45 / 51
11.真犯人
2
しおりを挟む
そのとき、奇妙な感覚が体中を駆け巡り、そのままの勢いで和真へと流れ込んでいった。
なにこれ、力が……抜ける……。
わたしががくっと膝をつくのと同時に、今度は和真の体がぱぁっと輝きはじめた。
「かず、ま……?」
抱きかかえられるサイズだった和真の体はぐんぐん大きくなり、あっという間に元の姿へと戻った。
「よかっ…………」
「李胡……? 俺、いったい……」
しばらくの間戸惑いの表情を浮かべていた和真が、ハッとした顔をする。
「そうだ、俺……」
白壁先生をキッとにらみつけると、キツネの姿のときと同じように、和真がわたしの前に立ちはだかる。
「李胡になにかしたら、ただじゃおかないからな」
「へえ、自分の生気を分け与えて元に戻すだなんて、なかなかやるじゃない。でも残念ね。結局全部わたしのものになるんだから」
白壁先生が、余裕の笑みを浮かべている。
「もう、いいから……和真、だけでも、逃げ……」
ダメだ。力が抜けて、立ちあがるどころか、まともにしゃべることもできない。
悔しさに唇をかみしめ、地面についた手をぎゅっと握りしめる。
そうだ。康哉の言うことが本当なら、これを外せば……。
胸元の勾玉をぎゅっと握りしめたそのとき、ザリッと砂を踏みしめる複数の足音が背後で聞こえた。
「おまえに消えられると、誰も野球を教えてくれるヤツがいなくなって困る」
「なるほど。白壁先生を突き出せば、長候補としてみんなを説得できるってことね」
「黒瀬くん……康哉……」
ひょっとして、助けに来てくれたの?
「ありがと……二人とも」
「ふんっ。おまえの味方をしに来たわけではない。勘違いするな」
「僕だって。自分のために来ただけなんだから、勘違いしないでくれるかなあ」
そう言うと、二人の体から強い妖気が立ちのぼり、キツネの耳としっぽが顕現する。
「みんなが登校してくる時間なんだから、せめて結界ぐらい張っておきなよ、白壁先生」
そう言いながら、康哉が結界を張るための印を結ぶ。
「え、ちょ、おまえら、ひょっとして……」
その様子を見ていた和真が、口をパクパクさせている。
「格上を相手にするからには、こっちも本気でかからないとだからね」
「岡林は、こんなことで差別するようなヤツではないと思っていたんだが?」
「あったり前だろ! 月斗は月斗だ。なんにも変わらない。これからも」
和真がきっぱりとした口調で言うと、黒瀬くんが少しだけ口元を緩めたように見えた。
わたしだって……みんなに任せて、わたし一人だけ、こんな情けない姿のままでなんていられないよ。
膝に手を当て、なんとか立ちあがると、目の前の白壁先生をぐっとにらみつける。
「もう、先生の好きにはさせない……!」
「おまえみたいなへなちょこは、さがってろ」
「ほんと、僕たちの足を引っ張ることだけはしないでよね」
それを合図に、二人の攻撃がはじまる。
黒瀬くんが得意の狐火をいくつも作りだすと、白壁先生はそれを打ち消すようにすかさず応戦する。
その隙に、近くに落ちていた花壇の水やり用ホースを、康哉がヘビに変化させると、
「シャアーッ‼」
ヘビが大口を開けて、先生へと襲いかかる!
