【男装歴10年】異世界で冒険者パーティやってみた【好きな人がいます】

リコピン

文字の大きさ
123 / 174
【サプライズ】好きな人の誕生日に全力でプレゼントを用意しました ▶10話

#3 プレゼントの鑑定にボッツまで行ってきます

しおりを挟む
それから毎朝、兄に幸運をかけてもらったのが良かったのだろうか。

周回四日目にして、とうとう、オルトロスが双剣ヴァハフントをドロップした。

「…やっ、たぁ…」

「うん、凄い。…頑張ったね?セリ君。」

「はい。…良かった、嬉しい、です。」

地面に転がる二振りの剣、一振りに火、一振りに風の魔力を感じるその剣に近寄ってみる。

「…あれ?」

「…なにか、変、ね?…鍵?封かしら?…もしかして、呪い?」

持ち上げた剣から感じる魔力が、変な風にねじ曲がっている。何かを、抑え込んでいるような。

「…鑑定、してもらった方がいいわね。このまま、鞘からは抜かないようにして。」

「鑑定。…えっと、ギルドでやってもらえるんでしょうか?」

「…ギルドでは無理ね。無理というより、ロカール支部には専門職がいないから、外注になると思うの。そうすると、どうしても時間が掛かってしまうから…」

(…三日後の、ルキの誕生日に間に合わない。)

一瞬、諦めるしかないのかと思った。ザーラさんが、少し考えるようにして、

「直接、鑑定士に持ち込めば、何とかなるかもしれないわ。」

「持ち込む…、でも、ロカールに鑑定士は…」

「ええ。最寄りだとボッツかしら?商業都市だから、あそこには確実にいるはずよ。」

「ボッツ…」

ボッツなら、日帰りで行くことが出来る。ただ、最寄りとはいえ、兄やルキが一人で街を出ることを許してくれるかは怪しいところ。

(…どうしよう、兄さんに頼む?)

口が軽い、特にお酒が入ると直ぐに何でもしゃべってしまう兄には黙っていたけれど、ここまで来たら─

「…セリ君、私と行く?」

「えっ!?」

「一人で行くのが不安なら、私で良ければ付き合うけれど?」

とても有難いザーラさんの提案。だけど、ここまで散々付き合ってもらった上、何のうまみもない街の外にまで連れ出すのは流石に躊躇われる。

(どう考えても、私の子守り…)

申し訳なくて、答えに迷えば、

「…ドロップ品を売りに行くついで、だと思って?」

「え?」

「ここ数日で入手したドロップ品が山のようにあるでしょ?ダンジョンが開放されてからまだ日が浅いから、他の街までは流通してないものがたくさんあるのよね。それを、ボッツに売りに行くの。」

「…」

「売りに行くついでに、セリ君の用事にも付き合う、…どうかしら?」

「ザーラさん…」

ドロップ品の、他の街との価格差なんて微々たるもの。往復の時間を考えれば、決して「得」にはならない。なのに、

「…それに、ボッツで買いたい魔法素材もあるの。」

笑って言ってくれるザーラさんに、笑って返す。

「…ありがとう、ございます。」

ザーラさんの優しさの示し方が、すごく、好きだと思った。








「…というわけで、明日、ザーラさんと、」

「なんで?」

「…その、色々、ボッツで売りたいものと、購入したいものが、」

「それなら、俺と行きゃいいだろ?」

「…魔法素材の相談もしたいので。」

「…」

デジャブ。目の前にはまた渋い顔をしたルキ。しかも、今回はその横で兄までが渋い顔をしている。

「…駄目だ。」

「ルキ…」

「…俺も、今回はルキの味方だから。」

「兄さん…」

立ちはだかる壁が増えて、頭を抱えたくなる。いっそ、黙って出かけてしまおうかとも思ったけれど、

「…ルキ君とシオン君がセリ君を大切にしてるのはとても素敵だと思うわ。だけど、大切にするのと、束縛は違うんじゃないかしら?」

「っ!」

「それは…」

説得に付き添っていてくれたザーラさんからの援護に、二人が黙る。

「セリ君がやりたいことを、二人が一方的に禁止することは出来ないんじゃない?」

「…」

「二人は、どうしてセリ君のお出かけに反対なの?」

「…んなのは、危ねぇからに決まって、」

「セリ君、A級冒険者なのに?」

「っ!だとしても!二人じゃ、対応できねぇことだって、」

「分かったわ。乗り合い馬車で行く。」

「…」

「護衛つきの乗り合い馬車で行くなら問題ないでしょう?」

「それ、は…」

黙り込んだルキ、先に折れたのは兄だった。

「…はぁ、分かったよ。行っといで。」

「シオン!」

「しょうがないよ。ザーラさん、ど正論なんだもん。どう考えても、俺達が悪者。」

「…」

兄の言葉に、どうやらルキも折れてくれる気になったらしい。緊張を解いたルキの瞳がこちらを見る。

「…なるべく、他の人間と関わんな。」

「はい。」

「服、…恰好は、それで行くんだよな?」

「?…はい。」

「よし。脱ぐなよ?」

「え…」

「ローブ、ぜってぇ、脱ぐな?ぜってぇ、女だってバレないようにしろ?」

「…」

「乗り合いだよな?…なるべく、男の隣に座んねぇように、男の方から来られそうになったら、障壁張るか、一旦、馬車降りるかして…」

「…」

その後も、乗り合い馬車だと日帰り出来ないという事実に気づいたルキが、今度は「お泊り上の注意事項」を延々と述べた後─それでも、最終的に満足はしていなかったようだけれど─、何とか、自宅へと帰って行った。説得してくれたザーラさんには感謝しかない。

ルキとザーラさんが帰り、兄からも、一つ、二つ、ルキと似たような注意事項を受けた後─

「…兄さん、お願いがある。」

「お願いー?」

「うん、お願いというより、確認…?」

駄目なら諦める。だけど、折角なら、共に居る時間に伝えられたらなと思う。私の中で、エルやルキと同じくらい大切になってしまった人に─




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します

mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。 中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。 私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。 そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。 自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。 目の前に女神が現れて言う。 「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」 そう言われて私は首を傾げる。 「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」 そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。 神は書類を提示させてきて言う。 「これに書いてくれ」と言われて私は書く。 「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。 「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」 私は頷くと神は笑顔で言う。 「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。 ーーーーーーーーー 毎話1500文字程度目安に書きます。 たまに2000文字が出るかもです。

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。

千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。 気付いたら、異世界に転生していた。 なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!? 物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です! ※この話は小説家になろう様へも掲載しています

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

追放令嬢、辺境王国で無双して王宮を揺るがす

遊鷹太
ファンタジー
王国随一の名門ハーランド公爵家の令嬢エリシアは、第一王子の婚約者でありながら、王宮の陰謀により突然追放される。濡れ衣を着せられ、全てを奪われた彼女は極寒の辺境国家ノルディアへと流される。しかしエリシアには秘密があった――前世の記憶と現代日本の経営知識を持つ転生者だったのだ。荒廃した辺境で、彼女は持ち前の戦略眼と人心掌握術で奇跡の復興を成し遂げる。やがて彼女の手腕は王国全土を震撼させ、自らを追放した者たちに復讐の刃を向ける。だが辺境王ルシアンとの運命的な出会いが、彼女の心に新たな感情を芽生えさせていく。これは、理不尽に奪われた女性が、知略と情熱で世界を変える物語――。

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

【完結】憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

処理中です...