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ロカール日常シリーズ ▶️50話

【Fバード討伐】#4 うちの魔導師が分かりやす過ぎるんだが(ルキ視点)

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(…にしてもセリのやつ、胸すぎだろ。)

自分の隣には、ローブを脱いだ女魔導師。ローブの下からは、かなり露出の激しい服が出てきた。その女の胸元を、セリが反対隣からガン見しているもんだから、かなりハラハラ、気が気じゃなかった。

(バレてねぇ、とは思うけど。…セリ、こういうのが趣味か?)

人の趣味にどうこう言うつもりは無い、が、それでも、セリには「この女は止めておけ」と言いたい。

(依頼中も何も考えてなさそうだったけど、シオンの付与にイチャモンつけるってのがあり得ねぇ。)

自分達が無傷で済んだ理由が全く分かっていないような奴らなど、セリに相応しいわけがない。

(…まぁ、呪術師なんてのは地味だし、シオンはあの性格だからな。)

緊張感無くいつも笑っているせいか、どこか抜けて見えるシオン。顔はいいはずなのに、それでも「出来る男」の姿からは程遠く、その実力は過小評価されがちだったりする。

(…俺との初対面の時もなぁ。)

思い出し、思わず口元がニヤける。セリとシオンとの出会い。度肝を抜かれ、一瞬で二人に心惹かれた─



─あ!あの、双剣使いのルキくんだよね?ごめん、今、ちょっといいかな?

─…いいように見えっか?マッシブベアに襲われてるとこだぞ?

─ああ!うん、そうだよね!忙しいよね!でも、ごめん!こっちもちょっと焦ってて!勝手だけど、『防御力強化!』『速度強化!』『攻撃力強化!』

─…何のつもりだ?

─ごめーん!でも、こいつやるの手伝うからさ!うちのい、…弟助けてくれない!?

─は?

─あそこ!サンドビーの山みたいなの出来てるでしょっ!あの中にいるの!うちの弟!

─はぁっ!?



(…あん時ゃ、「その弟、死んでんだろ?」って思ったけどな。)

サンドビーの針攻撃を一切通さないだけの物理防御力の強化。それを付与した男は、サンドビーの山から救出した弟、涙目になっていたセリにしこたま怒られていた。



─バカっ!兄さんのバカ!だから、言った!私、無理って言った!

─ごめん!ごめんってセリ!あ!でも、ほら、彼!セリが気にしてた、双剣のルキくん!彼が助けてくれたんだよ?お兄ちゃん、頑張って勧誘したんだよ!

─え…?…ルキ、さん。…えっと、あの、勧誘って、え?…ひょっとして、私達とパーティ、組んでもらえる、とか、そういう話ですか?

─は?…いや、俺は別に、

─そう!そうなんだよ!いやー!良かった!良かったね、セリ!ずっと、ルキくんとパーティ組みたいって言ってたもんな!

─…うん。…あの、ルキさん、兄がすみません。でも、あの、ありがとうございます。嬉しいです。これから、よろしくお願いします。



そう言って頭を下げたセリ。顔を上げた時に見せた泣き笑いの笑顔に、結局、「違う」とは言い出せず。二人と─既に勧誘済みだったエルも入れて─パーティを組むことになった。

(ほんと、あん時は、気づけばって感じで流されたな…)

エルでは無いが、その頃の自分は古巣のパーティを抜けたばかり。色々ごたついた後だったこともあり、暫くはソロで、そう思っていた矢先の出来事だった。

その後、正式にパーティを組んだ時にその話をしたセリに、シオンはまたしこたま怒られていたが─

(何か、セリのあの、泣きそうな顔見てたらほっとけなかったっつーか、…すげぇ喜ばれて違うとは言えなかった、…って、あー、いや、うん、違うな。普通に嬉しかったんだわ、俺。)