「こんな子どもダマしが、わたしに通用するとでも思っているの?」
片手で軽くいなされ、地面に転がったヘビは、ホースへと戻ってしまった。
「さすが。僕たちの何倍も……いや、何十倍も生きているだけのことはあるね」
「歳のことは……言うなーっ!!!!」
怒り狂った白壁先生が、康哉を丸ごと飲み込んでしまいそうなほどの狐火を放つ。
「しまっ……」
「康哉!」
一瞬防御の術の遅れた康哉に代わり、わたしが先生の狐火に向けて自分の狐火を放つと、先生の狐火の軌道がぐいんっとそれた。
なにこれ、力が……抜ける……。
わたしががくっと膝をつくのと同時に、今度は和真の体がぱぁっと輝きはじめた。
「かず、ま……?」
抱きかかえられるサイズだった和真の体はぐんぐん大きくなり、あっという間に元の姿へと戻った。
「よかっ…………」
「李胡……? 俺、いったい……」
しばらくの間戸惑いの表情を浮かべていた和真が、ハッとした顔をする。
「そうだ、俺……」
白壁先生をキッとにらみつけると、キツネの姿のときと同じように、和真がわたしの前に立ちはだかる。
「李胡になにかしたら、ただじゃおかないからな」
「へえ、自分の生気を分け与えて元に戻すだなんて、なかなかやるじゃない。でも残念ね。結局全部わたしのものになるんだから」
白壁先生が、余裕の笑みを浮かべている。
「もう、いいから……和真、だけでも、逃げ……」
ダメだ。力が抜けて、立ちあがるどころか、まともにしゃべることもできない。
悔しさに唇をかみしめ、地面についた手をぎゅっと握りしめる。
そうだ。康哉の言うことが本当なら、これを外せば……。
胸元の勾玉をぎゅっと握りしめたそのとき、ザリッと砂を踏みしめる複数の足音が背後で聞こえた。
「おまえに消えられると、誰も野球を教えてくれるヤツがいなくなって困る」
「なるほど。白壁先生を突き出せば、長候補としてみんなを説得できるってことね」
「黒瀬くん……康哉……」
ひょっとして、助けに来てくれたの?
「ありがと……二人とも」
「ふんっ。おまえの味方をしに来たわけではない。勘違いするな」
「僕だって。自分のために来ただけなんだから、勘違いしないでくれるかなあ」
そう言うと、二人の体から強い妖気が立ちのぼり、キツネの耳としっぽが顕現する。
「みんなが登校してくる時間なんだから、せめて結界ぐらい張っておきなよ、白壁先生」
そう言いながら、康哉が結界を張るための印を結ぶ。
「え、ちょ、おまえら、ひょっとして……」
その様子を見ていた和真が、口をパクパクさせている。
「格上を相手にするからには、こっちも本気でかからないとだからね」
「岡林は、こんなことで差別するようなヤツではないと思っていたんだが?」
「あったり前だろ! 月斗は月斗だ。なんにも変わらない。これからも」
和真がきっぱりとした口調で言うと、黒瀬くんが少しだけ口元を緩めたように見えた。
わたしだって……みんなに任せて、わたし一人だけ、こんな情けない姿のままでなんていられないよ。
膝に手を当て、なんとか立ちあがると、目の前の白壁先生をぐっとにらみつける。
「もう、先生の好きにはさせない……!」
「おまえみたいなへなちょこは、さがってろ」
「ほんと、僕たちの足を引っ張ることだけはしないでよね」
それを合図に、二人の攻撃がはじまる。
黒瀬くんが得意の狐火をいくつも作りだすと、白壁先生はそれを打ち消すようにすかさず応戦する。
その隙に、近くに落ちていた花壇の水やり用ホースを、康哉がヘビに変化させると、
「シャアーッ‼」
ヘビが大口を開けて、先生へと襲いかかる!
「こんな子どもダマしが、わたしに通用するとでも思っているの?」
片手で軽くいなされ、地面に転がったヘビは、ホースへと戻ってしまった。
「さすが。僕たちの何倍も……いや、何十倍も生きているだけのことはあるね」
「歳のことは……言うなーっ!!!!」
怒り狂った白壁先生が、康哉を丸ごと飲み込んでしまいそうなほどの狐火を放つ。
「しまっ……」
「康哉!」
一瞬防御の術の遅れた康哉に代わり、わたしが先生の狐火に向けて自分の狐火を放つと、先生の狐火の軌道がぐいんっとそれた。
0
あなたにおすすめの小説
笑いの授業
ひろみ透夏
児童書・童話
大好きだった先先が別人のように変わってしまった。
文化祭前夜に突如始まった『笑いの授業』――。
それは身の毛もよだつほどに怖ろしく凄惨な課外授業だった。
伏線となる【神楽坂の章】から急展開する【高城の章】。
追い詰められた《神楽坂先生》が起こした教師としてありえない行動と、その真意とは……。
四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。
クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました
藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。
相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。
さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!?
