでに、彼も意を決してくれたのだと分かる。
だから、ロディネはいつものように顔を綻ばせ、抱きしめてきた彼に応えて身を委ねた。
「⋯⋯ごめんなさい。嫌な思いをさせてしまったようですし⋯⋯思い出の品も含めて、全部捨てますね⋯⋯」
「別にそこまでしなくていい」
「いいえ! 私はけじめをつけます。一杯あるんです! 死んだら一緒に埋めて貰おうと思って!」
ロディネの気持ちを慮り、寛大な男でいようと思ったアルベルトだが、やはり面白くなくて顔が引きつった。
「⋯⋯ちょっと待て」
「大丈夫です。今、処分しますから!」
ロディネは意を決して、大事に仕舞いこんでいた箱を取り出してくると、机の上に置いた。思った以上に大きな箱を前に、アルベルトは小さくため息を吐く。
「こんなにあったのか⋯⋯?」
「は、はい。本は読む用と保管用に、全部で同じものが二冊ありまして」
「⋯⋯⋯⋯あ?」
「彼に関わる品も、全部同じように二つずつございます」
「⋯⋯お前は何を言ってるんだ?」
怪訝そうな顔をされて、ロディネは目を瞬いた。
「私の秘密についてですが⋯⋯?」
「俺の前にいた恋人の事だろ?」
「え?」
「男物の上着はルーカスの忘れ物だったようだが、初対面の時も、街で何か見つけて驚いていただろう。あの辺りは休憩処もあるからな。別れた男が、別の女と入っていくのでも見たか?」
「⋯⋯えぇと⋯⋯」
「その後、家に送っていったら、今度はいきなり悲鳴をあげたよな? 挙句に⋯⋯どうして別れないといけなかったんだと、他の奴がいいなんてひどいと、泣いただろう。金は良いとか言っていたが⋯⋯貢いだのか?」
ずっと堪えてきたが、アルベルトはもう聞かずにはいられなくなった。
ロディネの目は散々泳ぐ。あらぬ誤解をされていたようだと、ようやく気付き、それも自分がひた隠しにしていたせいだと思った。
「そう⋯⋯ですね。いっぱい、貢ぎました⋯⋯大好きな漫画に」
「なに?」
ロディネは真っ赤になりながら、そっと箱を開けた。アルベルトは中身に視線を落とし、呆気にとられた。そこに収まっていたのは、彼女がさきほど言っていたように、同じ本が二冊ずつ。さらにグッズらしきものが大量に入っていたが、彼の目を引いたのは、それらの大半に同じ男の絵が入っている事だった。
「⋯⋯俺にちょっと似てるか?」
「は、はい⋯⋯そ、そっくりです」
「⋯⋯⋯⋯」
「三年前に売り出されて、それからずっと買っていた⋯⋯恋愛漫画です。その中でも、その⋯⋯アルベルトさんによく似たその人をずっと推していまして⋯⋯でも、ヒロインは別の人を好きになって、彼は身を引くんです⋯⋯お話上、仕方がない事なんですが」
「でも、お前は納得できない、と」
「もう悲しくて! 街でこの漫画の絵が貼ってあったんですが、違うんです! ヒロインの隣にいるべきなのは、彼なんです!」
そこに《彼》そっくりのアルベルトが現われたものだから、酔っぱらったロディネは思いっきり絡んだ、というわけだ。
家に入るなり悲鳴を上げたのも、箪笥の中に入れていたこれらを見てしまったからだろうと、ロディネは推理し、自白した。
自分の前の恋人がいたわけでも、未練を捨てられないわけでもないと、ようやく理解したアルベルトは胸を撫で下ろす。
「⋯⋯漫画の事だったのか。それなら別に俺に隠すことじゃないだろう?」
「⋯⋯⋯⋯」
「ロディネ?」
「あの⋯⋯どうぞ」
もう見て貰った方が早いと、ロディネは読む用の本を一冊とって、彼に手渡した。アルベルトは不思議そうにしながらもページをめくり、納得した。
「あぁ、そういうことか」
「誰にも言わないでください。兄や姉には知られていたみたいですけど、酔った時に、この漫画の話をしていたなんて思わなかったんです⋯⋯」
消え入りそうな声でいったロディネに、アルベルトは本を箱に置くと、微笑んだ。
「分かった。黙っておく。そんなに恥ずかしがる事でもないと思うがな?」
「そ、そうですか⋯⋯?」
「男だって、もっと野卑な物を見ているぞ。それに、コレに勝る物はないと思うが」
アルベルトはくすりと笑って、ロディネの手に水晶玉を持たせると、腰に腕を回して抱き寄せた。訳の分からないロディネは目を瞬く。
「これを俺の家に持ち込んだ理由は?」
「前に酔った時にどうなったのか知りたくて⋯⋯同じ状況を作って映してみたんです。案の定、漫画の《彼》について熱く語っていましたが⋯⋯」