今更、それに気づいて、何とも言えない羞恥に襲われる。

(…恥ず。…けど、まぁ、だから、なんだ。つまり、その大事な弟分がこんなのに引っかかったりしたら最悪だってことだよな。)

誤魔化すようにそう結論づけて、自分の隣、女を武器に距離を近づけようとしてくる魔導師を振り払う。

「触んな。うっとうしい。」

「えーっ!ヒドい!私はただ、ルキと仲良くなりたいだけなのにぃ!」

「いや、別にあんたらとお近づきになるつもりねぇから。」

(悪ぃな、セリ。お前は気に入ってたのかもしんねーけど。)

これ以上、こいつらに付き合う義理もない。セリを拾って帰るかと、シオンとエルに目配せすれば、頷いて返される。「じゃあな」、そう言って席を立とうとした瞬間、あり得ない言葉が聞こえた─

「ねえ、ルキぃ。こんな人達のパーティ抜けて、私達と組まない?」

「はぁあ?」

「おい、アイラ、止めろって。こんなとこで引き抜きはマズいだろ。場所考えろ。」

「えー、だって、ヴィムー。このままじゃ、ルキが可哀想だよぉ。こーんな奴らに言いように使われてぇー。」

(…ヤるか。)

パーティメンバーの前での勧誘というだけでもあり得ない行為。更に仲間を馬鹿にされて笑っていられるほど、生憎、人間出来ていない。腰の双剣に手が伸びそうになったところで、必死に首を横に振るシオンが視界に入った。その横で、黒い顔して笑うエルが親指を立てている。

「ああ、悪い悪い。こいつ、酔ってんだよ。許してやってくれ、な?」

「…」

悪びれた様子もなくそう言った剣士の男が、ニヤリと笑う。

「いや、けどさ、実際のとこ、俺もアイラとは同意見なんだわ。」

「…」

「あんたさ、そんだけの実力、こんなとこで腐らせんのもったいないだろ?」

「…」

「俺ら、本気でこの世界の天辺目指してるわけ。俺とアイラは冒険者初めてまだ一年も経たねぇけど、既にCランク。ヘルマンも、もう直ぐDランクに上がる予定だしな。」

「…まぁ、二人には、多少、出遅れてはいますが、私も直ぐに追いつくつもりでいます。」

それまで黙って酒を飲んでいた僧侶の男が、眼鏡を押し上げて口を挟んできた。

「な?ヘルマンもこう言ってるみたいに、俺らには上を目指す意志がある。こんなとこで、Cランク程度で満足してるパーティとは違ってさ。…なぁ、ルキ、あんただってそうなんじゃねぇか?あんた、こんなとこで満足してるような男じゃねぇだろ?」

「…」

一瞬だけ、かつての仲間、共に故郷を出て、同じ高みを目指した男の顔が浮かんだ。でも、それも本当に一瞬のこと─

「…馬鹿か、お前ら。俺が満足してないだ?んなもん、」

勝手に決めんな。そう言いかけて、視界に入った人影。いつの間に戻ってきていたのか、こちらを見つめて呆然と立ち尽くすセリの姿。その顔面は蒼白に染まって─

(…ばぁか、何て顔してんだよ。)

絶望、みたいな顔して、今にも泣きだしそうなセリに苦笑する。

「…シオン、エル。俺ら、先に帰るな。」

「うん、オッケー☆」

「りょうかーい。」

「なっ!?はぁっ!?ちょ、待てよ!ルキ!話はまだ!」

「はいはーい☆君たちには、僕からちょーっと大切なお話があるからね?…大人しく座ってろよ。」

「っ!?」

エルの威圧一つに動けなくなった男どもを放って席を立つ。

「…ほら、セリ。んなとこでボーっとしてんな。帰ろうぜ。」

「ルキ…、あの、でも…」

「ん?何だよ?帰んねぇの?」

「…帰り、ます。…ルキと一緒に。」

「ん。なら、行こうぜ?」

歩き出せば、セリは大人しく後をついてきた。




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