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前編 学園編
2-5.
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2-5.
『彼女』だと思った―
何がそう思わせたのだろう?やはり、イベントスチルに描かれていたのと同じ、あの桃色の髪のせい?主要攻略対象の一人―ディーツ・アメルン―を隣に連れているから?
ただ、彼女を見た一瞬で確信した。彼女こそが、ゲームで描かれていた主人公なのだと。
周囲から注目を集めながら、そんなものなど目にも入らない様子の彼女。キョロキョロと辺りを見回し、誰かを見つけて笑った。彼女が手を振った相手、笑顔の先に居たのは、やはり、カイ―
嬉しそうにカイに駆け寄っていく彼女の名前を知りたくて、アナライズをかける。
「!?」
驚いたのは、表示された「アイリー」という名前の横に並ぶ、彼女のレベル数値。
レベル75―
普通なら、十代のレベルなんてほとんど年齢と変わらない。それこそ、ダンジョンに潜るのが生業の冒険者や、学園で己を鍛え上げた人間ならばともかく、学園入学時の数値としては、あり得ないほど高い数値。
確かにゲーム主人公にレベル30の上限は存在しなかったけれど、ゲーム開始時のレベル初期値は17しかなかったはずなのに。
―もしかして
あり得る可能性。
彼女も、転生者なのではないだろうか?私自身、前世を自覚すると同時に、己を鍛えることに邁進した。彼女も、同じ?
ディーツを連れてカイと合流した「アイリー」という名の少女を目で追う。二人の攻略対象者達を相手に、弾けるような笑顔を見せている少女。
「!」
その彼女達の元へ近づいてくる、もう一人の姿に、また、驚いた。
―アルド・シャウマン?
アイリー達と合流する彼も、間違いなく攻略対象者の一人で―
―どういうことだろう?
この時点で、カイはともかく、ディーツとアルドの二人を連れているなんて。一体、どうやって?
思考に没頭しそうになったところで、少し不機嫌がうかがえる声が、頭上から降ってきた。
「さっさと行くぞ」
「…」
食堂中の視線が彼らに集まっている中、周囲のざわめきなど完全に無視する男を、少し恨めしげに見上げる。
そもそも―
私がブレンのことを―そのレベルまで―記憶していたのは、ディーツとアメルン、この二人のせいだと言っても過言ではない。
三人編成の戦闘パーティーにおいて、自分を除く二人のメンバーのうち、ゲーム開始時に自由に選べるキャラは一人だけ。ストーリー的には、「ゲーム開始前からの知り合い」という形で入学時から行動を共にすることになる。
その後、他のキャラもガチャやイベントによってどんどん増えていき、パーティーに入れ切れないキャラは、補欠としてキープしておくことも出来る。
そんな攻略キャラ達の中でも、ディーツとアルドの二人は、ゲーム序盤から揃えられるベストな組み合わせとして、攻略wikiでも推奨されていた。飽き性だが、スタートには拘る私は、この二人を揃えるためにリセマラしまくった、という記憶がある。
そして、リセマラのタイミング、二人目のキャラをゲット出来る最速のタイミングが、戦闘チュートリアル開始直後。「ブレンに絡まれたヒロインを見かねた」キャラが仲間になってくれるイベントだ。
イベント中にガチャを引くことで手に入る二人目に、アルドを出すためのリセマラ。二回目以降は途中のイベントも会話もスキップしまくって、それでも休日が潰れたというくらいには、出現率の低い賭けだった。
結果として、チュートリアルキャラであるブレンの登場シーン、戦闘フェーズへ移行してのステータス画面だけは、何度も何度も見せられた。ゲーム中で一番多く見たのがこのブレン登場イベントだと断言出来るくらいには。
そう言えば―
一応、睨んでるのに、こちらの視線など鼻で笑うブレン。
ゲームの中のブレンはもっと、分かりやすくゲスなセリフを吐いていた気がする。
―平民風情が!この俺に歯向かうつもりか!?
―いいだろう!貴様に戦い方というものを教えてやる!!
そして、本当に戦闘チュートリアルが始まり、二人目の仲間をガチャることになるのだが。今思うと、
―すっごくチープなセリフ吐いてたな
元のブレンが良かったとは言わないけれど、それでも、彼が変わってしまったのは間違いなく私のせい。彼を『平民風情』にしてしまったのは私だ。
「どうした?」
ほら、私の顔色よんで表情を変える、そんなキャラじゃなかったはずで。
「…ううん、何でもない。行こうか?」
改めて思う。彼を変質させた上、今のブレンの方が好きだと思う私は、やっぱり間違いなくこの世界における『バグ』なんだと。
『彼女』だと思った―
何がそう思わせたのだろう?やはり、イベントスチルに描かれていたのと同じ、あの桃色の髪のせい?主要攻略対象の一人―ディーツ・アメルン―を隣に連れているから?
ただ、彼女を見た一瞬で確信した。彼女こそが、ゲームで描かれていた主人公なのだと。
周囲から注目を集めながら、そんなものなど目にも入らない様子の彼女。キョロキョロと辺りを見回し、誰かを見つけて笑った。彼女が手を振った相手、笑顔の先に居たのは、やはり、カイ―
嬉しそうにカイに駆け寄っていく彼女の名前を知りたくて、アナライズをかける。
「!?」
驚いたのは、表示された「アイリー」という名前の横に並ぶ、彼女のレベル数値。
レベル75―
普通なら、十代のレベルなんてほとんど年齢と変わらない。それこそ、ダンジョンに潜るのが生業の冒険者や、学園で己を鍛え上げた人間ならばともかく、学園入学時の数値としては、あり得ないほど高い数値。
確かにゲーム主人公にレベル30の上限は存在しなかったけれど、ゲーム開始時のレベル初期値は17しかなかったはずなのに。
―もしかして
あり得る可能性。
彼女も、転生者なのではないだろうか?私自身、前世を自覚すると同時に、己を鍛えることに邁進した。彼女も、同じ?
ディーツを連れてカイと合流した「アイリー」という名の少女を目で追う。二人の攻略対象者達を相手に、弾けるような笑顔を見せている少女。
「!」
その彼女達の元へ近づいてくる、もう一人の姿に、また、驚いた。
―アルド・シャウマン?
アイリー達と合流する彼も、間違いなく攻略対象者の一人で―
―どういうことだろう?
この時点で、カイはともかく、ディーツとアルドの二人を連れているなんて。一体、どうやって?
思考に没頭しそうになったところで、少し不機嫌がうかがえる声が、頭上から降ってきた。
「さっさと行くぞ」
「…」
食堂中の視線が彼らに集まっている中、周囲のざわめきなど完全に無視する男を、少し恨めしげに見上げる。
そもそも―
私がブレンのことを―そのレベルまで―記憶していたのは、ディーツとアメルン、この二人のせいだと言っても過言ではない。
三人編成の戦闘パーティーにおいて、自分を除く二人のメンバーのうち、ゲーム開始時に自由に選べるキャラは一人だけ。ストーリー的には、「ゲーム開始前からの知り合い」という形で入学時から行動を共にすることになる。
その後、他のキャラもガチャやイベントによってどんどん増えていき、パーティーに入れ切れないキャラは、補欠としてキープしておくことも出来る。
そんな攻略キャラ達の中でも、ディーツとアルドの二人は、ゲーム序盤から揃えられるベストな組み合わせとして、攻略wikiでも推奨されていた。飽き性だが、スタートには拘る私は、この二人を揃えるためにリセマラしまくった、という記憶がある。
そして、リセマラのタイミング、二人目のキャラをゲット出来る最速のタイミングが、戦闘チュートリアル開始直後。「ブレンに絡まれたヒロインを見かねた」キャラが仲間になってくれるイベントだ。
イベント中にガチャを引くことで手に入る二人目に、アルドを出すためのリセマラ。二回目以降は途中のイベントも会話もスキップしまくって、それでも休日が潰れたというくらいには、出現率の低い賭けだった。
結果として、チュートリアルキャラであるブレンの登場シーン、戦闘フェーズへ移行してのステータス画面だけは、何度も何度も見せられた。ゲーム中で一番多く見たのがこのブレン登場イベントだと断言出来るくらいには。
そう言えば―
一応、睨んでるのに、こちらの視線など鼻で笑うブレン。
ゲームの中のブレンはもっと、分かりやすくゲスなセリフを吐いていた気がする。
―平民風情が!この俺に歯向かうつもりか!?
―いいだろう!貴様に戦い方というものを教えてやる!!
そして、本当に戦闘チュートリアルが始まり、二人目の仲間をガチャることになるのだが。今思うと、
―すっごくチープなセリフ吐いてたな
元のブレンが良かったとは言わないけれど、それでも、彼が変わってしまったのは間違いなく私のせい。彼を『平民風情』にしてしまったのは私だ。
「どうした?」
ほら、私の顔色よんで表情を変える、そんなキャラじゃなかったはずで。
「…ううん、何でもない。行こうか?」
改めて思う。彼を変質させた上、今のブレンの方が好きだと思う私は、やっぱり間違いなくこの世界における『バグ』なんだと。
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