「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」
星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。
「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」
「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」
ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や
帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……?
「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」
「お前のこと、誰にも渡したくない」
クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。
悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~
橘花やよい
児童書・童話
女子中学生・リリイが、入学することになったのは、お嬢さま学校。でもそこは「悪魔」の学校で、「執事として入学してちょうだい」……って、どういうことなの⁉待ち構えるのは、きれいでいじわるな悪魔たち!
友情と魔法と、胸キュンもありの学園ファンタジー。
第2回きずな児童書大賞参加作です。
モブの私が理想語ったら主役級な彼が翌日その通りにイメチェンしてきた話……する?
待鳥園子
児童書・童話
ある日。教室の中で、自分の理想の男の子について語った澪。
けど、その篤実に同じクラスの主役級男子鷹羽日向くんが、自分が希望した理想通りにイメチェンをして来た!
……え? どうして。私の話を聞いていた訳ではなくて、偶然だよね?
何もかも、私の勘違いだよね?
信じられないことに鷹羽くんが私に告白してきたんだけど、私たちはすんなり付き合う……なんてこともなく、なんだか良くわからないことになってきて?!
【第2回きずな児童書大賞】で奨励賞受賞出来ました♡ありがとうございます!
アリアさんの幽閉教室
柚月しずく
児童書・童話
この学校には、ある噂が広まっていた。
「黒い手紙が届いたら、それはアリアさんからの招待状」
招かれた人は、夜の学校に閉じ込められて「恐怖の時間」を過ごすことになる……と。
招待状を受け取った人は、アリアさんから絶対に逃れられないらしい。
『恋の以心伝心ゲーム』
私たちならこんなの楽勝!
夜の学校に閉じ込められた杏樹と星七くん。
アリアさんによって開催されたのは以心伝心ゲーム。
心が通じ合っていれば簡単なはずなのに、なぜかうまくいかなくて……??
『呪いの人形』
この人形、何度捨てても戻ってくる
体調が悪くなった陽菜は、原因が突然現れた人形のせいではないかと疑いはじめる。
人形の存在が恐ろしくなって捨てることにするが、ソレはまた家に現れた。
陽菜にずっと付き纏う理由とは――。
『恐怖の鬼ごっこ』
アリアさんに招待されたのは、美亜、梨々花、優斗。小さい頃から一緒にいる幼馴染の3人。
突如アリアさんに捕まってはいけない鬼ごっこがはじまるが、美亜が置いて行かれてしまう。
仲良し3人組の幼馴染に一体何があったのか。生き残るのは一体誰――?
『招かれざる人』
新聞部の七緒は、アリアさんの記事を書こうと自ら夜の学校に忍び込む。
アリアさんが見つからず意気消沈する中、代わりに現れたのは同じ新聞部の萌香だった。
強がっていたが、夜の学校に一人でいるのが怖かった七緒はホッと安心する。
しかしそこで待ち受けていたのは、予想しない出来事だった――。
ゾクッと怖くて、ハラハラドキドキ。
最後には、ゾッとするどんでん返しがあなたを待っている。
9日間
柏木みのり
児童書・童話
サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。
(also @ なろう)
【奨励賞】氷の王子は、私のスイーツでしか笑わない――魔法学園と恋のレシピ【完結】
旅する書斎(☆ほしい)
児童書・童話
【第3回きずな児童書大賞で奨励賞をいただきました】
魔法が学べる学園の「製菓科」で、お菓子づくりに夢中な少女・いちご。周囲からは“落ちこぼれ”扱いだけど、彼女には「食べた人を幸せにする」魔法菓子の力があった。
ある日、彼女は冷たく孤高な“氷の王子”レオンの秘密を知る。彼は誰にも言えない魔力不全に悩んでいた――。
「私のお菓子で、彼を笑顔にしたい!」
不器用だけど優しい彼の心を溶かすため、特別な魔法スイーツ作りが始まる。
甘くて切ない、学園魔法ラブストーリー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる