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第四章 領主夫人、母となる
6.覚悟(Side S)
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我が子を胸に、散々、「可愛い」と言い続けていたアオイだったが、お産の疲れもあったのだろう、やがて睡魔に襲われ始めたらしく、その瞼がゆっくりと落ち始めた。
「アオイ…」
「んー…」
そこで漸く我が子を手放したアオイから小さな身体を受け取り、十分な休息を取るよう伝えて部屋を出る。
「…」
部屋を出た扉の前、腕の中の我が子の寝顔を眺めながら、これからすべきことを考える。
(…アオイの側に、誰か付き添いを…)
体調の急変に備えて、侍女を何名か付けておくべきだろう。
(この子も…)
既に手配済みの子守りに託して、それから─
(名を…)
未だ、名のない我が子に与える名。アオイと二人で考え、「女児ならば」と決めていた候補がいくつかある。その中から、この子に相応しい名を、もう一度アオイと話しあって、それから─
「…」
安らかな寝顔に、滲む罪悪感。
(…魔力を持たない、か…)
己が身のことであるならば、然して障りのない事柄が、我が子に降りかかると、途端、鈍い痛みへと変わる。魔力を持とうが持つまいが、我が子への愛しさが変わるではなく、ただ、この先のこの子の苦労を思うと─
「…セルジュ様?」
「…エバンス。」
「…アオイ様とのお話し合いは終わられましたか?」
「ええ…」
「…お喜びになられていたでしょう?」
「…」
言われて、アオイの姿を思い出す。明らかに疲弊しきった顔、なのに、その瞳だけは強く煌めかせて、腕の中の存在に、何度もただ「可愛い」と告げていた。
そこに、なんの憂いも屈託もなく─
「…先代も…」
「…?」
「クリストフ様も、レナータ様も、大層、お喜びでいらっしゃいました。」
「父と、母が…?」
「はい。…セルジュ様のご誕生を、それはもう、心から…」
「…」
もう一度、腕の中の温もりに視線を落とす。
(…喜び。)
そう、確かに。この子を目にして、否、目にする前から、ずっとあるのは愛しさと喜び。無事にこの腕に抱けた今は、何よりもその喜びが勝る。
「…そう、ですね。」
この喜びが本物である限り、この子はきっと─
それに、
(…万難あれば、それを排すまでのこと…)
何も、問題などない。
「アオイ…」
「んー…」
そこで漸く我が子を手放したアオイから小さな身体を受け取り、十分な休息を取るよう伝えて部屋を出る。
「…」
部屋を出た扉の前、腕の中の我が子の寝顔を眺めながら、これからすべきことを考える。
(…アオイの側に、誰か付き添いを…)
体調の急変に備えて、侍女を何名か付けておくべきだろう。
(この子も…)
既に手配済みの子守りに託して、それから─
(名を…)
未だ、名のない我が子に与える名。アオイと二人で考え、「女児ならば」と決めていた候補がいくつかある。その中から、この子に相応しい名を、もう一度アオイと話しあって、それから─
「…」
安らかな寝顔に、滲む罪悪感。
(…魔力を持たない、か…)
己が身のことであるならば、然して障りのない事柄が、我が子に降りかかると、途端、鈍い痛みへと変わる。魔力を持とうが持つまいが、我が子への愛しさが変わるではなく、ただ、この先のこの子の苦労を思うと─
「…セルジュ様?」
「…エバンス。」
「…アオイ様とのお話し合いは終わられましたか?」
「ええ…」
「…お喜びになられていたでしょう?」
「…」
言われて、アオイの姿を思い出す。明らかに疲弊しきった顔、なのに、その瞳だけは強く煌めかせて、腕の中の存在に、何度もただ「可愛い」と告げていた。
そこに、なんの憂いも屈託もなく─
「…先代も…」
「…?」
「クリストフ様も、レナータ様も、大層、お喜びでいらっしゃいました。」
「父と、母が…?」
「はい。…セルジュ様のご誕生を、それはもう、心から…」
「…」
もう一度、腕の中の温もりに視線を落とす。
(…喜び。)
そう、確かに。この子を目にして、否、目にする前から、ずっとあるのは愛しさと喜び。無事にこの腕に抱けた今は、何よりもその喜びが勝る。
「…そう、ですね。」
この喜びが本物である限り、この子はきっと─
それに、
(…万難あれば、それを排すまでのこと…)
何も、問題などない。
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