「この間は、その勢いのまま、俺に襲いかかった」
「はい⁉」
「それはまだ良いが、いきなり噛まれるのはな⋯⋯悲鳴を上げたら怒られたぞ」
「待ってください!」
水晶玉を持つ手がぶるぶると震えたが、アルベルトはくすくすと笑うが、止めてやるわけがない。
「まぁ⋯⋯たまらねえよ。俺もたぶん、相当無様だった。言えるわけ、ないよな?」
ロディネはもう赤くなって、蒼くなったが。
真実を知った今、それにも関わらず、なぜ自分は水晶玉を持たされているのだろう。嫌な予感がヒシヒシとする中、アルベルトが止めを刺した。
「昨夜、俺が帰って来た後、全く同じことをしたぞ。しかも、トラが遊んで、録画のボタンを押していたようでな」
「⋯⋯つまり、これには」
アルベルトが容赦なく再生ボタンを押すと、彼の言った通りの映像がはっきりと映っていた。ロディネは悲鳴をあげて、水晶玉を落としたが、すかさず彼が受け止めて、机の上に置く。
「な?」
「見てはいけません⋯⋯あっ、見ないで!」
ロディネは真っ赤になって必死で訴えたが、抱きしめられて身動きができず、そうしている間にも、音声と映像が流れていく。一方、アルベルトはもう吹っ切れて、平然としたものだ。
「俺がお前に好き放題されてる姿だぞ?」
「うぅ⋯⋯っ」
「ほら、よく見ろ」
「恥ずかしがるところでは⁉」
「全く。お前ならいい」
ロディネはもう心底嘆くしかない。
――――あぁ、私のバカ。何をしているの! 何をしでかしているの⋯⋯!
アルベルトの大人な秘密と、ロディネのオタクな秘密。
どちらも二人にとっては、あまり大きな声で言えない事だったが、この映像は⋯⋯。
「俺達だけの秘密だぞ」
くすりと笑ってキスをした彼に、ロディネは真っ赤になった。
【了】
「うぅう⋯⋯」
という、ロディネの絶望的なうめき声から始まった。
やはり全く記憶がない。目が覚めてみたら、アルベルトの寝室で寝ていた。隣にはいつの間にか帰って来ていたアルベルトが寝ていて、ロディネが起きるとすぐに彼も目を覚ましたが、彼女の動転ぶりからすぐに察した。
「また覚えていないようだな」
「あの⋯⋯」
「酒を飲むなと言っただろう」
アルベルトは素っ気なく言うと、ベッドから降りた。目覚めた事に気づいた猫が、餌を強請って寝室までやって来たからだ。ロディネは頭を抱えた。
朝食を済ませ、支度を整えて、ロディネは帰路についたが、道中、生きた心地がしない。家まで送っていくと言って同行してくれたアルベルトの顔が、まともに見れない。
必死で記憶をたどったが、やはり全く思い出せずにいる。幸いにして、水晶玉は鞄の中に入っていたので、彼に見られてはいないだろうが、なにに使う物か知られたら恥ずかしくて仕方がない。慌ててさらに奥へと突っ込んでいた。
家に着くと、ロディネはそれでも彼にお茶を淹れてもてなそうと、中に招き入れた。ソファーに座ってもらい、支度をしようと台所に向かおうとしたが。
「ロディネ、鞄を貸せ」
「な、なぜですか⁉」
ぎょっとするロディネに、アルベルトは不敵な笑みを浮かべる。
「ルーカスに貰ったものが入っているだろう? 昨夜、机の上に置いてあったから、トラがいじくって遊んでいたぞ」
「あの⋯⋯何に使うかはご存じですか?」
「あぁ」
「中身を見ましたか⁉」
「見ていない。割れると困るから、お前の鞄に入れておいただけだ」
「そうですか⋯⋯」
一度見た後、熱く語る映像は消したつもりだったが、万が一残っていたら大変だ。それに、何が映っているかも知らずに、なぜ彼は欲しがるのだと困惑する。アルベルトに言われて鞄から水晶玉を取り出して手渡したロディネは、全身から冷や汗が出た。
再生ボタンを押されたら、残っていたら、と思うと気が気ではない。
「面白い物があるもんだな」
「そ、そうですね⋯⋯!」
アルベルトはそのまま水晶玉を自分の傍に置いた。
――――い、今すぐ割りたいわ⋯⋯。
ロディネは物騒な思考が頭を過ったが、すぐにそれどころではなくなった。
「ところで、俺と似た男とは、その後どうなった?」
「⋯⋯⋯⋯え?」
「他の奴と一緒にいるのは、納得できないそうだな。何度も聞いたぞ」
ロディネは滝のような汗が出る。いつだ。どこで彼は自分の趣味を知ったのだ。やはり自分は余計な事を言ったのか。それとも、兄の仕業か。
――――そうだとしたら、もう絶対にご飯を作らないわ!
と、密かな決意を固める。今にも泣きだしそうな情けない顔になったロディネに、アルベルトは苦笑すると、彼女を手招きして呼んだ。
真っ赤になりながら、傍らに座ったロディネに、アルベルトは短く告げる。
「たとえ、そうであったとしても、お前は渡さない」
「え⋯⋯?」
驚いた顏で見返してきた彼女を見つめ、彼は一つ息を吐くと、きっぱりと言った。
「お前の恋人で、誰よりもお前を愛しているのは、俺だ。それだけは、よく覚えておけ」
真摯な眼差しで告げられて、ロディネはしばらく返答できなかった。
自分も好きだと彼に言うのは、勇気を振り絞らなければならなかった。
そして、アルベルトも行動で愛情を示してくれてはいたが、直接的な言葉はあまり聞けていなかった。見れば、アルベルトの頬も薄っすらと赤い。
ここに来るまでに、彼も意を決してくれたのだと分かる。
だから、ロディネはいつものように顔を綻ばせ、抱きしめてきた彼に応えて身を委ねた。
「⋯⋯ごめんなさい。嫌な思いをさせてしまったようですし⋯⋯思い出の品も含めて、全部捨てますね⋯⋯」
「別にそこまでしなくていい」
「いいえ! 私はけじめをつけます。一杯あるんです! 死んだら一緒に埋めて貰おうと思って!」
ロディネの気持ちを慮り、寛大な男でいようと思ったアルベルトだが、やはり面白くなくて顔が引きつった。
「⋯⋯ちょっと待て」
「大丈夫です。今、処分しますから!」
ロディネは意を決して、大事に仕舞いこんでいた箱を取り出してくると、机の上に置いた。思った以上に大きな箱を前に、アルベルトは小さくため息を吐く。
「こんなにあったのか⋯⋯?」
「は、はい。本は読む用と保管用に、全部で同じものが二冊ありまして」
「⋯⋯⋯⋯あ?」
「彼に関わる品も、全部同じように二つずつございます」
「⋯⋯お前は何を言ってるんだ?」
怪訝そうな顔をされて、ロディネは目を瞬いた。
「私の秘密についてですが⋯⋯?」
「俺の前にいた恋人の事だろ?」
「え?」
「男物の上着はルーカスの忘れ物だったようだが、初対面の時も、街で何か見つけて驚いていただろう。あの辺りは休憩処もあるからな。別れた男が、別の女と入っていくのでも見たか?」
「⋯⋯えぇと⋯⋯」
「その後、家に送っていったら、今度はいきなり悲鳴をあげたよな? 挙句に⋯⋯どうして別れないといけなかったんだと、他の奴がいいなんてひどいと、泣いただろう。金は良いとか言っていたが⋯⋯貢いだのか?」
ずっと堪えてきたが、アルベルトはもう聞かずにはいられなくなった。
ロディネの目は散々泳ぐ。あらぬ誤解をされていたようだと、ようやく気付き、それも自分がひた隠しにしていたせいだと思った。
「そう⋯⋯ですね。いっぱい、貢ぎました⋯⋯大好きな漫画に」
「なに?」
ロディネは真っ赤になりながら、そっと箱を開けた。アルベルトは中身に視線を落とし、呆気にとられた。そこに収まっていたのは、彼女がさきほど言っていたように、同じ本が二冊ずつ。さらにグッズらしきものが大量に入っていたが、彼の目を引いたのは、それらの大半に同じ男の絵が入っている事だった。
「⋯⋯俺にちょっと似てるか?」
「は、はい⋯⋯そ、そっくりです」
「⋯⋯⋯⋯」
「三年前に売り出されて、それからずっと買っていた⋯⋯恋愛漫画です。その中でも、その⋯⋯アルベルトさんによく似たその人をずっと推していまして⋯⋯でも、ヒロインは別の人を好きになって、彼は身を引くんです⋯⋯お話上、仕方がない事なんですが」
「でも、お前は納得できない、と」
「もう悲しくて! 街でこの漫画の絵が貼ってあったんですが、違うんです! ヒロインの隣にいるべきなのは、彼なんです!」
そこに《彼》そっくりのアルベルトが現われたものだから、酔っぱらったロディネは思いっきり絡んだ、というわけだ。
家に入るなり悲鳴を上げたのも、箪笥の中に入れていたこれらを見てしまったからだろうと、ロディネは推理し、自白した。
自分の前の恋人がいたわけでも、未練を捨てられないわけでもないと、ようやく理解したアルベルトは胸を撫で下ろす。
「⋯⋯漫画の事だったのか。それなら別に俺に隠すことじゃないだろう?」
「⋯⋯⋯⋯」
「ロディネ?」
「あの⋯⋯どうぞ」
もう見て貰った方が早いと、ロディネは読む用の本を一冊とって、彼に手渡した。アルベルトは不思議そうにしながらもページをめくり、納得した。
「あぁ、そういうことか」
「誰にも言わないでください。兄や姉には知られていたみたいですけど、酔った時に、この漫画の話をしていたなんて思わなかったんです⋯⋯」
消え入りそうな声でいったロディネに、アルベルトは本を箱に置くと、微笑んだ。
「分かった。黙っておく。そんなに恥ずかしがる事でもないと思うがな?」
「そ、そうですか⋯⋯?」
「男だって、もっと野卑な物を見ているぞ。それに、コレに勝る物はないと思うが」
アルベルトはくすりと笑って、ロディネの手に水晶玉を持たせると、腰に腕を回して抱き寄せた。訳の分からないロディネは目を瞬く。
「これを俺の家に持ち込んだ理由は?」
「前に酔った時にどうなったのか知りたくて⋯⋯同じ状況を作って映してみたんです。案の定、漫画の《彼》について熱く語っていましたが⋯⋯」
「この間は、その勢いのまま、俺に襲いかかった」
「はい⁉」
「それはまだ良いが、いきなり噛まれるのはな⋯⋯悲鳴を上げたら怒られたぞ」
「待ってください!」
水晶玉を持つ手がぶるぶると震えたが、アルベルトはくすくすと笑うが、止めてやるわけがない。
「まぁ⋯⋯たまらねえよ。俺もたぶん、相当無様だった。言えるわけ、ないよな?」
ロディネはもう赤くなって、蒼くなったが。
真実を知った今、それにも関わらず、なぜ自分は水晶玉を持たされているのだろう。嫌な予感がヒシヒシとする中、アルベルトが止めを刺した。
「昨夜、俺が帰って来た後、全く同じことをしたぞ。しかも、トラが遊んで、録画のボタンを押していたようでな」
「⋯⋯つまり、これには」
アルベルトが容赦なく再生ボタンを押すと、彼の言った通りの映像がはっきりと映っていた。ロディネは悲鳴をあげて、水晶玉を落としたが、すかさず彼が受け止めて、机の上に置く。
「な?」
「見てはいけません⋯⋯あっ、見ないで!」
ロディネは真っ赤になって必死で訴えたが、抱きしめられて身動きができず、そうしている間にも、音声と映像が流れていく。一方、アルベルトはもう吹っ切れて、平然としたものだ。
「俺がお前に好き放題されてる姿だぞ?」
「うぅ⋯⋯っ」
「ほら、よく見ろ」
「恥ずかしがるところでは⁉」
「全く。お前ならいい」
ロディネはもう心底嘆くしかない。
――――あぁ、私のバカ。何をしているの! 何をしでかしているの⋯⋯!
アルベルトの大人な秘密と、ロディネのオタクな秘密。
どちらも二人にとっては、あまり大きな声で言えない事だったが、この映像は⋯⋯。
「俺達だけの秘密だぞ」
くすりと笑ってキスをした彼に、ロディネは真っ赤になった。
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